Stand in place!   作:KAMITHUNI

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毎度のことながら、やっちまいましたね!!


第29話 『合宿』と『試合』と『ライブ』と『覚醒』と…… 後編5

阿旗「…………」

 

門田「いつまで、そうやってベンチに座って黄昏てるつもりですか? そろそろ宿舎に戻らないと体が冷え切ってしまいますよ?」

 

 

阿旗「……関係ないわ、アホ……。こんなクズピが身体を壊そうが、野球を辞めようが、誰も騒がへん」

 

阿旗「結局、ワイは天狗もええとこやったってこっちゃ……。咲山相手に圧倒されたのをいい事にズルズル引きずって、結果初回でノックアウト……。ホンマ、こんなヤツが大阪の名門のエースとか笑い話にもならへん」

 

門田「その通りですね」

 

阿旗「オマッ!? ちょっとは、先輩を宥めぇや!! こんなに傷心しとるワイに辛辣に傷付けるなや!!」

 

門田「慰めが欲しいなら、そうしますよ? でも、今、貴方にそれは逆効果でしょうが。阿旗さんが感じてるのは、相手一年投手としての決定的な差ですよね? あの投手の闘士全快のボールに貴方は負けを感じたんだ」

 

阿旗「─────そうや、ワイは、あの我妻のボールに取り込まれたんや。1年やのに、なんでアンナに『強い』んや……。なんで、そんなに『気持ちの乗った球』が投げられるんや!!? ワイとの違いはなんやねん!!?」

 

阿旗「自分の未熟さに腹が立つ!! この感情はなんやねんな!!? ホンマ、巫山戯よって!!!」

 

門田「それが答えなんじゃ無いですか? 答えを見つける事が貴方の道になるんじゃ無いでしょうか?」

 

阿旗「アホォ!! それだけで強化されたら世の中努力とか要らんわ!!! ほら!! 戻るで!!! 明日から、ガンガン投げ込んでもっとボールに磨きかけるで!!!」

 

門田「はい(……阿旗さんに合ったムラッ気の根源は絶たれたかな? これでまた、オレたちはまた強くなれる。我妻、咲山……。今度は負けないよ。ウチのエースは今から本当の『エース』に成り代る)」

 

─────

 

蘭「はぁ……。やっぱり今日も咲山達が勝った。強いな……」

 

橙色の空が広がる球場から離れていく客の流れに沿うようにして、美竹 蘭も球場外へと流れていく。

明日は他のガールズバンドと合同のライブである。試合観戦で昂ぶる気持ちを切り替え、明日へと向けて宿舎へと歩を進めていた時だった。

 

蘭(え? 今のは─────)

 

視界の端に映った土で汚れたユニフォーム姿の男に蘭は有り得ないと思いつつも、ある少年を過ぎらせる。

 

蘭(違うとは思うけど……)

 

人目の付かない道を伝っていく姿を見ると、何故か後ろ指押されるように彼の後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大地「かは……ッ!! はぁ! はぁ……!! く、そ……が! これ、が、代償、か、よ!! ほん、と、嫌に……なる!!」

 

喉奥に突っ込むのは4粒ほどの錠剤。感じる倦怠感と、異様な熱さが彼を蝕み、心を削っていく。

今にも吐瀉物をぶちまけたい衝動に駆られるが、必死にそれを止める。

いつもの悪態に力は無く、ただ無理に言ってるだけに過ぎない。

視界も定まらず、呼吸も乱れたまま……。これが先程まで試合で大暴れしていた黄金ルーキーだと、誰が思うのか。

 

不幸中の幸いとしては、部員達には『幼稚化』以外に知られていないという事。

きっと、空や我妻がこの姿を見たのなら、全力で止めてくるに違いない。

けれどそれではダメなのだ。自分が『犯した罪』を『贖罪』し続けるために『試合に出続けなければならない』。

重度の念持を心へ傾けて、心を無理矢理に奮い立たせる。鼓舞では無い鼓舞をして、自らの挫ける意思を捩じ伏せる。

 

大地「ふぅ……。はぁ……」

 

暴威を奮った心拍数を宥めていき、徐々に落ち着きを取り戻す。

視界も戻り始め、感じていた頭痛と体への倦怠感もマシになった。

狂いに狂っていた時間はそれ程ではないが、どうにかして人目を避けて直ぐに戻らなければと、大地が気怠い気持ちを押し殺して立ち上がると……。

 

ガサッ!

