ピピィッ!! ピピィッ!!
午後1時半頃に大地が巻き込まれた事故の影響で、6時間以上が経過した中でも交通規制は解けず、周りの警官と消防が慌ただしく動き回っていた。
警官「それにしても、こんだけの大型トラックが人に向かってきたのに死者0人って珍しいな……。しかも、運転手は居眠り運転してた訳だろ?」
部下「はい。報告書にはそのように記載されていますね。死者0人、重症が1人ですが、今上がってきた連絡によりますと、その重傷者の容態も安定し始め経過次第ですが、健全な状態に戻るらしいですよ」
部下の報告を聞き、そうか……。という呟きだけを残して無整髪の警官が胸元から手袋を取り、手に装着して横転したトラックの先端部分に転がっている野球ボールを拾う。
鑑識からドヤされる事は間違いないだろうが、今の彼にとってそんな事はどうでもいいぐらいに興味が惹かれるモノだった。
部下「野球ボールですよね? それ……。どうして、そんな物がここにあるんでしょうか?」
警官「なんだ、聞いてないのか? そこら辺は調書に書いてなかったみたいだな……」
立ち上がって、拾ったボールを元あった場所に戻してから部下に向き直り、メンドくさそうに、或いは考えられない事象を思考しないようにしてトラックの先端部分に指を指す。
その指先へ視線を向けていくと……。部下は固まり、口をあんぐりとさせた。
警官「最初、目撃者が見た時にはぶつかって直ぐに零れ落ちたわけじゃ無いみたいだ……。なんでも、文字通り“抉り込んでた”らしい」
警官「儂も、疑ったモンだが、調査を進めているうちに偶々動画を撮影していた目撃者から提供してもらった映像を見せてもらって初めて現実で起こり得た事象なんだって分かったよ」
警官「今でも、あの動画がCGであると切に願うと同時に、実に男心擽ぐる怪物がいて欲しいと願う自分もいる……。どちらにせよ、こんな事は調査書に書けたもんじゃねぇ……」
そして、警官は未だ唖然とする部下に声をかけて、“車体がひしゃげて、先端部分に大きな窪みが出来た大型車両”に背を向けて、自らの愛車へと向かって歩みを進める。
警官の鼓膜には、まだ動画内で響いた爆発音ともとれる大轟音が残響していた。
─────
5月6日 PM7:40
千葉総北大学付属病院 入院室502号室 咲山
大地「────なんだ? この状況……?」
うむ。意味不明である……。なんか、身体中が重たいと思って目を覚ますと、見慣れない天井が広がっていて、やたらと病院臭い匂いが広がっていた。
状況を呑み込め無かったので、身体を起こそうとしても体全体に重みがかかって起き上がれないし、何より背中に迸る痛みに顔をしかめてしまった。
仕方ないので、首だけを必死に動かして体の重みがなんなのか確かめてみると……。
友希那「すぅ……すぅ…………ぅぅ……だ、いち…………」
可愛すぎですか? 友希那先輩─────って違う!
なんで左腕に体重かけてくるんですか!? てか、なんでここにいるんですか!!? 柔らかくて温かいです!!(暴走)
友希那「ぅぅん……」
大地「ッッ!!!」
ヤベェッッ!!! 今チラッと胸元が見えてしまった気がするぅうぅうううう!!!
慌てて視線を右にズラすと……
蘭「だい……ち………ぅみゃ………だ、いじょ……う、ぶ…………すぅ……」
大地(ギャァァァァァァァァァァッッ!!!! み、美竹ぇええぇえええええぇぇええぇえぇえぇえぇえええええッッ!!!)
何この可愛い生物!! 持ち帰り─────ゲフンゲフンッッ!!!
そうじゃねぇ!! なんで美竹まで俺の右腕に抱きついてんだよッッ!!!?
何!? 御褒美!? なんで!? 俺、なんか裏山な状況になる善意になる事しましたかッッ!!!? ありがとうございますッッッ!!!!
蘭「……すぅ………ぅぅ〜…………」
大地「っ!!」
ちょっと待てぇえぇええぇえぇぇえぇ!!!!
顔を近づけるなぁぁああぁぁぁぁぁあッッッ!!!!!
