偽から出た真   作:白雪桜

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第六十八話 最初の接触

「お断りします!」

「え~、いいじゃないっスか~。減るもんじゃないでしょ~」

「減ります、私の神経が」

 

 かれこれ二十分近く、同じ問答を繰り返している。何についてか、というと。

 

「お願いしますよ~。この通り!」

「拝まれたって駄目なものは駄目です! 珠水は私の斬魄刀なんですから!」

 

 ……こともあろうに、喜助が珠水を貸して欲しいと言ってきたのだ。朔良と珠水の関係性を明かした為であるのは判りきっているし、知って尚口を閉ざして受け入れてくれたことには大いに感謝している。

 だが、それはそれ。これはこれ。

 

「大事な自分の半身を、ひとに貸す訳ないでしょう!」

「興味があるんスよ~! 改造とかしませんから!」

「それは最低限当たり前のことですよね!?」

「ちょっとだけ! ちょっとだけでいいんです!」

「ああもう、煩いです! 少し見回りがてら出てきます!」

「あ、朔良! ……仕方ないっスね。縛道の六十一、“六杖光牢”」

「はっ!?」

 

 出現した光の帯が傷ひとつ付けることなく身体を貫き、自由を奪う。

 

「ちょっ、きー兄様!? 何するんですか!?」

「いや~、だってお願い聞いてくれないっスから。実力行使っス」

「おい喜助、いい加減にせんか。やり過ぎじゃぞ」

 

 黒猫姿の夜一の窘める声が聞こえたが、もう遅い。何しろ、自分勝手な()の言動が鬱陶しくなってしまったのだから。

 

「“鬼相転外”」

 

 パンッ、と。喜助の“六杖光牢”が弾けて消える。

 

「おっと! これが夜一サンから聞いた“鬼相転外”っスね! うーん、アタシが使うには難しそうっスねえ……」

 

 暢気にのたまう彼に鉄槌を。

 

「いい加減に――」

 

 全体重と跳躍を加えた踵落とし。

 

「しなさぁーーーいっ!!」

 

 

 

 …………………………

 

 

 

『全く……きー兄様には困ったものだよ』

『相変わらずの変人っぷりでしたね』

 

 浦原商店を後にし、気晴らしと見回りを兼ねて屋根の上を駆けながら珠水と対話する。

 

『あの人は紛れもない天才なんだけど……』

『性格や人格に難ありな人物は護廷十三隊にも多いでしょう? 特に十二番隊辺りに』

『……あそこはそういう人を集めている感じだからなぁ』

 

 馬鹿と天才は紙一重と言うが、奇人変人は天才の仲間だとも思う。悪い意味ではなく、理解が難しいという点でだ。偉業を成しえた人物も最初はまるで理解されず、差別されたり忌避の目で見られたりという扱いをされた例は少なくない。要は優秀過ぎて周りが置いてきぼりにされるという図だ。喜助は恐らくその類なのだ。

 

『まあ、きー兄様は我が道を行く人だし、理解者はいるし。十二番隊もそんな兄様が作った場所だから、ある程度目をつむれば何の問題も――』

 

 ――前触れは無かった。

 ただ、強大な霊圧が現れたことを感じ取った。

 

「って、遠っ! 浦原商店に居た方が近かったよね?」

 

 思わず零してしまう程の距離。即座に向かうが、瞬歩は瞬間移動ではない。流石の朔良も少々かかりそうだ。

 

(すぐ傍に居るのは、チャドくんと織姫か)

 

 一護もかなり近い所に居る。彼の方が早いだろう。

 

『夜姉様達も行くなら何とかなるかな』

『つい先程、浦原喜助を伸したばかりでは?』

『あああ! そうだった! こんな時にタイミングの悪い!』

 

 とはいえ、嘆いている訳にもいかない。今の一護に強者との戦闘を任せるのは些か不安なのだ。実力面ではなく、暴走しないか、という点において。

 そうこうしている間にも、ぶつかり合う複数の霊圧。一刻も早く駆け付けるべく、速さに特化した瞬歩を繰り返す。

 

「! チャドくん!」

 

 仰向けに倒れた彼を発見し、ざっと状態を確認する。

 

(これは……織姫の能力?)

 

 傷ついたチャドの右腕を覆うオレンジ色の光は、間違いなく織姫の霊圧によるもの。話には聞いていたが、実際に目にするのは初めてだ。

 

(回復系……じゃないよね。一体何?)

