Stand in place!   作:KAMITHUNI

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西武の開幕投手……ニール投手になりそうだなぁ。


【天才】と【凡才】の違い

実況『四番 澤野が三打席連続三振に切って取られ、これで前の回から三者連続三振っ!!』

 

 

観客「なんじゃ!? 今のストレート!?」

観客「バグッちょるバグッちょる!!」

観客「まじんこで浮いてるんですけど!?」

観客「成田サイコー!!」

 

 

 

三木 総十郎(八川大学第三高等学校 1年生 背番号6 )「おぉ〜!! あれが羽丘の成田かぁ! 速ぇ! デケェ!! スゲェ!!」

松伊 純也(八川大学第三高等学校 三年生 背番号2)「ソウ、うるさいぞ。他の客に迷惑かけるな」

 

 

三木「えぇ〜!! いいじゃないですかー!! それとも松ちゃん先輩は気にならないんすかー!?」

松伊「いや、めっさ気にはなるぞ。ただそれを周囲に見せないだけでな」

三木「もう! 変わらずの堅物なんですからぁ!!」

松伊「オレら相手に完全試合をやってのけたバケモノのデータは取って置きたかったからな。出て来てくれて助かった」

三木「無視っすか!? 酷いっ!」

松伊「うるさい。羽丘の先発は成田と思わせて我妻。けど、負傷して六回途中から成田にリリーフ。対して、花咲川の先発は予想通り四連投の虎金。こちらも、虎金の乱調により、六回表から一年の曽根山が好リリーフか。一点勝負を予想していただけに、三点リードは羽丘にとっては大きなアドバンテージだな」

三木「ぶー……。ま、戦力層的には創部に一年差がある花咲川が有利ですし、三点差なら何が起こるかわかりませんよ? なんせ、今投げてる成田だってイップスになってから乱調気味って噂がありますしね!」

 

 

 

雄介(今のストレート……)

 

 

「……なるほどな。強情なアイツが素直になる訳だ」

 

 

友希那「何か言ったかしら?」

雄介「いいや……ただ、嬉しさ半分悔しさ半分だなって言っただけ」

友希那「?」

雄介「わかんなくていいよ。大したことじゃないから」

蘭「……でも、座るのを忘れるぐらいのことは、思い出してたんじゃないですか?」

雄介「……は?」

蘭「ほら、ずっとグラウンド……大地のこと見て突っ立てったじゃないですか」

友希那「……美竹さん?」

雄介「なるほど……ここにも大地が打ち解けている奴がいるとはな」

 

 

「そりゃあ、オレはアイツに借りがあるからな」

 

 

 

五年前─────

 

 

ガッ!!

 

 

雄介「ウッ……!」

同級生「このクソ雑魚がっ! オレ様に盾ついてんじゃねぇよ! お前は、オレ様に言われた通り、あのクソ野郎陥れろよ!」

 

 

ウザっ……。大地を陥れる? 自分が大地のような天賦の才が無いと勝手に諦めて、次にレギュラーを狙うためだけに、大地を大きな事故に見せかけて大怪我させるとか……凡人以下の屑だろ。

 

 

雄介「誰が、んなこと聞くかよ……実力も、努力もしてねぇのに活きがんなよ。三下ぁ」

同級生「クソガァァアァア─────!!」

 

 

ガツンッ!!

 

 

雄介「あがっ……!」

 

 

いくら非道な暴力を振られようとも、オレがお前に靡くわけないだろ!

お前とは、心のレベルが違うんだよ!

 

 

同級生「心のレベルが違うだぁ!? 調子に乗んなよッ!!」

 

 

「クソ雑魚がぁ!!」

 

 

大地「雄介ェェエェェエ─────!!」

雄介「!? くんじゃねぇ!!」

同級生「もうオセェよ!!」

 

 

ガッッヅーーーンンンッッ!!

 

 

雄介「ガァァアァアァア─────!?」

 

 

 

─────

 

 

雄介「あん時は、悪い夢の中にいるのかと思ったぜ。でも違う。紛れもなく、オレはあの日、一度死んだ。人生で二度と負いたくはないな。怪我して好きなことが出来なくなるのは」

 

 

「大地が来て、バッテリー組んで、全国制覇を成して、チームを蔑ろに扱い調子に乗ってた罰だったんだろうな。きっと」

 

 

蘭「それ、自己啓発本にでもしたら、売れるんじゃないですか? 『元天才投手の頂の景色と苦難の情景』とか」

雄介「そんな本出す時間があるなら、復帰の目処を立てて大学で即戦力扱いされるぐらいまでに感を取り戻す練習に時間を当てるよ」

 

 

「それに、オレは元でも天才じゃない」

 

 

蘭「……天才じゃない?」

雄介「これは個人的主観になっちまうけど、そもそもの話、天才なんて本当はいないとオレは思ってる」

 

 

「居るとしたら、その人に対して周りが勝手に作り上げた偶像か、はたまた思い込みの激しいそいつ自身がそう思い込んでるだけだ」

 

 

「この世すべての人間、誰しもが凡夫だ。努力無くして、誰も生きてはいけない」

 

 

ズッッッバァアァアァアァァァアァァアァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンゥゥゥゥッッ!!!!

 

 

審判「ットライーク! ツー!!」

 

 

 

実況『これも見事なアウトロー!! 直球でねじ伏せる神童・成田空!!』

綿部『幽ノ沢君も右打席に入ったり工夫は見られるんですが、いかんせん、あのストレートですよね』

 

 

 

雄介「凡夫だから生き残るために、みんな少なからず努力するんだ」

 

 

「天才というワードを隠蓑にして何もしなけりゃ、己を貫き通してきた凡才には一生かけても勝つことなんてできない」

 

 

「それは、どれだけすげぇ事でも一瞬で覚える奴にも、どんなに優れた能力を最初から持ってた奴にも言える事だ」

 

 

「そこからの積み重ねがなければ、どれほどの優等な実力があってもホンモノには届かない」

 

 

「だって、ホンモノに至る天才の正体は、誰しもが成しえない膨大な努力量で形成された凡夫なんだからな」

 

 

 

ズッッッバァアァアァアァァァアァァアァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンゥゥゥゥッッ!!!!

 

 

《156Km/h》

 

 

実況『見逃し三振─────ッ!!』

 

 

『成田空、4番澤野から7球連続外への速球でこの回、三者連続三振っ!! 6回裏ツーアウトからリリーフして、四者連続三振で仕留めて見せたぁ!!』

 

 

 

雄介「……きっと、あそこの奴も、それを身をもって知ってるはずだ」

友希那「あそこの奴……成田のことかしら?」

雄介「そ。あいつの直球からは凄まじいほどの覇気が溢れ出している。そのボールに見惚れると、見えてくるんだよ。アイツがどんなに苦しく、地味な練習でも真面目に取り組んできたのか、よく感じられるよ」

 

 

「だからこそ、強情で突っ撥ね続けて、孤立しがちな咲山大地の昏い道先を照らし続けられるんだ」

 

 

「成田空。悔しいけど、アイツこそ大地の心に蔓延っていた氷塊を溶かしたホンモノの太陽なんだろうな……」

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