というわけで連日投稿!
やぁ、僕はカナト。ユクモ村を中心に活動しているハンターだ。
ハンター稼業を始めて、早いものでもう1年経つのかな? ようやくHRが4に上がり、上級ハンターへの道が開けてきたところって感じ。
今日は仲間と一緒に、ホームであるユクモ村で依頼を受けにきたんだ。今クエストを受けに行ってるところなんだけど……
お、きたきた。
「カナトー。買い出し終わったかー?」
「うん。今終わったとこ。そっちはなんかいいクエストあった?」
「おう、ばっちしだぜ!」
190センチの巨体に分厚い筋肉を纏う彼はバスク。僕のハンター仲間の1人で、頼れるランサーだ。いつも彼の防御術には助けてもらってるよ。
「バスクったら、討伐系のクエストしか見ないんだから、選ぶのに時間がかかったのなんのって……」
「あはは……まあまあ。いつもフォローありがとね。エリン」
エリン。うちのパーティの遠距離担当で、弓使い。スリムな体だが、弓使いにとっては理想的なフォルムと言えるね。彼女の巧みな弓さばきは、モンスターの注意を引いたり、不意打ちの攻撃にとても役に立っている。
僕ことカナト、バスク、エリンの3人で1パーティだ。初めからこの3人で頑張ってきて、ようやくここまでたどり着くことが出来た。憧れの上級ハンターまであと少しだ!
「ちょっと、何笑ってるの? カナト」
「ごめんエリン。でもさ、あと少しで上級ハンターだなぁ、って思うと嬉しくなっちゃって……」
照れ臭くて頰をかきながらそう言うと、バスクがガッと肩を組んできた。
「そうだよなぁ。俺たちゃ、あと少しで上級ハンターなんだよな。そりゃあ笑いだって出てくるよな!」
「もう、そんなこと言ってあんまり油断しないでよね。それでクエスト失敗したら、元も子もないし」
呆れながらそう言うエリンだが、そう言うエリンだってこの頃は上級の話ばっかりしている。彼女も嬉しいことに変わりはないんだ。
「それで、どんなクエストを受けてきたの?」
「あぁ、これだ!」
バン! とバスクがテーブルに叩きつけるように置いた依頼書には、ナルガクルガ一頭の狩猟と書かれていた。
「ふむふむ、森に住み着いたナルガクルガが、時折街道に出てきて竜車を襲っているから討伐を頼みたい、ね」
結局討伐系なんだ……と思いながら僕が依頼書を読んでいると、横から2人がこう言った。
「ナルガクルガなら私たち何回か狩ってるし、そう難しいクエストでもないでしょう」
「それに竜車が襲われて被害も出てるんだ。一刻も早くなんとかしないと、と思ってな!」
手をグッと握ってバスクが熱く語る。
相変わらずバスクは感情移入が激しい。ま、そこが彼のいいところでもあるんだけどね。
……うん、見た感じ難しい感じじゃないし、俺たちにはちょうどいいぐらいのクエストなんじゃないかな。
「よし、今日のクエストはこれにしよう。受付嬢さんの所で手続きしてくるね」
「了解」
「頼んだぜ」
この時の僕は、今回もいつも通り何事もなく帰ってこれると、信じて疑わなかった。
これから行く先で、どんなものが待っているかも知らずに。
……Now loading……
ナルガクルガを倒してから2週間、ようやく森の出口と思われる付近まで来ていた。
2週間だぞ……どんだけ迷ってたんだよ、俺。
いやまぁ、色々あったんだけどな? あの後もドスジャギィの群れとか、アオアシラとかの大型モンスターと戦う時もあったし、野生のアイルーと意思疎通出来ることも分かった。
野生のアイルーと出会った時は衝撃的だったな。いろんな意味で。
どうやら意思あるモンスターってのは、ほとんどが古龍種にしか存在してないらしい。だから、普通に意思がある俺を見て、アイルー達はそれはもう大騒ぎだった。
そのあともてなされて、アイルー達の宴に参加して、この森の地図を手に入れて、とかなんかしてたらあっという間に時間が経っていたってわけだ。
アイルー達の手助けのおかげで、ようやく森を抜ける算段がついた。今はもうほとんど森の外周付近まで出てこれてるはずだ。
迷い込んでしまった森だけれど、ここで得られたものも大きかった。まぁ元々武者修行の旅だ。こういうことがあってもいいだろう。
お! 木々の間から差し込む光が強くなってきたな。ようやく脱出出来る!
よーし脱出せいこ……う?
