妖刀との出会い~三人の最悪の世代   作:幸福野郎

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小人

 店を出て直ぐのこと。

 村から五キロメートル程離れた場所、そこには大量の湯気。

 湯気の発生源は、木々に囲まれた天然の温泉だ。

「おや、珍しいですな」

 温泉には、湯に浸かる巨漢の男の姿。

 ウルージは心地よい温かさを感じながら、訪ね人の方ヘ顔を向ける。

「ロー殿、温泉に興味が?」 

「いや、村人の頼みでな……」

 温泉の周りの、ごつごつした岩肌の上に立つ人物はロー。

 彼は問いかけに答えながら警戒する。

「……」

 前に立つもう一人の訪問者を。

 その男は、血なまぐさい雰囲気を放っていた。

(危険だ)

 ローの直感が告げている。この男は、間違いなく悪に属する人物だと。

「……それじゃあ、おれは行くぜ」

 男はそう言うと、反転し歩き出す。ローの横を通る時にちらりとローを見たが、何も言わずに通り過ぎる。そのまま木々の中ヘと歩き去っていった。

「……奴が」

「ええ、協力者ですぞ。顔は怖いが、彼や仲間達はたまに村の力になってくれる。前にも言いましたかな?」

「言ったな」

 ウルージから聞いた協力者の情報について、彼は考える。

(人に親切にすれば)

 自らに利益があるからと、誰かを助けることはあるだろう。

(おれも、人のことは言えないが)

 それは、ローも例外ではない。

(……それなら)

 彼は目を瞑り、恩人の姿を思い浮かベる。

 

(あの人は、何故おれを助けてくれたんだ)

 

◆◆◆

 

「……」

 

 朝の自室で鍛錬中のロー。彼は目をつぶって能力を発動し、自身の周囲にとても小さな膜を発生させていた。半球体で透き通ったそれは、以前に王たちとの戦いで使用したものだ。

 使う度に体力を消耗するが強力な能力。悪魔の実の力は、使い方を極めることでどこまでも強力な武器となる。

 ローの使う悪魔の実は超人系と呼称される。その超人系の中には、世界に影響を与えるようなとんでも能力があるとかないとか。

 実際、彼の食べたオペオペの実はとてつもない可能性を秘めている。

 

「いやー! 汗かいた!」

「痛たたた・・・・・・やり過ぎたか」

「それぐらいやらないと駄目だろ! もっと強くならないと!」

 

 入ってきた声に集中を解く。床に座っているローが目を開くと、そこにはドアを開けて室内に入ってきた仲間達の姿。衣服はボロボロ、鍛錬の後なのだろう。

「よう!キャプテン!成果はどうだ?」

「それなりだ」

 ローは鍛錬を一旦中断する事にした。

「そっちの方こそ、成果はどうだ?」

 鞘に刀を収めながら、ローは言う。

「かなり手応えありだな。こんなに頑張るの、いつ以来だか」

「頑張りすぎも良くないけどな!」

「本当、すごい気迫だったよ!ベポさん達!」

「ハハハ・・・・・・若いな、君達は」

「・・・・・・」

 さりげなく混ざってきた、今朝の二人。

「あ、お邪魔してます。ローさん」

「お邪魔するよ、ロー君」

 何の用だ?と、ローは思った。村長を連れてただ遊びに来た、という訳はないだろう。

「あっ!ローさん、その顔は、何の用だ、ただ遊びに来た訳ではないだろう・・・・・・って考えてる顔だ!」

 妙に具体的な事をいう少女。しかし当たってはいるものだから、少しだけローは感心した。

「でも、その通りなんだよね。ただ遊びに来た訳じゃないんだ」

 突如、真剣になる少女の顔。それに影響されて、ローの気持ちも真剣なものになる。

 どんな用件だろうか、と巡る思考。色々な可能性が頭に浮かび、気を引き締めながら、少女の言葉を待つ。

「遊びに行こう! 村の外へGO!」

「・・・・・・は?」

 少女の言葉を聞いて、ローがそれを完全に認識するまで数秒かかった。そうして彼は、子供の言う事を真に受けるもんじゃないと、少し後悔した。

 

