長い間お待たせして本当に申し訳ありません。忙しかったのもありますが、単純にモチベーションが死んでました。
「ゾラ・マグダラオスが地脈回廊に向かってる、ですか?」
「ああ。非常にまずい事態になった」
アステラへと戻ってきたティナ達は、眉間に深い皺をつくった総司令がそういうのを聞いていた。
「すいません、地脈回廊ってなんですか?」
「あー、カナト達は知らなくても無理ないわね。地脈回廊っていうのは、簡単に言えば新大陸の地脈が全て集まっている場所のことよ。地脈の最深部とも言えるわね」
「そこにゾラ・マグダラオスが向かうとどうなるの?」
「もしそこでゾラ・マグダラオスに秘められたエネルギーが放出されたら、地脈をめぐって新大陸全土にエネルギーが駆け巡り、溢れたエネルギーによって地上は火の海になる可能性があるわ」
「っ!」
カナトとエリンが息を呑む。それも当然だろう。大地の全てが火の海になるなど、前代未聞の大厄災だからだ。現大陸でもそのレベルの災害は発生したことがない。
「総司令! 急いで討伐すべきです!」
「カナトの言い分はわかる。しかしすでにゾラ・マグダラオスは地脈回廊に近い場所まで来ている。もし討伐に成功しても、たどる結末は変わらないだろう……」
「そんな……」
討伐するのは逆に事態を早めるだけ。ともなればハンターにできることはもはやないように思えた。しかしその時、地図をじっと見つめていたエリンが閃いたように顔を上げた。
「ゾラ・マグダラオスを誘導するのはどう、かしら?」
「誘導?」
「はい。ゾラ・マグダラオスは現在地脈回廊に向かっています。しかし地図によれば地脈回廊は海と面しているのですよね?」
「そうか!」
総司令もエリンの言わんとしていることを理解したのだろう。両手を机について改めて地図を眺め始めた。
「ゾラ・マグダラオスを海に誘導できれば、エネルギーの放出は海中で行われ、地脈を駆け巡ることはない……よく気がついた、エリン!」
「流石エリンさんです! 確かにこの方法ならまだ希望があります。賭けてみてもいいのでは?」
「うむ。ではこれより作戦会議を行う。幹部達を集めてゾラ・マグダラオスを誘導するための案を練ろう。君たちは指示があるまで各自決戦の準備をしておくように」
「「「「了解!」」」」
……Now loading……
ゾラ・マグダラオス誘導作戦のことはすぐにアステラ中のハンター達に伝えられ、皆が慌ただしくその準備に取り掛かり始めた。新大陸の調査が始まってから前代未聞の総動員でのクエスト。ハンター達の間で緊張が走っているのが見て取れる。
「バリスタの弾ってどこに運べばいいんだっけ?」
「3番の竜車だ! 急げ!」
「誰か撃龍槍のメンテ手伝ってくれ!!」
「空いてる鍛治職人探してくる!」
バタバタとハンター達が駆け出していく中で、ティナ達4人もまた自分たちの準備を進めていた。
「とはいっても、僕たちが準備することなんてほとんどないんだけどね」
「しょうがないでしょ、私達は新大陸に来たばかりなんだから。変に首を突っ込んでも混乱するだけよ」
やることが武器の手入れとアイテムの補充しかないカナトとエリンは、武器の最終調整をしながら慌ただしいハンター達を眺めていた。エスメダは全ハンターの姉貴分なので他のハンター達にひっきりなしに指示を出しているし、ティナもその補助として忙しそうにしている。
「それにしてもゾラ・マグダラオスか、向こうにいた時はラオシャンロンの迎撃に参加したけど」
「確かに老山龍迎撃戦も凄まじかったけど……あの時とは規模が全然違うわ。なんせ大きさが段違いなんですもの。エスメダさんがいうには最早歩く火山だとか」
歩く火山と言われても、カナトはあまりピンとはこなかった。あまりにもスケールが大きすぎて想像しにくかったということだ。
「正直新大陸についてからは予想外のことばかりで余裕が持てないよ。僕たちも結構強くなった自信はあったんだけど、流石エリートが集まる新大陸というべきか、周りのみんなのレベルが高いのなんのって」
「あら、自信喪失?」
ふと弱音をこぼしたカナト。とはいえ新大陸に来れるのは現大陸でG級、もしくはそれに準ずる実力を持ったハンターのうち、さらに一握りの実力者しか来れないのだからレベルが高いのは当たり前である。
