銀雷轟く銀滅龍   作:太刀使い

54 / 61
お気に入り登録数が1000を超えとる……
最初に見た時、まさかここまでくるとは思っていなかったから驚きで目を見開きました。
これまでこの作品を見てくださった全ての人に感謝を!そしてこれからもよろしくお願いします!!


第54話.屍の谷

 人間たちの足跡を辿っていた俺たちはいつしか薄気味悪い場所へと辿り着いていた。その場所はなんというか、骨で出来ている。いや自分でも何言ってんだと言いたいが本当にそうなのだから仕方ないだろ。超巨大な骨を基礎としてその骨に積み重なった土や生物の死骸がこの場所を形成しているのだ。基礎となっている骨があまりにも大きいため、地下まで続く1つの地形が出来上がっているといえば、この骨のスケールが想像できるだろうか。

 

「このでかい骨の持ち主は、一体どれほどの大きさだったんだ……」

「推定、全長2kmぐらい?」

「マジかよ。それ生物として生きていけるのか?」

 

 全長が2kmとか普通に考えてあり得ないだろ。キロメートルだぞキロメートル。1日に食べる食事の量だけでも相当な量になってくるはずだ。そんなのが生きていたなんて少し信じられないな。まぁ実際に骨はこうして残ってるんだから大昔には生きていたのだろうが。

 

 さて、そんなド級の骨のインパクトに圧倒されていたが、そろそろこの場所の探索を始めようじゃないか。上層部は日のあたりはいいがなんだかおどろおどろしい場所だ。おそらくここは谷のようになっており、ここより上に住んでいる生物の死骸が落ちてきているのだろう。至る所に大小さまざまな骨が散らばっている。

 骨でできた土地に骨が積み重なっているのか……なんか墓場みたいな場所だな。

 

「士狼、あそこ見て」

 

 そう言って澪音が指し示したのは骨でできた大地の上の方。上層部の1番上の方だった。そこには全身を骨で覆った、ウラガンキンのような生物が丸くなって寝ているのが見える。

 

「んー、あんなモンスターは見たことないな。また新大陸固有のモンスターか」

「ん、骨を纏ったウラガンキンみたい」

 

 やはり澪音もそう思うか。まぁあいつのことは気にならない訳ではないが、寝ているならこちらに危害を加えることもないだろう。起こさないようにそっと離れるのが吉だな。

 そう思いつつ、俺たちは下へと降りていくための坂へと向かっていった。

 

 

 

 ……Now loading……

 

 

 

「これはひどいな……」

 

 中層で俺たちを待っていたのは、溢れんばかりの瘴気の霧だった。中層は全体的にこの霧が充満しているらしく、怪しげな黄色いもやがそこかしこに漂っている。

 頭上を飛んでいる小型の翼竜を見た感じ、この瘴気に長時間当てられると正気を失ってしまうようだ。現に小型の翼竜達は何もいない虚空に向かって威嚇をし続けている。

 だが俺には古龍となったことで殆どの状態異常にかかることはない。そして澪音も自分の能力の仕様上、この程度の瘴気にやられる程ヤワな体はしていない。要するに俺たちによって中層に漂う瘴気は問題にならないということ。

 

 恐らくだがこの瘴気はここに降り積もった死骸がなんらかの作用を起こして発生しているのだろう。この谷の上には生物が住みやすい環境ができていて、そこで死んだ生物がここに落ちてきてこの世界特有の微生物とかが死骸を分解する際に瘴気が発生するとか? 

 

「とりあえずもっと下に降りてみるか」

「ん」

 

 まだ道は下へと続いている。俺たちはさらに下へと進んでいくことにした。

 下へと向かう道中には特に生物の姿は見えなかったな。まあこんな環境だし住んでいる生物も少ないのだろう。虫みたいな小さいやつなら結構いたけど。

 あと道から逸れたところに大きな水溜りが出来ているのを見た。遥か上層から流れ落ちてくる水が、この谷で溜まって形成されているのだろう。そうなると、谷の上にある土地は水が豊富にあるってことか。ならば多種多様な生物が住んでいるんだろう。谷に落ちてくる死体が増えるのも納得だな。でなければ充満するほどの瘴気が発生し続けるなんてあり得ないし。

