ズッバァァァァァァアァァアァァアーーーンンンッッ!!
審判「スウィングアウッ!」
吉良(弟)「う、そ……っ」
(最後、ど真ん中だと思って振ったら高めの釣り球……)
(本気で浮き上がってるんじゃないかって疑ってしまうレベルだよ)
(そのノビははっきり言って異常でしょ……)
陳(選球眼に長けている元希が明らかな高めのストレートに手を出して空振り三振……)
(序盤から中盤に投げていたストレートとは全く別物だな。ということは、終盤まで力を温存してあの投球内容だったということか)
(こっちは初回からギア全開だというのに……ったく、末恐ろしい一年坊だ)
結城「ナイスピッチだッ! 我妻!」
帯刀「我妻ぁ! オマエサイコーだぁあ!!」
田中「ナイスピッチ!」
笠元「ナイピーやぞ! 矢来ッ!」
我妻「アザースッ!!」
空(もはや……)
雪村(ブルペンでの投球……)
吉村(やめて……)
我妻を除く羽丘投手陣(((ベンチで声出し応援してますッ!)))
片矢「……我妻の球数は?」
由美「八回終わって102球です。四死球0ですし、テンポも悪くありませんね」
大地(悪くはねぇけど、やっぱり球威を上げるとちょっとばかし制球が甘くなるのは直ってないな……)
(最終回、相手はもっと躍起になって点を奪いにくる)
(それこそデッドボール覚悟のインコース封じなんかやられると、一つのコントロールミスが流れを変えかねない)
(特にこの観衆による圧倒的アウェー感の中なら尚更だ。
矢来に任せるか、それとも他の投手に継投か……。
この大記録をより意識してるのは、本人や選手たちよりも、もしかすれば監督かもな)
ズッバァァァァーーンンッッ!!
田中「う……」
(これは入った、か……?)
審判「……ットライーク! バッターアウトォオオッ!!」
陳・不知火「「シャァアッ!」」
観客「【精密機械】の異名に相応しい最大武器である制球力が火を吹いたぁ!」
観客「最後はアウトロースレスレの一球で見逃し三振ッ!! 今のは流石に打てねぇな!!」
観客「さぁ! この守備の勢いのまま最終回の攻撃に繋げようぜッ!!」
観客「そういえば、次の打者って何番から?」
観客「え? 7番立野からだろ? 確か……」
観客「……最終回で7番が先頭打者って、おいおい今日の我妻から三人もランナー出したか?」
観客「あれ? そもそも今日の試合で滝沼高等学校からランナー出てたか?」
観客「「「……まさか?」」」
アナウンス『羽丘高等学校 シートの変更をお知らせします。
レフトの帯刀君に代わり、垣見君がレフトに入り、サードの村井君に変わって金田君がファースト、ファーストの結城君がサードに入ります』
『4番 サード 結城君、5番 レフト 垣見君、6番 ファースト 金田君。以上になります』
友希那「やはりバッテリーは変えず、守備固め……。完全に記録を意識した陣形を整えてきたわね」
リサ「うん。でもこれが矢来のプレッシャーに変わらないといいけどね」
蘭「この回を抑えれば、ウチの勝ち。我妻、いつも通りでいいよ」
モカ「いつも通りできればね〜」
立野(当てる当てる当てる……)
近藤「タチさんッ!! 頼むッ!! 塁に出てくださいッ!!」
吉良(兄)「タチィイィイ!! 塁に出れば何か変わるぞッ!! 俺らの分まで頼んだぞォオッ!!」
不知火「打ってくれタチィイ!!」
立野「打つんだ。絶対……こんなところで陳のピッチングを終わらせるわけには……!」
大地(やっぱりデッドボール覚悟のインコース封じか。これだけベース寄りに立たれると、アウトコースにも簡単には投げ込めない)
(普通ならな)
我妻(どんな小細工を擁したところで、俺の球がそう簡単に打たれてたまるかよッ!)
立野「っ!!」
ズッバァァァァァァアァァアーーーンンンッッ!!
