帝国召喚物語   作:abc

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準備

2030年4月14日

 

大日本帝国 帝都東京

 

首相官邸

 

ここに総理に海軍、陸軍の幹部が派遣部隊の説明に来ていた。

 

 

「で、今回クワ・トイネ公国に派遣する戦力は?」

 

「海軍としては、1個空母機動部隊と2隻の実験艦で進めています。」

 

「ほう。もしやその実験艦に装備している兵器は・・・」

 

「お察しの通り、電磁加速砲に続く新型の主力兵器となる陽電子砲、またの名を荷電粒子砲です。」

 

「それで4000隻の大艦隊を打ち破ることは可能かね?」

「はい。もしもの為に2隻を使いますが、理論上は1隻でも可能です。ただ、実践データがないため、単体だと問題が起こる可能性を考慮してです。」

 

「分かった。それで調整を進めてくれ。陸軍の方は?」

 

「はい。今回は、異世界初めての戦闘なので、もしものことを考え多めに用意しております。内容は機甲師団を1個、普通科師団を1個、空挺師団を1個の予定です。まあ、中世レベルの国家が相手なのでかなりの過剰勢力でしょうが。」

 

「まあ、相手には魔法という力があるしな。国土の防衛に支障はでないのか?」

 

「この程度では全然問題ありません。」

 

「では、陸軍海軍も空軍に続き行動を進めてくれ。なるべく早めによろしく。」

 

「了解です。」

 

 

 

 

中央歴1639年4月20日

 

マイハーク

 

クワ・トイネ公国の沿岸都市は転移によりいくつかが内陸部になったがここマイハークは無事であった数少ない都市のひとつである。

 

そしてここでは、クワ・トイネ公国の艦隊50隻が出撃の準備をしていた。

 

「壮観な風景だな」

 

 

 

 提督パンカーレは、海を眺めながら、ささやく。

 

 

 

「しかし、敵は4000隻を超える大艦隊、彼らは何人生き残る事ができるだろうか」

 

 

 側近に本音を漏らす。圧倒的な物量の前にどうしようもない気持ちがこみ上げる。

 

 

 

「提督、海軍本部から、魔伝が届いています」

 

 

 

 側近であり、若き幹部、ブルーアイが報告する。

 

 

「読め」

 

 

「はっ!本日夕刻、大日本帝国の艦隊14隻が援軍として、マイハーク沖合いに到着する。彼らは、我が軍より先にロウリア艦隊に攻撃を行うため、観戦武官1名を彼らの旗艦に搭乗させるように指令する」

 

・・・との事です。

 

「我が国も50隻しか動員できなかったが、相手は4000隻以上だぞ!たった14隻では無駄死になるだけではないか!しかも観戦武官だと?そんなことではこちらの兵士だけではないか!」

 

 

沈黙が流れる。

 

 

「・・・私が行きます」

 

 

 ブルーアイが発言する。

 

 

「しかし・・・。」

 

 

「私は剣術ではNo1です。一番生存率が高いのは私です。それに、あの鉄龍を飛ばして来た日本の事です。もしかしたら勝算があるのかもしれません」

 

 

「すまない・・・。たのんだ」

 

「はっっっ!」

 

 その日の夕刻

 

 

 

 ブルーアイは、目を疑っていた。

 

 その船は、彼の常識からすれば、とてつもなく大きかった。日本との接触の際に、第一海軍が、300mクラスの船を臨検したという話を聞いていたが、自分たちの仕事の成果を誇張するために、嘘をついていると思っていた。

 

 しかし、今彼が見ている船たちは、遠くの沖合いに停泊しているにも関わらず、とてつもなく大きく、そして帆が付いていない。

 

 やがて、一際大きな船から、竹とんぼのような金属で出来た物が飛んできた。

事前に連絡は受けていたが、どうやら乗り物らしい。それが近づくにつれ、大きな風を受ける。

 

