Stand in place!   作:KAMITHUNI

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久しぶりの投稿です!


咲山大地は最近になって、同種と鉢合わせる機会が多くて嫌らしい

眠たくなる昼時の休暇時間が終わり、もう一仕事。

 

 

最後の仕事は客席の最終チェックなため、ライブ会場に移動だ。

仕事仲間は風邪に魘されて来れないらしい。

 

 

となると、この仕事もまりなさんとの兼ね合い次第では一人で行わなければならい。

といっても、こういった清掃活動は一人の方が慣れていることなので、たいした問題はないのだった。

 

 

ただ、今はバンドメンバー達が最終チェックのリハーサルをしている時間帯なので、知り合いと顔を合わせてしまいかねない。

 

 

そうすると、後々説明が面倒になる。それは勘弁被る。

 

 

だから、最終チェックは時間を少しだけ逸らしてから行なおうと思った。

 

 

自動販売機で機を計らっていた俺に、先程のバイトPAさんから意外なことに声をかけられた。

 

 

瀧山「オメェ、新参者だよな。早く客席のチェックでもしてくれば?」

 

 

見れば、続々とPAやアシスタントの方々が休憩所にやってきては談笑に浸っていた。

背の高い彼だが、どうも同年代のように見えて仕方ないし、何処かで見た覚えがあるような……。

 

 

大地「うす。そろそろ向かいます」

瀧山「おう」

 

 

軽く会釈してその場を去る。

何か居心地も悪かったし、もう彼女達のリハも終わってるはずだから、さっさと仕事を片付けてしまおう。

 

 

そう思い、立ち去ろうとしたが。

 

 

瀧山「……なぁ、やっぱちょっと待てよ」

 

 

と、彼に呼び止められた。

 

 

大地「なんですか?」

 

 

大柄の男の声に、俺は立ち止まって返答する。

彼は比較的落ち着いた様子で、

 

 

瀧山「オメェ、成田のダチだろ」

 

 

と言った。

 

 

大地「はぁ……そうですが」

 

 

俺が訝しんで答えると、大柄の男は涼し気な顔のまま、口を開く。

 

 

瀧山「そうか。それなら、オメェからアイツに、俺に関わるなって伝えておいてくれや。正直、鬱陶しいんだわ、アイツ。頼んだぞ」

 

 

そう言って、大柄の男は興味の失せた目で俺を一瞥したのち、自販機に向き合った。

 

 

……あぁ。どこかで見たことがあると思ったが、この前、下駄箱で空と会話してたのはコイツか。

 

 

昨日、実は気になって空に尋ねたことがあった。どうにも、空は彼に御執心らしく熱心に野球部へ勧誘しているようだ。

 

 

空がそこまでいうのだから、何かを持っているのは確かだが、そこまで執着するのにはもっと深い理由があるのかもしれないな。

 

 

そう思えば、俺も俄然興味が湧いてきた。

 

 

大地「それは了承しかねるな」

瀧山「あぁ?」

 

 

俺の言葉に怒りの反応を示す彼─────瀧山といったか─────は、自販機から離れて俺の胸倉を掴む。

 

 

瀧山「オメェ……そりゃあどういうことだ……!」

 

 

瀧山は凄みながら問い掛けてきた。

 

 

大地「どうもこうも、そのままの意味だ。空は、俺が何言ったって止まんねぇよ」

 

 

それでも、俺は気圧されることなく返答する。

 

 

大地「アイツは無茶苦茶で猪突猛進な馬鹿なんだ。今更、俺の声一つで止められるもんじゃねぇ」

 

 

こちらも少し威圧的に話す。すると、瀧山の目が少々、警戒色を強く放ってきた。

 

 

大地「テメェが何を抱えて、空のどこを“恐れ”ているのかはわかんねぇけどよ……」

 

 

瀧山は拳を強く握りしめる。

その表情には、陰りが含まれていた。

そこに俺は、瀧山の手を振り解き、言った。

 

 

大地「─────もっとアイツに向き合ってみろよ」

 

 

瀧山。

こいつは間違いなく、何かを抱え込み、それを一人で捥がけるだけの力を備えた強い男だ。けど同時に、周囲にそれを打ち明けられない臆病な奴でもある。であれば、この異常ともいえる素行の悪さは肯ける。

 

 

最近は、よく同族嫌悪に魘されているような気がする。

 

 

瀧山「……ちっ。オマエも、アイツ同様ウゼェやつかよ……」

大地「おい、どこ行く気だ」

瀧山「便所だボケ。……さっさと仕事してこいよ」

 

 

俺が尋ねると、それだけ言って自販機で飲み物を買う事なく、とっととトイレのある方向とは真逆に立ち去っていく瀧山。

 

 

大地「……テメェも野球経験者なら空の球を一度見てみればいい」

 

 

そういうと、瀧山は反応を若干示して立ち止まる。

 

 

大地「イップスで元の球威や勢いはないが、そのボールにはちゃんと魂が篭ってる。だから、ちゃんと見ればわかるぞ─────成田 空がどう言った人間なのか、な」

 

