妖刀との出会い~三人の最悪の世代   作:幸福野郎

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玩具箱

 夕日は落ち、月は昇る。

 静かな森に響き渡るは、誰の歌。

「~♪」

 森に響く誰かの歌。

「旅人達は、どこヘ行く~♪」

 陽気に歌う、森の住人。

「何を求めて、どこヘ行く~♪」

 似合わない歌。

「それは誰にも分からない、分からないまま進むのさ~♪」

 彼は何を思い歌うのか。

「それでも、気を付けて旅人よ。目指す場所に立ち塞がるは」

 

「誰かが夢見たいつかの幻影」

 

◆◆◆

 

「ん・・・・・・」

 マリィの意識が覚醒する。彼女はソファに仰向けで寝ていて、手には医学書。

傍のテーブル上には小皿。その上には、アミウダケというキノコを粉末状にすり潰したものが載っている。

 

「寝落ち・・・・・・」

 

 どうやら勉強中に寝てしまったらしい、と思い至って嘆息する。昨日は根を詰めて研究を行っていたせいで、両目がかなり痛く感じてしまう。心なしか頭痛もする。

 ここ最近はなぜか心が落ち着かないので、作業に没頭して誤魔化すことが多くなった。

 その割に進捗がないのは苛立ちをつのらせる。

 

「・・・・・・でも」

 

 このまま寝た方が良いかもしれない、と部屋の掛け時計を確認しながら彼女は思った。なんせ今日は、ある用事があるのだから。

(輝く薬草)

 あらゆる病気を治せる夢の薬草。虹色に輝くという光の薬草。

 そんな代物がこの国に存在するという噂。

 当然、彼女はそんな噂を信じてはいなかった。だが、親交の深い少女から興味深い話を聞いた。

「それで、その小人さんがね」 

 少女が言うには、ピクニックの途中で出会った小人が薬草の存在を仄めかしていたとか。その話がある青年の耳に入ったのが事の始まり。

 

◆◆◆

 

「輝く薬草・・・・・・本当にあるのか!?」

 その青年の名はロバーツ。少女の兄で、マリィとは幼馴染の関係。

「あるかどうかは分からないわよ。実際に目にしたわけでもない。まあ、小人についてはそういったものが海の向こうにいるってあの人が言っていたし……でも、どんな病気も治せる草なんて」

「何でだ? 不思議な力を扱えるようになる食べ物だって、海にはあるっていうぞ。だったらそういう草とかだって」

「……それで、結局行くのか?」

 ある日、ロバーツ、マリィ、ローの三人は村の南の砂浜で話し合っていた。静かな波の音が、その場に響いている。

「行くさ‼」

「……止めましょう、ロバーツ。なんだか怖いの」

 少しだけ怯えを含んだ声で、マリィはロバーツを止めようとする。

「いやだ。……確かに、夢のようなことだ。実際、夢でも見てたんじゃないかっていう村人もいる。でも、だからこそロマンなんだー!」

 強い意志をもって言葉を口にするロバーツに、少し気圧されるマリィ。

 

「ロマンって……貴方はいつもそれ。似合わないわよ、ロバーツには」

 

「……‼ それだけって訳でもない。君だって、見つかったら嬉しいはずだ。だって、君は誰より――」

 

「そうね。私たちを差別する人達に反感を持ってるわ。けど」

 

 用事とは、薬草探しに付き合う事。

 付き合う理由は、ただどこか危なっかしい彼が心配なだけで、薬草を信じてるわけじゃない。夢のような薬草を信じている訳じゃない、とマリィの中で繰り返される言い訳じみた言葉。

「そう、信じてない・・・・・・」

 言葉と共に、再びマリィはソファに身を沈める。

 少しでも体を休ませて、今日の用事に備えよう。そう考えて目蓋を閉じた。

 視界は黒く染まり、意識は白く染まっていく。

 

◆◆◆

 

