銀雷轟く銀滅龍   作:太刀使い

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今回は少し長めになっております。


第14話.灼熱の刃

「ギャォォォオオオオオオオン!!!」

 

 迫り来る真っ赤な刀身をした刃を、紙一重のところで躱す。ふと自分の真横を見ると、大地が黒く焦げているのが目に入った。あの灼熱の刃によって、大地が焼かれたのだ。

 

 あっぶねぇ! あと少しで自分がこんがり焼かれるところだった……これが斬竜ディノバルドか! 

 

 何故ディノバルドとガチバトルをしているのか。それを語るには、数時間前に時は遡る。

 

 

 

 ……Now loading……

 

 

 

 砂原での生活も、早くも2ヶ月が経とうとしていた。まぁそのうちの1ヶ月ほどは怒り状態の問題解決に使ったんだけどな。

 最初は早めに移動しようとか考えてたんだが、砂漠地帯でしかできないこともあるし、急ぐ旅でもないのでもう少し滞在しようと思ったのだ。

 

 ハプルボッカを倒した辺りからの1ヶ月。結構色々なことがあった。大型モンスターと戦うこともあったし、この地にいるアイルー達と仲良くなることもできた。今では彼らに肉を取ってくる代わりに、各地のアイルー達が運んできた珍しい食べ物を譲ってもらうという、共生関係が出来上がってるほどだ。

 

 前にこの地の強者であるディアブロスと戦い引き分けたんだが、それが効いたのかあれ以来ほとんどモンスターに、喧嘩を売られることはなくなった。

 アイルー達はそんな俺に、ボディーガードの役割も担ってほしいと言ってきたっけ。その件に関しては、この地にいる間だけという条件付きで承諾した。

 

 さてさて、何だかんだで2ヶ月も滞在したし、今度こそ新たな地に向けて旅を再開させたいと思う。

 この世界に来てだいたい半年経ったが、依然として俺の体は成体になっていない。いや、違うな。見た目は完全に成体レベルの大きさになった。でも、俺の感覚がまだこの体は成長するって言ってるんだよな。ま、気長に待ってみることにする。

 

 アイルー達に惜しまれながら、砂原を後にしようとしたその時、それは聞こえた。

 

「ギャォォォオオオオオオオン!!」

 

 大きな咆哮と、それに混じって聞こえる金属が擦り合わさったような甲高い音。こんな特徴的な咆哮をする生物は、一体しかいない。

 斬竜ディノバルド。巨大な尾を砥石の役割を持つ口で研ぎ、赤熱化させる巨大な獣竜種のモンスター。そいつが俺の行く手を阻んだのだった。

 

 

 

 ……Now loading……

 

 

 

 そして話は冒頭に戻るってわけ。

 

 このディノバルドが何故いきなり襲ってきたのかは分からないが、多分こいつの縄張りに入ってしまったとかそういうやつだろう。

 逃がしてくれそうにもないし、何よりこいつ隙がない。

 獰猛な猛獣のようにがむしゃらに襲いかかってくるわけでも、臆病な獣のように回避に専念するわけでもない。例えるなら……そう、狩人。相手の出方を伺い、一瞬の隙をついて仕留める狩人のような奴だ。

 

 いきなりの戦闘だったので、こちらはまだ超帯電状態にすらなれていない。それにひきかえ、向こうはすでに尾の赤熱化を完了させている。出だしは最悪だな……

 それにこのディノバルド、ゲームで見てたのより明らかに尻尾が長い。ディノバルドにとって尻尾が長いってのはアドバンテージでしかない。長ければ長いほど、その可動域が大きいということなのだから。

 

 と考えていう間に、ディノバルドが行動を起こした。大きく飛び上がって空中で体を回転させ、その大きな尻尾を叩きつけてくる。そこに込められた切断の力は、俺の装甲など容易く切り裂いてしまうだろう。

 単純にして強力。それがディノバルドが選んだ次の一手だった。

 

 しかし、単純だからこそ避けやすいってのもある。冷静にサイドステップを踏んで横に回避。次の瞬間、大きな尻尾が俺の真横に叩きつけられ、砂漠の砂を大きく巻き上げる。

 完全に避けたと思ったのだが、それが甘かった。なんとディノバルドの尻尾が小規模ながら爆発したのだ。ディノバルドが粘性を持った遅延性の爆発に長けたブレスを放ってくるということを、すっかり忘れていた! 

