銀雷轟く銀滅龍   作:太刀使い

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ゆっくりとですが更新再開していきたいと思います。長らくお待たせしました。


第31話.再会

 密猟団を壊滅させてから2ヶ月はたっただろうか。あれから縄張り内で人間を見たという話は一切聞いていない。ティナが他の人に話さなかった証拠だろう。彼女には感謝しなければならないなぁ。

 

 拐われた子供達は当初酷く怯えて親の元から一向に離れようとしなかった。そんな子供の姿を見て、復讐に燃える何体かの仲間を宥めるのに苦労したもんだ。今ではその子供もすっかり元の調子に戻って、他の子供達と遊ぶようになっている。少々用心深くなった気がするが、過酷な自然界で生きていくにはそれぐらいがちょうどいいのかもしれないな。

 

 仲間のジンオウガを宥めたって話だが、どうやらこの群れの奴らは人間に対しての認識が随分と甘いところがある。ほとんどこの森から出た事がないらしいし、人間というものをそもそもあまり見た事がないのだろう。なので仲間を宥めるついでにいろいろ教えてやったよ。人間の弱さとそれを補ってあまりある数々の強さを。

 最初は人間が自分たちを脅かす可能性がある存在だと聞いて、信じられないと言った具合の仲間も多少はいた。だが自分の体験談も交えて様々な意見を交わしていくうちに、まだ少し侮っているとはいえ認識を改めてはくれたようだ。

 何より怖いのは、下手に人間側に手を出して討伐対象になってしまうことだ。もしもそうなったらいくらレオン達といえども無事じゃ済まないだろう。なのでこれからも人間関係の話にはよく注意して行動していきたいと思ったね。

 

 さて、話は変わるのだが、最近変な噂を聞くようになったんだ。なんでも縄張りの境界線付近で、奇妙なジンオウガを見たって話だ。んでこれが話を聞けば聞くほど今のわからない話なんだよな。

 曰く、1度目にしても瞬きの合間にいなくなるとか、そのジンオウガの近くには常に黒い霧が出ているとか、黒に近い体色をしているとか。

 黒い体色ってことはジンオウガの亜種である獄狼竜ではないかと考えられる。黒い霧ってのは龍属性のオーラが漏れ出ているのか? イビルジョーみたいに。だが最初の一つ。瞬時に姿が消えるというのが意味がわからない。オオナヅチじゃあるまいし、ジンオウガに姿を消す能力があるなんて聞いた事がない。ましてや獄狼竜なら尚更だよな。

 

 最初は見間違いか他のモンスターなんじゃないかって話でこの話題はおしまいになった。しかしその後にも同様のモンスターを見たという報告が相次いだ。ここまできたら単に勘違いや見間違いの線は薄いと言っていいと思う。

 縄張りの近くということもあるし、流石に放って置くわけにもいかない。レオンはそう判断したようで、名待ちの個体を2人1組で探索に出すことに決めた。レオンを除けば俺を含めて6体しかいない名持ちを総動員だ。それほど異常事態だと受け止めたってことだろ。

 そして俺のペアは、群れに入った初日に手合わせしてから仲良くなったランだった。

 

「ランはこの件についてどう思う?」

 

 探索をしながらそうランに聞いてみた。まだ群れに来てから日が浅い俺はジンオウガ事情と言うのをよく知らないからな。

 

「そうさな……吾輩もこのような事態は初めて故、理解に苦しむと言ったところであるな。突然消えると言うその生物、なんとも珍妙な……」

 

 予想通りというべきかランにもよく分からない事態のようだ。これは俺やこの世界のジンオウガですら知らない、新しい個体のジンオウガと言う線もあるな。そう考えると不謹慎ながらもジンオウガ好きの俺からしたら、ワクワクしてきた。

 

 しかし実際にはそのような生物に会うどころか、黒い霧すら発見出来ずに夕方になってしまった。これ以上縄張りの境界付近をウロウロして他の群れのジンオウガや他のモンスターを刺激しても不味いし、今日はもう帰ろうと言うことになった。まさにその時だった。

 

「む!? シロウ、これは件の霧ではなかろうか!」

 

 大声を上げたランの方を振り返ると、確かに森のさらに奥の方から黒い霧が漂ってきているのが見える。それは龍属性のように赤黒いような色ではなく、まるで全てを吸い込んでしまうかなような漆黒だった。

 

「ラン、どうやらこいつは当たりかもしれねぇな」

「であるな。どうする、シロウ?」

「ようやく尻尾を掴んだんだ。行くしかないだろ!」

 

 俺とランは当たりを警戒しつつ、黒い霧が漂ってくる方に向けて歩みを進めた。

 

 

 

 ……Now loading……

 

 

 

「くっ、ここまで来ると周囲を見渡すのも厳しくなってくるな……」

 

 黒い霧の発生源を突き止めるため進んだはいいものの、森の奥はさらに霧が深くなっており、自分の周囲以外はほとんど見えないと言う状況だった。しかも霧が黒いものだから、光も通さずに完璧に視界を遮ってくる。非常に厄介な代物だ。

 

「シロウ、あまり離れない方が良いのである。この先から、得体の知れない気配がする故に」

 

 ランの言った通り、確かに何者かの気配を感じ取れる。しかし黒い霧で視界のほとんどが遮られていて、何がいるのかは全くわからない。

 