 気持ちの良い快晴。照りつける太陽の光は、旅人達を元気づけるだろう。

「良い天気だな。これは幸先が良い! ハハハ!」

「そうね」

 今日は旅日和。旅人達は、夢を追い求めて広大な森を行く。

「こんな日は、美味しくパンを食えそうだ。イチゴジャム、ブルーベリー、そして特製の・・・・・・」

「本当に甘い物が好きよね。荷物増やして、大丈夫?」

「小人の為でもあるからね!・・・・・・しかし、重いのは確かだな。ローさん、後どのぐらいで着くんだ?」

 ロバーツは、先頭を歩くローに問いかける。彼の背中には、ぱんぱんに物が詰まったリュックが。

「まだ、半分も歩いてねェぞ」

 振り返らずに放った言葉に、ロバーツは若干顔をしかめる。

「そうなのか、先は長いなー」

「なに?ロバーツ。もう疲れたの?だらしない」

「いや、そういうわけでは・・・・・・少し、あるかな」

 少し弱音を吐くロバーツに、マリィは呆れた。ジト目で幼馴染を見る。

「貴方は、本当に体力がないわね。子供の時からそう。よくロマンを求めて外出するくせに」

「ハハハ・・・・・・面目ない」

 幼馴染二人の会話、どことなく楽しそうなそれを聞きながらローは、ある事を思う。

 

(さて、どうなるか)

 今回の旅はある程度、警戒すべき事だ。

 勇気があるのは結構だが、それだけでは駄目だとロー。

「だいだい貴方は」

「あー、はいはい」

「何? その適当な返事は。だいたい貴方は昔から」

「それを言うなら君だって」

 いざとなればこの二人を守らなければいけなくなる。あくまでいざとなればだが、現実は何が起きても不思議じゃない。

 たとえ逸れてもアレがあるとはいえ、用心しなくては。

 ただでさえこの国は、気になることが多い。あの病気のことや、この前の不可思議な現象の数々・・・・・・。

(そうだ)

 不思議じゃない。平穏な日常なんて簡単に壊れてしまう。ふざけるなと言いたくなるほどにあっさりと、不幸は大切な人達を奪っていく。

「聞いているの? ロバーツ」

「聞いてるってば!」

 そんな事は、あの時に嫌というほど思い知ったロー。

 

 ロー達は途中で休憩を挿みながらも、道案内の立て看板を辿って、なんとか目的地にたどり着いた。

「ここが、夢の始まり!小人は?小人はどこに?」

 きょろきょろ、と落ち着きなく辺りを見回すロバーツ。その様子を見てマリィは溜息をこぼした。

「子供かしら。まったく・・・・・・」

 その意見にはローも同意するが、仲間達のおかげで慣れてはいる。

「ローさん! 小人はここで会えると!?」

「そのようなことは言ってたな」

 用がある時はこの場所で、と小人は言っていた。その為に、ローは同行したのだ。勿論、それだけではないが。

「出てきてくれ!小人さん!美味しい食べ物、持ってきたんだ!一緒に食べよう!」

 小人と会うために、色々と試し始めるロバーツ。その目は、少年のように輝いている。

「相変わらずね・・・・・・」

 マリィは幼馴染の様子を、呆れと親愛が混ざった眼差しで見る。ロバーツはマリィに見守られながら、ひたすらに趣味に没頭する。

 そうして数分の時が経った。

「?」

 その時、変化は起きた。

「歌・・・・・・?」

 ロー達の耳に入ってきたのは、陽気な歌声。

「・・・・・・どうするの?ロバーツ」

「行こう!ロマンの予感がする」

 ロバーツは歌の発生源ヘと歩き出す。それに続いて、ローとマリィも歩き出した。

 

「~♪」

 歌声に誘われるように、森を進む旅人達。

「旅人――~♪」

 歌声は徐々に鮮明になっていく。

「何を求めて――行く~♪」

 どこまでも明るい歌を頼りに、歩き続ける。

「それは誰にも分からない、分からないまま――~♪」

 そして、歌の発生源にロー達はたどり着く。

「ここは・・・・・・」

 そこには、大勢の小人がいた。小人の家と思われる建造物があった。

 ロー達が目指した小人の国、ここは正しくその場所だった。

「なんだ・・・・・・」

 しかしロバーツの顔に喜びはなく、ローとマリィも同様だ。 

 彼等は、目の前の光景に唖然としている。

「なんだよ、これッ!?」

 

「ボク達の国を守るんれす!!」

「侵略者を倒せー!!」

 

 ロー達の目に映るのは、大きな木の化け物が小人たちの家らしき物体を壊そうとする光景。応戦する小人達の姿は傷だらけだ。

 

「くそ! なんだか分からないが!」

 

「……」

  