◆◆◆

 

「ピクニック~、皆でピクニック~、嬉しいな~♪」

「アイアイ、おれも嬉しいぞ、アン!」

 穏やかな気候の中、森の中を歩くベポと少女、アン。その足取りはとても陽気なものだ。アンの背中には、ぱんぱんのリュックサック。

「微笑ましいな」

 呟く声は、後方を歩く二人の内の一人のもの。その二人の足取りは落ち着いている。

「・・・・・・付き合ってくれて、感謝するよロー君」

「全員じゃないがな」

「それでも嬉しいさ」

 喜色に満ちた笑顔、屈託のない善の感情をローは感じ取る。それはアンという少女と似た感情だと彼は思った。

「しかし、鍛錬か・・・・・・奴にこっぴどくやられたんだったな君は」

 奴、その響きには親愛の情が混ざっている。

 

「アイツの悪い趣味だ・・・・・・。何がしたいのやら。今まで何度か、奴に挑む者が村に滞在したが、その誰もが敗れて行った。話を聞いても奴は楽しいとしか言わん」

 

 村長はそう言いながら、ローたちを襲った王について語り始めた。

 

◆◆◆

 

 それはまだ、病気によって恐れられる村がなかったころの話。

 

「おーい。生きてるか? 生きてるよなー!?」

 

「……」

 

「お、目を開けたな! よしよし。立てるか?」

 

「に、肉……」

 

 王と村長の出会いは、また別の村の前にて。

 夜闇の中、ボロボロの姿で倒れている少年がいた。それを見て、幼き日の村長はのんきに声をかけるのだった。

 

「そうかそうか。分かった。水もってくるよー」

 

「い、いや肉ってっ」

 

「待ってろよー!!」

 

「おいー!?」

 

 あまり噛み合わない話の末、二人は知り合った。

 意外と気は合うようで、たいした時間もかからずに仲良くなる。彼らは村で有名な剣士として成長し、海外からやってくる海賊などを撃破する活躍を見せていった。

 

◆◆◆

 

「……というわけで、あいつは最初からふざけたやつであった。しかし本当に最近は度が過ぎるな」

 

「……」

 

呆れながらも表れた情は、村長が友である王を大切に思っている事を示していた。

「それどころか、訪れた挑戦者の面倒を見るように頼むとは・・・・・・いかんな。せっかくの息抜き、深刻に考えては」

「そうだな。目的は、小人達の国だったか」

「ハハハ・・・・・・噂程度だがね。不可思議な噂がいくつかあるんだ、この国は。森の広場に、小人の国があるってね」

「らしいな」

 国に流れる不思議な噂、それが目的の一つだった。

「アンもその噂を信じてる訳じゃないんだろうが・・・・・・なるベく付き合ってあげないとな。いや、楽しんではいるがね」

「……付き合いが良いな」

 言いながらローは、村長との出会いを思い出す。

 

「やあ、君がロー君か」

 出会いは偶然だった。薄汚れた服を着たその老人は、人によっては胡散臭いと思える程の明るい笑顔をローに向けた。事実、ローも胡散臭いとは思った。

「すまないね、汚いなりで」

 村長は雑用の後だった。こういった事は珍しくなく、よく彼は村人の手助けをしていた。手伝いをする彼の姿はとても楽しげで、これこそ自分にとって何よりの楽しみだ、とでもいうかの様。

「よしっ!会心の出来っ!えっ、間違い?ああっ!すまない!」

「相変わらず、抜けてるなぁ」

「これ終わったら、一緒に飲もうぜ村長」

「あっ、オレも」

 ちょっと抜けてる所もある村長の村人達との交流。

 ローは最初の認識を改めていった。

 

「ここかな」

 歩くこと、数キロメートル。ロー達はとりあえずの目的地にたどり着いた。

「ここで小人を見たって?」

 その場所は木々が存在しない、開けた所だ。周りには草原が広がっている。

「うん!わくわくするね!」

 アンが放つ言葉には、少しだけ白々しさが混ざっていた。小人自体は信じておらず、ありもしないものを皆で探すという事を楽しんでいるのだろう。

「それで、どうやって探すんだ?」

「・・・・・・うーん、とりあえず手分けして」

 アンの言葉の途中、前方の草原をかき分けて、何者かがこの場に飛び出してきた。

「なに!?」

 その者は、よろよろとした足取りで数歩歩くと、力尽きた様に前のめりに倒れた。

「小人・・・・・・さん?」

 その者は、非常に小さな体躯を持っていた。

 