いつのまにか迫る顔。僅か数センチで唇同士が重なってしまう。
香ぐわってくる女の子特有の甘い蜜の匂い……。シャンプーの質が元々違うのか、将又、生まれた時点で良い香りを纏う運命だったのか……。どちらにせよ、脳がクラクラして流されてもいいやってな─────ら無いよぉぉおおおおおおおおお!!!
ササッと顔を背けて、全力で事故キスを回避ッッ!!!
アブッネェェエエェェエエエェェッッ!!!
本能に流されて、ファーストキッスを捧げるとこだった!!!
美竹だって、きっと俺みたいな奴にキスなんてされたく無いはずなんだ!!!
こんな形で唇を奪うなんて出来るわけねぇだろ!!!
しかし、ここまで板挟みだと、もしや俺に逃げ場はないのでは?
状況を再確認。
左腕→友希那先輩 右腕→美竹
2人とも強く抱きつきながら眠っている。
何故か背中に痛みがあり、動けない。
あかん……。詰みやん……。
下手くそな関西弁使ってまうわ……!!
クソッ!! こんな裏山な状況を誰かに見られでもしたら、俺の評価が墜r─────「大地、起きてるかー?」
大地「……( ゚д゚)」
空「……(゚ω゚)」
空「ごめん、取り込み中だったか( ´ ▽ ` )ノ いやいや、スマンな!! それじゃあ!! オレ、ナンニモミテナイカラ……ゴユックリ(=゚ω゚)ノ」
大地「待ってぇえぇぇぇええええええええぇぇええぇええええッッッ!!!!∑(゚Д゚) マジで待ってぇえぇええええぇぇぇ!!! 誤解だぁぁぁぁ!! って、イッタァァァァァ!!! 背中痛ぁぁだぁぁ!!!! だ、だれか、ど、ドクターッッ!!!? へる、ヘルプー!!!!」
友希那「ぅぅ〜んぅ……大地、煩いわ」ゲシッ!!
大地「ガァッ!?」
蘭「黙れ、大地……」ガツンッ!!
大地「ブベシッ!?」
いや、お二人さん!! 唐突な暴力やめて!! 安眠妨害したのは謝るから殴り続けるのやめて!! そろそろ落ち─────(チーン……)
─────
担当医「ふむ……。本当に君は人間かね? たった数時間で此処までの回復力……。早ければ明々後日には退院可能となるだろう……」
大地「ちょっと待って。貴方、ブラックジャ─────」
担当医「何を言っているんだ? ワタシは間 白男だ。あの漫画とは全く関係ない。ちゃんとした医師免許も持っている」
大地「白男って、一文字だけ違うだけじゃ無いっすか!!! 『黒』が『白』になっただけで見た目まんま─────」
担当医「傷口は閉じているし、院内なら、歩き回ってもらって構わない。ただ、必ず看護婦さんか、御家族、もしくは友達などの同伴者には同行してもらうように……」
大地「無視っすかッッ!!! 医療費は保険でおりますか!!? 本当に医師免許持ってますよね!!? ウチに法外な料金なんて払えませんよ!!?」
担当医「さ、今は大人しくベッドで眠っているといい……。ワタシは今し方到着したという君の両親と料金プランについて話し合う必要があるのでね」
大地「おーい!! 先生っ?! 先生ぃぃぃぃ!!!? 」
─────
大地「あ、あはは……。金が、金が消えていく……。 俺の財布は飛んで行く〜……。何処までも高く、高く〜……」
下手くそな歌を作って歌いながら、入院室の窓外を憂鬱気味に眺める。
新緑芽生える木の上にはスズメがちゅんちゅんと囀り、俺をバカにしてくるようにしか見えてこない。
クソが!! 俺はこんなにも不憫な思いをしてるってのに!! コイツらはのうのうと生きて囀りやがってよぉぉぉぉおおお!!!