「まあ多少はね。改めてティナさん達の凄さってのも思い知ったし、何より天狼竜。あいつまた強くなってるんだもんなぁ」
「それは同感。今の私たちなら天狼竜にも引けを取らないんじゃないかって思ってたけど、強くなっていたのは何も私たちだけじゃなかったみたいね」
天狼竜は2人にとってある種の目標であり、意識せざるを得ない相手だ。禍根は無くなったとはいえ、あの凄まじい雷の竜は2人の脳裏に焼き付いて離れない。
「でも僕たちだって強くなった。この新大陸に生きる先輩たちに追いつけるぐらいには」
「そうよ。目標は高く遠くあるべきだわ。簡単に追いつけたら目標とは言わない。でしょ?」
「ああ。そうだね」
喋りながらも手を動かし続けていたカナトたちは、武器になんの不備もないことを確認して立ち上がる。
「さて、流石に何もしないってわけにはいかないし、荷物運びでもしに行こうか」
「そうね」
己の武器を背中に背負ったカナトとエリンは、来る決戦に向けて戦意を昂らせているのだった。
……Now loading……
急いでティナ達を追いかけた俺だったが、流石にゾラ・マグダラオスがいる場所からあの屍の谷に戻る頃には彼女達の姿は既になくなっていた。最初は焦ったものだが、人間達は結構優れた情報網を持っているだろうし、エスメダも何かに気づいているようだった。彼らが自分たちで答えに辿り着いて対策を考えていることを信じつつ、俺たちは俺たちに出来ることを考えることにした。
しかし答えはなかなか出てこない。初めはゾラ・マグダラオスを倒して仕舞えばと思ったのだが、絶命した時にエネルギーが放出されるなら討伐したら結果は同じで本末転倒だということに気づいて却下。だがだとするとどうすればいいのだろうか。真なる古龍じゃないあいつには言葉も通じないだろうし、説得するというのは論外。だが何もしなければ新大陸が吹き飛ぶ。
確かに新大陸が吹き飛んだところで、俺と澪音が無事なら俺にとっての損害はないに等しい。だがせっかくこの世界で知り合ったハンター達がここにはいるんだ。彼らがただ災厄に飲まれるのを他人ヅラで眺めているのは、寝覚めが悪いってもんだろ。出来ることならなんとかしてやりたい。
そんなことを考えていたら澪音になんとも言えない顔をされたが。澪音が俺のことを第一に考え、それ以外に対しては極論どうでもいいと感じているのは薄々分かっている。そんな澪音には悪いんだが、今回も俺のわがままに付き合ってもらおう。それにこれは澪音の問題であって俺がとやかく言えることじゃないしな。
そんな感じで色々考えるもいい案が浮かばずに数日が経った時だった。ティナが俺たちのところにやってきたのだ。
「成る程……ゾラ・マグダラオスを海に誘導する、か」
「ええ。これならばきっと新大陸の破滅を防ぐことができます」
エリンの考えは理にかなっているように聞こえた。確かに海中ならエネルギーの拡散も抑えられるし、何より地脈の1番デリケートな部分で放出されるよりよっぽど被害も抑えられるだろう。
「よし分かった。でもそれだと俺と澪音にできることは無さそうだな。何せハンターが主体で動く作戦なんだろ?」
ティナやカナト達ならともかく、他のハンターの前に姿を表すわけにはいくまい。絶対に一緒に討伐する動きになるって。そんな危険なところに行きたくないし、澪音を連れて行けない。
「いえ、貴方にも協力してほしいと思っています」
「いやいや、流石に冗談だろ?」
俺はそう思ったがどうやらあちらは本気らしい。ゾラ・マグダラオスを誘導するにはある程度弱らせる必要があるらしく、火力が高い俺の力は必要なんだと。
「貴方が乱入してきたら場は荒れるでしょう。ですがそれを加味しても貴方がマグダラオスを殴ってくれた方が火力は出ます。安心してください。貴方がきたら私達が引き受けると言って、他のハンターが来ないようにしておきますから」
うーん。なんだか不安だが、マグダラオス誘導作戦を成功させてもらわなければ、困るのはこちらもだ。ここはティナを信じるしかないようだな。
俺は了承の意を伝えて彼女達と別れた。作戦決行は1週間後、場所は地脈回廊。この新大陸を火の海にさせないためにも、いっちょ頑張るとしますか!
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