Stand in place!   作:KAMITHUNI

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メタ発言になっちゃうけど話を進めたいからバスケいきなり決着

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

 

観客「またダンク決めた!」

観客「羽丘一年5番、成田のスーパーアリウープが止まらない!」

観客「第一クォーターで何本目だよ、アレ!」

 

 

ピィーッ!!

 

 

審判「チャージドアウト、花咲川2年」

 

 

観客「第一クォーターラスト1分半で26-21で羽丘一年リード」

観客「ヤバくない? ウチの2年チームって5人ともバスケ部レギュラーでしょ?」

観客「けど、とんでもないアリウープに頼って得点してるから良い感じに見えるけど、中盤以降5番を対策されると厳しいかもよ」

 

 

花咲川二年ベンチ

 

 

佐伯「1番と5番のコンビ、そろそろ止めないと不味くない?」

貴山「攻撃力が桁違いだからな。でもあんな素人紛いのプレーが終盤まで続くとは思えないな」

清水「とはいえ少々やられ過ぎだ。あのコンビから他三人が勢いづいてくる可能性があるぞ」

郷田「こっちの攻撃面でも徹底して1番が櫂をマークしてて攻撃のレパートリーを減らされてる。これだと素人とはいえ、慣れられてきてもおかしくはない。わかってるな?」

 

 

櫂「……わかってるよ」

 

 

(バスケにおいてPG対決は、ある意味試合の流れを左右するものといえる。それはゲームメイク云々含めてチームの士気に関わってくるからだ)

 

 

(咲山は、序盤からガンガンプレッシャーを与える嫌らしい守備を本能で展開してくるあたり、凄い試合勘を持ってるのは分かる)

 

 

(本当に初心者なのか……? アイツ……)

 

 

悔しそうに歯噛みして、大量の汗を噴き出す大地を睨む。

 

 

(そっちがその気なら、お望み通りやってやるよ。こっちだって負ける気はさらさらねぇ)

 

 

闘志を漲らせた櫂は、ギラギラと眼を細め、更なる凄味へと昇華させた。圧倒的存在感、というべき圧力にチームメイトでさえ慄いた。

 

 

 

 

羽丘1年ベンチ

 

 

鈴木「お前らスゲェな! バケモンみたいなプレーすんじゃん!!」

空「いやいや!! それほどでもあるな〜!」

田中「自惚れてるぅ〜」

 

 

高山「大丈夫か? 咲山」

大地「ん? あぁ……。大丈夫だ」

高山「……」

 

 

(凄い汗だ。そりゃあ、世代最高峰の櫂をマークし続けて、あの無茶苦茶な速攻を成り立たせているわけだから相当な疲労だろうけど、それにしたってこの汗の量は異常─────)

 

 

まさか、と高山の脳に嫌な予感が過った。蒼ざめた顔、何かを堪えているような表情、尋常ならざる汗量、激しい運動量での蓄積された疲労……そこから導き出される答えは─────

 

 

 

高山「……お前、もしかして─────」

大地「高山」

 

 

言わんとすることを言わせない大地。その表情は死にかけなのに確固たる意志を孕んでいた。

 

 

大地「頼む─────」

高山「!?」

 

 

何を頼むというのか。と、思った。だが、わからないわけではない。わかっているがわかろうとは思えないだけ。

 

 

ここで全員に大地の容態について指摘すれば、大地の苦痛を消すことができるかもしれない。本人は望んではいないだろうが、それが最善だ。

 

 

しかし、この眼は本気。強者だけが持ち得るホンモノの闘気。それが咲山大地の瞳に宿っていた。

 

 

高山「─────」

 

 

呑まれた。大地の激情渦巻く熱き魂に高山という男は見惚れたのだ。

なれば、返答は決まっていた。

 

 

高山「……無理だと思ったら止めるからな」

 

 

そう言うしか出来ない。

 

 

大地「おう」

 

 

大地は苦しいだろうに、微笑みを浮かべた。

 

 

これが成田空という【神童】とコンビを組む者。

 

 

これが絶対不倒の【大樹】。

 

 

これが咲山大地という男の性根だと、高山は感じ取った。

 

 

 

 

─────

 

 

第二クォーター始まり─────

 

 

試合の流れは完全に羽丘1年に傾いている。番狂わせが起きるのでは、と球技大会に足を運んできたギャラリー達はそう期待していた。

 

 

だが、そんな熱視線の中、ボールを運ぶ櫂だけは静かな冷気を纏っていた。

 