「み、水を・・・・・・水をくれれす・・・・・・」

 

 

 

森の中を歩く、ロー達。彼等の目的地は変わり、人数も変わった。

「いやー、助かったれす」

 新たに仲間に加わったのは、とても小さな人。小人族と呼称される存在と思われる者だった。

「困った時は、お互い様さ」

「しかし、倒れるまでの記憶がないってどういう事だ?」

「どういう事と言われても・・・・・・」

 ベポの問いに対して頭を悩ませる小人。

「国を出た事は覚えてるれす・・・・・・それ以降の記憶がないれす」

「なんか怪しいな、お前」

「怪しいってなにれす!?」

 小人は困惑するが、ローも怪しいとは思っていた。

「というか、この森自体が奇妙だよな」

 そう言うベポの前方には、虹で出来たアーチ。それを通り過ぎると、途端に消滅した。

「わっ、綺麗!」

 喜びの声を上げるアンの周りには、虹色の鱗粉を発する蝶。

「なんと色鮮やかな・・・・・・噂には聞いたことがあるが」

 素直に感嘆する村長。

「ここら辺じゃ、珍しくないれす」

「ありがとう、小人さん!」

「いや、別に・・・・・・でも、そこまで喜ばれると、素直に嬉しいれすね」

 小人はとても和やかな笑顔を形作った。

「・・・・・・小人さん、輝く薬草について、なにか知らない?」

 先程とは違って、真面目な雰囲気を発するアン。

「輝く薬草れすか?」

 歩きながら、数秒思案する小人。

「そういう物が国にあったような、なかったような」

「本当!?」

「・・・・・・助けてくれた事には感謝するけど、今は国に入れないれす。ある事情の所為で・・・・・・」

「事情?」

「そうれす。・・・・・・国の皆は今、凄いぴりぴりしてるれす」

 小人の表情に影が差す。彼は、国の事情をロー達に語り始めた。

 

「僕達、小人の国は二つあるれす」

「でも、二つの国の仲は悪くて、数十年の間、ぎすぎすしてるれす」

「その所為で、妙に警戒心が高くなってるれす」

 

「小人さん達、仲悪いの?・・・・・・なんで」

 話を聞いたアンの口から放たれた呟きは、無意識のものだ。

「同じ小人の国でも、色々な違いがあるれす。中々、上手くは噛み合わないれすよ」

「なんか嫌だな、そういうの・・・・・・。皆、仲良くの方が楽しいのに」

「そうれすね。でも、そうはならないれす」

 小人の言葉に乗る思いは、諦観。それをアンは、苦々しく思う。

「・・・・・・私が住んでる所もね、周りとぎすぎすした関係なんだ。小人さん」

「そうなんれすか?」

「そうなの。・・・・・・でも、いつか、仲良くなりたいと思ってるよ。希望を信じることが大事だって思ってる」

 だから、小人さんも――。

 しかし、言葉は続かなかった。

「・・・・・・ありがとう、そんなに真剣になってくれて」

 それでも、真髄な気持ちは届いた。

「・・・・・・いきなりは無理れすけど、少しづつでも、ちょっとだけでも、信じていきたいれす。勇者も信じるのが大切って言ってたれす!」

「勇者?」

「国に伝わる物語の主人公れす! 木の怪物を倒すんれすよ!」

 小人は、目を輝かせる。

 

「さて、と」

 しばらく歩き、ある地点でロー達は立ち止まる。

「この木の向こう側が僕達の国れす。国の周りは特殊な壁で覆われていて、部外者は基本的に入れない」

 小人は目の前の木々の中の、一本を指さす。

「皆さん、本当にありがとうれす。この御恩は忘れません。・・・・・・いつか、必ず、恩返ししたいと思います。何か御用があれば、あの、初めて会った場所で」

 お辞儀する小人。

「うん、またね、小人さん」

「風邪ひくなよー!」

「元気でな! 今度会ったら、精一杯おもてなしされてやるぜ!」

「はいれす! 皆さんもお元気で!」

 別れの言葉を告げられた小人は、もう一度お辞儀し、木々の中ヘと去って行った。

 