そういえばと、今朝の友希那先輩と美竹を思い出す。
何故こんなにも関係ない事が思い浮かんだのかは、分からないが……。ずっと、頭の中で過ってくるんだから、仕方がない。
─────
友希那『野球で頂点を取るんでしょっ!? なら、危ない橋を渡るのはやめなさい!! こんな、こんな事……もう、しないで……!』
友希那先輩、泣いてたな……。普段は仏頂面もいいところなのに、ああやって感情表現が豊かだから、尚更困るんだよ。本心で泣いてくれてる事が分かるから。俺の事を本気で心配してくれてるのが分かるから……困る。
─────
蘭『なんで、アンタが辛い目にあう必要があるの!? アンタはもう、アタシの“いつも通り”に入ってるんだから、もう……無茶な事はしないでよ……。アタシを……置いて、いか、ないで……』
美竹、それは殆どプロポーズだろ? そんなつもりないんだろうけど、テメェは贔屓目抜いても飛び抜けて美女なんだから、んなこと言うなよ……。惚れちまうよ……。だけど、テメェはもっと大切な物を大事にすべきだ。
俺なんかに付き合うより、もっと、周りを見て助けてもらえ……じゃ無いと、テメェ等の邪魔してるみたいじゃん
─────
大地「……」
なんで、俺なんかに彼女達は優しくできるんだろうか?
自分の在り方と向き合い切れる彼女達とは違って、“俺”は自分が何なのかすら分かっていない半端者。
目指すべき道だけを歩む傀儡なのだ。定められた役目を全うする事でしか、“俺”は“俺”を証明するしかない。
相入れない存在の俺が、彼女達に優しくされる道理は無いのに……。
大地(っ……痛っ……)
右の掌に鈍痛が走ったと思い、見てみると、何時の間にか力を込めて握りしめていた。
流石に、ちゃんと手入れしているから漫画のように爪が食い込んで血が滲んだりはしなかったけれど、やはり力を込めすぎると圧迫されてそれなりに痛い。
大地「はぁ……。止めだ、止め! こんな情けない事考えてる暇があったら、どうにかして次の試合に出て、結果残す事だけを考えておくか……。最悪出れなくても、資料ぐらい目に通して、帯刀先輩や宗谷にデータをまとめたやつぐらい渡せばいいだろ」
よし! 思い立ったが吉日。
すぐにスマホを取り出して、空に連絡を入れようとした時に……。
コンコンコンコンッ
4回か……。つまり、俺と初対面で礼儀を示さないといけない人物が、来たって事。まぁ、そろそろ“そういう関係”の人が来るんだろうなー。とは思ってたけど、まさかこんな時に来るとは……。俺のやる気を返して欲しいもんだね。
と、一種の諦観をしつつ、スマホをカバンの中にしまってから、扉に向かって返事をして中に入ってもらうことにした。
大地「どうぞ。鍵は空いてます」
警官「そうかね……。では、遠慮なく入らせてもらうよ」
部下「ちょっと! 目黒さん!! そんな無遠慮な入り方は─────」
大地「いえ、気にしないでください。初対面とはいえ、貴方がたが目上である事に間違いはありませんから……」
大地「それと、早く要件を済ませていただければ構いません。警察の方達が、只の一般人で入院中の僕に何か御用ですか?」
少し睨む形で警官の人たちを見る。
品定めとしては、彼等が俺に悪意を持って近寄ってきているわけでは無いだろうが、冤罪をかけられるというケースは近年稀にある。
警戒しておくに越したことはないのだ。
警官「ほぅ。小僧、儂等を品定めするかい……。随分、肝が座ってるじゃ無いか。儂の課にも、これだけの若手が居れば文句ねぇんだがなぁ……」
大地「随分、気さくですね……。どうせ、昨日の事故の件でしょう? アレなら、目撃証言とかで聞き出した事実と何ら変わらない筈ですよ? 今日のニュースでやってた内容と一緒ですから」
実際、駆け抜けて少年を抱え込んだまま、アスファルトの上を背中から滑り、その為の背中を擦り傷だらけにし、火傷を負ったのは間違いない。
後一つ、重大な事は伏せられていた気もしたが、俺の知ったこっちゃ無い。
ただし、次いで警官のおっさんが出してきた物品に俺は吹き出してしまう。
大地「ブフッ!!」
