妖刀との出会い~三人の最悪の世代   作:幸福野郎

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休息

「客人たちを歓迎しよう!!」

 

 夜の村で響く騒がしい声は、屋外の大きな炎の周りから。

「踊れや! 踊れ!」

「歌えや! 歌え!」

「盛大に行くぞー!」

 老若男女問わずに、炎の周りで愉快なダンスを披露する。

「いよっし! 自慢の芸を見せてやるか!」

「アイアイ!」

 客人たちもそこに混ざって、一緒に笑顔を浮かべる。

 

「わー! 今日は楽しい歓迎の宴! 海賊もなにも関係ない! みんな楽しくさわぐのさー!」

 

 キャンプファイヤ―の周囲で踊り、楽器を奏でる村人たち。そこに海賊団の面々も加わり、楽し気な雰囲気は最高潮であった。

 ローたちを歓迎する宴は村人全体で盛大に行われ、この日だけは日々の苦労を忘れるように騒ぐのだ。

 

「うおー! すごい筋肉だべー!! かっけー!! まじ神だべー!!」

 

「おーおー。ずいぶんと褒めなさる」

 

「おらもそれぐらいのガタイがほしいべ~。弟子にしてくんろ! ウルージさん!」

 

 宴会場の一角で、ロメオはウルージに尊敬のまなざしを送り、弟子入りしようとしているようだ。

 その近くでは、破戒僧海賊団の面々が村人たちと酒を酌み交わす。

 

「ほらほら、あんたもしみったれた顔してないで! 飲みな!」

 

「……ああ。ありがとよ」

 

 カポネが村人の男性に酒をすすめられ、クールにそれを受け取る。

 ドライな反応ではあるが、村人たちからそれなりの信頼はされているようだ。

 

「どうでしょうかこちらの商品! 今ならなんと超格安ベリーで入手できます!」

 

「うおお! か、買っちゃおうかな!? どうする二人とも!」

 

「買うしかないだろ! このチャンス!!」

 

「そうだそうだー!!」

 

 教会のシスターに酔わされたあげく、不当な商品を買わされそうになっているハートの海賊団の面々。

 それを見ているマリィはため息を吐き、ロバーツは止めようとする。

 結局シスターはアンに注意され、さすがに少し反省したようだ。

 

「ハハハ! 楽しいなぁ、やはり宴はいいものだ!」

 

 村長は村人と海賊たちの交流を見て、豪快に笑っていた。

 村の外からきた者たちと仲良く宴をする。その事実が彼には楽しくて仕方がない。

 

 

 

「……」

 喧騒から少し離れた地面に座るローは、その光景を見ながら木のコップを傾けた。

 楽しい一時はあっという間に過ぎていく。

 

◆◆◆

 

「この島に来てよかったよな」

 

 ある日の朝、居間で朝食を摂りながら、シャチは言った。

「なんだよ、いきなり」

 怪訝そうな顔で、ペンギンはサンドイッチを頬張る。

「いや・・・・・・村人達、みんな良い人だし」

「まあ、確かにな。あの村長の影響もあるのかね」

「アイアイ!おれも、この村好きだ!」

 ベポは、シャチの意見に全力で同意する。

「・・・・・・それを言うには、まだ早いな」

 一人だけおにぎりを食すローは、シャチの意見に否定的だ。

「かもな。でもさ、ウルージさん達にも会えたし、結果的には鍛錬のやる気も上がったし。ラッキーだったって、本当に思うよ」

「最初は、散々だったけどな。・・・・・・あのジジイ、次こそは!」

「次は負けないさ!あの時より、強くなった!」

 ベポの言葉通り、ハートの海賊団の面々は確実に強くなった。それは、敗北してから積み重ねてきた、厳しい鍛錬のおかげだろう。

「確かに。お前ら、頑張ってたな」

「キャプテンだって!・・・・・・まあ、キャプテンは元からか」

 シャチは、普段のローの姿を思い浮かベた。

「・・・・・・だからさ、今日はほどほどにして、ゆっくり休まないか?」

「休み?」

「そうだ。休息も大事だろ?夜な夜な抜け出して、何かやってるみたいだしさ」

 シャチの提案。それを受けてローは考える。

 休息が大事だという意見は分かる。特に最近は、疲れが溜まっていることを自覚していた。

「そうだな。・・・・・・今日は、休みを増やすか」

「決まりだな!じゃっ、飯食ったら村を冒険だ」

「冒険って、大げさだな!」

「でも、楽しそうだ!」

 ハートの海賊団の食事は、和気藹々と進んでいく。今は鳴らぬ時計の針が、時を刻みながら。

 