 

 朔良は回道にも長けている。加えて類稀な観察能力と霊圧探知でも、織姫の“これ”が回復ではないことは一目で判った。

 気にはなるが――

 

(考察は後回し)

 

 チャドは大丈夫。今はそれでいい。

 それよりも。

 大男の破面が払った手に弾き飛ばされた織姫の身体を、地面に叩きつけられる寸前で抱き留める。

 

「さ……くら……さん……?」

「しゃべっちゃ駄目だよ織姫」

 

 制しつつ、抱え上げてチャドの隣に寝かせる。彼女の左半身、顔から肩にかけてまでがっつり血塗れだ。片手を軽く払った程度でこの傷とは。

 

(途轍もない怪力だな……。一発でも喰らうとやばい)

 

 一護を嬲っていたらしい大男の正面に、二人の間に割り込むよう立ち塞がる。腰に携えた珠水を抜いた。

 

「朔良お前……」

「大丈夫、後は任せて。――応じろ、“珠水”」

 

 コォン、と音が高く響く。切っ先から広がった波紋が刀身を覆い、無機質な刃から透き通る水晶へと変化する。

 

「何だァ? てめえは? おいウルキオラ!」

「藍色の髪と瞳……“要注意人物”の雲居朔良だ」

「あァ!? コイツがかよ!?」

 

 刀と共に両手も下した格好は、傍から見れば隙だらけ。だが――

 

「こんな女が? 一発で折れちまいそうな斬魄刀持ってる奴がか? ハッ」

 

 ――自然体であることが、朔良にとっては一番の戦術だ。

 

「だったらその力、見せてもらおうじゃねえかよォ!」

 

 至近距離で、振りかぶられた拳。避ければ背後の一護に当たる。

 

「じゃあ、お望み通りに」

 

 だから、避けない。

 手首を少し動かして、珠水の切っ先を上に、大男の破面へ向ける。

 

「――射殺せ、“神鎗”」

 

 ―― 一護が初めて、瀞霊廷に足を踏み入れた時。朔良は、その場には居なかったけれど。今の状況はそれに酷似していた。

 ギンの“神鎗”に、一護が庇った兕丹坊ごと突き飛ばされた時に。

 大男の破面の前に飛び出た、ウルキオラと呼ばれたもう一人の破面が、半分抜いた刀で朔良の“神鎗”を受けて纏めて突き飛ばされる様は。

 

 大男の方は後ろ向きにそのまま倒れたが、もう一人の方は即座に体勢を立て直してきた。が、ひとまず一護達から距離は取らせた。

 

「水天逆巻け、“捩花”」

 

 変化させるは三叉鎗。瞬歩で間合いを詰め、高い位置から振り下ろせば、もう一人の方の破面が完全に抜いた刀で受け止めてきた。

 

「どいていろヤミー。今のお前では太刀打ちできない」

「なっ!?」

 

 最初の“神鎗”でこちらの実力を測れたらしい。隙なく構える様を見ると、相当に腕が立つようだ。感じる霊圧からもそれが察せられる。

 故に、加減はしない。

 片手首を軸とした回転と共に巻き上げた波濤。もう片方の腕も使い、遠心力を加えて斜め上から叩きつける。が、今度は受け止めず躱してきた。即座に下から振り抜かれる刃を、引き寄せた鎗の柄で受けて防ぐ。鎗を握る両手の、片方を開く。掌で柄を支えたまま、霊力を集中させる。

 

「破道の三十一、“赤火砲”!」

 

 至近距離で放ったそれは、やはりと言うべきか回避された。最初(はな)から当てにはしておらず、瞬歩に似た高速移動で避けた動きを霊圧で追い、先を読んで再び“神鎗”を繰り出す。剣で払って防がれたものの追撃はせず、刀身の長さを戻し切っ先を向けた状態で出方を窺う。

 

「成程、そっちのゴミとは違い、お前は藍染様が警戒されるだけのことはあるようだ」

「へえ、そうか? 別に嬉しくもないな」

 

 軽口で返しつつ、気は緩めない。この破面はまだ、力の片鱗すら見せていない。

 と言うより、ここで見せられるのはまずい。今ここで朔良とこの男が全力でぶつかれば、間違いなく空座町の一部が吹っ飛んでしまう。それにこの二人の目的は恐らく様子見。大きな戦闘は想定外の筈だ。でなければもっと大人数で攻め込んで来るだろう。つまりどうにか追い返せればいい訳で、と思った時。

