銀雷轟く銀滅龍   作:太刀使い

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今回の話はオウガさんの視点とハンター達の視点で話が展開していきます。
視点変更の際はわかりやすいように●●Now loading●●という表記にしてあります



第20話.邂逅

 とりあえず今後の方針は決まったし、このアグナコトルを食べてしまおうか。黒焦げでいかにも美味しくなさそうな見た目だが、食うしかあるまい。自分で殺したモンスターは、残さず食べると決めているし。快楽殺人者にはなりたくないのだ。

 

 そうそう話は変わるんだが、アグナコトルの熱線攻撃って何かに使えないかな? 俺の考え通りだと、汎用性が高くて一度は使ってみたいアレが出来る様になるはずなんだが……まぁ明日のお楽しみかな。

 さてさて、ここら辺の主は結局アグナコトルっぽいし、次はどこら辺に行こうかな? 

 

 そう思った時だった。遠方から何者かの気配を感じ取ったのだ。

 

 何か近づいてくる? 結構小さいな……てかこれってまさか!? 

 

 俺の目の前に現れたのは、いつかの渓流で見たヤバい少女と、迷子になった森の外で会った、あのハンター達だった。

 

 

 

 ●●Now loading●●

 

 

 

 大きな爆発音がした方向に一直線に走ってきたティナ達は、予想外の光景に驚いていた。

 それもそのはず。そこには真っ白なジンオウガが佇んでいたのだから。

 

「これはジンオウガ……よね?」

「分かりません……ですが、先ほどの爆発はこのモンスターのせいかもしれませんし、油断しないでください!」

 

 真っ白なジンオウガの情報など、ティナ達の知識にはない。要するに新種のジンオウガかもしれないのだ。ティナのこの場の判断は正しい。

 そして内心ティナは焦っていた。自分が思っていたより目の前のモンスターが強大だったからだ。自分1人なら大丈夫だが、後ろの2人を守りながら戦うとなると苦しい状況になってしまう。

 

 そうティナが思っていた時、カナトがユラリと一歩前に出た。

 

「いや、こいつはあのジンオウガだ……」

「カナト?」

 

 カナトは怒りのこもった目で白いジンオウガのことを見ている。

 

「だってそうだろう! 人間がこんなに近くにいるのに、威嚇の咆哮を上げずにこちらを観察してくるジンオウガなんて、あいつしかいない!!」

「ちょ、カナト落ち着いて!」

 

 いきなり叫び出したカナトを、エリンが焦ってなだめる。

 

「エリンさん、どういうことなんですか?」

 

 ティナは件のジンオウガが、咆哮をほとんどあげなかったという事実を知らない。報告の際、カナトが伝え忘れていたのが原因だが。

 それを聞いて、ティナは成る程と呟いた。

 

「確かに咆哮をしないモンスターは珍しいです。しかし、居ないということもありません。コレだけの理由で決めつけるの時期尚早だと思いますが」

 

 ティナが説得したのをみて、エリンは内心安堵していた。普段冷静なカナトが取り乱したのには驚いたが、ティナの説得ならば素直に従うと思ったからだ。

 しかし、エリンの思い通りに事は進まなかった。

 

「ティナさんは直接あいつを見てないから分からないんだ……でも僕には分かる! あいつが、あいつがバスクをやったジンオウガなんだ!!」

「カナト、何をしてるの!?」

「ダメです! カナトさん!!」

 

 説得するティナの声も、制止するエリンの声も無視して、カナトは背中からスラッシュアックスを抜き放ち、単身白いジンオウガへと突っ込んでいく! 

 

 

 

 

 ●●Now loading●●

 

 

 

 

 白い装備の太刀使いの少女……あのイビルジョーを圧倒していたハンターか。相変わらずとんでもないほどの存在感だな。前世で会ったどれほどの達人でも、彼女ほどの気迫と風格の持ち主はいなかった。

 しかしだ。俺もあれから強くなった。勝てるとは思わないが、隙を見て離脱することぐらいはできると思う。

 

 それにあのハンター達もいるな。確かカナトとエリンだったか? ランサーのバスクが居ないようだが……

 俺が初めて怒り状態になったきっかけを与えた彼らだ。白い少女よりは危険は少ないだろうが、油断しないほうがいいだろう。

 

「あいつが、あいつがバスクをやったジンオウガなんだ!!」

「カナト、何をしてるの!?」

 

 ん? なんか言い争ってんのか? 

 と思ったのも束の間、いきなりカナトが飛び出してきた。手にスラアクを持っているし、明らかに攻撃の意思がある。

 

 おいおい、そんな直情的な攻撃が当たるかよ! 