 横からの突然の衝撃に対応しきれず、体勢を崩してしまう。その隙に横長の刃が一閃。

 

「クァ……ッ!」

 

 鋭い刃が俺の鱗を切り裂き、赤熱化したことでもたらされる熱が、さらにその傷を焼き尽くした。

 堪え難い苦痛に、俺の口から声が漏れる。その後の痛みをなんとか我慢して大きくバックジャンプを2回。ディノバルドから距離を取ることに成功した。

 

 こいつ……強い! もしかしたら今まで戦ってきた奴らの中で一番強いかも。一撃が避けられた後の追撃の手をあらかじめ仕込み、それが成功した後の追い討ちの一撃。厄介な戦術と戦闘技術だ。

 だが、やられっぱなしってのは癪に触る……反撃開始と行こうかァ!! 

 

「グゥオォォォォォォ!!」

 

 咆哮を一つ。体の雷電殻をフル稼働させ、超帯電状態に移行する。背中の甲殻が上向きに展開し、全身の毛が逆立つ。

 突然の変化に、ディノバルドがわずかに動揺したのが分かった。その一瞬の隙を逃さずに、俺は行動を開始する。

 砂漠のモンスターの力を幾ばくか吸収したおかげで、砂地での戦闘にもなんら支障をきたすことがない。常にスペック全開で立ち回ることができる。

 

 全力疾走で砂地を駆け、互いの距離を詰めていく。走行スピードも前に比べたら格段に上がっており、すぐにディノバルドの眼前近くまで接近できた。

 ディノバルドはその構造上、後ろを振り向かなければ尻尾での攻撃をすることができない。しかし、この距離ではそんなことをしている暇はない。ならば必然的に体と体をぶつけ合う、力比べになるわけだが……その点はでは4つの足で支点を作れ、タックルするのに適した体を持つ俺に、軍配は上がる。

 

「グォォォオオオ!!」

 

 低姿勢で思いっきりタックルをかまし、ディノバルドを大きく吹っ飛ばす。尻尾を使ってなんとか転倒は避けたようだが、次の攻撃は躱せまい? 

 両前脚に雷エネルギーをチャージし、ジャンプして飛び上がる。飽和した雷が前脚から溢れ、蒼い雷が尾を引く。そのまま落下の勢いを乗せたスタンプ攻撃を、ディノバルドを叩き込んだ。

 着撃とともに溜めに溜めた雷を解放。まるで落雷が落ちたかのごとく爆音が響き渡る。

 

「ギャアアァァァ!?」

 

 悲鳴じみた叫びがディノバルドの口から発せられるが、彼も歴戦のモンスター。ただ痛みに悶えているだけでは終わらなかった。

 首をグリンとこちらの方に向け、口を大きく開いた。拙い! と思った時には奴の口内が赤く染まり、火炎弾が放出される。

 3連続で放たれた火炎弾を避けることが出来ず、俺は大きく吹き飛ばされてしまう。鱗の一部が黒く焦げ上がり、堪らず距離を取った。

 

 グゥゥゥ……やはり一筋縄ではいかんか……ここまでダメージを負わされるとは想定外だ。こいつを使わずに終われるかと思ったが、どうやら全力を出さなければいけないらしいな! 