 

「ふざけんな……!」

「!」

「は?」

「クソがああぁぁ!!」

 

 押し退けられた状況に逆上したか、大男の破面がこちらに突進して来た。丸太のように太い腕を振り上げる。朔良の腕力で“神鎗”のまま受けるのは厳しいと判断し、変える。選択は“斬月”でーー

 

「!」

 

 弱めの“月牙天衝”を放つ直前、目の前に割り込んで来た二人分の霊圧に気付き動きを止める。姿より霊圧の方を先に察知できるのは朔良ならではだ。

 果たして、本物の(・・・)“紅姫”による“血霞の盾”が顕現し、大男の拳は防がれた。本物の(・・・)持ち主はもう一人の助っ人と共に並び立ち、いつものように飄々と告げる。

 

「どぉーもー、遅くなっちゃってスイマセーン」

 

 喜助と夜一。今現在、現世において最強の援軍だ。

 

「お二人共、ホントに遅いですよ」

「まあそう言わないでくださいよ。君に伸されたのが原因なんスから」

「それはそうかもしれませんが、元はと言えば貴方のせいでしょう。責任転嫁しないでください」

「うーん、それを言われると……」

「お主ら、漫才は後にしろ」

 

 夜一の仲裁で互いに口を閉ざす。確かに今は口論をしている場合ではない。……お粗末過ぎて漫才と呼べるほどの内容であったかどうかはともかく。

 

「朔良、井上の治療を」

「はい」

「頼むぞ元上級医療班」

 

 笑顔で以って返答し、珠水を鞘に収め身を翻す。今この場で最も治療に長け、且つ実行できるのは朔良だ。

 織姫に駆け寄り、傷を負った左半身の方へ回って膝をつく。

 ーーその、僅か数秒の間だった。

 再び向かって来た破面の巨体を、夜一がいとも容易く地面に叩きつけたのは。

 

「なん……だと……!?」

 

 一回転の後に背中から落ち、呆然と呟く大男。それら一連の動作を横目で確認しつつ、傷口に霊力を当てていく。

 

「この……!」

 

 もう目も向けない。霊圧で見ずとも判る。夜一に掴みかかった大男が、二回の打撃を喰らって地面に沈んだ様も、その為に更に激高し起き上がってきた様も。

 

「往生際の悪い奴じゃの」

 

 朔良が治療に専念できるようにと立ち塞がってくれる夜一も、この大男のタフさには少々呆れているようだ。

 と、思ったのも束の間。

 

「ぶっ殺す!」

 

 大男の破面が、叫ぶと同時に霊圧を集束させ始めた。大きく開いた口に発生するそれは。

 

(! 虚閃!)

 

 至近距離。怪我人の織姫とチャドも居る。避けるのは不可。

 ――けれど心配はしなかった。

 夜一が何か仕掛けるより早く、喜助が割って入ったからだ。

 その手の“紅姫”を振り抜いて。

 

「な……何だてめえ……何しやがった……!? どうやって虚閃を……」

「ご覧の通りっス。弾くとヨソが危ないんで、同じようなのぶつけて相殺させてもらいました」

「何だと……!」

「信じられないなら、ひとつお見せしましょうか?」

 

 言葉通り、“見せる”為のゆっくりとした動作。だが、最後の瞬間は疾く。

 

「啼け、“紅姫”」

 

 疾駆する、紅い斬撃。大男の破面へと一直線に飛ぶそれは――もう一人の破面が叩き払ったことで消滅した。

 “ウルキオラ”と呼ばれたその小柄な方の破面は、続けて大男の破面の腹部に手刀を打ち込んだ。“ヤミー”と呼ばれた大男の破面が膝を突き、喜助と夜一には今のままでは勝てないと諭される。

 

「退くぞ」

 

 “ウルキオラ”が何もない場所を指先で叩き、空間を裂いて現れたのは黒い穴。藍染達が逃げた時と同じ黒腔(ガルガンダ)

 

「……逃げる気か?」

「らしくない挑発だな。貴様ら二人がかりで死に損ないのゴミ二匹守りながら俺と戦って、どちらに分が在るか判らん訳じゃあるまい。その娘も加えて、な」

 

 織姫ではなく、朔良のことだとは言わずとも判った。朔良も参戦すれば別だが、治療に当たっている以上守る対象だろうと。

 

「差し当たっての任務は終えた。藍染様には報告しておく」

 

 穴倉が、黒腔が閉ざされていく。

 

