表現が難しいんです。はい。わかってください……(願望)
七回表
滝沼生徒「室池ぇぇえ! 頼むぞッ!! ここで一本打ってくれぇぇ!!」
滝沼生徒「室池先輩なら打てますよぉっ! ファイトですぅ!!」
羽丘生徒「我妻ぁ!! 奪三振ショーを続けてくれぇ!!」
羽丘生徒「我妻君ッ!! ファイトォー!!」
蘭「今日一番の応援……」
友希那「えぇ。言ってしまえば、この試合のターニングポイントは、一番打者から始まるこの回」
薫「一番バッターで、恐らく打撃能力に長けたサードの主将。彼がもつチーム内での影響力は絶大だからね。
もし、彼が初安打で出塁したということになれば、流れは一気に傾きかねないね。儚い」
リサ「しかも、六回裏だと相手エースは完璧に立ち直って三者凡退に打ち取られたことも考えると、トップバッターは必ず抑えておきたいよね」
友希那「この場面だからこそ、両者に求められるのは、【気持ち】と【繊細さ】。その二つが両立出来ている者が、勝つわ」
日菜「ま、ししょーならなんとかしちゃいそうだけどね!」
大地「さて、我妻君。わかってるとは思うけど、今日の君には、ある記録がかかっているのにお気付きかね?」
我妻「……まぁ、わかってるけどさ、そういうのって言葉に出したらダメなもんだろ。意識しすぎて腕振れなくなるとかでさ」
大地「たしかにな。でも、今のテメェなら大丈夫だろう?」
我妻「……」
大地「何があったのかは知らないけど、今日のテメェなら、大丈夫。それは俺が保証するし、もし駄目そうなら打たせて取ろう。だから─────」
「─────『我妻矢来』としての、最高のボールを俺のミットに投げ込んで来いッ!」
我妻「っ!」
大地「そんで、アイツの、空の横に……いや、追い越してみせろよ。矢来っ! 俺は待ってるからな。テメェが納得いく最高のボールを、あの場所でな」
我妻「っ! おう! 任せろ」
(アイツが、俺の名前呼ぶなんて初めてだよな? しかも、『我妻矢来』としての最高のボールを投げ込んで来いって……)
(期待、してくれてんだよな……)
(いや、違うか。咲山は、大地は最初から、俺のことを信頼してくれてた。だから監督に直訴してまで色々な試合で投げさせて貰えてたんだ)
(成田という強大な壁に挫折したのは数知れず、前に進んだと思っても突き放され、さらには自身が後退する始末も晒した)
(けど、その度に花音さんに励まされ、色んな人に支えられてきた)
(そうだ。俺の最高のボールの正体なんて、そんな単純なものじゃないか)
(俺の最高のボールは、いつだって誰かの為にあるのだから! 負ける訳にはいかない!)
陳「室池……」
陳から疲弊が混じった声音が、俺を呼ぶ。
振り返って、頼りになってきたエースの呼びかけに応える。
肩で息をして、頭を垂らす姿勢で座っている彼の弱々しい姿は、けれど闘志で満ちた目で体を竦ませた。
体力的に見れば、彼はもう頼りにならないかも知れない。
だが、彼の溢れ出る戦闘欲は増すばかり。
闘志だけで投げ続ける、エースを救ってやらなければならない。
室池「心配すんな。陳」
陳「ふん。心配? してないぞ」
室池「……」
陳「ただ、結果を残してくれ。とは言わん─────」
室池「─────お前らしさを出せば、必ず打てる。だから打て。そうだろ?」
陳「……ふっ。そうだ。わかってるならいい。いけ」
室池「あぁ、任せろよ。感覚で打つのは、俺の得意分野だ。ゼッテェ、塁に出てやるよ」
こうしてグラウンドで軽口を叩き合うのは、あとどれくらいだろうか?
もしかすれば、夏の最後まではやってるかも知れないし、今日この日をもって終了するのかも知れない。
けれど、主将として決めていることが一つだけある。
室池「……主将らしいことは、してやったことはないけど─────」
「─────このチームが、泣かないように、笑えるようにしてみせるのが、主将としてせめてもの務めだ。絶対に、こんなところで終わらせはしないっ」
滝沼高等学校ブラスバンド部:エル・クンバンチェロ
♩〜♬〜♪〜……!