 即座に超帯電状態に移行する。空中に飛び出していたカナトは、移行時に起こる衝撃波で大きく後ろに吹き飛ばされていった。同時に放出された雷が放射状に広がり、追撃を仕掛ける。

 

「カナトさん!」

 

 ここで白い少女が動いた。地面に倒されたカナトの前に素早く移動すると、神速の一太刀で雷を切り裂いたのだ。雷は左右に分断され、そのまま空中に霧散していった。

 倒れたカナトにエリンが駆け寄るなか、白い少女がその2人を守るように俺の前に立ち塞がる。

 

 マジかよ!? 雷を切り裂いただと? どういう芸当だよ。やっぱ力の差は歴然、か。

 だが妙だ。やろうと思えば今すぐにでも俺のことを切り伏せられるはずなのに、少女はこちらに向かってこない。あくまで防御に徹しようというのか? 

 確かにそこに立たれたら後ろの2人には攻撃できないが……別に取って食おうってわけじゃないし、このまま見逃してくれたらいいんだけど。

 

 と、その時、目の前の少女がポツリと呟いた。

 

「攻撃してこないのでしょうか?」

 

「いやいや、先に攻撃してきたのはそっちだろーが!」

 

 思わず口をついてそう言ってしまった。まあ、人間に俺の言葉が分かるはずもないし、どうというわけでもないが……

 

「な……!? い、今のは貴方が言ったのですか!?」

 

 白い少女が驚いたようにそう言ってきた。その言葉を聞いて俺も驚いてしまう。

 

「貴方って、もしかして俺のことか? アンタ俺の言葉が分かるのか!?」

「え、えぇ。どうやら聞き間違いではなさそうですね」

 

 どういうことだ……? 人間がモンスターの言葉を理解しているぞ!? 竜人族、ではないよな。耳尖ってないし。ならば一体? 聞いてみるか。どうやらこの少女に敵意はほとんどないっぽいし。

 

「何故俺の言葉が分かるんだ?」

「私は生まれが特殊なものでして。意識ある龍の言葉が分かるのです。それより、貴方は一体なんなのですか? 古龍でもないのに会話できるレベルの知性を持ち合わせているなんて……」

 

 うっ、その点については説明しづらいな。まさか転生した元人間です、なんて言って信じてもらえるわけないし。

 

「俺はジンオウガだ」

「いや嘘でしょう」

 

 アレェ? 俺ってばもはやジンオウガですらないの? 

 

「こんなに白いジンオウガがいるわけないでしょう! しかも古龍の中でもほんの一握りの数しかいない、会話可能な知性というものを持つジンオウガなんて……」

「といわれてもなぁ。俺はジンオウガのつもりだし、それが唯一の事実のつもりなんだが」

「はぁ、まぁいいです」

 

 少女がため息をついた。何だよ、俺が悪いのかよ……

 というか不思議だな。初めて喋ったはずなのになんだか話しやすい。スラスラと言葉が出てくるんだよ。 

 

「貴方が何者なのかは今はいいです。少し確認させてください。それが終われば、私たちはすぐにこの場から去りましょう」

「本当か? ならなんでも聞いてくれ」

 

 それから少女は俺に質問をして来た。前にカナトと会ったジンオウガとは俺のことか、とかまあ色々だ。

 そうしてひと段落ついたのか、少女が何か考えるそぶりを見せた。

 

「最後に一つだけ。貴方は人間の味方ですか? それとも敵ですか?」

 

 真剣な眼差しで聞いてきた。

 

「俺は人間に敵対するつもりはない。そちらが攻撃の意思を示さなければ、な。ただし、理不尽な理由で排除しようとしてくるなら……その時は抵抗する。最後までな」

 

 その問いに対して、俺も真剣な顔でそう返した。しばし見つめ合う俺と少女。そして次に少女が見せた顔は笑顔だった。

 

「そうですか。ならば安心ですね」

「お? 結構あっさり信じるんだな」

「いえいえ、これでも結構探ってたんですよ? ここは一つ、トップハンターのお眼鏡にかなったということで」

 

 はぁ? 今トップハンターって言ったのか!? 通りで強いわけだよ……

 

「では、私たちはこれで」

「おう。出来ればまた会いたいもんだな。アンタと話すのは中々楽しい」

「そうですね。また会えると思いますよ。その時は味方でいてくださいね?」

 

 そう言い残して、本当に少女は去っていった。カナトが何やら騒いでいたが、無理やり連れ去っていったな。

 というか、味方でいてくださいね? って……怖っ! それって脅しかなんかですか? 

 

 しかし、これでハンター達が俺のことを狙ってくることは、なくなったと思っていいんだろうか? 彼女がトップとはいえ、その発言力がどれほどのものかなんて俺は知らない。絶対ということはないかもしれない。

 だがまあ、一先ずは安心していいんじゃないかな。ハンターから狙われなくなったことだし、そろそろ里帰りも考えてみますかね。とりあえずこの火山での修行が終わってからだけど。

 

 少しばかり不安の種が取り除かれた気分で、俺は更なる強さを求めて火山の奥地へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 あ、そういや彼女の名前聞くの忘れたな……

 

 

 

 

 

 


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