審判「ットライーク! ワンストライクノーボールッ!!」
立野(コイツ……。最終回でも球威が……というか、ギアが数段上がって─────)
ビュゴォォォォオォオオ……ッ!!
立野(─────言ってるそばからデッドボールコースッ!! これにぶつかれば……)
ククッ!
ズッバァァァァーーンンッッ!
立野「ふ、フロントドア……だ、と……」
(このベース寄りに立った打席にもかかわらず、御構い無しのリスクボールを投げ込んできた……)
大地(ナイスボール)
我妻(おうよ)
立野(このバッテリー、どんな神経してやがる)
(せめてセーフティで揺さぶりをかけるしか方法がねぇ。けどやってみる価値は─────)
スッ……。
笠元「セーフティ!!」
結城「くっ!?」
金田「マジかよッ!」
立野(よし! サードとファーストの反応が遅れたッ! いけるっ!!)
大地(手も足も出ない相手に対しての奇襲セーフティバント。窮地に追いやられた打者の典型的な策略だな。けどツーストライクと追い込まれてからそれに挑む胆力は認めてやるよ)
(胆力は認めるが、それだけで決められるほど野球は簡単じゃないけどな)
ククッ!!
立野(なっ!? 外に逃げるスライダーッ!? ヤベェッ! 当てろッ! 当たれぇええ!!)
ガギャンンッッ……!
コロコロ……。
審判「ファールッ! バッタアウトォオオッ!!」
我妻「シャアッ! ワンナウトォッ!!」
立野「くそ……。クソクソッ!!」
「すまねぇ……。みんな……」
「なんも歯が立たなかった……」
不知火「まだだっ! まだ負けてねぇッ!! 諦めてたまるかッ! 塁に出ればまだチャンスはあるんだ!」
「迷わず振り抜けばなんか起き─────」
我妻「─────ねぇよ」
ズッバァァァァァァアァァアーーーンンンッッ!!
審判「ットライークッ! ワンストライクノーボールッ!!」
大地(コイツもインコース封じの構えで来たか。作戦が一辺倒ってのはそれだけ対処も楽だ)
(コイツからもサクッとアウトを稼ごう)
ズッバァァァァァァアァァアァァアーーーンンンッッ!!
不知火(なんだよ、このストレート……なんなんだよ、この全てを呑み込もうとする球道は!?)
ビュゴォォォォオォオオ……ッ!!
(コイツのストレートはここから一気に加速して更に浮き上がってくるッ! それを合わせれば……!?)
ズッバァァァァァァアァァアァァアァァアーーーンンンッッ!!
ブォォンッッ!!
審判「ットライークッ!! ツーストライクノーボールッ!!」
不知火(さっきよりもスピードが上がって……!? 投げるたびに球威が増してきてるっ!?)
(相手はプロじゃねぇんだぞッ!? ストレート狙ってストレートが当たらないなんて、そんなバカな話があるわけ─────)
ズッバァァァアァァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンッッッッ!!!!
不知火(え……?)
大地(痛……ッ)
審判「ットラクアウトォオォオオッッ!!」
不知火(最後のアウトハイ……見えなかった。
コイツのストレート、本物だ……)
黒服(スピードだけじゃない。私は途中からしか見ていないが、今日の矢来は制球力が高い)
由美(全108球中ストライクは83球という数字から分かるように、打者を相手にしてカウント有利に進められているのが究極のピッチングの主因)
片矢(そしてバッテリー間での息の合った投球に打者は必ず呑まれ、捩伏せられる)
滝沼生徒「勝俣ぁ! 頼むッ!! どうにかして室池に繋いでくれッ!!」
羽丘生徒「我妻ぁ! あと一人で完全試合だッ!! ここまできたらやっちまえよぉ!」
勝俣「ここまで好投してきた陳の投球を無駄にしてたまるか……! 必ず繋いでみせる」
我妻「あともう一踏ん張りだっ! 捩伏せてやる!」
友希那(パーフェクト達成まで、あと一人……)
「さぁ、貴方の本領を発揮する絶好の機会よ。世代最強捕手の名に恥じぬ能力を、私達に見せてちょうだい……大地」
大地(できないことに気を取られずに、
できることをやりなさい。
ジョン・ウッデン)
(あと一人を打ち取ることに全神経を注ぐのは構わない。けど優先順位の履き違えだけはしないことだ)
(最終的な目的は“勝つ”こと。完全試合は付属の記録に過ぎない)
(空なんかは簡単にやってのけてみせたが、あれは特別調子のいい日が続いたり、相手が絶不調or中堅クラスのチームだったからだ)
(矢来は、矢来。それを知ったから今のオマエがいんだろ?)
