銀雷轟く銀滅龍   作:太刀使い

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第11話.千刃乱舞

『くそ……このバケモノが……』

『ふん……』

 

 目の前の男が生き絶えるのを確認した俺は、自らの獲物を懐にしまった。

 周りを確認すると、8人の人間の死体が血だまりの中に沈んでいる。まぁ俺が全てやったわけだが。

 

『HQ、こちら黒狼。標的の殲滅が完了した』

『了解。迎えのものと合流次第、速やかに帰還せよ』

 

 通信機に任務完了の報告を入れ、待ち人を待つ。

 すると次の瞬間、殺気が当てられたのを感じた。俺はとっさに投げナイフを殺気に向かって放つ。

 

『ははっ! また腕を上げたな』

『チッ……親父か』

 

 指の間に俺の投げナイフを挟んだまま現れたのは、親父だった。くそっ、いつ見てもムカつく面をしてやがる。

 

『だがまだまだ甘いな。遠距離攻撃というものを分かっていない』

『別にこれが本命の攻撃ってわけじゃない』

『たく、素直じゃないなあ。いいか? 遠距離攻撃ってのはな……』

 

 そこからみっちりと帰るまでの3時間、俺は親父に遠距離攻撃とその対処法について聞かされるのだった。

 強引に話を持ってきやがって。何回めだと思ってんだこの話。だが、この話が役に立つ日が来ようとはな……

 

 

 

 

 ……Now loading……

 

 

 

 

 

「キァァァァアアアアア!!」

 

 セルレギオスは俺の姿を捕捉した途端、身をひねりながら上昇し、翼を広げて滞空。そしてその状態で鱗を展開し、マシンガンのごとく刃鱗を放ってきた。

 サイドステップでそれを避け、セルレギオスの行動に気をつけつつ、超帯電状態に移行するための準備に取り掛かる。

 

 やっぱ戦闘は避けられない感じか。それより、なんで砂原にセルレギオスがいるんだ? 

 まぁこの世界はゲームじゃないんだし、何事もゲーム基準で考えるのは良くないかもしれないな。セルレギオスって普通に砂漠地帯にも生息するし。

 それよりも今は……! 

 

 準備が完了し、超帯電状態に移行する。しかしそこで俺は目を見開くことになった。

 なぜだか知らないが、俺の纏う雷の色がいつもと違うのだ。これまでは原種らしく蒼雷を纏っていたはずなのに、今は蒼雷は蒼雷なんだが、少しだけオレンジ色が混ざったような電気なのだ。

 しかも、心なしか出力が上がっている。

 

 これはなんだ……? よく分からんが、パワーアップしているようだ。これもあの記憶のないときのことに関係あるのだろうか? 

 だが今は、これはこれで好都合だ。

 

 ジンオウガが誇る強靭な脚を目一杯使って飛び上がる。そのままセルレギオスよりも上空まで飛び上がり、回転して尻尾をセルレギオスに向かって振り下ろした。

 しかし流石の飛行能力だな。翼を大きくはためかせて、後ろに飛ぶことで躱されてしまった。

 目標を失い、落下の速度が合わさった尻尾が、地面に叩きつけられる。

 

 ドゴゴゴゴゴゴゴ! 

 

 その衝撃で砂漠の砂が空中に撒き散らされ、俺のことをすっぽりと覆い隠してしまった。

 

 うーわ、確実に威力が上がってんなこれ。

 

 砂のせいで視界が遮られ、思うように動くことが出来ない。が、すぐに殺気が飛んでくるのを察知し、サイドステップでそれを躱す。

 避けといて正解だったな。物凄い勢いで刃鱗が俺の横を通り過ぎて行った。

 

 確かに視界は悪いが、今の攻撃でセルレギオスが地上に降りてきているというのが分かった。

 そして再び全力のジャンプ。上空から地上の様子を伺ったところ、セルレギオスが砂けむりの中でキョロキョロとしているのが見えた。

 

 背中を完全に晒しているセルレギオスに向かって、俺は新技を試してみることにする。

 ルドロスを食べて得た水球攻撃。あれのおかげで、俺の口内には物を飛ばす機能が生まれている。それを応用し、雷の塊を飛ばすことに成功していたのだ。

 

 口内に雷エネルギーをチャージし、雷球を発射する。と同時に雷光虫弾を4発発射。

 無防備に構えていたセルレギオスに雷球が直撃し、怯んだところに雷光虫弾が襲いかかった。

 

「キャアアアァァァァァ!?」

 

 かなりのダメージを与えたはずなんだが、セルレギオスは即座に羽ばたいてその場を離脱し、上空で俺の姿を目に捉えた。その顔は怒りに染まっている。

 そして怒りに任せて刃鱗をめちゃくちゃに飛ばしてきた。

 

 やばっ、空中だから避けようがない……! 