 理解不能な乗り物に乗り、沖合いへ移動した。

 

 フワフワのシートに座り、ほとんど揺れずに「それ」は進んだ。ワイバーンと同じくらいの速さで遥かに快適で、人が大量に運べる。

 

 やがて、母船が見えてくる。

 

 その大きさに驚愕する。

 

(いったいなんだ!この大きさは。そうか、これだけ大きければ、人員もたくさん搭載できる。切り込みの際は、中から大勢の人が出てきて一気に一隻づつ制圧していくのだろうな。これなら、一回の戦闘に投入できる人数が多いから、1隻あたりの戦力は大きいだろう)

 

翔鶴型航空母艦

大量のヘリや戦闘機を格納し航空基地となる、前世界では最大の航空母艦である。

やがて、騎馬戦が出来そうなほど広い船の上に降り立つ。

 

 

 

これは・・・。鉄で出来ているのか?どうやって海に浮いている?

 

疑問は尽きない。彼は、兵士に言われるがまま、艦内に入っていった。

 

・・・中が・・・明るい。

 

 何か燃やしているのか?それとも、光の魔法?これは魔導船か?

 

 

 彼はやがて艦長と出会う。

 

 

「艦長の山本です」

 

 

「クワトイネ公国第二海軍観戦武官のブルーアイです。このたびは、援軍感謝いたします」

 

「さっそくですが、我々は、武装勢力の船の位置をすでに把握しており、ここより西側500kmの位置に彼らはおります。船足は、5ノット程度と非常に遅くはありますが、こちらに向かってきております。我々は明日の朝出航し、ロウリア軍に引き返すように警告を発し、従わなければすべて排除する予定ですので、明日までは、ゆっくりとされてください。」

 

ブルーアイは驚く。彼らは、自分たちだけで、クワトイネ海軍の協力を得ずに、4400隻の大艦隊に挑むつもりなのだ。

 

 確かに艦は大きく、切り込み用水夫を大人数を収容できるだろう。しかし、たったの8隻で、4400隻に挑んでいくのは、やはり自殺行為を思われた。

 

 また、バリスタや、火矢を防ぐ木盾が無いのが、不安に思われた。

 

翌朝早朝

 

艦隊は出港した。

 

 

ブルーアイは翔鶴から巡洋艦にヘリで輸送された。

 

 

どうやら日本軍の話によると3隻だけが直接近づき、あの巨大な空母という艦などは離れているという。

 

いつも乗る軍艦よりも圧倒的に早いことに驚きながらその理由を考えていた。

 

 

ロウリア王国東方討伐海軍 海将 シャークン

 

 

 

「いい景色だ。美しい」

 

 

 

 大海原を美しい帆船が風をいっぱいに受け、進む。その数4400隻、大量の水夫と、揚陸軍を乗せ、彼らはクワトイネ公国経済都市、マイハークに向かっていた。

 

 見渡す限り船ばかりである。

 

 

 

 海が見えない。そう表現したほうが正しいのかもしれない。

 

 

 

 6年をかけた準備期間、パーパルディア皇国からの軍事援助を経て、ようやく完成した大艦隊。これだけの大艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸には無い。

 

 いや、もしかしたら、パーパルディア皇国でさえ制圧できそうな気がする。

 

 

 

 野心が燃える

 

 

 

いや、パーパルディア皇国には、砲艦という船ごと破壊可能な兵器があるらしいな・・・。

 

 

 

 彼は、一瞬出てきた野心の炎を理性で打ち消す。第3文明圏の列強国に挑むのは、やはり危険が大きい。

 

 

 

 彼は東の海を見据えた・・・・ん?

 

 

 

 何かがこちらに飛んでくる。

 

 

 

 まさか、飛龍か?・・・いや、違う。何だ!あれは!?

