銀雷轟く銀滅龍   作:太刀使い

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第13話.進化

「……どうだ?」

「うむ、うむ。合格。問題なし」

「よっしゃ!」

 

 精神の修行を始めてから、はやくも3週間ほどが経った。その間は寝て起きたら瞑想や座禅(的なもの)などの修行、ほかにも色々やったが基本的には精神の修行。それしかしていない気がする。

 だが勿論進展はあった。ようやく、怒り状態の制御に成功したのだ。

 

「出力、安定性、共に高水準。もう暴走する可能性ない」

 

 古代竜人からお墨付きをもらい、晴れて俺は怒り状態を自分のものにすることができた。

 制御した怒り状態になると、雷が完全にオレンジ色の緋雷となり、身体能力が向上する。ここまでは最初からわかっていたことなんだが、そのほかにも五感が研ぎ澄まされることにより、さらに高度な戦闘が可能になっていた。

 あと、ジンオウガが怒り状態になると真帯電状態というさらに上の状態になれるってことは知ってると思うが、それも自在に使いこなせるようになった。

 もしかしたら、異常な能力アップはこの真帯電状態が原因の一つかもしれないなぁ。

 

 しかし疑問なのだが、怒り状態になるだけでここまで強くなるものなのだろうか? もはや自らの力の制御というより、進化というべき変化なんだが。

 

「然り。汝の怒り状態。通常のソレとはかなり違う。生物としての格、一段階上がってる」

 

 古代竜人に疑問を述べると、そんな言葉が返ってきた。本当にただの怒り状態ではなかったようだ。

 この生物の『格』なんだが、詳しいことは話すことが許されてないらしい。ただ少しだけ教えてくれたことによると、この世界の生物には例外なく『格』というものが存在している、と。

 別に『格』が高いからなんだとか、低いからなんだとかは無いようだが、『格』が上がれば上がるほどいいことがあるんだそうだ。肝心ないいことの内容については、教えてもらえなかったが。

 

「汝、もう修行の必要ない。暴走の心配も、もうない。でも忘れないで。アイツの復活は近い」

 

 古代竜人はそれだけ言い残すと、まるで霧のようにその場から消えてしまった。別れの挨拶もロクに出来なかったが、何故だろう。やつとはまた会う気がしてならない。

 

 結局アイツという存在についてはなんも収穫なかったなぁ。ま、俺は俺で好きに生きてくつもりだし、アイツというのが何者なのか、今考えても仕方ないか。

 そんなことより肉が食いたい!! この3週間、精神の修行の一環とか言われて、野菜(薬草)とキノコしか食べてないぞ! いくら俺が雑食だからって、流石にタンパク質が欲しくなるわ。

 よし、早速狩りに出かけよう。

 

 

 

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 うおっ、眩しっ! 

 

 久々に外に出たので、太陽の眩しさに思わず目を細めてしまう。そして何より、ずっと寒い洞窟にいたから砂漠の暑さが2倍増しに感じるんだが……これは早めに慣れるしかないなぁ。せっかく砂原まで来たのに、ロクに外の探索すらまだ出来てないし。

 とりあえず、今は腹ごしらえだ! 

 

 

 

 ふぅ。久しぶりに食べる肉は格別にうまかったなぁ。

 

 あの後都合よくアプトノスを見つけ、即座に狩りを行なった。3週間ぶりに食べる肉の味は、生肉なのに高級料理店の牛肉の味がする気がしたよ。それほど肉に飢えていたってわけだ。

 

 アプトノスを食べて一服していると、向こうから何かがやってくるのが見えた。一瞬またハンターかと思ったが、それは杞憂に終わった。

 

「ニャニャ!? ビリビリさんニャ! こんなところで偶然だニャ」

「おお! あのアイルーじゃないか!」

 

 大きな荷台をガーグァに引かせて、その上でガーグァを操っているのは、こないだ俺が迷った森で仲良くなったアイルーの1匹だった。

 今更だが、何故アイルーが俺と話せるのかはよく分からん。本人達に聞いてみても、「なんとなくニャ」という曖昧なものが返ってきたし。今ではもう気にしてないが。

 ちなみにビリビリさんってのは俺のことな。

 