 

それはチームメイトを含めた、コート全域に位置する者全てに異変を感知させた。

 

 

「っ!!」

 

 

ダメだ。そう直感した大地は鬼気迫る勢いで櫂にマークをつける。

 

 

「遅い─────」

「なっ……」

 

 

櫂がドライブを入れてきた様子を見て、大地が対応しようと身体を入れようとした瞬間、目の前から櫂が消えていた。

 

 

バスンッ

 

 

気付けば、いつのまにかレイアップでゴールをもぎ取られていた。

 

 

鈴木「さっきまで抑えこめていた咲山が、こんなにあっさり抜かれるなんてて……」

空「おいおい、バスケで『その領域』に入るって、いよいよ漫画じゃねぇーかよ……」

 

 

唖然とする者たちを他所に、空は櫂の状態に心当たりがあるように失笑する。

 

 

櫂「……第一クォーターでオマエ達の実力はわかった。正直言って規格外だったよ」

 

 

背を向けながら静かに話す櫂。そして、生唾を呑み込む大地達。

振り向き返った櫂の眼は燦々と火花を散らしているようで、ギラギラと鈍く光っていた。

 

 

櫂「だからこそ、オマエ達を本気で叩き潰すことにしたよ。覚悟はいいか? 咲山……勝つのは俺だ!」

 

 

櫂は不気味な微笑いを浮かべて、強く言った。

 

 

空「『ゾーン』!?」

大地「……望むところだ」

 

 

櫂が『ゾーン』へ入った。

 

 

 

第二クォーター

羽丘 34-65 花咲川

 

 

 

ブゥーッ!!

 

 

第二クォーター終了時点で、スコアが大きく開いていた。

 

 

圧倒的なまでの櫂。そして、櫂のパスに触発された四人も同様に実力を遺憾なく発揮し始め、羽丘一年を呑み込んでいく。

 

 

同時に大地の動きも衰えを見せる。櫂のドライブに反応すらできずに抜かれる。繰り返し何度も何度も……。

 

 

空(おかしい……)

 

 

空は大地の動きに疑問を持つ。周りの観客や生徒からすれば、なんの疑惑も抱かぬ当然ながらの出来事だ。

 

 

けれど、ほんの数ヶ月の付き合いとはいえ相棒としてバッテリーを組む空には、今の大地が明らかに不自然だと悟った。

 

 

空(あの大地が、『ゾーン』に入られただけであそこまで惨敗し続けるものか?)

 

 

空は、凄まじい汗を吹き出し血相の悪い大地を見てそう思う。

咲山大地とは強敵でも怯まず、されど猪突猛進で進むのではなく、確たる根拠と理念を持って組み立てた戦術で相手を打ち負かす。そういう男のはずだ。

 

 

それが今ではどうだろうか。種目別とはいえ、櫂に手も足も出ていない状態である。それも苦しみ捥がくように力任せなプレーで、そこに理論など微塵もない。

 

 

これではまるで理性のない獣となんら変わらない。

 

 

空(まさか、あいつ─────!)

 

 

そして、あの鋭くも何かを堪えた瞳を見て、空は確信に至る。

 

 

─────背中の怪我が開き始めているのだ、と……。

 

 

 

観衆も一様に期待感が薄れていき、次第に蹂躙が始まるのだと思った。

 

 

それは、大地と櫂の戦いの主因ともいえる白金燐子も同様である

 

 

やはり、経験の差、実力の差、才能の差。これらはそう簡単に覆るものではない。

 

 

直向きにバスケの才能を育んだ櫂と、所詮は素人に毛が生えた程度の大地では天と地の差が如実にあった。

 

 

この時、負けている側の心情を、燐子はよく理解できる。

 

 

“絶望”

 

 

頭が真っ白になって、自分が何をしているのかすらわからなくなる。泥水に沈んでいくような感覚に呼吸すらままならなくなるのだ。

 

 

白金燐子はそれを良く知っている。なぜなら、そういった経験が実際にあるから。小学生のピアノコンクール。練習してきた曲を多くの観衆の前で突然弾けなくなった。それは人ならば誰しもが起こり得る過度の緊張から生まれた失敗だった。

 

 

だが、燐子は小学生で立ち直ろうにも塞がりようのない心の傷を負ってしまった。

 

 

Roseliaと出会うまで、彼女はピアノや音楽に対して臆病にも逃げ惑っていた事実があり、それは今でも時折、悪夢としてやってくる。

 

 

