銀雷轟く銀滅龍   作:太刀使い

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アイスボーンにジンオウガ亜種登場決定、おめでとう!
あの画質でジンオウガだけじゃなく、亜種まで相手することができるとは、なんて嬉しいことなのでしょうか……!


第27話.長

 長とか言われていた奴が俺の目の前に立った。その時初めて気付いたんだが、こいつ極み吠えるジンオウガみたいな見た目してるな……体つきはとてもがっしりしていて、周りのジンオウガより明らかに格が違うのが分かる。目は鷹のように鋭く、眼光だけで人を殺せそうなほどだ。

 

「おい、こいつぁ何者だ?」

 

 暫くこちらを観察するような目で見ていた長は、俺の後ろに立っていた堅物に話しかけた。

 

「はっ。森外周で狩りをしていたところ出会いました。こんな見た目ですが自らを狼だと言っております」

「俺が聞きたいのはそこじゃあねぇ。何故うちの里に連れてきたかってぇことだ。まさか敗れた訳じゃああるまいな?」

「それは……」

 

 堅物は初めて戸惑ったように口籠っていたが、チラリと俺を親の仇のような目で捉えた後、意を決したように長に向き直った。

 なんだよその顔は。俺が何かしたってのかよ? 

 

「敗れた訳ではありません。しかし察してしまいました」

「何を?」

「自分では……逆立ちしてもこいつには勝てないと」

 

 堅物がそう言った瞬間、集まっていたジンオウガ達がざわつき始めた。あちこちで何か言っているが、いかんせんジンオウガの意思表示に慣れてない俺からしたら、いっぺんに大勢が話すと何を表現しているのか分からなくなる。

 

「静まれぇい!!」

 

 長がそう一喝しただけで、騒いでいたジンオウガ達はピタリと騒ぐのをやめて、再び綺麗に整列し直した。成る程、この里では長の命令は絶対だということか。

 

「勝てない、ねぇ。うちの一番隊隊長であるお前がかぁ?」

「はい」

「そうかそうか。くくく……ぶあっはっはっはっは!!」

 

 堅物が再度認めると、長は盛大に笑い始めた。しかしその笑いは嘲るようなものではなく、心の底から面白いと思っている者がする笑い方だ。

 てか一番隊隊長って、まじで軍隊か何かかよ。たしかに狼は群れで狩りを行う動物だったが……

 

「誠に天晴れ! まさかこいつに勝る狼がぁまだ残っていやがったとはなぁ。おいお前ぇ!」

 

 そう言って長が俺の目の前に立つ。その体から発せられる威圧感は凄まじく、今にも押し潰されそうなほどだ。だがそれぐらいで怖気ずくほど俺はやわじゃない。

 

「なんだ」

「肝も座っているときたか。ますます気に入ったぁ! よっしゃ、少し手合わせしてもらうぜぇ?」

 

 そういうや否や、長は雷光虫を集め始めた。あまりに突然の行動に、周りのジンオウガ達も狼狽えている。そんな中冷静さを保っていた堅物が、号令をかけた。

 

「狼狽るでない! 長のコレはいつものことだろう。総員散開!」

 

 堅物の号令で我に帰ったジンオウガ達は、素晴らしいほど迅速にその場を離れて遠くから俺たちを見れる位置に移動した。なかなか洗礼された部隊のようだな。

 

「どうしたよそ見なんかしてぇ! こちとらもうチャージが終わっちまうぞ!?」

 

 視線を戻すと、すでに長は薄らと帯電し始めていた。普通のジンオウガならば、今からチャージを始めても到底間に合わないだろう。普通のジンオウガなら、な。

 

「悪い悪い。あんまりにも超帯電状態になるのが遅いんでな。時間を潰してたんだ」

「何ぃ?」

 

 そう言って即座に雷電殻を起動させ、超帯電状態に移行する。一瞬でチャージが完了した俺を見て、長が少なからず驚いたのが分かった。そして距離を詰めるのにはその程度の隙があれば十分だ。黒曜石のような光沢を持つ爪で、袈裟懸けに斬りかかった。が、寸でのところで同じく爪による斬撃で止められてしまう。

 

「お前ぇ……今のは一体なんだぁ? チャージ時間ゼロで覚醒状態になるやつなんざ、見たことねぇ」

「それを素直に教えると思うか?」

「はっ! それもそうだなぁ!!」

 

 そう言って長は鍔迫り合いになっている爪にグッと力を込めた。思いのほかその力は強く一歩、また一歩と押し込まれてしまう。

 こいつなんて馬鹿力なんだ!? 自惚れかもしれないが、これでも俺はパワーには自信がある方だ。力比べで負けたことはほとんどない。だがこいつの力は今までのやつとは群を抜いて強い! 

