「澪音〜、そっちはどうだった?」
「なんとか2体仕留められた」
「マジか! やっぱ狩りは澪音に勝てねーなぁ」
「ふふん」
アマツマガツチを倒してからもうそろそろ2年が経つ。俺と澪音はユクモ村がある地域から離れて、大陸の中心部で活動している。雷狼の里から離れるのは寂しいし心苦しかったが、終龍を追いかけるためには大陸の中心部で活動するのが都合が良かったのだ。
それに雷狼の里はレオンがしっかり守っていくと約束してくれた。ならば俺はそれを信じて仲間の思いを胸に先へ進むべきだろう。
そんな感じで今日まで色々やってきたわけだが、まずこの2年で俺達の食料となる草食獣がかなり減ってしまった。原因は当然あの瘴気のせいだ。ハンター達の間では『黒の呪い』とか言われてるらしいな。
ともかくあれのせいで草食獣が過剰に肉食モンスターに狩られたり、そもそも草食獣自身が瘴気に侵されて死んでしまうことが多くなった。その結果1日の食料を確保するのも難しくなるぐらい草食獣を見なくなってしまった。まあ俺は肉以外のものも食べられるわけだが、澪音はそうもいかないしな。
それにしても狩りの時は澪音の聴覚がとても役に立つんだ。俺も感覚器官はかなり強化されたはずだが、澪音のそれにはまだ及ばない。本当にキロ単位先の音まで聞き取れるから驚愕だろ?
「これ士狼の分」
「なんかいつも悪いな。俺も結構探してるんだが……」
「問題ない。狩りは任せて」
狩りは澪音に頼りっぱなしだ。兄として情けない限りだよ……まあ戦闘面ではかっこいいところを見せられてるはずだからおあいこと思いたい。おあいこのはず……だよな?
「士狼、ボーっとしてないで早く焼いて欲しい」
「ああすまん。今やるぞ」
俺たちは大体肉は焼いて食べている。勿論生のままでも問題ないのだが、元が人間ってこともあって焼いた肉の方が気持ち的に楽だし、やっぱり肉は焼いたほうが美味いだろ。
「ほい、こんな感じかな」
「ん、問題ない。美味しい」
そんな感じで夕飯となる肉を食べている時だった。澪音の耳がピクピクと動いた。これは付近に何かが接近している合図だ。
「なんかきたか?」
「ん、ティナが来てる」
「お、新しい情報かな?」
ティナには俺たちがよくいる場所を教えてある。このご時世どこから瘴気に侵されたモンスターが出てくるか分からないからな。回復の笛を吹いても襲われたことがあったので、効率よく合流するために場所を教えてるってわけ。
それにしてもティナ達まで大陸の中心部、正確にはドンドルマだがこっちに来るとは思わなかったな。まあこんな感じですぐに最新の情報を持ってきてくれるのはとてもありがたいが。やはり人間の情報網は素晴らしい。
「いい匂いがすると思ったら、食事中でしたか」
「おっすティナ」
「おっす」
草むらをかき分けてティナが現れた。いつものように純白の装備に身を包んだ彼女は、この2年でとても可愛らしく成長したと思う。まあその可愛らしさとは裏腹に、強さもめちゃくちゃ成長してるから怖いんだが。
「寛いでいていいご身分ですね。私たちは毎日モンスターの討伐に行っているというのに」
「いやいや、寛いでいるのは今だけだからな? 昼間は毎日終龍の痕跡を探してるからな?」
「ふふふ、わかっていますよ。少しからかってみただけです」
「ティナも肉食べる?」
「あ、いただきます」
「それ俺の肉なんだが……まあいいや」
澪音もこの2年でだいぶティナとは打ち解けたようで、今では友達の如く接している。あんまり他人と馴染むことのなかった澪音がこうして誰かと楽しそうにしているのを見ると、なんだが微笑ましいな。
「それでティナ。ここに来たのはまさか肉を食うためじゃないんだろ?」
「ええ。実はですね──」
ティナは今までにないほどのエネルギーの波長が観測されたこと、そしてそれが新大陸にあること、自分たちもそこに向かうことを話してくれた。
「新大陸っつーのは?」
「海を渡った向こう側にある未開の地のことです。私たちもほとんど調査の手が及んでないので、まさに盲点でした」
ん? それって前に古代竜人が言っていた場所のことじゃないか? 確か『古龍渡り』って言う現象が見られるとか言う……