 

 

 

 虫のような形をした無機質な物体が、1つ、バタバタバタ、と音をたて、こちらに飛んでくる。

 

見たことの無い物体が、飛んでくる様は、異様な光景であり、わずかに恐怖の心が芽生える。

 

 

 

「こちらは大日本帝国海軍です。あなた方は、クワトイネの町ギムにて、虐殺を行いました。これ以上の虐殺を認めるわけにはいきません。直ちに引き返しなさい。繰り返すーーー」

 

 

 

 飛行物体の中には、人が乗って話している。

 

 

 

やがて、「それ」に向かって、弓矢が射られる。「それ」は、しばらく上空で旋回し、東の空へ立ち去っていった。

 

 

 

しばらくすると、海の向こうに1つ小島が見えてきた。

 

島が動いている・・・・。まさか、船か!?

 

 

 

 小島と思われた船は、すさまじい速度で艦隊最前列の帆船の横に回りこみ、同船と平行に走り始めた。その距離300m

 

 

 

「直ちに転回して引き返せ!さもなくば、貴船に対し、発砲する!

 

直ちに転回して引き返せ!さもなくば、貴船に対し、発砲する!!!」

 

いくら船が大きいとはいえ、こちらは4400隻、あちらは見える範囲で1隻、海将 シャークン

 

は、攻撃を命じた。

 

 帆船は、右に旋回し、駆逐艦との距離を詰める。

 

 距離が200mを切ったところで、船から一斉に、火矢が、駆逐艦を襲う。

 

 バリスタの射程距離は100m前後であったので、投射されなかった。

 

 全く影響が無かったが、駆逐艦は、火矢の有効射程距離から遠ざかる。

 

 駆逐艦は、船団を一瞬で引き離し、約3km距離を置き、旋廻した。

 

 

「ひゃっはっはっはははあぁぁぁぁ、逃げやがった!」

 

 

 

 水夫たちが、駆逐艦を馬鹿にし、聞こえないが、野次を放つ。

 

 海将 シャークンはその光景を見て、不安がよぎる。

 

 

 

「逃げ出したか、まあ1隻では、いくら大きいとはいえ、どうしようもあるまい。しかし・・・・でかいくせに速いな。風を受けずに、あれほどの速度を出せるとは・・・」

 

 

 

 

 

ミサイル駆逐艦夕立

 

 

「攻撃を受けた。これより敵船団に攻撃する。主砲打ち方始め!」

 

 

 

 

 

 

 

ミサイル駆逐艦夕立の前方に設置された、130mm電磁加速砲が敵船に向かい旋廻する。目の良いシャークンは、夕立のわずかな変化に気が付く。

 

 

 

「あの棒はなんだ?」

 

 

 

 次の瞬間、轟音と共に破壊が吐き出された。

 

 距離は3km、至近距離射撃

 

 

 

 「なんだ?あの光は?」

 

 

 

 シャークンが疑問に思った瞬間、最前方を走る帆船が突然大爆発を起こす。爆散した木や、船の部品、人間だった物があたりに撒き散らされ、密集隊形にあった見方の船上に、人間のパーツと共に降り注ぐ。

 

「!!なんだ!!あの威力は!それにあの距離から当てやがったのか?」

 

 

 

 経験したことの無い威力に、それを見ていた船団全員が驚愕する。

 

 

 

「まずい!!・・・しかし、まだここが、ワイバーンの届く距離でよかった。通信士!!ワイバーン部隊に上空支援を要請しろ!!敵主力船団と交戦中とな」

 

 

 

 船は、無事だった乗員を乗せたまま、自重に耐え切れなくなり、沈んでいく。

 

砲弾は、夕立に火矢を射掛けた船に直撃し、1発で、その船は爆散、轟沈した。

 

「次弾装填。敵艦の航路転換が行われないため、続けて撃て!」

夕立艦長は内心無駄な殺傷を行いたくなかったが、命令のため、攻撃を続行した。

グレートアトラスターをどうするか

  • 沈める
  • 沈めない

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