だから櫂のような熱くまっすぐな男性に迫られることは燐子にとって良き機会なのかもしれない。それでも前を向け、と、オレの背中についてこいと言わんばかりの高圧的な態度についていくことができるだろうかという不安が強い。真っ直ぐ過ぎる彼に、燐子は怖気ついているのだ。

 

 

櫂「─────それにしたって、白金さんも可哀想だな」

 

 

突然、コートにいるはずの櫂の声が聞こえてきた。人々の喧騒で聞こえないはずの彼の声だが、どうしてかコートから鮮明に聞こえてきたようだ。

 

 

ダムダムとバスケボールを華麗に突きながら、燐子を憐む。

 

 

櫂「オマエのような野性的な男と、彼女は釣り合わない。彼女には真っ直ぐで常に前を向きながら引っ張ってやれる男が良いに決まっている」

 

 

鋭い眼光が大地を射抜く。必死にディフェンスを展開しながらも、顔色は蒼く動きに余裕がない。

 

 

その相手は自分だと言わんばかりの言い方であり、実際そのように言っているのだろう。

 

 

まるで勝負の行方を悟ったかのように余裕を見せつける櫂は、平静のまま話を続ける。

 

 

櫂「自己顕示欲の強いオマエがお淑やかな白金さんの彼氏なんて、そもそも務まるわけないんだよ」

 

 

別れろ。そう言外に言い放った櫂の表情は、どこまでも熱情に染まっていた。

あぁ、あの眼だ……と、燐子はたじろいだ。櫂のあの不可能の壁が全てないと言い切ったような、真っ直ぐすぎる瞳が燐子は苦手だった。

 

 

純心で無垢。ぶつかるべき壁はなく、ただ開けた空間で気ままに生きる彼の姿に、燐子は合わないと心底から感じてしまっている。

 

 

嫌悪しているわけではない、むしろ彼の真っ直ぐな姿勢は好意的だ。けれど、あの愚直が過ぎるご都合主義は、果たして燐子に歩み寄ってくれるだろうか。くれないだろう。彼はそう言う人なのだ。

 

 

喉が引き攣った。

 

 

今度は自身の意思とは関係なく我勝手に日向に連れ出されると思うと、過去の悪夢が脳裏を過る。

 

 

また、あの時のような無様を世間に晒してしまうのではないかと言う、未だ見えぬ過度のプレッシャーが彼女を襲っていく。

 

 

大地「……テメェが、俺のことをどう思っていようが心底どうでもいい。だがな、白金さんの心は全部読みきってるぞ、みたいな澄ました顔をしてんじゃねぇよ」

櫂「な!?」

 

 

膝を震わせながら口を開いた大地に、櫂は瞠目する。

 

 

大地「誰かが率先して彼女の前を走って、手を引いてやる方がいい……なんて、誰が決めた。彼女本人が本当にそう望んで口にしたのかよ……」

櫂「言ってはいない……けど─────!」

大地「“けど”……なんだよ。彼女の気持ちを考えれば当然そうだろう。なんて言うわけじゃないだろうな」

櫂「!?」

 

 

図星を突かれた櫂は一瞬だけ、誰にも気づかれないレベルでドリブルに歪みが生じた。

 

 

大地「もしそう言うつもりだったんならオマエ、俺のこと言えないぐらいに自己顕示欲の塊だぞ」

 

 

大地は酷く憔悴しきった表情のまま言った。

 

 

大地「オマエが白金さんに告白した時、俺は心底疑問に思ったよ。どうしてあんな公衆の面前で告白するのかってな」

櫂「……そ、それは、彼女を偶然本屋で見つけて、思わず─────」

大地「違う。オマエはチャンスだと思ったんだ。白金さんの臆病な性格を知ってて、わざわざそんな人通りの多いところで告白して、断り辛い状況にしようとしたんだよ」

櫂「ち、違う!」

大地「違わねぇよ。そりゃあ否定的にもなるよな。なんたってオマエにはその自覚がねぇんだからな」

 

 

ズバズバと心理を突く大地の言葉に、櫂は揺さぶられていく。「ゾーン」は解け始め、プレーに対する集中力も散漫だ。

 

 

大地「とにかく、俺は、そういう奴が同族嫌悪ってやつで、自分も含めて大っ嫌いだ」

櫂「しまっ─────!?」

 

 

感情剥き出しのプレーで、とうとう大地が櫂からボールを奪う。

ズルや卑怯と蔑まされようとも、構わない。心理戦だって立派な勝つための手段なのだ。たとえ謗られたとしても文句だけは言わせない。

 