 

俺は告げた。

すると、瀧山の横目からは確かな決意の篭った視線が向けられた。

もし空の球を見て心変わりがないのならオマエを全力でぶっ飛ばす、と言わんばかりの目。

そう思わせるだけの迫力があった。

 

 

……できればこの男には、俺が直接関与せずに、真っ直ぐ空に絆されて欲しかったのだが、ここまで不貞腐れた奴なら話は変わってくる。ここは、同種が出張ってもいい場面だろう。

 

 

瀧山「……考えておいてやるよ」

 

 

想いが通じたのか、一言だけ言って、瀧山は今度こそ去っていった。

 

 

数時間後。

 

 

ライブ会場では熱狂で埋め尽くされる。

彼女達の登場に酔い痴れる観客も少なくない。かく云う俺も、その一員だったりする。

 

 

彼女達─────Roseliaが出てきた瞬間、俺の思考は止まった。

全員、整った顔立ちで人を惹きつける容姿をしているが、それ以上に五人の気高く意志の強い双眸に、俺は見惚れてしまったのだ。

 

 

友希那「……『BLACK SHOUT』、行くわよ!」

 

 

その澄み渡った声が合図となり、俺の灰掛かった世界を一瞬にして蒼く気高い世界へと変貌させた。

 

 

熱狂的な視線を釘付けにする彼女達。その横顔をステージ脇という超優遇特等席で拝められるという貴重な体験を現在進行形でさせてもらっている、俺。

 

 

初めは、「会場入り始まったんだからさっさと俺を客席に戻せや」と、まりなさんに一喝するつもりでいたのだが、今回ばかりは見逃してやろうと思う。

 

 

むしろ、「グッジョブ」と心の中で讃えよう。グッジョブ! まりなさん。

 

 

瀧山「オマエ、彼女達のファンなのか?」

 

 

そんな愉悦感に浸っている中、なぜか隣に座ってる瀧山は憮然に問い掛けてきた。

 

 

大地「……そうだけど、なんだよ?」

瀧山「いや、随分楽しそうに聴いてるような気がしてな……特に深い意味はねぇよ」

大地「そうか」

 

 

適当に返した後、ふと疑問が浮かぶ。

 

 

大地「……てか、なんでここにいんの?」

瀧山「……知らん。月島の姐御が強引にここへ引っ張ってきたんだよ」

 

 

訊ねると、そう返してきた。

月島の姐御? まりなさんのことか……。

ん? 姐御?

 

 

大地「……そういうアブナイ趣味の人ですか?」

瀧山「ブッコロスゾ?」

大地「殺すなよ……!? だってさ普通は、姐御なんてヤクザみたいな呼称で女性を呼ばないだろ。だったら、そういう趣味のヤバいやつとしか考えらんないだろうが……それとも、本当に姉貴かなんかなのか?」

瀧山「チッ、あの人とはそんな間柄じゃねぇよ」

大地「じゃあどういう関係だよ?」

瀧山「……さぁな」

 

 

何やら訳ありなのか、聞かれたくないのか、顔を逸らして舞台に視線を移した瀧山の横顔は、どこか哀愁を感じるものだった。

 

 

その後、RoseliaやAfterglowの楽曲を一通り生で十分に堪能した俺は─────

 

 

ガシッ!! ミシシ……ッ!!

 

 

友希那「お説k……いえ、反省会には貴方も来るわよね? ちなみに拒否権はないわ」

大地「ちょっと落ち着きましょうか? 友希那先輩……とりあえず、俺の肩を掴むそのえらく力が篭った手を退けましょう。肩がもげちゃう」

友希那「貴方の肩事情なんて知らないわ。返答は、“イエス”か“はい”だけよ」

大地「古典的な選択肢封じですねッ!? あと、野球部の肩は壊しちゃダメ絶対ッ!!」

 

 

紗夜「平気ですよ。大人しくしていれば痛くありませんから」

大地「真顔で平静に言ってのけている貴女が一番物騒な物(鞭のようなロープ)を構えている事実が何より恐ろしいんですがッ!?」

 

 

リサ「アハハ! 大丈夫だって☆ ちょ〜っとだけ、お話しするだけだからさ?」

大地「口調は笑ってる感じなのに、顔だけ女の子がしちゃいけないヤツになってる今の今井先輩の言葉が信用できるわけがない……っ!! くそっ!? こうなったら白金先輩に助けを求めるしか……!?」

 

 

燐子「……既成事実既成事実既成事実既成事実既成事実既成事実既成事実既成事実既成事実既成事実既成事実既成事実─────」

大地「なんか呪詛ってる!? この人が一番怖えぇえええッ!!」

あこ「り、りんりーんぅうううううううッ!?」

 

 

─────こうして、Roselia面々の楽屋前で強制捕縛されたのち、打ち上げに強引参加させられるという謎の仕打ちに遭った。

 

ヒロインは何処から選ぶべき2

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