我妻(考えることはただ一つ。勝利のために相手を打ち取ること)
(そのために、この打者を抑える)
(次のバッターからは上位打線。ここまでは完璧に抑えてるけど、何が起こるかわからない。死に物狂いで点を取りにくるなら尚更だ)
大地(丁寧に行くのは構わない。だが慎重になり過ぎてカウントを悪くするのは論外だ)
(俺がテメェに求める理想像は、スピード、ムービング+コントロールの精度)
(大胆かつ緻密なピッチング。相手を捩伏せ、相手を屈服させる。無慈悲な投手)
シュッ!
勝俣(っ!?)
スッパァァアーーーンッ!!
勝俣(初球からスローカーブだと? 最後の最後で配球を変えてきた?!)
我妻(成田と雪村先輩……あと、吉村先輩。あの人たちの成長具合に常に置いていかれている気分になった)
(諦めを覚えたのも数知れず、失った希望も取り返せなかった)
ズッバァァァァァァアァァアァァアーーーンンンッッ!!
審判「ボールッ!! ワンストライクワンボールッ!!」
勝俣(インロー僅かに外れてボール……助かった。今のが入ってたら厳しかったぞ)
(このバケモノも所詮は人間だ。九回を一人で、しかも100球を超えて疲れがないはず無い)
(甘い球は必ず来るッ!)
ビュゴォォォォオォオオ……ッッ!!
勝俣(言ってるそばから真ん中のストレートッ!)
カクンッ!!
勝俣(っ!? 急激に沈んで─────ッ!?)
ブォォンッッ!!
ズッバァァァアーーーンンンッッ!!
審判「スウィングッ!! ツーストライクワンボールッ!!」
(これが例のフォーク系統の球……ッ! 途中までストレートにしか見えない軌道から一気に落ちてくるッ)
(こんなの見分けようが無いぞ……ッ!?)
大地(投手の疲労を考慮して打席に立ってるやつには真ん中から落としてやるのがミソ。甘い球には手を出しやすいからな)
(けどそれもオマエが実行してくれてなんぼだ。
さぁ決めるぞ! 矢来ッ!
最後は渾身のストレートをここにッ!!
最高の球を胸元に投げ込めッ!)
陳「勝俣ァァアッ!! 打ってくれぇええ!!」
勝俣(陳……。俺らがここまで野球をやってこれたのは、オマエがエースだったからだ)
(オマエは誰よりも真っ直ぐでストイックで、誰よりも野球に紳士的だった)
(不作の年だと言われた俺らが去年の夏や秋で勝ち進めたのだってオマエが投げ抜いてくれたおかげだ)
(だから感謝しても仕切れない恩を、ここで少しでも返せるのなら……)
(こい、モンスター。どんな球であろうとも食らいついてみせる。死に物狂いで塁に出てやる)
(塁に出れば室池が引導を渡してくれる。そうなれば俺らのエースが耐え凌ぎ、逆転のチャンスが巡ってくる)
(オマエらの思い通りになど、させてたまるかッ)
我妻(思い通りにならないことなんて、少し前から知ってたさ)
(【神童】の成田空と常日頃比べられて、挫折を知って、へこたれて……)
(正直、何度止めようと思ったか……。それでも俺がこのマウンドに立てているのは、周りの支えがあったから。花音さんがいたから)
(俺は少しでも成長できただろうか?
俺は少しでも成田達に近づけただろうか?
俺は少しでも大地に認めてもらえただろうか?
