街中で立ち尽くす海兵。
「・・・・・・くそっ!」
町の悲惨な状況、逃げ延びた人々の恐怖の表情を見て海兵は立ち尽くす。その顔は痛ましげに歪み、ただ激しい無力感を彼は感じていた。
「海賊どもめっ」
この大海賊時代ではこういった光景は珍しくない。だからこそ海兵になりたいと彼は思ったのだ。
「・・・・・・」
顔をうつむかせ、数秒落ち込み、顔を上げる。
落ち込んでる場合じゃない。そう判断したからだ。
(それにしても・・・・・・一体誰が海賊達を無力化したんだ?)
町を蹂躙した海賊達、彼等は一人残らず無力化されていた。一人の死者もなくだ。
町人に聞いても、逃げるのに必死で何も見ていないという。・・・・・・いや、白いクマを見たという情報があったなと、海兵は考える。
「……よしっ!頑張らないとっ」
「進めー!進めー!オレ達ハートの海賊団!」
「いやーそれにしてもキャプテン!今回の作戦は上手くいったな!あの船長、まともに戦ったらかなりやばかったんだろ?」
海中を進む一隻の潜水艇、名をポーラータング号。その船内でやかましく騒ぐニ人の男、名をシャチとペンギン。二人とも、つなぎを着用していた。
「そりゃそうだ。事前に色々準備したんだからな。外部の能力者に頼んで偽装までして……成功してくれなきゃ困る」
気怠げに答えたのは、白を基調とした毛皮の帽子を被った男。耳のピアス、両手・両腕に刻まれたタトゥー、などで妙な威圧感を与えるこの男こそが、ハートの海賊団の船長、トラファルガー・ロー。先程、海賊の船長を倒した男だ。
「まいった……」
だが、かなり体力を消耗してるのか、項垂れている。
「元気出せキャプテン!肩たたいてやるから!」
そんな船長を気遣ってか、彼の肩たたきをする一匹……いや一人の白クマ。名前はベポだ。身に纏う服は、オレンジ色のつなぎ。
「そうだよなー。失敗してたらなー。でも、収穫はあったし良かったじゃん!」
シャチは潜望鏡を覗きながら、嬉しそうに言った。
「そうだぜ!そうだぜ!このエターナル・ポース!」
シャチとペンギンが砂時計の様なものを高く掲げる。エターナル・ポースと呼ばれたそれはコンパスだ。一つの島だけを指し示すコンパス。
「それで?何の為にその島に行くんだっけ?観光?」
「あ〜美女がいれば良いよな〜」
ニ人は完全に旅行気分だが、ローはニ人の様子に呆れ気味だ。やれやれといった感じで溜息を吐く。
「遊びじゃないんだ。悪い噂もある。気を引き締めろ」
「げっ!マジかよ!」
「なんでそんな島行くんだよ!」
不満を漏らす船員達。ちゃんと説明しないと面倒だなとローは考え、細かく説明することにした。
「目的はニつ」
「一つ目の目的は刀の入手。かなり良い刀みたいだ。だからソレを手に入れて戦力を上げる。・・・・・・その刀の名は」
彼は力を求めていた。
自分に命と心をくれた恩人の想いを遂げるための力を。
「妖刀、鬼哭」
暗闇の中、蝋燭の光を頼りに男は楽しんでいた。
此処は彼の自室だ。部屋には彼の趣味なのだろう、大量の絵画が飾られている。それらの中に一つ、特徴的な絵画があった。
絵画には薙刀を持って力強く立っている、白い髭を生やした男の絵が描かれていた。それだけならば特徴的ではないが、何故かその絵にはナイフが突き刺さっていた。
「・・・・・・」
この部屋の主は、部屋の中央にある椅子に腰かけている。その顔は邪悪に歪み、手にはナイフ。ナイフには赤い何かが付着していて、視線の先のテーブルの上には動く何か。何かはしばらく動き、やがて止まった。
これが彼の楽しみであり、生きがい。だが――。
「物足りねェな」
満たされてはいなかった。
東の海、西の海、北の海、南の海。四つに分かれた世界の海、その中の西の海で生まれた彼は、子供の頃から人と違っていた。
そうしていつの間にか、闇の世界で鉄砲玉として活躍する。
闇の世界で組織の頭を切り取る。そうすると、彼が見たいものが見れた。自分の心が満たされるのを感じた。奪った金品など、それに比べればおまけに過ぎない。
「フー、まだ着かねェか」
獲物を探していた。自分の欲を満たしてくれそうな獲物を。そして、つい最近見つけた。
現在、その獲物を仕留めるためにある島に向かっている。
(なんでも大層な妖刀があるらしいが……そっちは興味ねェな)
男はテーブルの上にナイフを置き、代わりにズボンのポケットに入れてあった葉巻を手に取り、火を点けて一服しながら、今後の方針を思案する。
出来れば、頭だけを切り取りたいところだが、さて・・・・・・。
「おーおー、島が見えてきましたな」
海を行く一隻の船。甲板には一際目立つ男が立っていた。
巨漢。男を一言で表すなら、その言葉が相応しいだろう。一目見るだけで力強さを強烈に感じさせる、それほどの強靭にして巨大な肉体を男は持っていた。しかし、怪我でもしているのか、両腕には包帯が巻かれている。
男を目立たせる要素はもう一つあった。背中に生えた白い羽だ。その羽はある島の出身者に生えているもの。
空島。あるかどうかも不確かな幻想の島。実在を信じて探し求める者もいれば、下らないと笑う者もいる、そこが男の出身地だ。
空島で誕生した彼は子供の頃から周りと比べて力があって、重い石でも軽々と持ち上げられた。
そして現在、何故か彼は海賊として活動している。
「・・・・・・」
海賊になったウルージは、巨体に似合った巨大な黒い棒を携え甲板に立ち、目指す島を見据える。
「僧正!傷に悪いですよ!休んでいてください!」
ウルージの背後から焦った感じの声がかけられる。
「駄目ですよ!勝手に抜け出して!」
声の主は彼の仲間だ。よほど彼は慕われているのだろう、仲間は心から心配し、体を休ませようとする。
「心配は有り難いが大丈夫ですぞ。それより今は、外に出て少し心を休ませたい。・・・・・・風は追い風のようだな。良い風だ」
頭上の風にゆられる帆をちらりと見ながら、ウルージは言う。彼の言葉を受けた仲間は、嫌な事を思い出したように顔を陰らせる。
「・・・・・・酷いもんでしたからね。まったく僧正はお人よしなんだから、わざわざトラブルに関わることないでしょうに」
どうやらウルージは、なんらかのトラブルに巻き込まれてかなりの傷を負ったようだ。だが彼の顔に後悔の色は微塵もなく、優しい笑顔で仲間に言葉を告げる。
「ちょっとした人助けだ」
原作の雰囲気が感じられるか
-
かなり
-
普通
-
微妙