 このままでは不味いと思った俺は、一気に力を抜いて長のバランスを崩しにかかった。案の定前のめりになった長の脇腹に、刃尾での強烈な斬撃を加える。浅くはない傷を負った長はバックジャンプで一旦距離を取った。

 

「おいおいマジかよ。この俺が先手を喰らっちまうとはなぁ。お前のその尾、一体どうなってやがんだぁ? 俺らのとは作りが違ぇな」

「そいつも秘密だよっと!」

 

 言いつつ雷光虫弾を4発放ち、俺自身もそれに合わせて疾走する。雷光虫弾は長の攻撃によって防がれてしまったが、距離を詰めることはできた。両前脚に雷をチャージし、いつもの落雷スタンプをくりだす。流石の長も不味いと感じたのか、受け止めるのではなく避けるのを選択したようだ。だが甘いな! 

 口をガパリと開いてそこにエネルギーをチャージ。ビームのように雷を発射した。これこそブラキ戦でも使った雷ブラスター。アグナコトルの能力を得て獲得した新たな技だ。

 

「グゥゥ!!」

 

 流石にジンオウガなだけあって雷耐性はアホほど高いな。だがブラスターに込めた熱や衝撃まではいなしきれまい。実際長は十数メートルほど地面を滑りながら後退した。

 

「はっは! やるじゃねぇかお前ぇ! 正直言ってみくびってたぜ。まさかここまで強いなんてなぁ。よし、その強さを認めてここからは本気も本気。ガチの状態で行かせてもらうぜぇ!」

 

 そう言って長はさらに雷光虫を呼び寄せていく。あの長の発言から流石に察した。やつは真帯電状態になろうとしている。

 長は俺の強さを認めてくれた。ならそれに答えて俺も全力で行かなきゃ失礼ってもんだろ! 

 

 俺も雷光虫を呼び寄せて真帯電状態に移行する準備を始める。青色に輝く雷光虫が辺り一面を飛び回り、幻想的な風景を生み出しているが、すでにヒートアップしてしまっている俺たちの視界には入ってこなかった。

 そして同時に鳴り響く2つの落雷。片方は澄んだ湖の如き蒼い雷を、片方は燃え盛る刧火の如き緋色の雷を。真帯電状態になった俺たちが生み出した衝撃波で草原の草がザワザワと揺れている。そして今まさに蒼と赫が激突しようとしたその時──

 

「そこまでぇ!!」

 

 先程避難の号令をかけていた堅物が、間に入って待ったをかけたのだった。その瞬間に俺たちの動きがピタリと止まる。見ると、お互いの顔に爪を突き立てる寸前だった。置き去りにされていた風が渦を巻くように激しく吹き荒れていく。

 

「いいとこだったのによぉ。なんで止めた?」

 

 不満そうに長が堅物のことをジロリと睨む。

 

「強いものを見つけたらすぐさま飛びかかる貴方のその癖……どうにか出来ないのですか? これ以上暴れられると里への被害がひどくなるので止めさせていただいたのですが、問題ありますか?」

「チッ、ねぇよ」

 

 そう言って長は突き出していた爪を引っ込めて、真帯電状態を解除した。それをみて、俺も真帯電状態を解除する。

 

「いや悪ぃな。お前があんまりにも強そうだったのでなぁ。ついつい血が滾っちまった。だがお前の強さはよくわかったぜ? 俺と互角……いや、お前はまだ力を残してやがったよなぁ? つーことはお前の方が強いってことかもな! ぶあっはっは!」

 

 長は何が面白いのか、声高らかに笑い始めた。それを見て俺は苦笑すると同時に、侮れないやつだと再認識した。たった数分の試合で俺がまだ余力を残していることに気づいたのだ。この長の洞察力には舌を巻くレベルだな。

 

「全く話が進んでないな……で? お前がこの里に来た理由はなんだ。連れてきたんだから理由ぐらい教えてもらうぞ」

 

 長の笑いがひと段落したところで堅物がそう言ってきた。

 理由ねぇ。初めは興味本位できてみただけだったんだが、見た感じここは居心地が良さそうだ。長と戦闘しただけで何が分かるんだって思われるかも知れないが、どうやら俺は仲間というものに飢えていたらしい。

 10歳の頃にアイツと出会ってから、1人になることなんてほぼ無かったからな……1匹狼の黒狼と呼ばれてた頃の俺が聞いたら、なんて思うことやら。

 

「俺を仲間に入れてくれないか? 力ならさっき見せた通りだ。きっとみんなの力になれると思う」

 

 率直にそう告げた。暫く沈黙が続いていたが、それを破るように長が一歩前に進んでくる。

 

「あ? てっきりもう仲間なんだと思ってたんだが……違ぇのか?」

 

 予想外の言葉に目を丸くさせていると、堅物がやれやれと言った風に首を振った。

 

「長がそういうなら我々には特にいうことはない。白き狼よ、我らの里に歓迎しよう」

 

 堅物がそう言った途端、周りのジンオウガ達が次々に遠吠えを上げ始めた。どうやら本当に歓迎してくれてるらしい。少し照れ臭くて前脚で顔をポリポリとかいていると、長が頭を少し下げてきた。

 

「これは?」

「互いの頭を軽く合わせるのが、俺らの仲間の証だ。お前も早くしろぉ」

 

 言われるがままに頭を下げコツンと長の頭に合わせると、ジンオウガ達の遠吠えがさらに大きくなる。

 この世界に来てはじめての仲間を得て、何故だか目頭が熱くなるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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