戦いが終わった王の間に、訪れる静寂。
「……」
王の体はばらばらに切り裂かれ、動けない。
「終わりか」
王の傍には、倒れ伏したローの姿。意識はない。
王とローの他に、この場にはもう一人いる。
「……酷い様ですね。王」
道化師は、王を見下ろしている。
「自分のオモチャを利用されて負けるとは! 銃弾を切断して一時無力化、そして潜ませておいた……彼の力とは、相性が悪かったですね!」
「まったくだ。悔しい」
言いながら王は、ローが握っている刀を見た。
「彼が使えたのが?」
「当然だ」
子供のように拗ねながら、彼は過去を思い起こす。
【ここに一本の妖刀がある】
【この妖刀は持ち主を選ぶ】
【この妖刀は未来を見る】
【その未来で選ぶ】
【持ち主に足るかどうかを】
「お前は、そんなことを言っていたが……」
「この刀には、ある思いが込められているそうです」
道化師は、刀にまつわる話を語り出した。
「その刀匠はある平穏な国で生まれ育ちました。本当に平穏で、平和な国。彼の周りには、優しさが絶えなかった。……しかし、平穏は壊れてしまった」
語る彼の口調は、とても真面目なもの。
「滅んだ国を前に、彼はただ嘆いた。・・・・・・その嘆きが、込められているんです」
「嘆きか。……つまり、あの刀が選ぶ未来とは」
「ええ、彼が望んだ未来」
王は、納得がいったという風に笑う。
「儂には使えんな。それは……」
「まあ、その刀は偽物なんですが。今言ったことも単なる想像の話でーす! 残念!」
「え? そうなの!? まじかー!?」
「私が能力で作ったものなんですよ。オリジナルは他にあります……さて、そろそろ時間ですね。貴方に後はない。国を収めた箱は壊れ、なくなるでしょう。そうして人々の記憶は都合よく変わる」
道化師は王に告げる。彼(彼女?)の言う通り、王には後がない。
死の足音が近づいている。
「――それは、お互い様だな」
◆◆◆
「……」
カポネは、王の間に続く長廊下を歩いていた。足取りは軽く、彼の心境を表している。
兵士長の排除には【中】に潜ませていた兵力を使うほど手こずったが、その甲斐はあったとカポネは思う。
「……ククク」
その顔は、とても歪に歪んでいる。
服には、血痕が付着している。血は、まだ乾いていない。
「ククク……ハハハ……」
薄気味悪い笑い声が、廊下に響く。
「最高だ」
笑いが止まらない。喜びを止められない。
それは、思い描く至福の未来からくる感情。これからどんなぐちゃぐちゃの光景が見れるかと思うと、嬉しくて仕方ない。
「やっぱり、止められねェな。これは」
生まれつきの性格。変えられない悪の性。
だから、もう一度。
「もう一度だ」
求め続ける。
「さて……」
次の獲物は誰にするか?
「ファーザー!! 無事ですか!?」
「おお。最高だ! ヴィト!」
◆◆◆
「――はて。なにかを思い出せないような、不思議な感覚だ……」
村長は自宅の寝室にて、写真立てを眺めながらつぶやいた。写真にはかつての仲間たちが写っているが、そこから誰かの姿が欠けてしまったような気がして、深夜に起きてきてしまったのだ。
「……」
旧友が消失したような寂しさ。大切な客人たちがいなくなったような切なさ。
ぽっかりと空いた心の穴は、しかしなんとなくではあるが予想もしていたものだ。
いつかこうなる時がくるであろうと。
「……まあ良いか」
思い出せないもどかしさはあるものの、きっと忘れてしまった誰かは承知の上で消えていった。求めていたものを手に入れられたのかは知らないが、それでもそれが欲しくてバカなことまでやってしまったのだ。
ならば自分が悲しむのは違うだろう。
持っていた写真立てを静かに置き、村長はゆっくりとつぶやく。
「さらばだ、友よ」
◆◆◆
穏やかな朝の雰囲気に包まれて、村は変わらずそこにある。今日も村は平和だ。
「マリィ、泣いてるのか」
村人達の体の変色は、失せていた。
「なんで、もっと早く……‼」
自宅の居間で泣き崩れるマリィと、彼女の傍で困惑しているロバーツ。
今まで自分たちを苦しめてきた元凶が消え、彼らは大きな混乱の最中にいた。
