あなたの未来に花束を   作:カサブランカ

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1.5・生きていく目標

 

 

 

オールマイト立会いの元、リカバリーさんや医師、警察、弁護士、社会福祉士、保険会社、と様々な職業の人たちが集合して色々な話をした。オールマイトは彼らの話を聞き直したり分かりやすく噛み砕いて私に教えてくれて、専門知識のない私は随分と助けてもらった。まあ、(見た目と戸籍上は)4歳児とはいえ、ある程度は理解できるだけの頭があると分かった大人たちが遠慮なく専門知識を披露しはじめたってのは大問題だったんだけど。それでも、各々がそれぞれの専門分野から私のベストを探ろうとしてくれているのだとは理解できた。

 

(なんだ…こんな人たちだったんだ…)

 

誰もかれもが、私を気にかけてくれている。その事実がどれだけ恵まれていることか。どれだけ嬉しいことか。

 

(もしかしたら…私は前世でも、視野が狭くなってただけなのかもなぁ)

 

助けてと声をあげていれば、よかったんだろう。でも、両親を亡くして孤独になった私には、そんな余裕なんて欠片もなかった。友だちのことも、教師のことも、親戚のことも、ご近所さんのことも、全部頭や意識から排除していた。寂しくて悲しくて、もう死ぬしかないと、追い詰められていたから。

 

「優子ちゃん。君のご両親は自分たちに何かあった時は君を児童養護施設に入れようと考えていたようだ。けれど君には親戚の家を頼るという方法も、あるにはある。どこかの家の養子になるということもできるだろう。君はどうしたい?」

 

「私は…一人暮らしがしたいです。誰かに迷惑をかけずに、できることは自分でやりたい。無理だと言われることは承知の上でですけど」

 

衣食住もまともにできないこんな子供が何を言うのか、と笑われておしまいだろうに。周りの大人たちが失笑していても、オールマイトは私のたわごとを笑い飛ばしたりしなかった。そもそもこんな背丈じゃ台所に立つ以前に買い物すらできないだろうに、そんな事実すら指摘しなかった。そういうところ、本当にイケメンだ。見た目はアメコミなのに…いや、アメコミ芸風だからか?

 

「自分の年齢のことも、今の日本でそれは難しいことだとも、分かっているんだね?」

 

「分かっています。私が保護者も必要ないくらいの年齢だったならよかったんですけど」

 

「…なら、年齢制限をつけてはどうだろうか。例えば6歳までとか。もちろん、君の学力とご両親の遺された財産にもよるだろうが」

 

なぜ6歳?と首を傾げる私を置いて、分厚い書類を手にした男性が閃いたように声をあげた。

 

「ーーなるほど。全寮制の学校に入るまで、ということですね」

 

「学校?」

 

「ああ。確か私の知人が小学生から寮のある学校に通っていたと言っていたのを思い出してね」

 

オールマイトがそう言った後からはトントンと話が進んだ。私がよく知る日本とは似ても似つかないこの国では、孤児への救済処置が手厚いようだ。ヒーローという職種の殉職による賜物だろう。

 

「なるほど。では寮のある学校を探してみましょう」

 

「優子ちゃん、ご両親の資産は生命保険や国からの援助でこれくらいになるの。法律上優子ちゃんが大人になるまでは後見人って人がお金の管理することになるんだけど、できるだけご両親のお金を使いたくないとか、そういう希望はある?」

 

金額が記載された紙に記載されていたのはテレビでしか見たことがないようなとんでもない額だったけど、私はその泡銭には何の未練もなかった。これは私が奪ってしまったこの体の女の子と、その両親の命の値段だ。ならば大切に、出し惜しみせず使わせてもらうのが一番だろう。

 

「学費に使います。高校…いえ、中学を卒業したらすぐ働くので、両親の遺してくれたお金は出し惜しみしません。高くつく私立の学校でも構いません」

 

「わかったわ。じゃあ優子ちゃんの行きたい学校に行けるように私たちも頑張るわね」

 

「ならば我々もそのように動こう」

 

「よろしくお願いします」

 

バタバタと各機関の大人たちとオールマイトが立ち去った夕刻。仕事を終えてきたというオールマイトがケーキを手に再度見舞いに来てくれた。毎度毎度律儀な人だなぁ。

 

「…優子ちゃんはすぐに働きたいのかい?」

 

「いえ、そういうわけじゃないですけど」

 

藪から棒に何だ。砂糖漬けのスミレと透明なゼリーがかけられた藤色のムースを一口頬張った。甘い、美味しい。どこのケーキだろう。ふんふん……やっぱり全然知らないメーカーだなぁ。

 

「それなら、どうだろう、せめて高校までは行かないかい?」

 

「高校?なぜですか?」

 

「自分のやりたいことを考えて入った高校が学生生活で1番楽しいからさ。…まあ、私の経験だがね」

 

「オールマイトはどこの学校に行ってたんですか?」

 

「雄英高校のヒーロー科さ。国立だよ」

 

「国立の、高校…」

 

前世で私が行っていたのはごく普通の公立高校だった。だからなんとなくのイメージなんだけど、国立というとかなりレベルが高そうだと思った。

 

「普通科に経営科、サポート科なんてのもあるぞ!」

 

「有名なところですか?」

 

「ああ。恐らく、日本で1番だな!遠方からの学生もいるし、住まいの指定はあるが一人暮らしも認められている」

 

さすが国民的ヒーロー、オールマイトともなると母校もすごいんだな。でもこの口調にこの言い方となると、私に入学を勧めているということなんだろう。分かりやすい勧誘すぎて笑ってしまう。まったく、お節介なヒーローだ。

 

「私でも入れますか?」

 

「ヒーロー科は戦闘能力が求められるだろうが、他の科なら学力さえあればね」

 

国立で、オールマイトの母校で、有名。一人暮らしが認められているとのことだし、ただの中卒というよりは就職にも有利だろう。なにより、オールマイトがどんな風に今のオールマイトになったのか、興味がわいた。

 

「なら…たくさん勉強しなきゃですね」

 

行くかはまだ確定じゃないけど、行ってみてもいいかな、と思った。そんな私のぼんやりした言い方なのに、オールマイトはとても嬉しそうに笑った。

 

「ああ!君が入学する日を待っているよ!」

 

(そんなこと言われたら、本気にしちゃうじゃないの)

 

2度目の高校生生活をこの人の母校で過ごしてみたい。そんな夢をぼんやり持ってしまうほど。私はオールマイトに惚れ込んでしまったのだ。

 

 

 

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