銀雷轟く銀滅龍   作:太刀使い

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第61話.転がる鉄槌

 水晶の地を色々と探索してみたのだが、特にこれといって大きな発見はなかった。確かにエネルギーが多い場所なのだが、濃密なエネルギーを含んだ水晶がそこらじゅうに生えているので、いまいち感覚が狂う。

 澪音の知覚能力にも期待したのだが、俺と同じように水晶のエネルギーに邪魔されて上手く感知できないと言っていた。ただ祖龍が言っていた場所はここが1番最適だと思うのでもう少し探索は続けてみる。それでもし収穫なしなら、どうにかしてハンター側の情報を得ないといけなくなるな。

 

「士狼、何かきてる」

 

 澪音の感知範囲に何かが引っかかったようだ。こいつの感知範囲はまさに高性能レーダーそのもので、この頃はどのような形状のものなのかさえ分かるようになってきたらしい。

 

「どんなやつだ?」

「んー、結構大きい。アルマジロみたいな感じ?」

 

 アルマジロ? ああ、丸まっている何かってことか。大きいってことはモンスターだよな。丸くなるモンスターといえば、ラングロトラかあるいは……

 

 そこまで考えていた時、ようやく俺の目にもその何かが映った。ゴツゴツした背中に特徴的な顎を持つそのモンスターは、俺の知識にもある。

 

「ウラガンキンか!」

 

 かなりの速さで転がりながらこちらに向かって来ていたウラガンキンは、俺たちの前で回転を止めてその二本足で地面を踏み締める。

 

「ゴァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 喉が張り裂けんばかりの咆哮を上げたウラガンキンの目は紫色に怪しく光っており、心なしか体表面の色も紫がかっているように見える。極め付けは体から黒っぽいオーラがゆらめきながら立ち上っており、今まで見たどんな瘴気に侵されたモンスターよりも禍々しい。

 

「案の定瘴気にやられているな。それにこいつはなんだか様子がおかしい。澪音、油断すんなよ」

「分かった!」

 

 咆哮をあげ終わったウラガンキンは大きく頭を振りかぶる。恐らく顎を叩きつけてこようとしているのだろう。だがあまりにも予備動作が長すぎるので、当たるはずもないと俺は思っていた。

 しかしウラガンキンが叩きつけようとしていたのは、俺本人ではなく地面。自らの足元を大きく叩きつけることで、凄まじいまでの地揺れが発生した。顎が叩きつけられた地面はひび割れて陥没しており、その威力のとんでもなさが窺える。

 

 そして地揺れに足を取られてしまった俺は、咄嗟に行動をすることができずその場に縫い止められてしまった。揺れに耐えている俺に対してウラガンキンは足元がふらついている様子もなく、しっかりと二本足で立っている。そんなウラガンキンからしたら、フラフラしている俺は格好の的だろう。大きな尻尾を振り回して俺のことを薙ぎ払った。

 

「士狼!」

 

 ふらついていて踏ん張ることもできず、尻尾の振り回しを喰らった俺は壁際まで吹き飛ばされてしまう。そしてそのダメージの大きさに驚愕していた。この間のネルギガンテですらここまでのパワーは感じなかったのだ。古龍ですらないウラガンキンが出せる火力じゃない。あの黒いオーラや紫色の体色が原因か? 

 前世の知識には極限化というものがあるが、目の前のウラガンキンに起こっているのがこれと同じなのかは分からない。だが少なくとも似たような強化をされていると思ったほうがいい。

 

「み、澪音気をつけろ。こいつかなり強いぞ!」

 

 吹き飛ばされてしまった俺はウラガンキンからだいぶ離れてしまった。そしてウラガンキンの次なる標的は、まだ目の前にいる澪音だろう。

 澪音は俺の声を聞いて冷静さを取り戻したのか、黒い霧を発生させながらジリジリと距離を取ることにしたようだ。あの霧は凶悪な能力をしており、瘴気にやられたモンスターにも有効だと聞いている。

 

 だがウラガンキンはそんな澪音の霧を突き破るように突進し、距離を取る澪音に追いついてしまった。霧が効かないことに驚愕している澪音に、素早く連続で顎を叩きつけようとしている。澪音は小柄なのでかろうじて躱し続けているが、あのウラガンキン素早さもさることながらスタミナも桁違いだ。顎を叩きつける動作はかなり疲れるはず。いくらウラガンキンがそれに適した構造をもっているとはいえ、疲れるはずなのだ。

 

 だがウラガンキンは頭の動きを止める気配は全くない。確実に澪音を仕留めようと顎を叩きつけ続けている。澪音も素晴らしい動きで躱し続けているが、いずれ限界がきてしまうだろう。まあ俺がそんなことはさせないが! 