「……う、ううう」
「マリィ。気持ちは分かるけど、それでも前向きに生きよう!」
「――分かってるわよ! そんなこと! アンタに言われなくても!」
「ええー!?」
ロバーツは、マリィを慰めるために抱きしめようかと思っていたら、いきなり怒られてしまう。
彼の助けなどなくても、マリィは涙をぬぐって自力で立ち上がった。
「……落ち込んでなんていられないわ! 村長が村人たちを集めてるし、私は私にできることをやらないと」
「あ、ああ。なんかすごい前向きだなぁー」
「……それはきっと、あなたのおかげでもあるのよ。ふふ」
「は?」
悪戯な笑みをロバーツに向けながら、彼女は村人たちの容態を確認するための準備を始める。
その動きは生気に満ちていて、これから来るであろう未来への希望に溢れていた。
「さあ。行きましょう——」
◆◆◆
村はまた平和に回りはじめた。
いきなりの事態の変化に、複雑な感情を抱く者もいる。
しかし喜ぶ者は多かった。
「ウルージさん、これ頼むよー」
壊されることのない平穏。
「任せなされ」
平和な風景。
「あんたはやっぱり力持ちだな!」
緩やかな時の流れ。
「私の取り柄だからな」
今日も静かに、そんな日常が過ぎていく。
「なんか穏やかなとこだな! この村!」
子供たちの遊び場の野原。そこに、数人の子供の姿があった。
「あの時は、ごめんな。おびえて・・・・・・わるかった。石を投げたやつもさ、反省してるみたいなんだ。すぐには、なじめないけど」
その中には、村の外の子供が混じっている。
「いいよ。わざわざ、あやまりにきてくれたし! そんなことより遊ぼうよ!」
過去の諍いを流し、子供たちは笑い合う。
「ああ!!……んん?」
「どうしたの?」
少年の視線は、一体の銅像へ向けられている。
「かっこいいな。これー!」
古ぼけた、鳥の像。
「その銅像は……村の象徴みたいなもので」
アンは、銅像について語り始めた。
「たくさんの思いをのせて飛ぶ鳥」
「私たちは、健やかに過ごしている」
「それを大切な人に伝えてくれる鳥」
少し得意げに話す彼女は、不思議な感慨を抱いた。
(前にも)
こんな感じで説明した気がする。あれはいつのことで、だれにだったか。
(……)
おぼろげな記憶をさぐっても、なにもわからない。
少女は、切なくなって空を見上げる。
「……あかるい」
空には、燦爛と輝く太陽があった。
◆◆◆
空が、赤く染まり始めた。
「いよいよ、この島ともお別れか」
ハートの海賊団は全員、海岸に停泊したポーラータング号の甲板に立っている。
目的を終えた彼等は、島から旅立つ時を迎えようとしていた。
「しかし、武闘大会は熱かったな。刀もきっちり手に入れたしよ。もう一つの鉱石は入手できなかったが」
「まさか、妖刀が優勝賞品とはな。偽物だったけど。次はどうする?」
「まだ力が欲しい。あの男を、止めるまで」
彼等の旅は、これからも続く。
「次は、どんな島かな~」
「今度こそ、美女が多い島に行こうぜ」
「それなら、この前に新聞で見たんだけどさ……」
船内へのドアをくぐり、甲板から姿を消していく船員達。それに続いて、ローも船内へと向かう。
(夕陽か)
船内に入り、ドアを閉めようとしたローの目に、夕陽が映る。
いつだったか、こんな風に夕陽を見ていた気がする。
「……」
ローは、ズボンのポケットに手を入れた。そこにある物を掴み、取り出す。
ポケットから取り出されたのは、木彫りの鳥。
不思議なあたたかさを感じるもの。
(悪くない)
木彫りの鳥は少しの間だけ手中におさまり、またポケットにしまわれる。
「――」
彼は少しだけ微笑みをこぼし、静かにドアを閉じた。
ロー:原作らしさが出ているか
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かなり
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普通
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微妙