森から出た俺の目に写り込んできたもの。それは、明らかに武装したハンターと思われる3人組だった。
「な、ジンオウガ!?」
「くっ、この!」
ランスを持った大柄な男が、俺の姿を視界を捉えた瞬間、背中のランスを抜き放って大きな盾を前に構えた。
マジかよ!? ここでハンターと出会うことになるとは……
いきなりのジンオウガの登場に困惑してるようだし、このまま逃げてくれればいいんだが……
「ジンオウガが出るなんて、聞いてないよ!」
「依頼書には何も書いてなかった! 要するに、つい最近ここに住み着いたってことよ!」
「おい、どうするんだ!?」
どうやらこのスラッシュアックスを持った男が、パーティのリーダーらしい。ランサーの男と弓の女がスラアクの男に判断を仰いでいる。
「ここは街道にかなり近い。このままほっといたら、このジンオウガが行商人を襲う可能性がある。今のうちに狩っておくべきだと思う」
「でも……勝てるの?」
「おそらくだけど……このジンオウガ、まだ大人じゃないよ。勝機はある」
うーわ、バレテーラ。やっぱ見た目でわかっちゃうものなんだなあ。
しかも狩る方向で話がまとまってきてるし。仕方ない……やるか。
「いつも通り、バスクが攻撃を受け止め、僕が攻撃、エリンが援護と攻撃を!」
「「了解!!」」
「ジンオウガは超帯電状態が脅威だ! でも電気をチャージする時は少しだけ隙ができる! そこをつけば……!?」
喋りすぎだよ、スラアク男。
スラアク男が仲間の方を振り向いた瞬間、雷光中弾を4発発射。カーブを描く雷光虫弾は、2発ずつに分かれながらランサー男の盾をすり抜けてスラアク男に向かう。
「このぉ!」
ランサー男が片方の2発を盾で防ぐ。その動きは素晴らしいものだが、もう片方には追いつけまい。案の定、スラアク男はスラアクの腹で雷光虫弾を受け止めている。
状況分析……ランサー男が想定外の攻撃をさばいたことで、陣形が崩れている。スラアク男はガードの衝撃に耐えているのか、微動だにしない。残るは、弓女か。
弓は属性攻撃に優れた武器。流石に氷属性の攻撃を連続でされたら、たまったものではない。先に片付けるべきは弓女だな。
すでに超帯電状態への移行は完了している。彼らが色々と判断に迷っている間にやらせてもらった。実戦ではそういう僅かなタイムロスが命取りとなる!
筋肉を電気の刺激で活性化させている超帯電状態では、通常時とは比べものにならない身体能力を発揮できる。
地面を強く踏み込み張飛。男2人の上を飛び越え、弓女の頭上に躍り出る。そしてそのまま、落下の勢いを乗せたお手攻撃。ナルガクルガ戦で見せたあれだ。
この技は実は結構大振りであり、相手がダウンなどをしてない場合は、簡単に避けられてしまうものなのだ。現に、弓女は右に転がるように体を投げ出すことで、俺の攻撃を回避した。
しかし、その対策を取ってないとでも? 地面に叩きつけた前足を起点に、その場で一回転。すると、ジンオウガ特有の巨大な尻尾がまるで鞭のように振るわれる。
広範囲を薙ぎ払うように繰り出された尻尾は、弓女だけではなく2人の
男までをも巻き込んだ。男どもは武器を盾にする事で耐えたが、女の武器は弓。当然ガードすることなどできない。
尻尾に体を絡め取られ、そのまま激しく投げ飛ばされた。投げ飛ばす先も当然計算済み。その体は、大木へと叩きつけられる。
「エリン!!」
「カナト、エリンを頼む! ここは俺が耐えておく!」
カナトと呼ばれた男が、エリンと呼ばれた女の元に走り寄っていく。回復薬かなんかを飲ませる気か? そうはさせない!
すぐさま妨害に移ろうとするが、ランサー男──確かバスクだったか──が、俺の前に立ちふさがった。
くっ、邪魔だ!
連続でお手攻撃を繰り出し体制を大きく崩したところで、ジンオウガお得意のタックルをぶちかます。盾で防げたようだが、あまりの衝撃に大きく後退するバスクとやら。
すぐさま視線を2人の方に戻すが、そこにはすでに立ち上がれるまでに回復した弓女エリンと、こちらを油断なく見据えるスラアク男カナトがいた。
嘘だろ……今のほんの数十秒の間に、おそらく内臓破裂と複数の骨折を負った人間が立ち上がれるようになった、だと!?
回復薬グレート……いや、秘薬か? どちらにしても、その程度の傷では戦闘不能にしたことにはならないってことか……
まるでゾンビ、いやゾンビよりもタチが悪い。
俺が驚いている隙にバスクが2人と合流。おそらく彼らの基本的な陣形を組んだのだろう。隙がほとんど無くなった。
いいだろう……そっちがまだ諦めないなら、次こそベースキャンプ送りにしてやる!!