 

大地「彼女には彼女なりのペースってもんがあるんだよッ!! オマエに手を差し出してもらわなくたって、彼女は自分のペースで前向いて歩いてんだ!」

 

 

素早くドライブ。速攻だ。

 

 

されど、腐っても櫂は世代最高峰のプレーヤー。すぐさまターンオーバーして、大地の前に現れる。

 

 

櫂「咲山ァァアァァア─────ッ!!」

 

 

櫂が吠える。

 

 

大地「それでもテメェは、自己満足のためだけに彼女の前に立とうとするなら、まずは─────」

 

 

ダンッ!! 強く地面を両足で蹴り上げて高く跳躍する。櫂も遅れて飛ぶ。櫂の腕と大地が持つボールが空中で鬩ぎ合い、数迅の間だけ拮抗する。

 

 

だが、その拮抗はすぐに崩れ去る。

 

 

櫂「なっ!?」

 

 

櫂の身体が落下を始めた。しかし、大地の身体は依然として空中に滞空し続ける。

そしてギリギリッと鬩ぎ合っていた、攻防は大地が櫂の腕を押し切り、

 

 

ズッッッガァァアアァアァアァァァアァァアァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンゥゥゥゥッッ!!!!

 

 

リングにボールを叩きつけた。

 

 

大地「─────その腑抜けた思考をブッ飛ばすッッ!!!!」

 

 

王者の鍍金を剥がす、大樹の一撃が炸裂した。

 

 

 

ワァァァァァァァァァァア!!!!

 

 

180に届かない大地の一撃に会場が沸く。

それも世代最高峰のプレーヤーのブロックを突き破ってだから尚更だろう。

 

 

大地「はぁ……はぁ……ぁが……!!」

櫂「……っ」

 

 

(俺が、コイツに押し負けた……? 経験値でも実力でも勝っている俺が─────こんな素人に)

 

 

櫂は頭が真っ白になった。

 

 

バスケ素人である大地のセンス任せのダンクシュートに、経験者で実力者でもある自分が力負けしたことがショック過ぎたのだ。

 

 

大地「……っ」

 

 

(痛ぇ……傷が開いてやがる)

 

 

大地は傷口が再度開き始めたことで、背中に激痛が奔る。しかし、その苦痛を表情に出すことはなく、ただ歯を食いしばることだけで必死に堪える。

 

 

大地(苦痛を表に出すな。痛みは秘めろ。チームの士気に影響が出るぞ)

 

 

鬼気迫る内心に対し表面上は平静。

恐ろしさすら覚える静けさに、空は悪寒を感じた。

 

 

その後も集中力を欠いた状態でプレーする櫂に応じるように、31点差あったはずのスコアは徐々にけれど如実に縮まっていく。

 

 

そして、大地の渾身の一撃に呑まれた櫂は精彩を欠いたままプレーに集中できるはずもなく、あえなく同点を許し、第四クォーターラストプレー……

 

 

櫂「なんでだよ……」

 

 

歯噛みしながらボールをキープする大地を睨みつける櫂。

 

 

櫂「今頃、オマエをバスケで虐殺して周りからの声援を糧に勝利の後押しをしているはずなのに……!」

大地「もういいか……」

櫂「くっ!」

大地「この辺が引き際じゃねぇのか。そのオマエのご都合解釈の引き際だよッ!!」

 

 

限界に等しい身体に鞭を打ってドライブを仕掛け、ついてきたところを見様見真似のキレのないロールで回避しようとする。

 

 

普段の櫂ならば容易に防げたソレも、いまや追いかけるのでやっとである。

 

 

櫂「これ以上オレの世界で好き勝手にさせてたまるかよォォ─────ッ!!」

 

 

「オレは負けない!! 負けちゃいけないんだ!! あの子に振り向いてもらうためにも、オレがオレであるためにも負けられないんだァァ─────ッ!!」

 

 

激情に駆られるまま、幼稚なプレーで大地のボールを奪おうと躍起になる。

 

 

大地「……自分だけの世界ってのはな、ただの逃げだ。もっと周りを見渡してみろよ、櫂先輩」

 

 

静かな、けれど確かな熱を持った言葉を放つ大地。その鋭い瞳からは強い意志を感じる。

 

 

大地「あの子に振り向いてもらうために負けられない……その言葉が本音なら今度は間違えるな」

 

 

「精々堂々、彼女に寄り添った場所で真正面から告白しろ。それでダメだったなら潔く散れ。それもこれも、今だからこそできる経験だろうがッ!!」

 

 

あぁ、そうか……。櫂はようやっと気がつく。

 

 

櫂(コイツは周囲の評価や失敗したときの過程といった曖昧なものなんて気にしちゃいない。コイツは、それすら己の足で踏破するだけの強さがある!)