 

「澪音から離れろ!」

 

 吹き飛ばされた分の距離を詰め直した俺は、ウラガンキンの側面にタックルをした。既に超帯電状態にはなっているので、体を押し当てているだけでも雷がやつの体を焼いていく。

 

 突然の横からの衝撃に流石に踏ん張ることが出来なかったのか、ウラガンキンがよろめいた。その隙に澪音はその場から離れることに成功する。

 

「大丈夫か、澪音!」

「はぁ、はぁ、なんとか……ありがとう士狼」

 

 息は切れているようだが、目立った外傷は軽度のものだ。とりあえず間に合ったようだな。本当によかった。

 

 先程の俺のタックルはウラガンキンに殆どダメージを与えられてないだろう。タックルした時の感覚が、まるで壁にぶつかった時ぐらいに手応えが無かった。現にウラガンキンは殺意の篭った目でこちらを睨みつけている。

 

 そんなウラガンキンだがまた顎を振り上げている。流石にどんなに威力が高かろうともう当たりはしないと思っていたのだが、ウラガンキンがとった行動は顎を叩きつけるものでは無かった。ウラガンキンは体を丸めたまま回転をし始めたのだ。頭を振り上げたのは勢いをつけるため。先程移動のために転がりながら進んでいたように、今度は攻撃として転がり始めたウラガンキンが俺たちに迫る。

 

 俺と澪音は咄嗟にサイドステップを踏んでそれをかわしたが、ここの地形が良く無かった。ここは周囲の四方に緩やかな傾斜のある壁があり、ウラガンキンはこれを利用して方向を変えながら再びこちらに向かって来る。それもなんとか躱すが、何回も何回も壁で方向転換して向かって来るのだ。しかも縦横無尽に転がり続けるものだから、一瞬たりとも気が抜けない。もしもあれを喰らったら怪我では済まないだろう。

 だが流石にこちらも疲労が溜まって来るものだ。ウラガンキンが方向を変えた回数はとうに10を超えている。俺よりも澪音が心配だ、先程息も上がっていたし、だいぶ辛いと思う。

 

 これ以上回避することは困難だと判断した俺は、ウラガンキンを真正面から迎え撃つことにした。この頃は使っていなかったが仕方がない。龍脈の力を使う! 

 龍脈の力を利用して真帯電状態に移行。四肢が迸る雷エネルギーに覆われ、地面に接している部分から激しく火花が散る。纏う雷のパワーが飛躍的に上昇し、全身の甲殻が攻撃的に展開した。

 

 全ての力を解放した俺は後脚だけで体を持ち上げ、前脚を両方とも使ってウラガンキンを受け止めにかかる。かなりのスピードで転がって来るウラガンキンを受け止めた瞬間、とんでもない負荷が俺の全身に襲いかかった。刃尾を地面に突き立てて踏ん張ろうとするが、それでもジリジリと押し負けていってしまう。

 

「くっ……負けるかぁ!!」

 

 両前脚を覆っている銀雷の威力を上げ、一気に放出する。脚から迸る雷がジェット噴射のように尾を引き、前への推進力に変えてくれる。この状態なら空だって飛べるかもしれないな。

 冗談はさておき、渾身の力比べは段々と俺の優勢へと傾きつつあった。後脚が地面にめり込み刃尾がミシミシと変な音を立てながらも、ウラガンキンの回転の勢いを確実に殺していく。そして十分に回転の威力が下がったのを確認し、余裕が出来てきたので攻撃に移らせてもらおう。

 

 至近距離にいるウラガンキンのゴツゴツした背中に向けて、ガパリと口を大きく開く。口内に銀雷が収束されていき、眩いばかりの光を放っている。野生の勘からか不味いと察したウラガンキンが回避しようとするが、俺の両前脚がガッチリと奴の体を掴んではなさい。

 そして雷ブラスターをゼロ距離で放った。ウラガンキンの体がブラスターの威力に押されて後ろへと後退していく。どうやら回避は諦めて防御に徹することにしたようだ。そんなウラガンキンに対して俺は溜めたエネルギーが尽きるまでブラスターを放ち続けた。

 

 ブラスターを放ち終わるとそこには、攻撃を受けた場所が真っ赤に赤熱してしまったウラガンキンの姿が。あまりの高温で鱗が溶けてしまっているのだろう。並のモンスターなら消し炭になる威力だ。この程度で済んでいることに逆に驚いているよ。

 

「士狼、お疲れ様」

「ああ、あと今の俺にはあんま近づかないほうがいいぞ。危ないからな」

 

 少し離れた位置で澪音が待機しているのを確認した俺は、刃尾に雷を蓄積して回転しながら振るう。息も絶え絶えだったウラガンキンはこの攻撃がとどめとなり力尽きたようだ。

 それにしても強かった……まさか一般モンスターであるウラガンキンに、龍脈の力を使うことになるとは。瘴気で強化されたモンスターの強さはとんでもないな……幸いなのは、ここまで瘴気に適応できるやつがあまり多くはないだろうというところか。

 

「今回は、あまり役に立たなかった」

「いや仕方ないって。多分こいつそこらの古龍より強いんじゃないか? だからしょげることないぞ」

 

 珍しくしゅんとしている澪音を励ましながら、真帯電状態を解いた。

 

「今回のことで改めて思い知ったよ。終龍を倒さない限り、自由にこの世界で生きていくことは出来ないってな」

 

 放っておいたら終龍は世界の全てを瘴気で包んでしまうだろう。そこには俺の愛したこの世界はなく、あるのは正気を失った人やモンスターが殺し合うだけの残酷な世界だ。そんなことには決してさせない。

 

「いこう澪音。なんとしても終龍の企みを阻止するぞ」

「ん、私も瘴気に包まれた世界は嫌」

 

 澪音も今回の件で考えを改めたようだ。こいつが終龍を追いかける俺のことをあまりよく思っていなかったのは、薄々感じてたからな。流石に澪音も自分が住む世界を滅茶苦茶にされるのは嫌だろう。

 

 とりあえず俺も澪音も消耗したし、一休みできる場所を探そう。夜が明けたらまた終龍が求めているエネルギー源を探しに出発だ。

 

 

 

 

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