銀雷轟く銀滅龍   作:太刀使い

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第32話.新入り

「なるほどなぁ。言いたいことは理解したぜぇ」

 

 俺とランは里に帰った後すぐにレオンに今日あったことを報告した。同時に澪音の群れへの参入の件も。レオンはしばらく目を瞑って何かを考えた後、ゆっくりと目を開いた。

 

「狼の群れってのはぁな、どんなやつもウェルカムって訳にゃいかねーんだ。だから本来ならもうちっと考えるべきなんだがぁ……今うちに必要なのは戦力だぁ。そいつが戦力になるってんなら、特別に群れに入れてやってもいいぜぇ?」

 

 要するに戦える力があることを示せば、群れに入れてくれるってわけか? シンプルだな。レオンらしいといえばらしいんだけども。

 

「澪音、お前どれぐらい戦えるんだ?」

「分からない。この世界に来てからあんまり経ってないから。上位レベルのリオレウスなら勝てるぐらい?」

 

 それって結構強いんじゃ……澪音って前世はハッキング等や潜入調査での情報制握が得意だったから、あんまり戦えるって感じじゃないんだけど。薬物を使った間接的暗殺なら結構得意だったが。

 

「よし、ならうちから出す奴に勝てるか追い詰めるかができたら、群れに入れてやるよぉ。おい、ソウカ!」

「は、ここに」

 

 レオンが呼び出したのは、名持ちの女性(メス)であるソウカだ。ソウカは名付きの中で一番レオンを慕っており、特に忠誠心が高い奴だ。

 というかレオンのやつ、完全に面白がってるだろ……いきなり名持ちのやつを呼び出すとか、おれが連れてきた澪音の強さに興味津々なんだろうなぁ。

 

「先に降参させた方が勝ち。シンプルでいいだろぉ? あ、ちなみに死ぬような攻撃はすんじゃねーぞ? じゃあ始めぇ!」

 

 レオンの号令のもと模擬戦は始まった。ソウカはなんでも群れの結成初期からのメンバーらしく。戦いの経験は百戦錬磨。対して澪音は戦闘経験はほとんどないと言ってもいいだろう。本人は戦えると言っていたが、いざというときは止めに入る心持ちで2人の試合を見守ることにした。

 

 先に仕掛けたのはソウカだ。素早い身のこなしで澪音に近づき、その鋭い爪を振るおうとしている。

 それだけならば普通の行動なのだが、なんといっても速い。ソウカは今まで見た仲間のジンオウガの中で、1番と言っていいほど速かったのだ。しかも一切無駄がない。攻撃への移行があまりにもスムーズで、目で捉えるのも難しいかもしれない。

 

 それを前にして澪音は特に驚いた様子もなく体を傾けることで難なく回避していた。ぶっちゃけ今の動きを初見でされたら、俺だって少しは動揺するだろう。しかし澪音のやつは全く動じず冷静に対処して見せた。

 先程澪音は戦闘に向いてないかもと思っていたが、そういえば彼女にはこれがあった。どんな局面でも取り乱すことのない胆力。これこそ彼女の強みの一つといえるだろう。

 

「次は私の番」

 

 そう呟いた次の瞬間、澪音の体から黒い霧が勢いよく放出された。黒い霧は途端に辺りを黒く包んでいき、その霧にソウカも飲み込まれてしまう。

 その光景を見て周りのジンオウガ達がざわつき始めるが、そこはレオンの一喝によって収められた。というか彼の目もすごいことになっている。まるで新しいおもちゃを与えられた子供のように、キラッキラに輝いているのだ。それを見て、俺は頬が引き攣るのを抑えられない。

 

 黒い霧の中で戦闘は続けられているのだろう。時折硬いものがぶつかり合ったような音が聞こえてくる。その光景はしばらく続き、そろそろみんなが焦れ始めてきた頃、戦局に動きがあった。

 ソウカが黒い霧の中から勢いよく飛び出してきたのだ。その体は至る所に切り傷や打撲跡がついており、中でも激しい戦闘が想像できる。そして次の瞬間、フィールドに充満していた黒い霧が内側から吹き飛ばされるようにしてかき消きえた。