 

 そうこうしているうちに、最下層と思しき場所まで辿り着いていた。最下層は骨ではなく本物の地面が露出している場所だ。そこで気づいたが、この巨大な骨は蛇がとぐろを巻くような形で存在しているのだ。だから螺旋状に降れる道が出来ていたのか……

 そして道中で見た俺の体と同じぐらいの扇状になっている骨。あれは恐らく背中から生えていたものだろう。蛇みたいな形で、扇状の骨が連なって背中に生えている生物。ここまでくればこの骨の正体にも薄らと気づくってもんだ。

 この骨の持ち主は蛇王龍ダラ・アマデュラ。大きさこそ俺が知っているものより遥かに大きいが、恐らくダラ・アマデュラの死骸を元にしてここは出来たのだろう。

 

「新大陸にもダラ・アマデュラがいた?」

「そうかもな。だがなぜこいつはここまで大きくなったんだろう」

 

 今はもう骨しか残ってないからその問いに回答が出るときは来ない。だが一体の生物が生態系を作っているという事実に、俺は改めてこの世界のスケールの大きさというものを感じていた。

 

 その後最下層の探索を続けていたのだが、はっきり言って最下層はあんまり広くなかった。いやそれは違うな。恐らく俺が思っている以上に広いのだろう。だが俺や澪音では通れない大きさの小道がいくつかあって、その先に進めなかったのだ。

 

「うーん。これでここの探索も終了か?」

「士狼、こっちに道がある」

「お、本当だ」

 

 澪音が見つけた道を進んでいくと、そこは水色に光る水が両側に流れ出ている幻想的な場所だった。この水は一体どうなってるんだ? 

 そう思い水色の水に前脚の爪をつけた瞬間、ジュッという音と共に爪から煙が出た。

 

「ん? これ酸性の水なのか」

 

 どうやら強酸性というわけでもなく、爪には大した傷もついていなかった。だが人間がもしこの水に入っていたら、ドロドロになった可能性も十分にあるな。

 瘴気を作っている微生物的な何かがこの水に溶け込んでいるのだろうか? 多分この水は谷に積み重なった死体に触れているだろう。その際なんらかの形で酸性の水になったのかもな。水自体はさっき見た上から流れ落ちてきているものだろうし。

 

「士狼大丈夫?」 

「ああ。この程度ならなんともない。でもどんな危険な成分が含まれているか分からないから、不用意に近づかない方がいいな」

「この奥にも広場があるけど、そこで完全に行き止まりみたい」

「じゃあここで探索は終了だな」

 

 一応一通り見回ってみたが、人間の痕跡らしきものは確認できなかった。多分まだここにはきたことないんじゃないかな。この谷の上ならどうだろうか。今度はそっちに行ってみるか。

 そう考えていたとき、いきなり大きな音を立てながら地面が揺れ始めた。

 

「地震?」

「いや違うぞ……これは地脈の道で何かとんでもなくでかい生物がみじろぎしてるんだ」

 

 確かにこれは地脈の道からの振動で間違いない。だが地震と間違うような揺れを起こせる生物なんているのか? 龍脈が使われた感じもしないから、多分壁に体がぶつかったとかで起きた衝撃だと予想できる。だがこの揺れの大きさはあのラオシャンロンでも無理だと思う。まさかあれより巨大な生物がこの下に……? 

 

 そこまで考えていたとき、上から岩が落ちてくるのに気づいた。今の揺れでどこかの地形が崩れたのだろう。澪音を守るように前に出た俺は、こちらに落ちてくる岩だけを適度に砕いていく。そうしているうちに、岩ではない何かが落ちてきているのに気づいた。恐らく崩れた場所の近くにいて巻き込まれたのだろう。不運な奴らだ。ん? あれはまさか……

 

 だいぶこちらに近づいてきたことで、その落ちてきている何かがよく見えてきた。そしてその何かはとても見覚えのある姿をしている。

 

「おーい、ティナ。お前こんなところで何やってんだ?」

「え、貴方は!?」

 

 その何かとは、ティナとその仲間達だったのだ。

 

 

 

 

 

 




予約投稿出来てませんでした……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。