この章からは物語の展開上ハンターサイドの話も多くなってくるので、side⚪︎⚪︎と書くのはやめています。
第46話.2年後
『黒の呪い』が発生してからはや2年。人類は初めこそその対応に追われていたが、ティナ・ルフールとその仲間が持ち帰った情報によりウチケシの実が有効だということが判明。定期的にこれを摂取することで呪いにかかる心配は無くなった。そのせいで一時的にウチケシの実が市場から消えるなんてことになったが、それはまた別の話。
ギルドの方もこの2年血眼になってこの災害の元凶を突き止めるべく活動していた。これまたティナから持ち出された情報で、この現象は一体のモンスターが引き起こしていることが知れ渡り、ギルド内部は大混乱。未だかつてこの規模で影響を及ぼすモンスターなどいなかったからだ。
しかしギルドマスターであるキールの辣腕によって混乱は早期に収束され、ティナの情報にあった元凶のモンスターは膨大なエネルギーを欲して移動するというのをもとに、居場所の特定が急がれることになる。だがそれも困難を極め、さまざまな策が講じられては失敗に終わるというのを繰り返しているうちに2年が過ぎたというわけだ。
だが今日、2年にわたる調査と研究の末ついに今までにないエネルギーの発生場所が発見されることになった。
……Now loading……
「今日はキールさんから重要な発表があるって聞いたけど」
「もしかしたら、『黒の呪い』について何かわかったんじゃない?」
「だといいのですが。
ドンドルマのギルド内を歩いているのは2年の間で成長したティナ、カナト、エリンの3人。活動拠点を色々あってユクモ村から大陸の中心部にあり、ギルド本部があるドンドルマに移した3人は、まさに八面六臂の活躍で日夜人々のために戦っていた。
2年の間で17歳になったティナは、まさに少女と女性の中間特有の可憐さを醸し出しており、腰まで伸ばした銀髪が彼女の容姿をより一層際立たせている。昔からいたファンも今では数え切れないぐらいにまで増えたとか。
カナトは19歳ということもあり、2年前よりさらにガッチリとした体型になって男らしさが格段に上がっている。以前の面影を残しつつも逞しい男性として成長した。
エリンも同じく19歳。昔から知的な見た目をしていた彼女は、この2年で大人の女性らしさがかなり増したと言える。まさに出来る女と言ったその容姿には、密かに憧れている人も多いとか。
「おい、見ろよ。英雄様御一行だぜ」
「ああ。歩くだけでオーラが迸ってるっていうか」
「格が違うわよね〜」
ギルド内では超有名人になりつつあるこの3人。周りがガヤガヤと騒ぎ立てるのに気づくと、そそくさとギルドの内部へと早足で進んでいった。
「はぁ〜。私まだああいうのは慣れないのよねぇ」
「慣れるしかありませんよ……慣れたらどうとでもなくなります。無の境地です……」
「うわぁ、ティナさんが悟ったような目をしてる……」
気さくに話し合う彼女たちの間には、2年前よりも堅い絆が確かに見て取れる。人としてもハンターとしても確かな成長を経たようだ。
そんな3人だが、ギルドマスターの部屋の前まで来ると一瞬で気持ちを切り替えて真剣な眼差しとなった。そして3人を代表してティナがその扉を叩く。
「キールさん、ティナです」
「入ってくれ」
扉を開けて部屋に入るとそこには、大量の資料の山に囲まれたキールが疲れた顔をして椅子に座っていた。
「よく来てくれたな君たち。さて、今日呼んだ要件だが、『黒の呪い』関連で大きな進展があった」
「大きな進展、ですか」
「ああ。今までティナ君が言っていたエネルギー溜まりを探していたわけだが、2年という歳月をかけても小規模なものしか発見できていなかった。しかしだ、今回見つけたエネルギーの波長は今まで見つけたものと比べても規格外のものだと言ってもいい」
それを聞いてティナたちは息を呑んだ。大きなエネルギーが集まっているということは、それだけ危険なモンスターが集まったり災害級の自然現象が発生する可能性が高いということだからだ。
「してキールさん。そのエネルギーはどこで?」
「うむ、
新大陸。古くから存在は知られていたものの、空路にしろ海路にしろ安定した渡航が確立されていないため、近年までは知る人ぞ知る土地だった場所。しかし『古龍渡り』という、新大陸に向かって古龍が一斉に移動するという謎の習性が確認されてからは、新大陸古龍調査団が派遣されて調査が進められている未開の地のことだ。
「新大陸ですか……あそこはまだ調査がほとんど進んでいませんし、よく分かりましたね?」
「ああ、彼女がまたやってくれてな」
「彼女?」
「おーい、入ってきていいぞ!」
そうキールが言った途端、バン! と勢いよく部屋のドアが開かれた。そして入ってきたのは、見るからに分不相応なほどの大きさを誇る大剣を携えた、小さい女の子だった。
「エスメダ・クラスタリア。登場!」
「エスメダちゃん!?」
「久しぶりね、ティナ!」
彼女の名前はエスメダ・クラスタリア。ハンターギルドでティナが第一位の実力者だとすれば、エスメダはそのすぐ下の第二位と呼ばれるほどの実力者だ。
小さな体にもかかわらず、成人した男性のハンターが使うのと同じ大きさの大剣を振り回す彼女の怪力は、ハンターなら誰もが知っている光景なのだ。数年前まではティナと一緒にパーティを組んでおり、2人で古龍を撃退した話などは伝説としてハンターの間で語り継がれている。
「エ、エスメダ・クラスタリア!?」
「あの『粉砕』のエスメダ!?」