「まさか砂原に来てるなんてニャア。無事に森を抜けられたようで良かったニャ……って暴れるニャ!」

 

 アイルーを乗せたガーグァが激しく暴れまわっている。おそらく天敵であるジンオウガが間近にいるので、怯えて混乱しているのだろう。

 

「すまん……完全に俺のせいだな。ガーグァが可哀想だし、早めに離れた方がいいか?」

「すまないニャ。でもそれも出来ないんだニャア……」

「どういうことだ?」

 

 話を聞くと、このアイルーは砂原を抜けて海側にある仲間たちの村に物資を運ぶ最中なんだそうだ。しかし、その途中に大きなハプルボッカがいて、思うように進めないらしい。

 ハプルボッカは荷台を丸呑みにするので有名だし、思いがけない足止めを食らっている最中なんだとか。

 

「よし、なら俺がそのハプルボッカを退治してやるよ」

「本当かニャ!?」

「森で迷ってた俺を助けてくれたお礼が、まだ出来てなかったしな。任せといてくれ」

「ありがとうニャア。恩にきるニャ!」

 

 そうと決まれば早速行くとしよう。アイルーを助けるってのもあるが、怒り状態を制御した俺がどれだけ強くなってるのか。ハプルボッカにはその実験台になってもらうぜ! 

 

 

 

 ……Now loading……

 

 

 

 1時間後、俺の目の前には黒焦げになったハプルボッカが倒れていた。

 

 あれー? ちょっと強くなりすぎてませんかね? 

 真帯電状態を試そうと思って電力を溜めたんだが、まさか移行するときに起こる放電で致命傷を与えてしまうとは……

 そこからはまぁ、ほぼ身動き取れなくなったハプルボッカにとどめを刺して完了という、あっけないものだった。

 

 思った以上に自分が強化されてて驚いたわ……

 こりゃーもう俺に勝てるやつなんていないんじゃないか!? …………はい、調子に乗ってみました。んなわけねーわな。

 渓流で会ったイビルジョー、アイツには未だに勝てる気がしない。多分だけどアイツ特殊個体かなんかじゃないかと思う。纏ってる気迫がそこらのモンスターとはレベルが違うんだよな。

 

 あと強くなったからこそ分かるんだが、そのイビルジョーを圧倒していたハンターの少女。あれはもっとヤバい。恐らく対峙した瞬間には切り刻まれてるよ……

 そう思えるぐらい、隔絶した強さが彼女からは感じられた。

 

 ま、今まで通り慢心せずに常に慎重に行動するに限るな。忘れちゃいけないことだが、まだ俺成体じゃないし! 

 何はともあれハプルボッカは倒したし、アイルーにこのことを教えてやらなくちゃ。

 

 

 

 ……Now loading……

 

 

 

 

「ありがとうニャア、ビリビリさん。お陰で仲間達に物を届けられるニャ」

 

 ハプルボッカの討伐を確認したアイルーは、そうお礼を言ってきた。

 

「いやいやお安い御用だ。それに森で助けてもらった恩を、これぐらいで返せたとは思ってないからな。今度会ったとき、またなんか困ったことがあったら言ってくれ」

「それは心強いニャ。こんなに強いビリビリさんが味方でいてくれたら、みんな安心ニャ!」

 

 そう言って、なんどもお礼を言いながらアイルーは去っていった。ガーグァは終始怯えて暴れていたが。仕方ないこととはいえ、少し凹んでしまったのは内緒だ。

 

 さーて、今日はいい感じに体も動かせたし、そろそろ帰るかな。怒り状態を制御した今の実力もある程度だが把握できたし。

 砂原での生活も随分長くなってきたな。ほとんど洞窟の中にいたとはいえだ。あんまり一箇所に止まってもアレだし、そろそろ移動についても考えなきゃなぁ。

 

 

 

 

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