 走り出すローとロバーツ。マリィはそれを見て、驚いた表情を浮かべている。

 彼らの加勢する方は決まっている。

「そ、そこまでだ! 変な着ぐるみを着た人! それ以上の狼藉は許さないぞー!」

 小人達を庇うように進み出る二人。

 それでも木の動きは止まらない。ロバーツとマリィは、絵本でしか見ないような怪物に動揺する。

 

「ひいー!?」

 

「……!!」

 

「おれがやる」

 

 ローは、怯える二人をかばうようにさらに前に出た。その眼光は怪物を前にしても揺るがない。

 突き進む木の怪物の根っこが複数伸び、鋼鉄の槍となって彼等に襲い掛かる。

 

「あぶないれす!そいつは伝説の怪物れすよ!?」

 

 ローは刀を抜き、襲い掛かる木の化け物に一閃。

 あっさりと化け物は切り裂かれた。

 彼の切断はダイヤでも切り裂く。

 

「さ、さすがーっ」

 

 どたばたが収まり、数分後。

 ロー達は小人達に囲まれていた。

 

「国同士のけんかの原因は病気れすよ!」

 

「風邪はこわいれす! 不治の病! こっちくるなれすー!」

 

「……はぁ」

 

 小人たちは風邪を異常に恐れているようだ。互いにけん制し合っている。

 少し拍子抜けしたローは、風邪について確かな情報を伝えた。

 

「えー! そうなんれすか!?」

 

「勇者がいうことなら本当れす!」

 

「仲直りするれすよ!」

 

「ありがとうれす!」

 

「感謝れす!」

 

 感謝の言葉を次々に口にする小人達に、三人は戸惑った様子だ。

 

「て、照れるなぁ。ははは」

 

「私、何もしてないのに。悪いわね」

 

「おれは海賊だ」

 

 そんなことなど気にせずに、小人達は感謝を告げる。

「ありがとうれす!もうだめかと!!」

「希望を信じてよかったれすー! この世に救いの神はいるれすね!」

 小人の言葉にマリィが少し反応した。

 

「もうしわけないれすが、歓迎は後日に……」

 

「こんなことあったんだから、仕方ないだろう。うん」

 

「あっ。前に言っていた薬草らしきものが見つかったので、よければどうぞれす!」

  

 結局辿り着いた国で何をするでもなく、ロー達はその場を去る。

 しかし、ある疑念を抱いた者が一人いた。

 

「……妙だな」

 

◆◆◆

 

 それから太陽は沈み、森は暗闇に包まれた。月の光は旅人達を祝福する。

「素直に喜べないよな・・・・・・コレは」

 ロバーツは左手に持った物体を眺める。物体はしおれていて、生気というものが感じられない。

 小人達に貰ったものだ。

「これが薬草の正体。夢は、夢かよ」

 夜の森を歩くロバーツの声には、明らかな落胆の気持ちが込められている。

「命があるだけ感謝よ」

 並んで歩くマリィは、かなり疲れた様子だ。

「・・・・・・そうだな」

 その様子を見て、ロバーツは申し訳なさそうに顔をふせる。

「流石の貴方もこりたようね」

「・・・・・・まあね。不思議なことが起こりすぎたー」

 隣のマリィと、前を歩くローに謝罪するロバーツ。

「何回目かしら。私は、勝手に付いてきただから良いわ」

「・・・・・・結局、ローさんに助けられたし」

「フフ、でも小人達の笑顔は悪くなかったわ」

 マリィはきっぱりと言い放つ。

「・・・・・・?」

 妙に力が入ったその言葉に、ロバーツは不思議がる。

「・・・・・・ねえ、ロバーツ。昔から貴方は冒険が好きだったわよね」

「? そうだけど」

「でも、貴女は私と同じ臆病な人間・・・・・・見ていた私は、そう思っていた」

 昔語りを始めるマリィ。ロバーツは、多少怪訝に思いながらも付き合う。二人の前を歩くローは、何の反応も見せず歩く。

 

「果敢に冒険する貴方を見て、本当に危険に出会った時に逃げる姿を想像できてしまったの」

 

「なんだい、そりゃ。酷いな」

 

ふてくされるロバーツ。マリィはごめんなさいと謝り、かつての希望を思い浮かべながら微笑んだ。

 

◆◆◆

 

「マリィ! また村の外へ行ったのか!?」

 

「……」

 

「そんなに傷だらけになって、もう無茶な友達作りはやめるんだ!」

 