俺は少しでも花音さんに恩返しが出来ただろうか? 今なら楽しくマウンドで輝く俺の姿を見せられるだろうか?)
(それらはまだ分からない。けど─────)
ビュゴォォォォオォオオ……ッッ!!
勝俣(インコース高め直球!! 打てるッ!! 反応もできるッ!! 弾けッ!! 陳と俺らの未来を乗せて、ボールを捉えろッ!!)
ズッッッ────────────────────
────────バァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンッッッッ!!!!
審判「スウィングアウトォオオッ!! ゲームセットッ!!」
我妻(─────俺がやってきたことは、決して……決して! 無駄ではなかった!)
結城「完璧だっ! 我妻ぁぁ!!」
笠元「完全試合やでッ!! やるやんけー!!」
金田「矢来ぃぃい!! オマエ、サイコーだァァァァァアッ!!」
我妻「うぉおっ!? ちょっ!? 急に飛びかかってこないで─────ぎゃああッ!!」
由美(あの人たちはなにしてんのよ……)
ワァアァァァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアッッ!!
観客「羽丘高等学校っ! 背番号11 我妻矢来ッ!! 古豪・滝沼高等学校を相手に完全試合達成ッ!!」
観客「被安打0 四死球0 エラーも無し! そして奪三振数は驚異の24個!! 完璧な投球内容で最後はストレートで締めたッ!!」
勝俣(……捉えれなかった。わかってたのに、反応もできたのに、バットに掠りもしなかった)
「……っ! グゾッ……くっ…………ぅぅぁ……ッ!!」
「す、ま……ねぇ………ッ! すま、ん………ッ!!」
室池「……整列だ。最後は真っ直ぐ前を向いて挨拶に行こう」
吉良(兄)「うぅ……ぐ、すっ……ムロちゃんだって、前、向けてねぇ、よ……ぁぁ、ぅ、く……ッ!」
陳「……(終わった、か)」
(最後は完全試合を決められて終わった高校野球……けれど、後悔はない)
陳「胸を張って並ぼう。俺らは俺ららしい野球が出来た。誰が何と言おうとも、それは俺たちの誇りにすればいい」
「行こう。そして俺たちに勝った羽丘を称えよう」
審判「礼ッ!」
選手一同『ありがとうございましたッ!!』
室池「ぅ、ぐっ……ぁ、……ぐ、す…………お、れらの……分まで、勝ってくれッ! そんで、甲子園の切符を……つ、かんでくれぇ! 頼んだ、ぞ……ッ!!」
結城「っ! はい! 必ず掴み取ってみせますッ!」
陳「我妻矢来、咲山大地……」
大地「はい」
矢来「え? な、なんですか?」
陳「今日は完璧にやられた。完敗だ。二発の本塁打に、三打席連続三振を喫したのは、オマエ達が初めてだ」
「悔しいが認めてやる。オマエ達は俺たちより強かった。それだけだ……」
「……次も頑張れよ」
我妻「陳さん!」
陳「? なんだ?」
我妻「……
陳「っ!?」
大地(我妻、オマエ……)
(陳の事情を知っててもそんな言葉をかけられるんだな。
ほんと、強いな)
陳(コイツ、俺の事情を知らないのか? 俺はもう……)
(いや、コイツは知っているのか? 知っているが敢えてそんな言葉を掛けてくれたのか? だとすればとんだお人好しだな)
(そうか……)
「ふん、次は負けん。首を洗って待ってるがいい」
(……俺たちはこんな凄い奴に負けたんだな)
(くそ、通りで強いわけだ……。完敗だ)
滝沼|000 000 000|0
羽丘|000 010 01×|2
備考:羽丘高等学校 背番号11 我妻矢来 被安打0、四死球0、自チームエラー0、24奪三振の完全試合達成!
同校 背番号2 咲山大地 3打数2安打2HR 2打点
滝沼高等学校 背番号1 陳勝宗 被安打3、四死球1、自チームエラー0、11奪三振の完投
漸く滝沼戦が終わった……!
長かったー!!
ヒロインは何処から選ぶべき2
-
アフグロ
-
それ以外は以前の集計結果から選択します