赤色の兄貴   作:フ瑠ラン

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第4話

「は? 野球を教えて欲しい?」

 

 

愛しの弟が家に帰ってきて「ただいま」を言う前に俺に告げた言葉は「兄貴野球教えて」だった。

俺の愛しの弟、業は天才肌である。何をするにも大体1回で出来てしまう。それ故に何かにのめり込む事はほとんどなくて練習などするのがカッコ悪いと勝手に思い込んでしまう程には業はグレていた。

 

そんな業が俺に野球を教えてくれと懇願してきた。少しずつではあるがどうやら業も成長していっているらしい。お兄ちゃん嬉しい!!

 

と言っても俺、そんなに野球のルールは知らない。でも弟の力になるために勉強してやろう!!なんたって俺は業のお兄ちゃんだからな!

 

 

「でも何で急に野球なんだ?」

「それがさあ、球技大会が今度あるんだけど…まあ色々あってね」

 

 

「椚ヶ丘中学校の球技大会って保護者見に行ける奴だっけ」と呟けば業から鋭い目付きで「来なくていいから」と釘を刺されてしまった。

 

「えー」と呟けば更に睨まれる。業の機嫌を損ねても大して怖くないので別にいいのだがあまりやりすぎると嫌われるので適当にやめておく。

 

でもまあこっそりと見に行くつもりではある。何としてもバレないように行かねば。あ、日にち聞いとかないと。下手すれば講義も休まなきゃだし。

 

 

「俺も素人だけど…まあ、頑張るか」

「サンキュ、兄貴」

 

 

業が俺に教えてくれるか、そこが問題ではあるが。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「な、何だろうあの人…」

 

 

球技大会当日。潮田渚はとある人を一人不安げに見つめていた。渚が見つめている人は知り合いではない。ただ、全身黒ずくめで怪しげな雰囲気を醸し出し肩に下げている一眼レフがどうにも引っかかるだけである。

 

A組の誰かの親だろうか。いや、そもそも親が来てよかったのか。そう疑問に思う渚。あまりにも見つめすぎたのか隣にいた業が渚の顔を覗き込んだ。

 

 

「どうしたの?渚くん」

「いや…何か怪しげな人がいてさ」

 

 

そう言うとカルマも渚の視線を辿って黒ずくめの男を見つめる。その時、パシャリと男の一眼レフが光った。

 

 

「(な、何か写真撮られた!?)」

 

 

テンパる渚。当たり前だろう。全く知らない男から急に写真を撮られたのだ。テンパっても仕方の無いことではある。

 

業は目を細めた。そして歩き出す。その時だった。

 

 

「おーい!! カルマ、渚! そろそろ始まるぞー」

 

 

杉野の言葉に業の足は止められる。

 

 

「か、カルマくん……」

「来るなって言ったのに……!!」

 

 

忌々しげに呟かれる言葉はどうやら男と関係があるようだ。それもかなり深い。渚はそれを瞬時に察し業を見た。業も渚に見られているのに気づき小さく溜息をつき、言った。

 

 

「あれ、俺の兄貴」

 

 

渚からは悲鳴に近い程の叫び声が上がった。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

業の球技大会を見ていて相変わらずだなあと俺は思った。相変わらずあのE組いびりは続いているらしい。俺は適当にこの学校に中学受験したがあの弱い者虐めは好きではなくテストの日以外は殆どバックれていた。

 

途中から出てきた理事長と目が合う。鋭い眼差しが俺に刺さったような気がした。ホント、相変わらずだなと思った。

 

理事長の事は忘れ業に視線をやる。現在、業達E組は守備になっており、業は怠そうに護っていた。それを見てこっちも相変わらずだと思う。何気に練習していた業だがそれを全く気づかせない。うむうむ、何ともいい男である。

 

結果はE組の勝利。業はドカンと一発ホームランを打ったかと思えばそれは違いドカンと一発、理事長にA組に煽りだった。うむ、本当にウチの弟は強い。業のおかげでE組が勝てたと言っても過言では無いだろう。

 

写真は沢山撮った。あの業にちゃんとした友達…いや、彼女が居たなんて驚きではあるが、業も年頃だ。うむ、仕方の…無い、事なのだろう。そろそろ俺も弟離れをしなくてはならないんだろう。

 

涙ぐみながらも業に見つかる前に帰ろうとしよう。こっちを見られている感半端ないが、まあうん。気にしないフリで行こうと思う。言われても知らないで通そう、うん。

 

今日も今日とて弟は可愛いです。

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