妖刀との出会い~三人の最悪の世代   作:幸福野郎

23 / 23
笑みの理由

 戦いが終わった王の間に、訪れる静寂。

「……」

 王の体はばらばらに切り裂かれ、動けない。

「終わりか」

 王の傍には、倒れ伏したローの姿。意識はない。

 王とローの他に、この場にはもう一人いる。

「……酷い様ですね。王」

 道化師は、王を見下ろしている。

「自分のオモチャを利用されて負けるとは! 銃弾を切断して一時無力化、そして潜ませておいた……彼の力とは、相性が悪かったですね!」

「まったくだ。悔しい」

 言いながら王は、ローが握っている刀を見た。

「彼が使えたのが?」

「当然だ」

 子供のように拗ねながら、彼は過去を思い起こす。

 

【ここに一本の妖刀がある】

【この妖刀は持ち主を選ぶ】

【この妖刀は未来を見る】

【その未来で選ぶ】

【持ち主に足るかどうかを】

 

「お前は、そんなことを言っていたが……」

「この刀には、ある思いが込められているそうです」

 道化師は、刀にまつわる話を語り出した。

「その刀匠はある平穏な国で生まれ育ちました。本当に平穏で、平和な国。彼の周りには、優しさが絶えなかった。……しかし、平穏は壊れてしまった」

 語る彼の口調は、とても真面目なもの。

「滅んだ国を前に、彼はただ嘆いた。・・・・・・その嘆きが、込められているんです」

「嘆きか。……つまり、あの刀が選ぶ未来とは」

「ええ、彼が望んだ未来」

 王は、納得がいったという風に笑う。

「儂には使えんな。それは……」

「まあ、その刀は偽物なんですが。今言ったことも単なる想像の話でーす! 残念!」

「え? そうなの!? まじかー!?」

「私が能力で作ったものなんですよ。オリジナルは他にあります……さて、そろそろ時間ですね。貴方に後はない。国を収めた箱は壊れ、なくなるでしょう。そうして人々の記憶は都合よく変わる」

 道化師は王に告げる。彼(彼女?)の言う通り、王には後がない。

 死の足音が近づいている。

 

「――それは、お互い様だな」

 

◆◆◆

 

「……」

 カポネは、王の間に続く長廊下を歩いていた。足取りは軽く、彼の心境を表している。

 兵士長の排除には【中】に潜ませていた兵力を使うほど手こずったが、その甲斐はあったとカポネは思う。

「……ククク」

 その顔は、とても歪に歪んでいる。

 服には、血痕が付着している。血は、まだ乾いていない。

「ククク……ハハハ……」

 薄気味悪い笑い声が、廊下に響く。

「最高だ」

 笑いが止まらない。喜びを止められない。

 それは、思い描く至福の未来からくる感情。これからどんなぐちゃぐちゃの光景が見れるかと思うと、嬉しくて仕方ない。

「やっぱり、止められねェな。これは」

 生まれつきの性格。変えられない悪の性。

 だから、もう一度。

「もう一度だ」

 求め続ける。

「さて……」

 次の獲物は誰にするか?

 

「ファーザー!! 無事ですか!?」

「おお。最高だ! ヴィト!」

 

◆◆◆

 

「――はて。なにかを思い出せないような、不思議な感覚だ……」

 

 村長は自宅の寝室にて、写真立てを眺めながらつぶやいた。写真にはかつての仲間たちが写っているが、そこから誰かの姿が欠けてしまったような気がして、深夜に起きてきてしまったのだ。

 

「……」

 

 旧友が消失したような寂しさ。大切な客人たちがいなくなったような切なさ。

 ぽっかりと空いた心の穴は、しかしなんとなくではあるが予想もしていたものだ。

 いつかこうなる時がくるであろうと。

 

「……まあ良いか」

 

 思い出せないもどかしさはあるものの、きっと忘れてしまった誰かは承知の上で消えていった。求めていたものを手に入れられたのかは知らないが、それでもそれが欲しくてバカなことまでやってしまったのだ。

 ならば自分が悲しむのは違うだろう。

 持っていた写真立てを静かに置き、村長はゆっくりとつぶやく。

 

「さらばだ、友よ」

 

◆◆◆

 