 

 

獣の如しドライブを仕掛ける大地は、身体に残った力を最後の最後まで振り絞って全力を尽くす。

 

 

─────【無我の境地】、強制解放。

 

 

大地「それでもテメェが、まだご都合主義に塗れた状態でしか人と接せれないってんなら─────」

 

 

真っ向からの切り込みに、反応すらできない櫂は呆気に取られた。

あまりの衝撃的速さに横顔を思いっきり殴られた気分に陥る。

 

 

そして、大地は叫んだ。

 

 

大地「─────その腑抜けた思考ごと俺が全力でブッ飛ばすッッ!!!!」

 

 

 

郷田「行かせるかァァア─────!!」

 

 

ダンクシュートのフォームに入った大地に195センチの巨体を懸命に使ったブロックで圧倒する郷田。

 

 

大地「誰がオマエみたいな巨体とぶつかり合うかよ!」

 

 

ニヤッと笑う大地。その瞬間、郷田は自身の失態に気がつく。

だが気がついた時点で時すでに遅しだ。

大地は滞空しながらボールを郷田の脇下へとポンっと放る。

 

 

空「ナイスパスッ!!」

 

 

そこには待ち構えていた空がいた。

 

 

櫂「っ!! それでもまだ俺だって素人に負けられねぇーんだよっ!!」

空(速っ!? こいつ、こんな圧倒的な感じだったのかよ!)

 

 

だが、空はいつのまにかカバーリングされていた櫂に動きを御される。

 

 

空(ここはダサくてもフェイントでパスを入れる!)

 

 

ジャンプシュートの構えをとる空。それに反応するかのように、櫂はブロックに飛ぶ。掛かった。と、空はすぐ横に並んだ大地へと空中でパスを出す。

 

 

そして、シュートを放とうとして、

 

 

櫂「まだだぁ!!」

大地「っ!?」

 

 

櫂が着地して直ぐに横っ飛びで大地のシュートコースに入り込んできた。

ただそれでも、その不安定な態勢でのブロックならば素人である大地でも簡単に射抜ける。

 

 

ガクッと、脚が折れそうになる。フラフラとする視界に足元が覚束なくなる。

【無我の境地】のリミットに加えて、背中の傷に大きな激痛が奔ることで身体に限界がきたのだ。

 

 

大地(っ─────こんな時に!)

 

 

塞がれたシュートコース。近寄る敵チームメイトの気配。今にも崩れ落ちそうな自身の体。もはや到底抗う術など、大地一人にはない。そう、一人には……だ。

 

 

取られれば負けは確定的。けれど、決めれば勝つ。そんな重要な場面で素人が決められる確率の方が低いのは事実。

 

 

ならば経験者に頼ればいい。

 

 

そんな考えへと瞬時に至った大地は、霞む視界の中、内側に固まるコートの中、ただ一つの影だけがアウトサイドにいることを捉えていた。

 

 

大地「私情に巻き込んだ上に決められなくてダッセェけど……あとは任せたわ、羽丘バスケ部エース」

 

 

力無き笑みを向けて、影に会心のパスを出す。

 

 

全員『なっ!?』

 

 

空「た、たたた─────」

 

 

全員『高山ァァ─────!?』

 

 

全員の視線が美しいシュートフォームに入った影─────羽丘バスケ部エースの高山を捉えた。

 

 

まるで打ち合わせていたかのような、完璧な位置に構えをとっていたエースは絶好期を逃すまいとラストアタックに全てを掛けた。

 

 

高山(怪我してんのに、咲山は世代最高峰の選手と渡り合ったんだ……経験者の俺が何もしないわけには行かないだろうが!)

 

 

「シュッ!!」

 

 

スリーポイントゾーンから弧を描き放たれたバスケットボールは、スピンにブレがなく綺麗にリングに向かう。

 

 

これは経験者だけでなく、素人でもわかる。間違いなく外れない完璧なシュートだと。

 

 

バシュンッ!!

 

 

その予想通り、ボールが一度たりともリングに弾かれること無く突き刺さる。

 

 

直後、終了のブザーが鳴り響いた。

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