 そうしてさらに進むこと数分、ようやくその気配の正体とご対面することになった。そいつの姿は確かにジンオウガ亜種に似ている。しかし所々が亜種とは全く異なっている。

 まず黒い。亜種も黒を基調とした体色をしているが、こいつはさらに黒い。体毛までもが漆黒の色をしている。そして全体的に小柄だ。わかりやすく言うなら、最小金冠サイズより小さいと言ったところだろうか。

 

「グルルル……」

 

 黒いジンオウガはそう小さく唸ったあと、なんとまるで煙か何かのように消えてしまったのだ。

 

「ほ、本当に消えたのである!」

 

 ランが驚いているが、俺には即座にそうじゃないと言うことがわかった。

 

「いや違う! 奴はどういうわけか透明になっているだけだ!」

 

 現にここから離れるように草木が擦れ合う音が遠ざかっていっている。せっかく発見できたのだ。ここで逃すのはあまりにも惜しい。

 すぐさま超帯電状態になって追いかける。驚いているランを置いてきてしまったが、まぁあいつならなんとかなるだろ。幸い身体能力は俺の方が高かったらしく、すぐに追いつくことができた。逃げる奴の前に回り込み、行手を塞ぐ。すぐ後からランが追いついてきて、黒いジンオウガをうまく挟み込むことに成功した。

 

「さて、お前が何者で、何故ここにいるのかを聞かせてもらおうか? 素直に話すことをオススメするがな(・・・・・・・・・・・・・・・・)

「ッ!!」

 

 俺のセリフに反応してなのか、何故か黒いジンオウガは目を見開いてしばらく硬直していた。そして俯いたかと思うとプルプルと小刻みに震え始めた。

 

「……け……た」

「ん? なんだって?」

「やっと、見つけた!」

 

 そう言いながら黒いジンオウガが飛びかかってきた。咄嗟に避けてしまったが、まるでその動きを読んでいたかのように方向転換してきた黒いジンオウガにあっさりと捕まってしまった。

 

「な!?」

「やっぱり。咄嗟の回避は右側に飛ぶ。昔からの貴方のクセ。それにあの脅し文句。昔と同じ」

 

 こいつの言っていることが分からない。昔からのクセ? 俺がこの世界に来てからまだ1年程度しか経っていない。なのに昔からのクセってどういうことだ? そもそも俺は真っ黒なジンオウガとの面識なんてないぞ。

 

「まだ思い出せない? 少しショック……私、澪音(みおん)。『黒狼の影』澪音」

「な、澪音だと!?」

 

 澪音といえば前世で俺の相棒だった少女の名前だ。10の頃犯罪組織から救い出してから、17で死ぬまでずっと共に過ごしてきた存在。親父からの依頼の時も、学校に行っている時も常に傍にいた兄妹のような奴だった。『黒狼の影』というのは俺の仕事を完璧にバックアップする彼女につけられた、敵国からの畏怖を込めた異名だ。

 しかしあり得ないだろう。ここは地球ではないし……だがさっきはっきりと黒狼の影って言ってたしな……

 

「本当に澪音なのか?」

「そう」

「じゃあ俺の母さんの好物は?」

「ショートケーキ……と見せかけて、本当は義父さんの手作り料理」

 

 間違いない……これは俺と澪音しか知らない事実なのだから。

 

「お前、なんでここに」

「実は……」

 

 そこから俺は澪音が何故この世界にやってきたのかの経緯を聞いた。まさか自殺とは……俺が死んだことで、澪音がそこまで追い込まらていたなんて。罪悪感やら後悔やらが俺の中で渦巻いている。

 

「母さんと……その、親父はどうだった?」

「お義母さんはとても悲しんでた。でもしっかりと現実を受け止めていたように思う。お義父さんは、なんともないって感じを出してたけど、お酒の量が増えてた。あれは悲しんでる証拠」

 

 彼女自身周りが見えてない状況だっただろうに、僅かな記憶から両親の様子を教えてくれた。それを聞いて俺は胸が締め付けられる思いだった。本当に2人には悪いことをしてしまった。俺だけでなく実の娘のように可愛がっていた澪音まで、2人の元を去ってしまったのだ。

 親不孝な息子でごめん……この想いが両親に届いていることを願わんばかりだ。

 

「2人の世界に入っているところすまぬが、そろそろ吾輩にもわかるように説明して欲しいのである……」

 

 あ、やべ。すっかりランのこと忘れてたわ。両親への想いは俺の胸の内に留めておくことにして、ランには彼女は敵ではないことを伝えた。

 

「ふむ。見れば2人は知り合いのようであるな。して、ミオンはこれからどうするのであるか?」

「そうだなぁ。お前行先とかあるのか?」

 

 澪音に聞いてみると、彼女はフルフルと首を横に振った。

 

「ない。強いていうなら、士狼の隣が私の行き先」

 

 キッパリと淡白な表情でそう言った。昔から彼女は感情が顔に出にくいやつだったが、こっちの世界でそれは変わらないのか。ま、そのかわり態度で感情が丸わかりなんだけどな。

 

「なぁラン、こいつも群れに入れることって出来ないかな?」

「ふーむ。そればかりは長に聞いてみないと分からないのである」

 

 まぁそうだよな。とりあえず帰るとしよう。あたりも暗くなってきたし、澪音のことをレオンに相談しないといけないしな。

 

 

 

 

 

 

 

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