後藤(花咲川高等学校 監督)「それじゃあこれより次の試合に向けてのミーティングを始めようと思う。欠席者はいないね? キャプテン」
澤野「はい。全員揃っています」
後藤「よろしい。では始める、いいな?」
チーム一同『ハイッ!』
後藤「それではまず羽丘の投手陣から見ていく」
「まず最初に、羽丘のエースナンバーを背負う成田についてだが、コイツは言わずもがな超高校級の投手といって差し支えないレベルだ」
澤野「えぇ。間違いなく虎金と同等かそれ以上の投手ですね」
虎金「いや俺の方が上だね。異論は受け付けない」
曽根山「そうっすよ。流石の成田でも虎金さんよりも上手なんてことはないでしょ!」
澤野「はぁ……。そうであってほしいね。ホント」
後藤「とりあえず話を続けるぞ。成田空、身長183㎝ 体重78Kgの日本では大型投手に位置する一年生左腕」
「世間でも騒がれるほどのスター性はもちろん、その実力も本物だ。虎金と同じ最速155km/hの浮き上がると称される豪速球は打者の手元から這い上がってくるように錯覚させるノビを持ち、決め球のスライダーとチェンジアップは超一級品。他にも、視線を外すカーブや凡打の山を築くムービング系統を複数持っている」
「入学当初に春季大会で選抜ベスト8の徳修高校と、西東京最強候補の一角である八大三高を完全試合で封じ込めるといった実績もあるだけに油断ならない相手と言わざるを得ないな」
坂山「あぁ〜……。あれね、ビデオで見たけどエゲツすぎたな、あの時の成田のピッチングは」
澤野「ストレートは一年生離れどころか高校生離れしている上に、コントロールもほぼ完璧。打てるビジョンが全く浮かばない超人高校生と言わざるを得なかった」
後藤「ただし、春後半に原因不明のイップスに陥りフォームが崩れたとの報告もある通り、春ほどの安定感は無く、コントロールも荒れている」
「フォームに更なる躍動感が増したとはいえ、ボールの質にもバラツキがある分狙い球を絞っていけば、決して打てない投手では無い」
「現に、先発のマウンドを任された初戦以降は、二番手右腕の我妻にマウンドを譲ってるからな。才能や背番号はともかくとして、現時点での総合力は我妻が一枚上手といったところだろう」
伊達「我妻かぁ。良い投手だけど、うちにとってはイメージは良いですよね。実際にウチは彼から二度打ち崩してますから、相性的にも成田で来そうな気がしますよ」
後藤「いや、おそらくそれはない」
澤野「ない? どうしてでしょうか?」
後藤「簡単だ。さっきも言った通り、成田に春前半ほどの安定感はなく、武器として機能しているのは躍動感の増した球威のみ。それ以外で勝負できる部分が何一つない彼に、ゲームを完璧に作れるだけの能力はない」
「相手は間違いなく、ウチが虎金を先発に考えて戦略を練っているはずだ。それなら同時に複数得点を期待できないことにも気がついているだろう」
「元エースの雪村はケガ開けで満足なピッチングがイマイチ期待できない、基本リリーフの吉村は重度のスタミナ不足とストライク枠を捉えられるかすらも危ぶむ制球難で、ゲームを壊しかねない」
「なら消去法で割り出されるのは制球に課題らしい課題がなく、球威も安定した我妻に絞られるわけだ」
坂山「なるほどなぁ、じゃあ案外攻略は楽なんじゃね?」
伊達「まぁ通用する変化球がスライダーしかないですからね。正直、カーブの精度は中堅以下でしょうし、ピッチングに幅がないから合わせやすいです」
幽ノ沢「でもやっぱり右打者には強いよなぁ。あのスライダーは左打者の膝下に決められると流石に厳しいし、そこは警戒しときたいね」
高山「でも追い込まれても余裕があるのってめちゃくちゃでかいですよね。何がくるのかわからないのとわかってるのでは天と地の差がありますから」
澤野「確かにな。相手捕手が咲山とはいえ、表と裏のリードを駆使しても選択肢が限られてくるから安心して打線は繋げられそうだ」
後藤「たとえ雪村が先発だったとしても、怪我明けの実戦初先発でどこまで抑え込めるかわからん以上狙い球を絞れば容易に打ち崩せる」
「成田は高めの球を見逃せば勝手に自滅する可能性があり、吉村はストライクコースでも無理に振りに行く必要はない」
「我妻は球威あるストレートと切れ味鋭いスライダーに気を配れば十分に打てる。打撃陣はしっかりと点を稼げ」
花咲川選手一同『はいっ!』
