妖刀との出会い~三人の最悪の世代   作:幸福野郎

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戦闘開始

 この国に来てから、それなりの時が経った。

「貴様らを、先には進ません!」

 色々なことがあった。取るに足りないことも、なかなか体験できないことも。

 それによって変化したものがある。

「先に行け。こいつはおれが片付ける」

 当然、彼の心にも影響はあった。

 始まりは老人の言葉。それは、彼の調子がおかしかった事の一因。

 彼はあの老人と相容れないと、心のどこかで確信していたのかもしれない。

 

「このオモチャ箱の中だと、王は強い」

「当然リスクはあるが、奴の全盛期と呼んでいい強さだ。まあ、国家戦力級ともいえる海の皇帝どもには遠く及ばねェがな」

「せいぜい注意するんだな。ククク」

 

 王を倒し、オモチャ箱を壊す時がきた。

 

 長廊下に足音が一つ。

 その足音は緩やかなものではなく、とても急いている。

「・・・・・・」

 急いた足音を立てているのはロー。彼は、赤い絨毯が敷かれた廊下を行く。

 廊下の壁に設置された蝋燭が、揺らめき輝いている。まるで彼を歓迎するように。

「・・・・・・ここが」

 長い廊下を駆け抜け、王の間へと辿り着く。ローは、ぴかぴかに磨かれた大理石の床を踏み締めた。

「ハハハハハハハハッ!! よく来てくれたッ!!」

 ローに向けられる、拍手の音。王の声。それが、この場所がどこであるかを示している。

 煌びやかなシャンデリアに、赤や黄色などの派手な色で装飾された壁。装飾過多、この空間には、その言葉が似合うだろう。 

 部屋の両端に存在する複数の高窓から、月光が入り込み、場を照らす。

「どうかな? 儂の部屋は」

 王の間の奥、玉座に座る老人から声をかけられる。老人の後ろには見覚えのある銅像。

「・・・・・・」

 ローは、警戒しながら王に近づいていく。

 王の顔はとても楽しげで、まるで子供の様。

「とてもセンスを、感じるだろうッ!・・・・・・来てくれてありがとう。手紙に書いてあったとおり、君達が負ければ村は――」

 

 ――会話など不要。ローは、一気に駆け出す。

 

「やれやれ……」

 王は玉座から立ち上がりながら、足下に置いてあった刀を手に取り、鞘から抜き取る。刀文は直刃、妖刀の気配は感じられない。

 

「――ROOM」

「――武装、硬化」

 

烈風が渦巻く。非常に荒々しい斬撃が、場を乱す。

 

「ハハハハ!」

 敵を切り刻み蹂躙せんと、怒濤の斬撃がローに放たれる。

「楽しいな!」

 狂喜しながら、次々に攻撃は繰り出される。気持ちの高揚に比例して磨かれる、武装と速度。その速度はローを明らかに上回っていた。

「調子が良いぞ!最高に!」

 敵を容赦なく切り裂く。たとえ鎧で身を固めた兵士であろうと、あっさりと切り裂くだろう。

 それが、まともな相手であるならば。

「君はどうだ!若者よ!」

 しかし、対する敵はまともではない。

 時には完全に、時にはすれすれで。王が放つ斬撃、その全てをかわしている。

(だいたい予想通り)

 迫り来る刀を回避し、受け流し、隙を探る。王の攻撃は回避が容易いものではないが、それでも彼はかわし続ける。

「やるな!そうでなくては!」

 当たらない刀を振るいながら、子供のように笑う王。

「しかし避けてばかりでは!」

 当然、勝てない。それはローも分かっている。

(切断:アンピュテートは効かない。ならば)

 ローは、王の動きを注視する。

(刀を振り上げた、大振りの体勢)

 即座に刀を振るうロー。狙いは、がら空きの胴。

「ぐっ!?」

 手応えあり。刀が直撃した王の体が、床を擦りながら後退する。

 強力な武装に阻まれ、斬撃はまともに通らない。しかし、効果がないわけではない。

「……きついな」 

 そう呟く王の顔には苦悶の色。着ている着物は一文字に切り裂かれ、露出した肌には血が浮かぶ。

「動きは儂の方が速い……。しかし、不利か」

 王は少し後退し、ローとの間合いを取る。

「……強い。強いな」

 ぶつぶつと呟く王。

「……まさか、ここまでとは」

 その様子は、対峙するローが見えていないかのよう。

「……このままでは」

 王の顔が崩れる。

「――使えるかもしれんな。とっておきを」

 言葉と共に、それは発生した。

「!?」

 王の目の前、そこに異変が生じる。

 いくつかの鉄の塊のような物体が出現し、一定範囲をぐるぐる飛び回る。

「弱者を、砕け」 

 鉄の塊は回る毎に、兜や手甲など、鎧のパーツのような形に洗練されていく。

(なんだ?これは……)

 目前の不可思議な光景を、ローは怪訝そうに見ている。これは、情報にない。

「強者の」

 鉄の塊の動きは、だんだん速くなっていく。ぐるぐるぐるぐる、速度を増して……。

「無慈悲な鉄槌……!」

 

 王の間を、凄まじい力の渦が襲う。

 

「なっ……!!」

 強い圧力を受けて、ローは後方に吹き飛ばされる。

 人間、壁、床、玉座……力の渦は、あらゆるものに影響を与えていく。床や壁には亀裂が走り、玉座は倒れて転がる。

「なん、て……!!」

 回り続ける力。

 それは徐々に、徐々に、おさまっていく。

「どうかな?」

 そうして渦が完全におさまり、王はローに向けて問いかける。問いかけの意味は、王の目の前に。

「儂の、とっておきのオモチャは?」

 真っ赤に染まった、三体の鎧がそこにあった。否、正確には血に染まった鎧達。

「……!?」

 組み立てられた玩具達。見る者に恐怖を抱かせるような、その外見。不気味極まる、その異様。

 ――鎧達は機敏な動作で、手に持つ長銃を構えた。

(!! 銃を)

 銃口の一つがローに向けられた。

 間断入れずに、銃弾が放たれる。

(!?)

 射出された銃弾は一瞬で巨大化。大砲の弾のような大きさになり、標的に飛来する。

 瞬時に回避を選択、行動。避けた銃弾は後方の床に着弾し、爆発を起こす。

 爆発の規模は大したことはない。だが、ローは嫌な気配を感じとる。

 まともに当たってはいけない、そんな気配だ。

(次――)

 避けたローに追撃が放たれる。

 一発、二発、三発、四発、五発、六発……次々に撃ち出される銃弾、巻き起こる爆発、強者の蹂躙。

 

 ローは、死の爆煙にのまれて消えた。

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