警官「『咲山 大地』……羽丘高校1年で野球部の黄金コンビの片割れ。確か、世間様には【大樹】なんて言われて、騒がれてるらしいな……。で、そんな奴が居眠り運転していた大型トラックに向かって子供を助けるためにボールを投擲。そのボールがこれだ……。更に、そのボールの破壊力は正にランチャーだ……。車体が完全にへしゃげてやがった……」
大地「……なんのことですかね? “俺”には理解できません」
警官「どうやら、本当に記憶がねぇみてぇだな……。けど、なんとなしに予測はついてたって顔か……。プライバシーに影響するからあんま人の事を探りたくはねぇんだが、悪いな……。コッチも仕事なんだわ。お前さんの『体質』については、“2つ”とも別の担当医から聴いてる……」
大地「……ふぅ……でしょうね? それで? “俺”では無く、“ボク”に話が聞きたいんですか? その当事者である、“彼”と話がしたいって事ですね」
俺の返答に警官は満足げに頷く。
警官「そういうこった……。話が早くて助かるよ。当事者であるのは、“お前さん”もかもしれねぇが、大凡のことを知ってんのは“ソイツ”だろ? “ソイツ”に話を聞くことが一番手っ取り早いってわけだ」
大地「それが妥当でしょう……。けど、悪いんですけど、今のところ“ボク”と入れ替わるトリガーは無いんで、多分無理ですよ? その辺の事は教えてもらってないんですか?」
部下「と、トリガー?」
警官「あん? そんなもんがあんのか?」
どうやら、2人とも聞いてないようだ。まさか、あの人にそんな気配りが出来るとは……。
逆の意味で感激だわ。
大地「えぇ。ですが、そこは掘り返さないでください。正直、話してて気持ちのいいことではありませんし、探られていいものではありません……。ただ、何も無しなのは其方としても困った事になるでしょうから、“俺”が予測立てた真相をお伝えします……。それで構いませんか?」
そして、俺は2人が不満そうな顔をしつつも、頷いたのを確認して予測立てた殆ど真相であることを伝えて、その日はお役御免となった。
ついでに、上司っぽい警官の人からサインを強請られた。
どうも、娘がファンらしい。貰って帰る時に嬉しそうに抱え込んで帰宅してった。どうにも、娘と妻から下バサミにされて虚しそうだった。
大地「……」
そして、誰も居なくなったことを確認してから、物陰に隠れている2人に声をかける。
大地「リサ先輩と、羽沢か……なんとも珍しい組み合わせだな……。それで? 何処まで話を聞いてたんですか?」
リサ「─────大地、答えて……。警察の人が言ってた2つの『体質』って何?」
大地「此方の質問は無視か……。それにそんな事聞いてなんになる? 第一、俺にあるのは至って普通の能力だけだ、隠すも何も無い」
つぐみ「咲山くん……答えて。私達に何か隠してる事があるのはわかってるんだよ?! なんで、今更になって隠す必要が─────」
大地「ねぇよ。隠す必要はねぇんだよ……。だけど、知ったところで何も変わらないし、どうもならない。貴女達が思っている以上に『根は深く無い』問題だ。それでも、突っ掛かれるとキツイんだ……っていうのを、この前、美竹や紗夜先輩にも話した事がある……」
リサ「紗夜と、蘭に……?」
大地「殆ど、事故みたいでしたけどね……。ちょうど、2人に『体質』での『代償』を見らたんですよ……。後は、話したくはありません。あの2人から聞いてください」
その後、暗く落ち込んだ俺を気遣って、2人は用意してくれていた弁当と、コーヒーを側において、その場を去ってくれた。
2人が行ったのを確認した後、可愛い包みで包まれていた色取り取りの弁当と、ホットでも大丈夫なポットの中にあった暖かなコーヒーを大人しく胃袋に入れていく。
多少、気分が落ち込んではいたものの、冷めても美味しく煮付けられている具材たちに舌鼓をうち、暖かくて香ばしいコーヒーを啜る。
最後にデザートとして作ってくれていたのであろう、クッキーを食べて、それをコーヒーで流し込んだ時の味は忘れない。
甘く柔らかなクッキーと、暖かくてマイルドな甘みを持つコーヒーは─────
─────涙が出るほど、苦かった……。
絡みがムズイ!!
キャラがブレブレで申し訳ない!!
ほんと、語彙力無い!!!
毎度毎度、申し訳ない。
次回・大地は不滅。空は天神。蘭はカワユス。
ヒロインは何処から選ぶべき2
-
アフグロ
-
それ以外は以前の集計結果から選択します