「小人さんに会えたこと、みんなに言わなきゃ」

 村ヘの帰り道、アンの足取りはとても軽やかだ。

「まさか、本当にいるとは・・・・・・」

「良かったな!アン!」

「うん!」

 一行は陽気に、森を行く。

 

 ――突風が、巻き起こった。

 

◆◆◆

 

「・・・・・・ん?」

 アンが目蓋を開けると、そこは変わらぬ森の中、しかし、変わったものもある。

「あれ?みんな・・・・・・」

 アンと同行していた三人の姿がない。

「私は・・・・・・確か」

 小人を見届けた後、四人で帰路についた。その途中で異変は起きた。異常な程、強力な突風が、四人を襲ったのだ。

 その後アンは体の自由が利かなくなり、だんだんと景色が遠ざかり、気づいたらこの場所にいた。

「みんな、どこ?」

 飛んで行ったか、飛ばされたか。心の中で否定するが、事実として三人はいない。

「探さないと・・・・・・!」

 動揺しながらも、アンは行動を起こそうとする。その時、声が聞こえた。

「今度こそ、小人を見つけるぞ!」

「でも、あんまり遅くなると、母ちゃんに怒られるよ」

「バカ野郎! ロマンとどっちが大事だ!」

 声の主達はアンの前に姿を現す。

「! だっ、誰だ!?」

「・・・・・・赤?」

 数人の少年達はアンに気付き、その姿を見た。体の所々が真っ赤に変色した姿を。

「この娘、なんで・・・・・・」

「おい、これ、まさか・・・・・・」

「む、村の化け物か・・・・・・?」

 動揺が少年達の間に広がる。アンはどうしていいか分からない。

「嘘だろ・・・・・・」

「あっ、あの!」

 揺れる心のままで、アンは少年達に一歩、歩み寄る。

「ち、近づくな!」

 少年達の一人が、咄嗟に足元の小石を拾い上げ、アンに向かって投げつける。

「っ!?」

 石はアンの額に命中した。

「お、おい・・・・・・血が」

「・・・・・・構うかっ!死んじまえっ!化け物!」

 再び放たれる小石。

 しかし今度は弾かれた。弾いたのは、帽子を被った男。

「・・・・・・」

「あっ、ローさん」

「なんだっ!?」

 ローは、アンを守るように立ちはだかる。

「おーおー、何やら不穏な空気ですな」

 更にローに続いて木々の間から現れたのは、上半身裸の巨漢。

「う、」

 その男を見た少年達の目が恐怖で染まる。

「うわああああああ!!化け物だー!!」

「逃げろー!!」

 少年達は恐怖のあまり、脱兎の如く逃げ出した。

「おーおー、怖がらせてしまったか・・・・・・流石に少し傷つきますな」

 言いながら、笑みは崩さない。

「ローさん、ありがとう。ウルージさん、何でここに?」

「少々、散歩がてら修行を」

 それで上半身裸な上に、体が妙に大きくなってるのかと、アンは半ば無理矢理納得した。

「・・・・・・そうだ、ウルージさんも探すの手伝って!」

「ああ、はぐれたようですな」

「そうなの! だから早く」

「待て」

 急くアンを止める、ローの静止の言葉。そこに含まれた感情は読み取れない。

「診せてみろ。軽い処置は出来る」

 

 

 

 結果として、村長とベポの合流には成功した。ただし、トラブルが全くなしとは言えなかったが。

「村長を助けろー!」

「なにやってんだよ!本当にドジだな」

「待っててください!今、助けます!」

 謎の突風に飛ばされた後、村長は動揺しながらも、行動を起こした。そして、見事に崖から落っこちた。

「いや、情けない・・・・・・。ありがとうな、皆」

「水臭いぜ、村長」

「いつも助けられてるしな、お互い様だ」

 村人達の手によって、村長は無事救出される。

 ロー達の慌ただしいピクニックは、こうして幕を閉じた。

 