 それは10年以上前のこと。

 夕暮れ時。家の玄関先で、一人の少女が父親に抱きしめられていた。彼女の服は疵が目立ち、その体にもいくつか怪我の痕跡が見て取れる。

 村の外で【袋叩き】にされた結果だ。

 少女は涙をこらえながら、それでもと口を開く。

 

「やだよ! そんなの! みんなともっと仲良くしたい!」

 

「マリィ。何度もいってるが、そんなことは……」

 

「むりじゃない! わたしはそう信じてる! いつかきっと、この病気が治って——」

 

◆◆◆

 

 少女の記憶は既に薄れ、現在の彼女はかつての考えを失っている。

 しかしマリィは微笑んだ。友人のちょっとした勇気と、小人たちの様子を思い浮かべて。

 

「でも、想像とは違うものね」

 

 それは優しい声だった。

 ロバーツの行動。それがマリィの心になにかしらの思いを抱かせたようだ。

 いや、マリィだけではない。

 

「……」

 

 玩具箱は壊れ、小人達は去る。

 また別の場所でも、戦いは起きていた。

 

「・・・・・・まいったぜ」

 左手に小銃を持ち、黒い帽子を被ったその男は、森の中を走っていた。男の服には、獣の爪痕のような傷が刻まれている。頭上には、異常なほど眩しく輝く太陽。

「逃げるな!逃げるな!戦えよ!!」

 喧しい声が、森に響く。

「ここは、楽しいおもちゃ箱!」

「楽しい楽しい、おもちゃ箱!」

「恐怖?歓喜?」

「抱く感情、人それぞれ!」

 更に喧しい複数の声。

 声は、男の周りの草木から聞こえてくる。

「本当に喧しいな・・・・・・!」

 忌々しげに顔を歪める男。

「戦え!!」

 男の周りの木々、その中の一本から何者かが飛び出し、男に襲いかかる。

「!!」

 上方からの襲撃を、咄嗟にかわす男。しかし、かわし切れず、服に新たな傷跡が刻まれた。

「獣が・・・・・・!」

 男は目の前に姿を現した襲撃者を睨む。

「ガハハハ! 弱いなお前は! ここは箱の中でも、生存確率が高い方なんだが!」

 襲撃者は、猫と人が混ざったような風貌だった。小柄で、まんまると太った体。黄色い体毛。長く鋭い爪がぎらりと、鋭く光る。

「そろそろ終わりにしよう! とうッ!」

 獣人は近くの木に素早くのぼると、木の葉に身を隠す。

「・・・・・・」

 何度も繰り返された、木の上からの攻撃。それを彼はぎりぎりでかわし続けた。

(しかし、次の攻撃は・・・・・・)

 彼の命を、奪い取るもの。

(確実に・・・・・・)

 今までより、速く。

(終わりだ!!)

 木の葉が揺れ、獣人が襲来する。その爪が引き裂くは、男の心臓。疾風の速さで、彼との距離を詰めていく。

「――?」

 その時、獣人の頭に浮かんだ疑問。それは、男の反応。

 

 何故、銃口がこちらを捉えているのか?

 

「――終わりだ」

 邪悪な笑みと共に、男は引き金を引いた。

 撃ち出された弾丸は、胴体に命中。

「なっ!?」

 弾丸を受けた獣人の体は砕け散り、地面にばら撒かれた。

 血肉のない、体が。

「わはは! まさしくオモチャか」

 男は、地面に転がった獣人の頭ヘと近づく。

「なん、でだ・・・・・・ぎりぎり・・・・・・だった」

「そりゃ、わざとだ」

 彼は獣人の頭を踏み砕いた。頭は、ガラス細工のように砕け散る。

「積んできた経験が違う。テメェの動きなんて、簡単に読める」

 つまらなそうに吐き捨てる。

「さて、これで・・・・・・!?」

 戦いが終わり、少しだけ気を緩めた、その時だった。轟音が響き、男の目の前の木々がなぎ倒される。

「見つけたぞ、侵入者よ」

 現れたのは、全身を鎧で包んだ大男。とても重そうな大剣を持っている、王に仕える兵士長。

「・・・・・・流石に疲れてんだよ、こっちは!テメェと戦う気はねェ!」

 即座に男は煙幕を張り、煙の向こうヘと銃弾を撃ち込みながら逃走する。

「!」

 銃弾は全て、鎧を貫いた。

「待て!」

 しかし、兵士長の強力な武装によって肉体を傷つけられない。正面から立ち向かい、全ての銃弾を受け止める。

 