 

 最初と2発めの刃鱗を前足で弾き、3発めを雷球弾で相殺するも、そこで俺の抵抗は終わり、腹と体の側面に2発ずつ刃鱗が突き刺さった。

 

 ぐああ!! やられた…… これが裂傷状態か。

 

 刃鱗は抜いたのだが、刺さった場所から血がダラダラと流れている。しかもそれが止まる様子はない。裂傷状態による継続ダメージだろう。

 

 このままでは出血多量で戦闘が続行できなくなる。

 裂傷状態だから動かなければ治るはずだが…… そんな隙を奴が与えてくれるわけないよなあ。長期戦はまずい、速攻で決めるしかない。

 

 しかしさっきの攻撃でよほど奴の警戒心が高まったのか、弾幕のごとく刃鱗を放ってきて近づくことが出来ない状態だ。

 

 遠距離攻撃を多用してくる相手に対しては…… 使えなくなるまで間合いを詰めろ。だったよな、親父!! 

 

 不規則に左右に揺れる歩法を用い、姿勢を極力低くして駆け出す。当然セルレギオスは刃鱗で対抗してくるが、左右に揺れる俺を捉えられないようで、それが俺にあたることはない。

 とはいえ危ない場面もあった。時には刃鱗を前足の爪で弾きながら、その距離を詰めていく。

 

 全く、なんて脳筋な考えなんだか…… もう少しほかにやりようはなかったのかよ。だが、嫌いじゃない! 

 

 ついにセルレギオスの懐に潜り込むことに成功した。慌てて翼をはためかせようとしているが、もう遅い。

 低姿勢からアッパーを放ち、すくい上げるようにセルレギオスの顎を捉えた。生物である以上、顎を揺さぶられたら脳が揺れる。つまり脳震盪を起こす。

 

 案の定セルレギオスは、フラフラとした足取りで数歩後ずさった。

 その隙を逃さず連続お手攻撃! 上から叩きつけるように3発繰り出し、セルレギオスを地面に撃ち落とす。

 

 これで……トドメだ。

 

 ジャンプをして体を丸め、空中1回転。遠心力を利用した尻尾での一撃が、セルレギオスの頭をかち割った。

 セルレギオスはピクピクと数度痙攣したが、その後に動き出すことはない。完全に死んだようだ。それを確認し、超帯電状態を解く。

 

 いやいやいや、明らかに火力上がりすぎだろ! お手攻撃したところとか鱗がボロボロになってるし。

 俺の知らないところで俺が強化されてる件…… 怖えぇ。

 にしても、親父の言葉をここで思い出すとはなあ。まぁ多少は役に立ったのは間違いないし、まぁいいだろう。決して認めたわけじゃないからな! 

 

 その後、しばらくじっとしていたら裂傷状態が回復した。治し方はゲームと同じだったようだ。まぁ自然治癒力が上がったらなんかはしなかったが。

 倒したセルレギオスは……取り敢えず寝床に持って行こうかな。

 

 

 

 ……Now loading……

 

 

 

 死んだセルレギオスを持って泳ぐのは大変だったが、なんとか寝床まで帰ってくることができた。

 

 はぁ疲れた…… でもこれで当面の食料には、ならないよなぁ。肉とか保存処理してないとすぐ腐るし。氷属性を手に入れられればなんとかなるか。

 

 現状での保存は無理だと思い、ひと思いにセルレギオスを食べる。

 味は……うん、まぁまぁかな。こんなもんだろう。モンスターとかどう見ても食用じゃないし、そもそも調理されてない。

 地球という料理の技術が発達したところにいた俺からしたら、やはり調理されてない肉を美味いとは感じられないんだよなぁ。美味いものは美味いんだが。

 

 食事もしたし今日は戦闘もして疲れた。早めに休もうかと思ったその時だった。

 

「流石。祖龍様の御使殿」

 

 そう、俺に話しかけるものがいた。

 

 

 

 




話の最初を見ていただいたらわかると思いますが、こんな感じでオウガさんの過去は少しずつ判明させていく予定です。

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