 

蘭「ぁ……」

 

大地「み、たけ? な、なんでここに─────?」

 

蘭「ぁ、いや……。今日、アンタ達の試合を観に来て……。それで、勝ったから帰ろうとしたらさ。アンタが見えた気がして、それで……」

 

大地「……そうか……。まぁ、その……なんだ、この事は黙っといてくれると、というか忘れてくれるとありがたい……。あんまり、人に知られたく無いんだ……」

 

大地「それに、思い出しても気持ちのいいもんじゃ無いだろ? こんな俺の姿を浮かべて暗くなられるより、“いつも通り”接してくれ。これから、集合があるから送迎はしてやらないけど、もう大分暗くなってるし、気をつけて帰れよ。最近物騒─────」

 

蘭「成田は、この事知らないの?」

 

大地「…………」

 

蘭「その様子だと、教えてないんだ」

 

大地「……あぁ。教えてない。空どころか、両親も多分知らない。知ってるのは精々一度だけエンカウントした紗夜先輩ぐらいじゃ無いか? あの時は美竹とは違って全容を見られたわけじゃ無いから、詳しくまでは理解してないだろうけどな」

 

蘭「なんで、教えないの? それより、両親にも話さないなんて、アンタ何考えて─────」

 

大地「それ以上踏み込むな!!」

 

蘭「!!?」

 

大地「美竹……。これ以上は“ボク”の事を詮索しないで!! “俺”が“ボク”を御する為には『懺悔』するしか無いんだ……! 誰かに教えたら終わりなんだよ……。頼む……。“ボク”に近づかないでおくれよ……」

 

蘭「っ!! さ、きやま……。アンタ……」

 

弱々しくしゃがみ込む大地を見て、蘭が感じたのは弱い大地に対する軽蔑でも侮蔑でも無い。

彼女が感じたのは自らの無力。目の前にドン底に落ちた大切な人がいるのに、手を差し伸べて安心させてあげる言葉がない。どうして、こんなにも心が締め付けられるのか……。どうして、こんなにも辛いのか……。どうして、こんなにも堪えて居ないと涙が溢れそうになるのか……。

 

今、きっと自分に出来る事なんて無い。

 

大地「なんで……。なん、で……。“ボク”はどうすれば良かったんだ!? “俺”が野球をしなけりゃ良かったのかよ!!? そんなの出来るわけねぇだろ!! “俺”はただ、……!! “ボク”はただ、……!!」

 

大地『野球が好きなだけなんだ……!!』

 

蘭「ッ!! 大地……」

 

スッ……。

 

蘭「……大丈夫。アタシが付いてるよ……。大丈夫……」

 

大地「ぁ─────う、ぁあぁああぁぁ!!!」

 

泣き噦る子供をあやす様に、ひざを落として頭を胸に優しく引き寄せる。

声音も暖かく、ゆっくりと話す。大丈夫、大丈夫……。と、同じ言葉が伝わるまで続ける。

 

泥だらけのユニフォームという事も忘れて、大地は蘭に縋り付く。

踏み込むなと自分で言っておきながら、耐えきれなかった。湧き上がる涙雨は、止まらない。一度決壊したダムを抑えつけるなんて出来ない。

 

蓄え続けた『後悔』と『不安』、そして『贖罪心』をこれでもかと吐き出す。

彼女の鼓動が聞こえる。少し緊張しているのか僅かに早い。けれど、この音が大地を安らかに諌めていく。

 

そばに彼女がいると解るだけで、余計な不安な消し飛んで行った。

この先、回避することなど出来ない『絶望』が『咲山 大地』を呑み込んでいき、その度に彼は挫折し、諦観を示すことになるだろう。

 

そして、それを抱え込み、自分で押さえつけてしまうのだ。この不幸が誰かに飛び火しないようにと、自分の箱へ抉じ入れる。

『鍵』を掛けて、厳重に触れられないように深く深くへと手の届かぬ場所へと封印した。

 

誰にも触れられてはならないと、自分に課せて忠実に守り続けた。

 

けれど、彼を押さえつけていた『箱の鍵』は、たった一人の少女の暖かな抱擁によって融解されていき、彼は諍いを瞬間だけでも止めた。

戦士には休息も必要なのである。

 

 

大地「み、たけ……」

 

 

蘭「大丈夫……。アタシはここにいるよ……。落ち着くまでこうしておいてあげるから……」

 

夕暮れに染まる茜空。

沈みかけの太陽が、2人を照らして、茂みに影を映し出す。

2人重なる1つの影が、今はとても玲瓏で──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────暖かった……。

 

 

 

to be continue………….




ね? やっちまってたでしょ!?
次回・後編フィナーレ!!

ヒロインは何処から選ぶべき2

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