「良い感じだな!」

 外に出るにはうってつけの晴天の下、彼等の冒険は始まった。

「キャプテン、遅いなー」

 しかし、家の前にいるのは三人。キャプテンの姿だけがない。

「あっ、きたきた」

 家のドアが開き、ローが遅れてやってきた。いつも通り、刀が入った袋を持っている。

「遅いぞ!キャプテン!」

「悪ィな」

 ローは、仲間達の元ヘ歩いていく。

「よし、出発だ!」

 元気あふれる言葉と共に、歩き出す仲間達。それに合わせて、ローも歩き出す。

 どことなく、彼が纏う雰囲気は楽しげだ。

(肩の力を抜くか)

 

「・・・・・・?」

「おー! アンじゃねェか? あれ!」

 ベポの言葉に反応し、向き直るロー。遠くに、走る少女が見えた。背中にリュックを背負っている。

「おーい、みんなー!どこ行くのー?」

 輝くような笑顔を向けて、走ってくる。少女は間違いなくアンだった。

「おはよう!遊びにきたよ!」

「おはよう! ・・・・・・おれ達これから村を冒険するんだけど、一緒に行くか?」

「冒険!? いくいく!」

 ベポの提案に、アンは目を輝かせた。

「あれ?」

 ふと、アンがローの方に顔を向ける。

「大丈夫?顔、こわいよ」

「・・・・・・大丈夫だ」

 いつも通りなローの顔。 

 

 村の一角に、広い野原がある。ほどよく草花が生えたその場所は、村の子供達の遊び場として使われることが多い。しかし今は、少女が一人だけ。

「やぁ、アン。後ろの人達は客人かい?」

 野原の中心に、青い肌を持つ巨体の男が座っている。男は、ロー達を歓迎するような笑顔を見せた。

「そうだよ!」

「やっぱりな・・・・・・。初めまして、客人達」

 挨拶は落ち着いたもの。

「ああ、初めまして。おれ達は」

 ロー達と謎の男は、自己紹介をし合った。謎の男は物腰が柔らかく、彼等はすぐに打ち解けた。

「魚人なのか。おっさんは」

「そうなんだよ。珍しいだろ?」

 少しおどけた感じに魚人は言う。

「珍しいっちゃっ、珍しいが、ウチには喋るクマがいるぜ」

「羽が生えたおっさんにも会ったしな」

「ヘぇ、ウルージ君かな? それしかないよなぁ」

 魚人は、自分に匹敵する巨体の持ち主を頭に浮かべた。そして、ベポに視線を向ける。

「君達は、仲が良いんだなぁ」

 嬉しそうに彼は言う。

「? まあ、そうだな」

「そうかそうか、良いことだ」

 魚人はうんうんと頷きながら、穏やかに笑う。

「・・・・・・それで、君達はここにある銅像を見に来たんだったか」

「そうだぜ。どこにあるんだ?」

「すまないな。後ろだ」

 魚人が立ち上がり、横に移動した。ロー達の目の前に、古ぼけた銅像が姿を見せる。

「これが」

「うん」

 彼等は、銅像に近づいていく。

「この銅像はね――」

 

 ロー達はしばらくの間、野原での時を過ごす。

「子供の頃はあの二人を膝に乗せて、冒険譚を聞かせたもんだ。ロバーツは興味津々だったが、マリィは少し冷めてたな。グランドラインの話は不可思議すぎるし、仕方ないがなぁ」 

 アンや魚人と話をして過ごす時間は、とても穏やかなものだった。

「あの家はね、元々は私が住んでいたんだ」

「あの家が!」

「うん。今は、別の家だけど」

 過去を懐かしむように語る魚人と、興味深げに聞くベポ達。

「親友と暮らしていたんだが、亡くなってね。どうにもあの家にいると切なくて・・・・・・引っ越したんだ」

 語りに、暗さが混じった。切ない思い出を、彼は語っている。

「そうだったのか・・・・・・」

「そうだったんだよ。・・・・・・好き放題に使ってくれ。その方が、あいつも喜ぶ」

「ああ!分かったぜ!」

 力強く返答するシャチ。その力強さに、魚人は小さく微笑む。

「それは良かった。・・・・・・では、そろそろ行くかな」

 そう言って、魚人は立ち上がった。立ち上がると、その巨体が際立つ。

「中々、楽しい時間だった。また、機会があればいいね」

「だな。おっさんは、良くここにくるんだっけか」

「そうさ。思い出がある場所でね。それじゃ、さようなら~」

 のそのそと歩き、ベポ達に背を向ける魚人。そのまま彼は、この場から去っていった。

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