カナトとエリンもいきなりのビッグネームの登場に度肝を抜かしている様子。ハンターギルドが誇る最強戦力の2人が揃ったともなれば、当然だが。
「エスメダちゃん、久しぶりですね!」
「ティナも相変わらずみたいで安心したわ。というか、あんた随分と背が伸びたようね……」
「エスメダちゃんは相変わらずですねぇ。可愛いです!」
「や、やめろ! 頭撫でるなぁ!」
およそ2年半振りに親友と再開した2人のはっちゃける姿を見て、キールは微笑ましそうにそれを眺めている。だが今は重要な会議の真っ只中。気持ちを切り替えたキールはゴホンと咳払いをした。
「感動の再会のところ悪いが、私の話も聞いてもらえんかね?」
「あ、すいませんキールさん。つい……お2人にもはずかしいところを見せてしまいました」
「ようやく離してくれた……この隠れ怪力女……ご、ごほん。さて、私を新大陸から呼び戻した理由、そろそろ聞かせて貰おうかしら」
「うむ、これからはエスメダくん。君もティナくん達と共に行動してもらおうと思ってな」
それを聞いてティナとエスメダはより一層真剣な表情になった。もう一度同じパーティになれるのは嬉しいが、自分たち2人が同じところにいるということは、それほどの危険な任務が待っているということだからだ。
「新大陸で観測されたエネルギーの波長が大きいことは話したが、未だにその位置が確認できていないのだ。なにせ新大陸は『古代樹の森』と『大蟻塚の荒地』と呼ばれる場所しか調査が進んでないのでな」
未開の地である新大陸はほとんど開拓が進んでいない。だからギルドは定期的に新たな調査隊を派遣して調査を急いでいるが、それでもまだほとんどが手付かずというのが現状だ。
「観測されたエネルギーは過去の資料と見比べても比較にならないほど。さらにもしかしたらこれが『古龍渡り』と関連しているかもしれない。この事態を重く受け止め、ティナくんとエスメダくんを同じところに配置する結論に至った。どうかね?君たち4人の意見が聞きたい」
「成る程……確かに新大陸は未知な部分が多いと聞きます。戦力は多い方がいいと思ってましたし、私に異論はありません」
「私も同意見よ。ティナと私が組んだら怖いものなんてないわ!」
「僕も異論はありません。この2人の足を引っ張らないよう、頑張りたい所存です」
「私もです。新大陸の調査隊に恥じない活躍をしたいです」
4人の心強い意見を聞いてキールはしっかりと頷いた。
「よし、では本日から4人には新大陸で感知されたエネルギーの調査を命じる。ティナくん、エスメダくん、カナトくん、エリンくん。『黒の呪い』を解決する鍵は君たちに託された。必ず成功させてきてくれ!」
「「「「了解!」」」」
……Now loading……
キールの部屋から出た4人は、まず初対面の3人に対してティナが簡単に紹介を済ませていた。
「貴方達がカナトとエリンね。ティナから話は聞いているわ。私はエスメダ・クラスタリア。これからよろしくね!」
「カ、カナト・アルマールですっ! よろしくお願いします!!」
「エリン・シューザックです。こちらこそよろしくお願いします……」
まるで道端でいきなり有名人に話しかけられた町民のような反応をする2人を見て、エスメダは堪えきれないとばかりに笑い声を上げた。
「あはははははは!! そんなにガチガチにならなくてもいいわよ。あたしにもティナみたいに砕けた感じで話して欲しいわ。これからは一緒に行動する仲間だしね!」
「そういうことなら……よろしく、エスメダさん」
「大物はみんな懐が広いのね……私からもよろしく」
「うんうん、それでいいのよ!」
エスメダのフレンドリーさも相まって、3人はすぐに打ち解けることが出来た。諸々の自己紹介が終わったところでティナがこれからのことをエスメダに尋ねる。
「それでエスメダちゃん。新大陸にはいつ出発するんですか?」
「ふふふ……今からよ!」
「「今から!?」」
あまりの唐突さにカナトとエリンが素っ頓狂な声を上げた。
「エスメダちゃんのそのパワフルな行動力、相変わらずですね……」
「善は急げって言うでしょ。さあさっさと船着場に行くわよ! 大丈夫、新しい装備とか新大陸の概要は船の中で説明するから!」
そう言ってどんどん歩いっていってしまうエスメダ。その背中を呆れたようなため息を吐きながらも、どこか懐かしんでいる顔をしたティナが追いかける。
「エスメダさんって結構豪快な人なんだね……」
「ええ、でも面白そうな人じゃない?」
「まあ確かに。それに『絶刃』と『粉砕』の2人が揃ったんだ。心強いことこの上ないよ」
「それは二つ名?」
「うん、ティナさんとエスメダさんがハンターになって頭角を表してきた頃につけられたあだ名らしいよ。全てを断ち切る超絶技の刃と、全てを粉砕して突き進む姿からつけられたんだって」
「あはは……」
置いてけぼりにされたカナトとエリンがそう話していると
「カナトさん、エリンさん、早く行きますよ〜!」
「さっさと来ないと置いてっちゃうわよ!!」
遠くから聞こえる2人の声が響いてきた。
「今行くよ!」
「もう、置いていくのは勘弁して!」
色々な意味でこの2人に置いていかれないようにと決心したカナトとエリンは、声の聞こえる方に向かって走っていった。
ハンター達のプロフィール
(エスメダ以外は変更点だけ)
⚪︎ティナ・ルフール(17歳)
身長:165cm
髪:腰まで伸びた銀のロング
⚪︎エスメダ・クラスタリア(18歳)
使用武器:大剣
身長:148cm
髪:赤のツインテール
目:翡翠
⚪︎カナト・アルマール(19歳)
身長:180cm
⚪︎エリン・シューザック(19歳)
身長:173cm