Stand in place!   作:KAMITHUNI

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第2話 投手と捕手

「────へぇ、じゃあユキナ先輩は毎日ここで歌の練習してるんですね。だからあんなに伸びやかでスッと入ってくる声音なんだ。それなら納得だ」

 

「お前さ、学習能力低いのな?」

 

「は? 何が?」

 

「だめだこりゃ! こいつ、天然の垂らしだ! ここにタラシの才能持ったバカがいますッ! だれか110へ通報を─────!」

 

「やめんかい! てか、ユキナ先輩も顔を真っ赤にしながらスマホ出さないで! あ! ダイヤル押さないでぇえええ!!」

 

てか、ぷっくりと頬を膨らませてる先輩かわゆすぎ!! 俺の待ち受けにして─────ごほん! すまん、気を取り乱してた。

 

「なんで、そんな恥ずかしそうなんすか?」

 

普通に疑問に思った事を聞いてみる。 だからそこ! 俺の質疑に頭を抱えるの止めろ! マジで手遅れだとか言うな! 自覚症状ないからこっちは!

あ! それと、実はちゃっかり名前呼びしていた事は秘密な? 恥ずいし、なんか流れでいけそうかなって思ったから名前呼びしてるけど、バレたら只のチャラ男じゃん! 否定できない!

 

「だって……貴方、さっきから私のことを名前で─────ッッ///!!」

 

あぁ、バレてたんすね(吐血)。

もうとっくに手遅れだったわけだ! クソ! なんで今日はこんなに何もかもが上手くいかねぇんだよ!

ウワァァァ! てか、恥ずすぎるぅうううう!! だ、誰かぁ! 俺を殺してクレェ!!!

 

「ふん!」

 

ブン!

 

「うわぁ! 何すんだテメェ!」

 

「ち! 外したか! だが、次は当てる!」

 

「ガン○ム止めろ! てか、唐突な暴力反対!」

 

「お前が殺して欲しいって願ったんだろうが! 大人しくボコられろ!」

 

「あ、態々心を読んだのね! んな事してんじゃねぇ! てか、どうやって読んでだよ! 俺のパーフェクトポーカーをあっさり看破しやがって、コンチクショオ!」

 

「「いやいや、お前(貴方)程、表情から読み取れる奴(人)は見たことがねぇ(無いわ)」」

 

「同時に言うんじゃねぇ!! 余計に惨めだわ!」

 

「「え? 惨めじゃないと思ったの(か)?」」

 

「うわぁぁん! 先生! 2人がいじめるよう!!」

 

────という感じの馬鹿騒ぎを5分ほど繰り返し、俺たちは親睦を何故か深め合い、今日はお開きにした。

あれ? 可笑しいな? 俺は成田に文句の一つでもつけたかったのに……これが、萌力の力か! 恐るべし、湊 友希那先輩!

 

てか、ちゃっかり注意しに来たはずな先輩も混じってる時点で、あの人もアホの子だろ(笑)。

 

寧ろ、屋上に俺と成田を残して去っていった時は二人して吹き出しそうになった息を全力で殺した。

いや、あれは反則すぎるでしょ!

普通に歌うたって俺らと駄弁って帰るだけって、これをおかしく思わず何と言うのだろうか。

 

「で、テメェはグローブ、持ってきてんだろうな?」

 

俺は視線を先程まで駄弁っていた無駄イケメンの横にある袋へと目を向ける。

すると、成田はギラギラとした目を燦燦と輝かせて立ち上がる。

 

「当然だろ? てか、その為にお前を連れ出したんだ。しょうもないキャッチングを見せないでくれよ? 元準優勝校の捕手さん」

 

ちっ! 意地汚い。

俺のトラウマを全力で抉りにくる【怪物】。

あぁ、そうだよ。 俺は歯医者でコイツは勝者。眼に見えないけれど、明確な線引きがある。

 

俺は袋から新しく買ってから直ぐに手に馴染ませたミットを取り出して、先に守備テを装着してから、ミットを着ける。

成田は投手用の黒グラブを右手につけて、まだ触り慣れていない硬式球を左手に持つ。

そして、軽くキャッチボールを済ませて、大凡19m地点離れた位置に成田がワインドアップから軽く放る。

 

ズバァーーン!!

 

「ナイスボール!」

 

スピンの効いた真っ直ぐがミットに吸い込まれる。

ジャストタイミングで捕球したので、かなりいい音がなった。

まだ座ってるわけじゃないからなんとも言えないけど、これだけゆったり投げても、速い。

返球して、少し構える位置を右バッターの外は構える。

勿論、座ってはない。

 

「へ! そうこなくっちゃ─────なっ!」

 

ビュゴォオオォオオ!!

 

ズバァーーンッ!!

 

(流石だな……)

 

圧巻の一言だ。

奴の強さは、この恐ろしく感じる球威だけでは無い。

あれだけ腕が遅れてくるのに、全くコントロールを乱さない技術力の高さ。

大体、手足が長くて指先までしなるように投げる投手はコントロールが難しいと一般的に言われている。

 

理由は簡単。体を扱えきれないからだ。体のバランス、手足の使い方、腕の角度……これら全ての扱いが出来て初めてボールはコントロールできる。

そして、こいつはその難易度を優に超えるコースへのコントロールを見せつけた。たしかに、座ってはいないので高さなコントロールは未だ未知数だが、二分割だけでも高校生離れした能力だ。

 

続いて、肩が暖まってきたところで、腰を下ろし真ん中へミットを構える。

 

「へぇ、案外構えは投げやすい。 だけど、俺の球はそう簡単に、捕球されてたまるか─────よっ!!」

 

いきなりの全力投球。

上履きであるにも関わらず脚を深く踏み込み、自慢の脚力で滑らないように固定する。軸足は前脚につられるようにして大きくスライドする。

右手の壁によって左手をさらにギリギリまで押し殺す。

最後に撓りに撓った左腕を鋭く解き放ち、先程までとは比べ物にもならない怪速球が襲う。

 

ビュゴォォォォォオオオオッッ!!

 

本当に浮き上がっていると錯覚するストレートはショートバウンドすると思わしき低い位置から、一気に加速し上方向へと伸び上がる。

俺はそれを─────!

 

 

 

ズバァァァァァァーーンゥゥゥゥッッ!!!

 

「な!? マジかよ……っ!?」

 

(ヒェェ……なんつーストレートだ。去年の夏より遥かに速い。 よく思い出したら、尻があの時より確実にデカくなってる。成る程、才能にかまけてサボってた訳じゃないのか)

 

しっかりと捕球し、ミットの音を鳴らす。

久し振りに感じる手の痛みに鼓動が速くなる。

これだよ……。 この高揚感だ!

俺でも捕れるか捕れないか分からない怪物速球を息をするように放り投げる化物! 俺が憧憬したのは、このボールなんだ。そして、絶望を与えられたこのボールを捕球してやったという愉悦感に浸りながら返球する。

 

驚きを隠せない成田は、しかし何処か嬉しそうに頰を釣り上げていた。

 

“────このストレートは、間違いない。”

 

俺はある種の期待と確信を持って言える。

 

“────このストレートは将来、本物達(プロ)にも通用し得る。”

 

と……。

 

『成田 空」はなるべくして、野球人に生まれたのだと確信した瞬間だった。

 

 

 

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