 

 その中央に立っているのはもちろん澪音。なのだが、その風貌は先ほどまでのソレとは大きくかけ離れていた。雷電殻が展開され、全身の毛が逆立っている。超帯電状態になった証だ。

 しかしその見た目は通常種の元とはまるで違う。通常は青白い雷を纏うのだが、彼女の雷は黒い。全てを吸い込むような漆黒の雷が彼女を覆っているのだ。『黒い光』という矛盾したものを纏った澪音は、一歩、また一歩とソウカに向かって歩き出す。その歩みは圧倒的強者特有のプレッシャーを放っていて……

 

「降参だ。私の負けを認めよう」

 

 ソウカが降参を宣言したことによって、澪音もその歩みを止めた。と同時に、静まり返っていたギャラリーから歓声が上がる。どうやら今の2人の戦いをたたえているようだ。

 

「ぶあっはっはっはっは!! こいつぁ驚いた! まさかソウカ相手にこうも一方的に勝っちまうとはなぁ! おし、今日からミオンも俺たちの仲間に加えてやろう! てめぇら、文句はねぇよなぁ!?」

 

 レオンの言葉と共に周りのジンオウガが一斉に遠吠えをあげ始める。俺が群れに加わった時と同じように、澪音のことも歓迎してくれているようだ。

 

「ミオン、だったか? 思ったより強くて驚いたよ。改めて、私はソウカ。これからよろしく頼む」

「あなたも十分強かった。これからよろしく、ソウカ」

 

 ソウカに教えてもらいながら、澪音とソウカが頭をコツンとぶつけ合う。これで澪音も正式にこの群れの一員となったわけだ。

 沢山のジンオウガ達の遠吠えに祝福されながら、俺は安堵の表情を浮かべていた。

 

 

 ……Now loading……

 

 

 

 その夜、澪音が使った力について詳しく教えてもらえた。なんと彼女は俺を転生させたのと同じ少女に導かれてここにやってきたようだ。その時俺と同じように加護を受け取ったのだが、それが今日使った力なのだという。

 黒い霧の力は、相手の判断能力、身体能力にディレイをかけるというもの。さらに霧を吸い込めば吸い込むほど、相手を状態異常にさせるというとんでもないおまけ付き。正直ぶっ壊れだった。

 

「めちゃくちゃ強いじゃん……俺のと違って即戦力になるし、何より使い勝手が良すぎるな……」

「でも遠い目で見たら、能力吸収ほどのチートもない。というかこっちの方が壊れ。もはや壊れを通り越してバグ」

「そ、そこまでかぁ?」

 

 正直そこまでの実感はない。たしかに便利な能力ではあるが、澪音のような魔法のような力があるわけでもないし、吸収とはいっても雷属性関連以外になると劣化コピーといったところだ。

 俺がうんうん唸っていると、澪音がトンと俺の方に体を預けてきた。

 

「今はそんなことより、また士狼と会えたことが嬉しい……」

 

 甘えるように寄りかかってきた澪音を見て、俺もフッと小さく笑った。

 

「ああ。俺もまたお前に会えて嬉しいよ」

「ふふっ。ありがとう、士狼」

 

『雷狼の里』の中心部である草原で、俺と澪音は寄り添いながら顔を上げる。そこに広がるのは前世では絶対に見ることの叶わないほどの、満天の星空。それを見上げながら、再び家族と会えた嬉しさを噛みしめながら俺は眠りについた。

 どうかこの幸せな時間、幸せな空間がずっと続きますようにと願いながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、ここまでの俺の新たな人生(竜生)はとても順調だったといえる。

 

 俺はこれまで運が良かった。この世界に転生して順調に力をつけ、仲間を得て、家族にまで会えた。そう、運が良すぎたのだ(・・・・・・・・)

 

 しかし、現実はいつもいつも都合がいいように出来ているわけではない。

 

 俺はこの先、それを嫌というほど思い知ることになる。

 

 

 

 

 

 




ご都合主義の時間は、そろそろ終わりに近づいてきました。
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