後藤「さて、ここまでは投手陣の内容だったが、続いては有力打者についてのデータ分析をとるぞ」
澤野(どちらかといえば、今年の羽丘は総合力に見えた打撃チーム。一番から九番まで繋がりの絶えない打線配置をしている)
虎金(咲山……っ)
後藤「ではまず最初に全員が気になっているであろう中心打者の紹介と分析をするとしよう」
「言わずと知れた『天地コンビ』の片割れ、咲山大地だ」
虎金(今度は負けねぇ)
澤野(随分と煮えたぎってやがるな。そんなに春の大会の敗北が悔しかったのか)
後藤「身長178cm体重71Kgの決して大型とはいえない部類の捕手。ただし能力は世代内でもトップクラスを有しており、厄介な羽丘打線の中でも主軸といえる打力を誇る」
「今大会、8打数7安打5本塁打13打点、打率.875の驚異の数字から分かる通り怪物クラスの打者と言っても過言ではない」
曽根山「……これ本当に人間ですか?」
伊達「うん、言いたいことはわかるけど、その発言はよそう。本当に怪物にしか見えてこなくなる」
澤野「しかも一年の夏で既に通算41本の本塁打を放っている。マジで狂った打者だな」
坂山「噂では出場した試合の全部でホームラン打ってるらしいぜ。どんなバケモンだよ」
後藤「あの体躯のどこにあれ程の力があるのかは未だ不明だが、バッテリー陣に言えるのは、ランナーが溜まった状態で真っ向から向かうなとしか言いようがない」
「基本読み打ちの打者らしいが、ゴールデンウィークの木実戦の映像で見た限り、6回にエンジン全開の萩沼の161キロを反応だけで打ち返しているように見えた。ようは勘も鋭く反応もいい隙のない好選手ということを証明している。必ず真っ向からだけでは抑えられる可能性は低いだろう、が……」
虎金「……」
澤野「トラ、不満そうだな。コイツと真っ向からやりあいたいって顔に書いているぞ」
虎金「実際やり合いたいっす。てかボコります。絶対に……」
後藤「ならやり返せ。かならずな。ランナーが出た状態では歩かせて欲しいが、エースが抑えると言うなら仕方がない。必ず討ち取れ。いいな」
虎金「うす!」
後藤「ならいい。それでは他の打者についても─────」
羽丘高等学校 野球部練習グラウンド ブルペン内
大地「左打者のアウトローにストレート」
ズッバァァァァアァアァアァアァアァアァアァアァアーーーンンンッッ!!
大地「次、インハイにストレート」
ズッバァァァァアァアァアァアァアァアァアァアァアーーーンンンッッ!!
大地「膝下スライダー」
ビュゴォォォォ……ッ!
ククッ!!
ズッバァァァァアァアァアーーーンンンッッ!!
雪村(前から思ってたけど、最近の我妻エゲツ過ぎでしょ)
空(調子良すぎな)
吉村(なんか自信失うわー)
大地「ラスト、アウトローにツーシームジャイロ!」
ビュゴォォォォ……ッ!!
カククッッ!!
ズッバァァァァアァアァアァアーーーンンンッッ!!
大地「うぉ……」
矢来「なんか目ギラギラさせすぎでしょ。どっか問題あった?」
大地「逆だよ、逆。良すぎてビビってんの。完璧すぎて怖いわ」
矢来「おぉ、めちゃくちゃ褒めてくれんじゃん」
大地「そんぐらい一球一球の質が良かったって事だよ。そんじゃあ今日はこんぐらいにしてクールダウンしてから上がるぞ。明日の試合に支障を来すのも嫌だしな」
矢来「りょ。てか、自分でもビビるくらいに肩が軽いんだけど、3日前に100球投げた感触ないし身体がおかしくなったと思ってたわ」
大地「そんぐらい力みなく試合で投げれてたってことだ。あん時の神ピッチングは本当に鳥肌立ったわ。疲労も少なく球質は最高値。だから滝沼打線を完璧に封じ込めれた。まさに矢来様々の試合だったよ」
矢来「はは、でも大地がホームラン打ってくれてなきゃどうなってたか分からなかったし、ありがとな。次も頼むぜ」
大地「そりゃあこっちのセリフだ。抑えきれよ矢来」
「それと、恋人だからって松原先輩に先発の件をうっかり誤って教えたりするなよ。一応敵校の生徒だし、なにより虎金さんと幼馴染らしいしな」
矢来「うぐっ、き、気を付けます」
さぁ、因縁の対決。
勝つのはどっち?
ヒロインは何処から選ぶべき2
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アフグロ
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それ以外は以前の集計結果から選択します