Stand in place!   作:KAMITHUNI

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寒い、風邪ひいたかも


次に向けて!

審判「3対1で羽丘高等学校の勝ち!! 礼ッッ!!」

 

 

選手一同『ありがとうございましたッッ!!!!』

 

 

 

澤野「……咲山、成田」

大地「澤野さん……」

空「……最後まで楽しかったです」

澤野「あぁ、俺もオマエ達との勝負は楽しめたよ。久方振りに4番打者として勝負できた。ありがとな」

 

 

「行けよ……甲子園」

 

 

「俺らの意志全部託したからな」

 

 

大地・空『はい!!』

 

 

澤野「……あ、それと!」

空「?」

澤野「ラストボール、アレはなんだ?」

 

 

「スプリットにしては落差が大きいし、高速シンカーって感じでもなかった」

 

 

空「秘密っす!」

大地「極秘事項ですからね。本当はぶっつけ本番で使いたくなかったんですけど、澤野さんがあまりにも怖すぎて投げさざるを得なかったんですよ」

 

 

「そんぐらい、澤野さんは俺が見てきた打者でもトップクラスに怖い打者でした」

 

 

澤野「……そっか。そう言われると、少しは浮かばれる」

 

 

「成田、次こそはオマエのボールをスタンドにまで運んでやる。覚悟しとけよ」

 

 

空「……次?」

 

 

澤野「いずれ、ここより上(プロ)の世界で必ずやり合おう」

空「っ! はいっ!!」

 

 

 

 

 

結城「……虎金、オマエは強かった。戦えてよかったよ」

 

 

両校を称え合う握手する時、俺は虎金に対してそう言った。

最高峰の投手だったアイツに勝てたことで気分が高揚していたからではない。純然たる気持ちで、そう思ったから自然と口にしただけだった。

 

 

ただ、虎金は何も言わずに、帽子を目深く被って、俯きながら唇を強く噛み締めて、踵を返しただけだ。

 

 

その後ろ姿から漂う哀愁と覚悟に満ちたオーラは、何処か凄然として、そこから勇気を貰った気がした。

 

 

雪村「あれが虎金だからな……」

 

 

中学時代、虎金と同地区のチームでよく顔を合わせていた雪村が言った。プライドの塊で自我の強い虎金が、清々しく負けた相手に挨拶する姿なんか浮かばないだろ? って苦笑して。

誰かの為に強くあろうとして、実際に無双状態へ入ることもある。

 

 

誰かの為に紡いできた“努力”があったから、アイツはここまで強くあれたんだと分かる。だからこそ負けたことに目を向けることができないのだろう。

 

 

結城「……いつしか、あの後ろ姿に追いつくことが出来るだろうか?」

雪村「哲らしくない言葉だな……自信喪失か?」

結城「かもな」

雪村「……追いつくなんて言ったらダメだろ。それは虎金に対する侮蔑だぞ」

 

 

「追いつくんじゃない。勝って追い越したんだ。勝者が敗者に向かって軽々しく追いつくんだとか言っちゃダメだ」

 

 

「もっと言えば、虎金の強さを証明できるのは勝った俺たちしかいない。死ぬ気で前を向いて突き進むしかねぇよ」

 

 

結城「……そう、だな」

 

 

そうだった。俺達は勝って先に進めるんだ。アイツの意志も受け継いだんだ。

花咲川の為にも負けることなんて出来ないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

結城「応援、ありがとうございました!!」

 

 

選手一同『ありがとうございましたッッ!!』

 

 

パチパチパチ……ッッ!!!!

 

 

羽丘男子生徒「最高のゲームだったぞぉ!!」

羽丘女子生徒「成田くぅ〜ん!! ナイスピッチィ〜!!」

花咲川商店街の人「店そっちのけで来てよかったぞぉ!!」

羽丘男子生徒「我妻もよく投げたぁあ!!」

 

 

結城「よし、ベンチを空けるぞ! 急げ!!」

 

 

 

 

 

 

ナインが引き上げて球場裏。他の面子がクールダウンのストレッチを終えて、様々な人と交流を見せる中、羽丘バッテリーは反省会を開いた。

 

 

大地「甘い球もそこそこ多すぎ。状況によって球質が変わりすぎ。回どころか一人一人によって調子の変動があるとか考えられない。今日はまだランナーがあんまし動かなかったからよかったけどクイックできてない。牽制下手。駆け引き皆無すぎ。サインを独断無視するな。フォームに安定感がない……etc.」

空「……すんまそん」

 

 

友希那「試合が終わった後は、いつもあんな感じなの?」

笠元「まぁーな。もう毎試合恒例ちゅうてもいいぐらいやな。その度に空坊がシュンとすんのもいつものことや」

友希那「……随分、ストイックなのね」

帯刀「とはいっても、今日はまだマシな方じゃねぇの? いつもなら「ボケ」とか「クソが」とか、相変わらず口癖のように暴言吐きながらだし、それがないってことは、大地としても納得いく部分が多かったって証拠だろ」

リサ「へぇー、コンスタンスに暴言吐くのはどうかと思うけど、やっぱり仲良しさんには見えるよねぇ〜」

帯刀「実際、仲はいいぜ。大体2人1セットなら、まず真っ先にあのコンビが出来るし、なにより大地が怒るのって認めてるからであって、認めてない相手をそもそも眼中に入れないからな」

 

 

結城「よし、みんな制服に着替えたか? 着替え終わったやつから下級生主体に荷物を運んでくれ! 終わったら軽く昼食取りながら次の試合を観戦な!」

 

 

「「はいっ!!」」

 

 

大地「あ、主将! 我妻の容態とか何か聞いてませんか?」

結城「あぁ、今、有山先生から片矢先生に連絡が届いてから聞いた話だが、我妻に命の危険はないそうだ。様子を見て2、3日安静にしておけば直に良くなるらしい」

大地「そうですか……一安心ってことでいいんですかね?」

結城「一先ずな。ただ、右掌は完璧に折れているらしい。この夏に復帰するのは流石に厳しいかもな」

大地「……それは、ちょっと残念ですが、今は命が助かったことを喜びましょうか」

結城「そうだな」

 

 

 

夏の大会 西東京予選 府中市民球場 5回戦 第二試合

 

 

八川大学第三高等学校 vs 都立宮岸高校

 

 

 

カッキィィィイィイィイーーーンンンッ!!