 穏やかな朝の雰囲気に包まれて、村は変わらずそこにある。今日も村は平和だ。

「マリィ、泣いてるのか」

 村人達の体の変色は、失せていた。

「なんで、もっと早く……‼」

 自宅の居間で泣き崩れるマリィと、彼女の傍で困惑しているロバーツ。

 今まで自分たちを苦しめてきた元凶が消え、彼らは大きな混乱の最中にいた。

 

「……う、ううう」

 

「マリィ。気持ちは分かるけど、それでも前向きに生きよう!」

 

「――分かってるわよ! そんなこと! アンタに言われなくても!」

 

「ええー!?」

 

 ロバーツは、マリィを慰めるために抱きしめようかと思っていたら、いきなり怒られてしまう。

 彼の助けなどなくても、マリィは涙をぬぐって自力で立ち上がった。

 

「……落ち込んでなんていられないわ! 村長が村人たちを集めてるし、私は私にできることをやらないと」

 

「あ、ああ。なんかすごい前向きだなぁー」

 

「……それはきっと、あなたのおかげでもあるのよ。ふふ」

 

「は?」

 

 悪戯な笑みをロバーツに向けながら、彼女は村人たちの容態を確認するための準備を始める。

 その動きは生気に満ちていて、これから来るであろう未来への希望に溢れていた。

 

「さあ。行きましょう——」

 

◆◆◆

 

 村はまた平和に回りはじめた。

 いきなりの事態の変化に、複雑な感情を抱く者もいる。

 しかし喜ぶ者は多かった。

「ウルージさん、これ頼むよー」

 壊されることのない平穏。

「任せなされ」

 平和な風景。

「あんたはやっぱり力持ちだな!」

 緩やかな時の流れ。

「私の取り柄だからな」

 

 今日も静かに、そんな日常が過ぎていく。

 

「なんか穏やかなとこだな! この村!」

 子供たちの遊び場の野原。そこに、数人の子供の姿があった。

「あの時は、ごめんな。おびえて・・・・・・わるかった。石を投げたやつもさ、反省してるみたいなんだ。すぐには、なじめないけど」

その中には、村の外の子供が混じっている。

「いいよ。わざわざ、あやまりにきてくれたし! そんなことより遊ぼうよ!」

 過去の諍いを流し、子供たちは笑い合う。

「ああ!!……んん?」

「どうしたの?」

 少年の視線は、一体の銅像へ向けられている。

「かっこいいな。これー!」

 古ぼけた、鳥の像。

「その銅像は……村の象徴みたいなもので」

 アンは、銅像について語り始めた。

 

「たくさんの思いをのせて飛ぶ鳥」

「私たちは、健やかに過ごしている」

「それを大切な人に伝えてくれる鳥」

 

 少し得意げに話す彼女は、不思議な感慨を抱いた。

(前にも)

 こんな感じで説明した気がする。あれはいつのことで、だれにだったか。

(……)

 おぼろげな記憶をさぐっても、なにもわからない。

 少女は、切なくなって空を見上げる。

「……あかるい」

 空には、燦爛と輝く太陽があった。

 

◆◆◆

 

 空が、赤く染まり始めた。

「いよいよ、この島ともお別れか」

 ハートの海賊団は全員、海岸に停泊したポーラータング号の甲板に立っている。

 目的を終えた彼等は、島から旅立つ時を迎えようとしていた。

「しかし、武闘大会は熱かったな。刀もきっちり手に入れたしよ。もう一つの鉱石は入手できなかったが」

「まさか、妖刀が優勝賞品とはな。偽物だったけど。次はどうする?」

「まだ力が欲しい。あの男を、止めるまで」

 彼等の旅は、これからも続く。

 

「次は、どんな島かな~」

「今度こそ、美女が多い島に行こうぜ」

「それなら、この前に新聞で見たんだけどさ……」

 船内へのドアをくぐり、甲板から姿を消していく船員達。それに続いて、ローも船内へと向かう。

(夕陽か)

 船内に入り、ドアを閉めようとしたローの目に、夕陽が映る。

 

 いつだったか、こんな風に夕陽を見ていた気がする。

 

「……」

 ローは、ズボンのポケットに手を入れた。そこにある物を掴み、取り出す。

 ポケットから取り出されたのは、木彫りの鳥。

 不思議なあたたかさを感じるもの。

(悪くない)

 木彫りの鳥は少しの間だけ手中におさまり、またポケットにしまわれる。

「――」

 

 彼は少しだけ微笑みをこぼし、静かにドアを閉じた。

ロー:原作らしさが出ているか

  • かなり
  • 普通
  • 微妙
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。