 彼は、構わず侵入者を追いかけた。

 

「ハァ・・・・・・!逃げ切れたか・・・・・・?」

 息を乱しながら、男は大木に背を預けて座り込む。先程とは一転して、辺りは闇に包まれている。

「――ええ、逃げ切れたようです。ファーザー」

 闇から声が響く。

「そうか。一安心だぜ!能力を温存した甲斐があると良いが」

「箱に入った時はどうなるかと・・・・・・流石は、我らがファーザー!カポネ・ベッジ!」

 カポネと呼ばれた男は、闇からの声に驚きもなく対応する。

「・・・・・・この様で、流石はねェな。その言葉は敵に送ってやれ、ヴィト」

 

「確かに敵も大したもんレロ。流石は裏の世界の大物! 隠れて王城に近づいても察知され!攻めても、攻めきれず! 撤退するしか道はなし!」

 

 カポネたちは何回か王城に攻め込もうとしていたが、その度に阻まれていた。

 鎧のオモチャたちは一体一体がそれなりに手ごわい。

 それらを倒そうとすればカポネたちの武器も消耗していくため、逐一オモチャたちの持つ武器を回収して補充等、工夫しながら戦力の消費を抑えていた。

 

「一番弱いオモチャとの比較——だいたいこちらの兵一人で5体分程度と見て、間違いなさそうだ」

 

「そうですね。しかし、一番強いやつとの比較では……」

 

 カポネは敵の戦力分析を行い、オモチャたちの微妙な外見の差違と、それによる強さの違いに気づいた。

 一番弱いオモチャだけなら脅威になりえないと判断したが、最も強い個体の方が厄介であった。

 

「最強クラスのオモチャは、逆にこちらの兵5人分ときたもんだ。攻め崩すには、真正面からじゃ無理の極み……数も質も相手が上とは、笑えねェ状況だな。せめて王と兵士長さえいなければな……クソ!」

 

 しかめっ面で語るカポネは、敵兵の動き方に苦々しいものを感じている。

 それはあまり合理性を追求しない、素人のような戦運びだ。下手に戦術をかじったような奴よりは、逆に厄介で戦いづらいと感じていた。

 ガキのような精神性が表れた、その無計画で荒唐無稽な指揮。そこから王の性格を推測するカポネ。

「完全に遊んでやがるな、あの王様。ふざけた野郎だ」

 

 カポネを手こずらせる王の戦法。

 あまりに彼とは相性が悪く、それはローも同様であろうと思われた。

 この手の輩に対処するには、それこそあらゆる戦略を野生の勘で打倒するような、同系統の指揮官が必要かもしれない。

 

(しかもあの動きは……なにか)

 

 敵方の動きに不穏なものを感じ、カポネは再び思案する。

 あくまで形になっていない不安ではあるが、なにか見過ごせないことを王がたくらんでいるように感じた。

 

「……見聞色・・・・・・いや、やっぱり違ェか。戦い方を見る限り、武装色しか使えなさそうだ。となると・・・・・・」

 

情報を分析しながら、カポネはズボンのポケットに手を入れた。

「そもそもの戦力差がありすぎる。仕掛けるとしたら、新しいオモチャの補充前。ギリギリまで戦力を削って・・・・・・ククク。なんにしても、――未来を掴むのはおれだ」

 ニヒルに笑い、ポケットに入っていたものを口に含む。

 

「――すっぱっっっ‼ なんだこりゃ‼ 酸っぱっっ‼」

 

 カポネは、含んだものを盛大に吹き出した。

「それ、村で貰った梅干しじゃ?」

「くそっ‼ 間違えたっ‼」

 悪態を吐きながら、彼はなんとか調子を戻す。

「・・・・・・とにかく、本当に厄介だ。やはり奴等の力は必要だな。王って奴は、良くも悪くも使えるものが多い。能力の制限で、人による軍は使えないのが救いだな」

 忌々しそうにカポネは溜息を吐く。

「トラファルガー・ロー達のことですね。・・・・・・巨漢の方はともかく、トラファルガーはファーザーと気が合いそうで安心レロ!」

「・・・・・・どうだかな」

 カポネの否定するような言葉。それにヴィトは疑問を感じ、応えるようにカポネは言葉を続ける。

 

「あのガキとは、根っこの所で合わねェ気がする。勘だがな」

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