 

 

ワァァアァアァァァアァァァアァァァアァァァアァァァアァァァアァァァアァァァアァァァアァァァア!!!!

 

 

 

実況『センターに大きい!!!! センターは追うのを既に諦めたッ!!』

 

 

 

ゴンッ!!!!

 

 

 

実況『入ったーーー!!!!』

 

 

『1回裏、得点板直撃の超特大ライナーアーチで先制したのは、やはり八川大学第三高等学校!!!!』

 

 

『名門で一年生ながらに4番に据えられた三木総十郎のスリーランホームランッ!!!!』

 

 

『ここまでの試合を完璧に抑えてきた宮岸高校のエース内木泉から3点を奪ったぁ!!』

 

 

 

帯刀「流石は名門。内木をいきなり捕らえてきたなぁ」

結城「今の4番、一年だな。春にはいなかったし、とんでもない打球を飛ばしている。いいスイングだ」

笠元「あれで一年かいな! どえらい一発やったで!」

田中「ここは選手層が厚いし、なによりこの破壊力と隙のない守備力を含めた総合力は群を抜いている」

秋野「総合力と言っても、全部中途半端じゃないからね。投手陣は本格派のエース武良木、左キラーで有名な変則サウスポー柚木の二枚看板。打者もチームの司令塔でもあり打撃力にも長けた1番松井、2番に俊足の見谷美、そしてパワーと勝負強さに定評のあるクリーンナップ陣。下位打順は固定されてないけど、調子の良い選手をガンガン起用する方式で勢いにも乗っていきやすいしな」

舘本「……選手層が厚いからこそ……できること」

村井「うが。ここ数年、確実に戦力が安定しているようだしな」

 

 

カッキィィィイーーーンンンッ!!!

 

 

帯刀「また打ったぞ」

榊「こりゃあ決まったな」

吉村「初回とは言え、こんだけボコスカ打たれてたらなぁ」

結城「宮岸も都立ながらよくやってきたけど、今大会はノーシードで上がってきたから内木も疲労困憊だな。むしろよくここまで投げてこれたよ」

 

 

パシンッ!

 

 

雪村「やっと初回が終わった」

笠元「初回から6得点か。宮岸はちと厳しいな」

結城「それでもう主力は温存するわけか」

帯刀「次戦に備えてと、1、2年の経験積ましか」

 

 

ズッバァアァアァアァァァアァァアァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンン!!

 

 

《 145Km/h 》

 

 

榊「背番号18、速いな」

結城「それにあの背丈……萩沼さんに近いか、それ以上だな」

帯刀「うわっ、今のスライダーやばすぎ。バッター見失ってんじゃん」

秋野「あの子も一年生かな?」

帯刀「あれも新兵器ってことかよ……ちょっとヘヴィーな相手だよな、大地……って、大地は?」

宗谷「咲山、女子に囲まれてます」

帯刀「潰す」

 

 

 

 

 

ズッバァアァアァアァァァアァァアァァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアァァアーーーンンンッッ!!!!

 

 

 

実況『最後は空振り三振ッ!!』

 

 

『西東京予選大会4回戦を制したのは八川大学第三高等学校!!!! 圧巻の12得点で都立のダークホース宮岸を玉砕! 明後日、神宮球場で羽丘と激突!!』

 

 

 

宮岸|000 00|0

八大|622 2×|12

五回規定によりコールド試合

八川大学第三高等学校、八年連続ベスト8進出

 

 

 

大地「なんだ雄介。見に来てたのかよ」

雄介「おう、三打数無安打一四球。ちゃんと見に来てやったぜ」

大地「うっせ、次は打つんだよ」

雄介「その顔ができりゃ大丈夫そうだな……次は打てよ」

大地「任せろ。明後日は俺が勲章打を放つ」

雄介「ふ、じゃあな。今度、また落ち着いた時にでも話しようや」

大地「だな。んじゃまたな」

雄介「あいよー」

 

 

 

拳を突き合わせ、互いに背を向け合う元相棒。

 

 

二人は互いの道に突き進み決別の時を迎えた─────

 

 

もう、彼等がグラウンドで対面に向かい合うことはないかもしれない。

それでも不思議と悲しくはなかった。

 

 

友希那「……本当によかったの?」

 

 

いつのまに聞き耳を立てていたのだろうか、友希那がひょこっと顔を出す。

それでも大地に驚いた様子は伺えず、ただ単調に返事をする。

 

 

大地「はい。いいんですよ、これで。俺もアイツも、これで前に進み続けられる」

友希那「そう……」

大地「じゃあ行きましょうか」

 

 

そう言って大地はスタスタと球場に向けて歩いて行く。

その前に映った顔は、今までに見たどんな顔よりも清らかな微笑みだった。

ヒロインは何処から選ぶべき2

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