「貴方が目を付けた死神もどき(・・・)は、殺すに足りぬ(ゴミ)でしたとな」

 

 

 

 

 

「……よし、ひとまずはこれで」

 

 二体の破面が去って十数分。織姫の応急処置を終えて立ち上がり、一護の方へと向かおうとすれば、喜助から待ったが掛かった。

 

「後はこちらに任せて、君は尸魂界へ」

「!」

「報告をお願いします」

「確かにそれは私の仕事ですね。承りました」

 

 通常、穿界門を通る際には事前の申請が必要となる。危険人物を侵入させないための措置であり、無断で通ろうとした場合尸魂界に到着した時点で止められてしまう。その時も手続きをすれば解放されるのではあるが、早くとも一晩ほどの時間が掛かるのだ。今、そんな時間は掛けられない。

 故に。

 伝令神器を取り出し、技術開発局へ繋げる。本来なら直属の上司である浮竹に連絡を入れ、穿界門開門の許可申請を頼むのが妥当なのだが、彼は病弱だ。今回のように急を要する場合、すぐには動けない可能性がある。清音や仙太郎に頼むにしても浮竹の許可を得なければならず、二度手間だ。

 ということで。

 

「もしもーし、阿近くん?」

≪は、あ……朔良さ……! いや雲居副隊長! 無事ですか!?≫

「問題ない。それより、大至急穿界門開門の許可を申請したい。私の速さじゃ事後承諾になるかもしれないけど、非常事態だからね」

≪……了解しました。こっちで上手くやっときます≫

「頼んだ」

 

 急を要する場合でも、事前連絡をしておくだけで随分と違う。急がば回れとはよく言ったものだ。

 

「じゃ、私行きますね」

「頼みます」

「気を付けての」

 

 刀を抜き、門を開く。育ての親に見送られ、予定より早い帰還を果たすのだった。

 

 

 

 ――またすぐに、朔良は現世に向かうことになる。

 帰還後開かれた緊急隊首会に召喚され、破面との出来事をありのまま報告し。至急先遣隊を編成し派遣するので、当事者として一足先に現世に戻り警戒に当たれとの命令が出た。

 とんぼ返りは厳しいが、破面と直に接触した“護廷十三隊隊士”は朔良一人。仕方ない。

 少々の休憩の後現世に舞い戻り、浦原商店にて翌日の先遣隊を待っていた――のだが。

 

「……で、何でまたきみが引率なの冬獅郎?」

「日番谷隊長だ。今は任務中だぞ」

「おっと、失礼しました日番谷隊長」

「……まあ、お前の疑問はもっともだが。推測してみたらどうだ?」

「えーと、ルキアと恋次は判ります。現世に居る一護と連携を最も取り易い人材がルキアで、そのルキアと長い付き合いで、かつ副隊長に就いているのが恋次。そしてその恋次が戦闘員として抜擢したのが一角。一角が来るなら弓親も付いて来ようとする……と、ここまでは理解できますね」

「……一人だけ先に現世に戻ったせいで先遣隊が選抜された流れを一切聞いてねえのに、そこまで完璧に推測できるお前が怖えよ」

「まあ私も四人とは長い付き合いなので。で、何でそこで日番谷隊長と乱菊なんですか? 同じ隊長格なら朽木隊長でも……」

 

 ちなみに、ここで白哉以外の隊長格の名を出さないのは理由がある。

 先遣隊の責任者として、まず一番隊の総隊長は最初から論外。二番隊の砕蜂は刑軍軍団長を兼任している為、瀞霊廷に居る必要がある。四番隊の卯ノ花も医療部門の統括者として動かせない。七番隊の狛村は、その容姿から現世に駐在するには向かない。八番隊の京楽は古参の隊長格、先遣隊よりも瀞霊廷の防衛の方に重要視される。十一番隊、十二番隊の二人は言わずもがな、その異常な性格と人格の問題だ。十三番隊の浮竹も京楽と同様の理由となり、また体調面も心配だ。

 先遣隊には軽いフットワークも要求される。隊長格を派遣するなら、若い白哉と冬獅郎が選ばれるのは自明の理というものだ。

 では今回、何故白哉ではなく冬獅郎なのか。連携の取り易い人材というなら彼の副隊長と妹も来ている。ついでに朔良も。白哉でも問題はない筈だ。

 