滝沼高等学校応援団『勝て勝て滝沼っ! 勝て勝て滝沼っ!かっ飛ばせぇ! 瀧っ!』
羽丘学園応援団『押せ押せっ! 矢来ッ! 攻めろ攻めろっ! 矢来ッ!』
室池(ストライクコースは全部、ぶっ叩く!)
我妻(初球、大胆かつ精密に……! 甘く入ればやられる。けど、逃げちゃダメッ! 攻める)
審判「プレイっ!」
室池「かかってこいッ!! 一年坊ッ!! テメェに野球の怖さを教えてやるよッ!!」
我妻「野球が最後の最後まで怖いのは、とっくに知ってるよ─────」
大地(初球、アウトコース、ストライクからボールになるスライダー! コースは広く、高さは低くッ!)
我妻「─────だからこそ! 乗り越える価値があんだろうがっ!」
ビュゴォォォォ……ッ!!
室池(ストレート─────ッ!?)
大地(よしっ! 最高の高さとコースッ!)
矢来(だろっ!)
カククッ!!
ブォォーーーンンッッ!!
ズッバァァァァァアーーーンンンッッ!
審判「スウィングッ!! ワンストライクノーボールッ!」
室池(相変わらず当たんねぇー! クソ、笑えてきたぞ、生意気小僧ッ!)
大地(よし。今のでファーストストライク取れたのはデカイ。次は、コレ)
我妻(わかった)
近藤「室池さん、いいですよ!! バット振れてますッ! ガンガン行きましょう!」
立野「狙い球絞ってけよっ! お前なら打てるッ!!」
勝俣「お前なら出来るっ!! かっ飛ばせ! キャプテンッ!!」
室池(あぁ。わかってる。お前達の期待……全部聞こえてるよ)
室池「必ず、塁に出るからな……。待ってろ」
ヒュゥゥッ……!
ククッ!!
室池「な……ッ!?」
スッパァーーンンッ!!
室池(こ、ここで、スローカーブだと!? 新しい引き出しを、今出して来た?!)
審判「ットライークッ!! ツーストライクノーボールッ!!」
陳「この場面で、新球種か。あのキャッチャー、やってくれたな」
(これは室池の意識に突き刺さるッ!)
室池(くそッ!? やられた! 反応で打とうにも、今のカーブで全部タイミングを崩されちまった)
大地(これで、打者の壁は壊したぞ。一球外にハズして、最後は、コレで締めよう。現時点でお前が持つ最高のボール……)
我妻(……コクン)
室池(何が来る?! ウィニングショットの高速スライダー? 緩急を活かした球威ある直球? それとも、緩いカーブを続ける?)
ズッバァァァァァアーーーンンンッッ
審判「ボールッ! ツーストライクワンボールッ!」
室池(外一球、ストレートで外した? なら、最後はスライダーか? スライダーだよな? スライダーだ。間違いない。今日の俺は、コイツのスライダーにやられっぱなしだ。客観的に見てもスライダーで締めに来る)
我妻「貴方達にも、負けられない理由がある事は解ります。でも─────」
大地(来いっ! 今、テメェが持てる最高の球をここに─────)
我妻「俺たちにだって、負けられない理由はあるんだッッ!! 喰らえっ! 俺の最高のウィニングショット!」
大地・我妻((インコース高めへ渾身のジャイロボールッ!!))
我妻(俺の気持ちを乗っけて、いっけぇえぇええぇ!!)
ズッ───────────────
─────バァァアァァアーーーンンンッッ!!
室池「……っ」
審判「っ!! ットライークッ!! バッターアウトォオオッ!!」
大地「最高のストレート。ベストボールッ!」
我妻「っっ!! シャァァァァアッッ!!」
結城「我妻、ナイスボールだっ!」
笠元「最高やぞっ! 矢来ッ!!」
舘本「っ!!(グッ!)」
帯刀「やりやがったなぁーっ!!」
秋野「ははっ!! それじゃあ、やらかしたみたいだよっ!!」
ワアァァァアァァアァァアァァアッッ!
観客「こ、渾身のインズバで、好打者室池を三打席連続三振ッ!!!!」
観客「我妻矢来ッ! これで七回途中17奪三振ッ!! 驚異のルーキーが室池を完璧に封じたぞッ!!」
蘭「……声にならない」
友希那「なんという気迫……。あれは、本当に一年生?」
室池「……」
近藤「室池主将……」
室池「……すまねぇ……手が、出なかった」
近藤「っ!?」
(これで……これで、終わっていいのかよッ!?)
おや? 近藤のようすが……
ヒロインは何処から選ぶべき2
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アフグロ
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