「・・・・・・って、ことがあったの!マリィさん!」

「そうなの。噂の薬草か・・・・・・」

 

 村の診療所。診察室でアンは、自分が体験した事を冒険譚のように、目の前でデスクに座って書類に何かを書いているマリィに聞かせた。興奮した様子のアンとは逆に、マリィは静かにそれを聞いている。

「いやー、でも、あの風にはびびったな!キャプテン!」

「そうだな。不可解な現象だった」

 アンの背後に立つ、ローとベポ。

「・・・・・・それでアン、その傷は」

「あっ、これは」

 マリィの問いに言葉が詰まり、数秒置いてアンは返答する。

「外の子供達に偶然会ってね、怖がられて石投げられちゃった」

「えっ・・・・・・」

 アンの言葉にマリィの体が硬直する。

「そんな・・・・・・そんなこと・・・・・・」

 目に見えて狼狽するマリィ。

「・・・・・・マリィさん?」

 アンはマリィを心配し、声をかける。それと同時に、マリィはアンの方に向き直り彼女を抱き寄せた。

「あっ、あの」

「辛かったでしょう・・・・・・アン」

 マリィはアンを抱きしめながら、慈しむようにそう言った。

「・・・・・・うん。確かに悲しかったけど、それだけじゃないよ」

「?」

「前より強く、仲良くなりたいって、そう思うんだ」

 言葉は、どこまでも真っ直ぐで、暖かいものだった。

「・・・・・・そう、そうよね。貴女は」

 言葉を受けたマリィの呟きは、様々な感情を含んでいた。

夕日が村を照らす。診療所を出たロー達は、いつかのような帰路に着いている。

「ピクニック~、色々、あったよピクニック~♪」

「アイアイ、本当だな!」

 帰路を歩くアン達は、今日の思い出を噛みしめる。

「小人さんが本当にいたなんて!」

「虹の蝶々、綺麗だったな」

「でも、突風は怖かったね」

「そういうこともある! 冒険だからな!」

 楽しいことも、辛いことも、

「村長の家に寄らないと。大丈夫だとは思ってるけどね。村長だもん!」

「崖から落っこちて、あの元気だからな」

 大事だというように噛みしめる。

「小人さんもなんか大変みたいだし」

「小人といえば、アンの励ましは良かったと思うぞ。前向きで」

「前向き、か」

 苦笑するアン。

「・・・・・・そんなことないんだよ?本当はね、不安だった」

「不安?」

「うん。多分、ずっとね」

 自嘲するような呟き、そうして少女は自分の中のしこりを語り始めた。

「希望を信じるのが大事だって小人さんには言ったけど、あの時、あんまり自信がなかった。・・・・・・だって、人のわるいところに触れたことがないんだもん。触れたら信じられなくなる、変わっちゃうんじゃないかって」

「・・・・・・」

 少女の語りを、ローは静かに聞き入っている。

「だけど、そうじゃなかった。この程度なら、まだ信じられる。」

 先頭を歩く彼女は、振り返りながら言う。

「絶望なんかこの世にはないんだって・・・・・・信じていれば、希望はきっと形になるって」

 少女が向ける笑顔は、太陽の様。

 

 ――――ね?ロー君、この世に絶望などないのです

 

 それがどうにも眩しく見えてしまって、ローは少しだけ目を逸らした。

「そうだな!今の関係が悪くても、きっと、いつか良くなるさ!」

 ベポは彼女を後押しした。アンに対するベポの言葉は、変に確信を含んでいる。

「ベポさん・・・・・・ありがとう!大好き!」

「おう!おれもだ!」

 二人は無邪気に笑い合いながら、帰路を行く。

 

(……)

 賑やかに道を行く二人。どちらも楽しそうに笑っている。

 とても騒がしく、落ち着きがない、少し呆れる。

 だが、何気ないあたたかさを感じられるその光景は――。

「明日はもっと楽しく!」

「アイアイ!」

 

 悪くはない、そうも思える。

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