「……松本が」

「乱菊が?」

「朽木達が現世に行くって聞きつけてな」

「……はい?」

「絶対に自分も行くって言って聞かねえから」

「……はい」

「俺が引率として選ばれた」

「乱菊別に馬鹿じゃないのに馬鹿みたいだね」

 

 いけない、思わずまた素に戻ってしまった。

 

「……とにかく、そういう訳だ」

「……苦労人ですね」

「言うな」

 

 一護の家に出向き、状況を説明してきた冬獅郎と合流し、一連の流れを聞く。他はともかく、十番隊の二人はひとまず織姫の所に向かうそうだ。彼女の警護も含めてだろう。

 

「お前は浦原喜助のトコだろ?」

「ええ。ここ連日もそうでしたし」

「滞在場所が判ってりゃいい。今回お前は俺の指揮下には入ってない。別動隊扱いってことで、お前の判断で好きに動いて構わないそうだ」

「いいんですか?」

「その方が何かと都合が良さそうだからな。お前が元隠密機動ってのも理由だが、俺より強いお前を俺の指揮下に置くのも妙な話だ」

「一理ありますが……そんなあっさり」

「別に自虐じゃない。事実だ」

 

 きっぱり言う様を見ると、嘘は無いらしい。であれば。

 

「判りました。では私は独自に動かせていただきますね」

「ああ。もしもの時は頼む」

 

 信頼を寄せられているのが判り、くすりと笑って別れる。

 月の昇った夜空を見上げふと、気になったことが一つあり、振り返る。

 

「ところで日番谷隊長」

「ん?」

「ホントに織姫のトコ泊まるつもりですか?」

「…………訊くな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 ――虚圏(ウェコムンド)

 藍染への報告を終えたウルキオラは、自宮へと向かいつつ思考を巡らせていた。

 

(……あの娘)

 

 雲居朔良。藍染が要注意と言った、藍色の髪と瞳が特徴の女死神。

 対峙しただけで判った。その小柄な身体からは想像もつかないほど、強大な霊圧を秘めている。技量も然ることながら、聞いていた斬魄刀の能力も恐るべきものだ。手の内を明かし過ぎないようにしていたのだろう、変化させたのは数種類だったが、無数の能力を有しているということだ。しかも相手によって変えられる。たとえ模倣であったとしても、脅威に値する。

 

(――だが)

 

 そんなことは、大した問題ではない。強い死神など、他にも居るだろう。

 重要なのは。

 

(俺が、“勝てない”と直感したことだ)

 

 直に刀を交えた瞬間に悟った。この娘には“勝てない”と。

 実力や霊圧の話ではない。理屈も何もなく、本能的にただ“勝てない”と感じたのだ。

 

(何かがある)

 

 圧倒的な何かが、あの娘にはある。

 それこそがきっと、藍染が雲居朔良を特別視たらしめる理由なのだ。

 

(であれば)

 

 いずれ来る。その理由を知る時が。ただ、それまで待てばいい。

 

 そう結論付けて、ウルキオラは雲居朔良に対する思索を打ち切った。

 

 

 

 ――彼女の存在が、自らの行く末を大きく変えることになるなど露ほどにも思わずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 お待たせ致しましたー! 白雪桜です。
 ようやく破面篇突入です。

 いやもう、今回は踏んだり蹴ったりでした……。
 やっと執筆の時間が取れたと思ったら、パソコンが重くてなかなか動かないわ、途中まで書いてたのにトラブル発生でデータが開けないわで、思った以上に時間が掛かってしまいました……。執筆途中の内容を諦めようかとも思ったのですが(ハーメルンには保存していませんでした)諦めきれず、あれこれしている内に復活してました!(^^)! 何はともあれ一安心でした。
 今回、少しだけ戦闘シーンも入れてみました。やはり難しいですね……。更に精進を重ねたいと思います。

 ちなみにこちら、朔良の簡単なプロフィールです。


雲居 朔良 (くもい さくら)

(尸魂界篇突入時)
身長/147㎝
体重/37㎏
斬魄刀/珠水
解号/応じろ『珠水』
趣味/物真似
特技/物真似
食べ物/好き:苺大福(その他菓子全般)
    嫌い:無し
休日の過ごし方/
 ●"遊び場"で鍛練
 ●四楓院家当主補佐としての仕事をこなす


 カラブリを参考にしてます。改めて知りたいというお話を受けましたので、こちらに載せておきます。他、まだ未定の分や後回しにしている分もございますが、ひとまず決まっているものだけをと。

 では。


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