 

 全力とは勿論怒り状態のことだ。怒り状態を制御した今では、別に命の危機を感じてなくても、いつでも怒り状態になることが出来るのだ。うーむ、怒り状態というのもなんかカッコ悪いので、これからは真帯電状態と呼ぶことにしよう。

 そもそも真帯電状態になるには、自家発電だけでは電力が足りない。雷光虫を呼び寄せないといけないんだが……そんな隙を奴が与えてくれるとは思えない。よし、ここは絡め手で行くか。

 

 スタンプを食らった箇所から白い煙が上がっているが、ディノバルドの戦意は衰えていないようだ。

 そんなディノバルドを見ながら、俺は口内に雷エネルギーを溜めて一気に放つ。放出された4つの雷球はディノバルドに着弾するも、派手さは無い。着弾した瞬間に微弱な静電気を発して消えてしまうほどだ。

 しかし、この技は威力重視では無いからな。その証拠に……

 

「ガ、ガァァァ、アアア!?」

 

 ディノバルドが小刻みに震えだした。よしよし、上手くいったようだな。

 あの雷球には麻痺の成分を含ませてあったんだ。今ディノバルドは麻痺状態ってわけだ。

 さて、致命的な隙が生まれた。あとは……!! 

 

 雷光虫が俺に反応して集まってくる。1匹1匹が青く強く輝く虫たちは、螺旋を描くように俺の元へと収束し、その電力を俺に貸してくれる。

 電力供給、完了!! 

 

 ドオオォォォォォォォン!! 

 

 先ほどのスタンプ攻撃を遥かに凌駕する爆音が響き渡った。あまりの衝撃に風が激しく吹き荒れ、砂が舞い上がっている。

 背中の展開していた甲殻がより攻撃的に隆起し、普段は展開しない前脚や後ろ足にある甲殻までもが、過剰な電力により展開し電気を帯びて淡く輝く。

 纏う雷は鮮やかな緋色となり、抑えきれないそれらが空中で弾けてバチバチと激しい音を鳴らした。

 

 真帯電状態へ移行した証だ。

 

 移行した瞬間から、体が軽く感じられる。まるで重力が自分の周りだけ減ったような。

 感覚が何倍にも研ぎ澄まされ、視界はより明瞭に、聴覚は僅かな音すら逃さず、空気の振動すら肌で感じられる。

 

 麻痺から解けたディノバルドが、驚愕したのかその場でたじろいでいる。ここまで激変するモンスターもそうはいないから、無理もないだろうが。

 そんなディノバルドを他所に俺は駆け出した。景色が次々に後ろへと流れていく。時間がゆっくり流れてるのではないか。そんな錯覚にすら囚われるほどの疾さだった。

 

 ディノバルドは反応できていない。反応した頃にはすでにお手攻撃を食らって体が地面から離れていた。

 カウンターとして放たれる火炎弾。先ほどと同じなら食らっていたかもしれない。しかし、感覚が何倍にも引き上げられた今なら、まるで幼稚園児が投げたボールの如き遅さに見える。

 しゃがみ込んでそれらを躱し、トドメの一撃。緋雷を最大限まで溜め込んだ尻尾を薙ぎ払う。オレンジ色のラインを空中に残しながら、渾身の一撃がディノバルドの体を捕らえ、吹き飛ばしていった。

 数回地面をバウンドしたのち、ディノバルドは地面に倒れこむ。そして、二度と動くことはなかった。

 

 それを確認したあと、真帯電状態を解く。その途端、ドッと疲れが流れ込んできた。

 やっぱ疲れるな〜。真帯電状態は。この感覚、初めて超帯電状態に移行出来るようになった頃を思い出すな……

 真帯電状態の後はロクに戦闘出来なくなるから、あんまり使いたくなかったんだよなぁ。でもこのディノバルドはかなり強かったし、仕方ないか。

 うーん、今日はだいぶ消耗してしまったし、出発は明日にするかぁ。

 

 そう思いながら、ディノバルドの亡骸を引きずりつつ、今まで使っていた洞窟に引き返していったのだった。

 

 

 




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