それにしてもそんな場所があるとは知らなかった。この世界は前世でやっていたゲーム、モンスターハンターに酷似しているが、新大陸や『古龍渡り』なんてものは知らない。もしかして俺が死んだ後に発売されたモンハンの舞台だったり? いやそんな偶然はないか。
「知らせてくれてありがとな。これで終龍討伐に一歩前進したわけだ」
「いえいえ。まぁ今すぐ出発だと騒ぐエスメダちゃんを静めるのは苦労しましたが……」
「ん? 何か言ったか?」
「こちらの話です。ですが貴方達はどうするのですか? 新大陸は海の向こうにある大地。空を飛ぶか海を泳がない限り到達できませんが……貴方の古龍の力でなんとかするのですか?」
あ、そうそう。俺の古龍の力についてまだ話してなかったな。アマツマガツチの角を食べたことで俺はほとんど完全な古龍へと進化した。まあ食べた反動で1ヶ月昏睡状態になって澪音を悲しませてしまったが。
んで昏睡から覚めた後の俺は、それまでとはまるで違っていた。まず体色が銀色になった。体毛と鱗が銀色で、白い甲殻はそのままだったが謎の光沢がある。腹の方の皮の部分は相変わらず灰色だが、もはやジンオウガと同じなのはそこだけという悲しみよ。
あとは刃尾の刃の部分も銀色になっており、前脚の爪もこれまた銀色になった。あ、角もか。まさに俺の体はまっ銀銀になったわけだ。理由は知らん。何回も言うが俺が一番知りたい。
そして能力だが、俺の生み出す雷はどの状態でも変わらず銀色になったな。銀雷だ。いや銀雷ってなんだよって思うかもしれないが、これが本当に銀色の雷なんだからそれ以外に言いようがない。だから炎雷状態というのは無くなってしまった。
身体能力については言わずもがな。今まで以上に強化されたな。あと五感もさらに研ぎ澄まされてほんの些細な変化ですら察知できるようになった。もはやチートよチート。
一番驚いたのはここまでチート級の生物になったのに、アマツマガツチ戦でみた本気のティナに確実に勝てるようになったと断言できないところだ。いやちょっとティナさん強すぎませんか? 上には上がいるってことだな。ここまで強くなっても俺が慢心しない1番の理由だよ。
さて話を戻すが、新大陸に行く方法はぶっちゃけてしまえばある。
「いや、別に古龍の力を使うわけじゃない。まあ新大陸には多分いけるから安心してくれ」
「ならいいのですが。ミオンさんも来れる方法なんですか?」
「勿論だ」
てか澪音なら例え俺がなんらかの力を使って1人だけ新大陸に行ったとしても、普通についてきそうで怖い。それぐらいの執念をこいつからは感じる。
「報告したいことは以上です。では私はこれで……」
「もう夜も更けてきたし今日はここで一泊してけよ」
「ん。私ももっとティナとおしゃべりしたい」
帰ろうとするティナをつい呼び止めてしまった。この3人で話している時は本当に気楽に話せるから楽しいんだよな。多分新大陸に行ったらこうしてのんびりする時間もほとんど無くなるだろうし、今ぐらいはそんな気持ちになってもいいだろう。
「お二人がそう言うなら……今日はこっちで一晩明かしましょうか」
「そう来なくちゃ!」
「ティナ、何か心配でもあるの?」
「い、いえ。ですが一晩中出かけてると明日エスメダちゃんとカナトさん達になんて言われるか……」
「ティナなら恐れるものなんて何もないだろうに」
「いえいえ! こういう時のカナトさんとエリンさんはうるさいんですよ。いい年した女の子が遅くまで出歩くとは何事か、とか言って。それにエスメダちゃんはですね──」
その後も俺たちの楽しいおしゃべりは続き、そのまま夜明けまで喋り明かしていった。
……Now loading……
翌朝早くにティナはドンドルマに帰っていった。エスメダとやらが起きるまでに帰るつもりらしいが、話を聞いた感じ無理なんじゃないかと思う……
朝までくっちゃべってて疲れないのかって? 澪音も含めてここにいるのは規格外の存在ばかり。それぐらいじゃ疲れんさ。自分で言うのもなんだけど。
「それで士狼。新大陸にはやっぱり
「ああ。昔古代竜人から話を聞いててよかった。あの時は話半分で聞いてたが、まさかここに来て役に立つ日が来るとは」
しっかりと後始末を済ませた俺たちは、新大陸へと向かうために
ちなみにオウガさんのモンハン知識は、XXまでのものしかありません。これはやってないのではなく、ワールドが発売される前に死んでしまったからです。澪音も同じ。