妖刀との出会い~三人の最悪の世代   作:幸福野郎

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最悪の世代:最強

 酒場を出て左にまっすぐ行くと、夜の闇に包まれひっそりとした広場はあった。

 広場には、東西南北に出入り口が存在し、中央にある花壇には真っ白な美しい花が咲き誇っている。

「・・・・・・」

 彼はその花を見ていた。しかし、花の美しさに見惚れているわけではなかった。そもそも本当に花を見ているわけでもないかもしれない。

 どこか遠くのなにかを彼は見ているようだった。

「おいキャプテン、目的はそれじゃないだろ!」

「綺麗な花だけどな。ここに来た目的は城だ」

「・・・・・・ああ、悪い」

 ハートの海賊団は酒場を出た後、王城の位置確認の為、広場に来ていた。

 彼等は広場から、遠くにある夜の闇に浮かぶ城を視認する。

 家々の間に見える、王の居場所。その、威容。

「暗くてよく見えないが、そこそこの遠さだな」

「どうする?もっと近――!?」

 シャチの言葉が途切れる。同時に、彼等の雰囲気がぴりぴりした物に変わる。

 原因は、広場北側の出入り口を塞ぐように存在する複数の影。

「くそっ、不気味なっ」

 北側だけではなく、東西南北全ての出入り口に影は存在する。それによって彼等の退路は断たれた。

 影は全身を鎧でがっちり固め、かなりの切れ味を持っていそうな立派な剣を両手で構えながら、じりじりとロー達に近づいてくる。

「・・・・・・」

 それに対して、シャチとペンギンは槍と剣を構え、ベポは素手で戦う姿勢を見せ、ローは刀を抜き取り、それぞれ威嚇する。

「・・・・・・」

(――来る)

 襲撃者達が動き出す。

 ハートの海賊団が迎え撃つ。

 

 襲撃者の数は軽く二十を超えていた。対するロー達、ハートの海賊団はたったの四人。普通なら襲撃者達の殺気が宿った剣で蹂躙される結果になるのは誰が見ても明らかだ。

「少しおれ達を!」

「舐めすぎじゃねぇか!」

 誰が見ても異常な光景がそこにはあった。

 迫りくる多数の刃を捌き、更に反撃によって敵を吹き飛ばすハートの海賊団の船員達。それはどう見ても常人の行いではない。

「うおお!」

 吼えるベポ。その動きはとても素早く、海賊団で一番と言っていい程だ。得意の足技で敵を蹴り飛ばしていく。

 全体的な戦況で考えれば、ハートの海賊団が優勢だ。

「しっかしッ」

 迫りくる敵ではなく、吹き飛ばした敵を見てペンギンは不気味に思う。 

「中身ねェ!?こえェッ」

 鎧の攻撃によって破損した部分、そこから見える筈の中身が無かった。中はどう考えても空洞で、だとすれば鎧だけで動くという不可思議な現象が起きている事になる。

「悪魔の実、か・・・・・・いや、それよりも」

 ペンギンは戦いながら仲間の状況を確認する。視線の先には、船長のトラファルガー・ロー。彼の予想では敵達を薙ぎ払う船長の姿がある筈だった。

「ウソだろ・・・・・・キャプテンが苦戦してる!?」

 

「・・・・・・!」

 ローが相手をしてる鎧は四体。そのどれもがベポ達が相手をしてる鎧より遥かに強かった。休む間のない連続した攻撃で、ローを苦しめる。

(なんとか間合いを取らねぇとな・・・・・・)

 間合いが欲しいローは、自らの武器に意識を集中させる。

(武装、硬化)

 覇気の一種、武装色による刀の武装。彼はそのまま、武装した刀を使った渾身の一撃を目の前の鎧達に叩き込む。

 鎧達は攻撃を受け止めきれず、大きく後退する。それによって出来た時間の余裕がローの狙い。

「――ROOM」

 言葉と同時、ローと鎧達を囲むように、なかば透き通った半球体が出現する。彼はその中で、攻撃の間合いの外にいる鎧達に向けて刀を振った。

 届く筈のない斬撃、しかしその斬撃は、鎧達の胴体を容易く切断した。

(切断:アンピュテート)

 彼が持つ悪魔の実の能力。相手を殺めるカはないが、凄まじい切断力を持つ。これによって三体の鎧は切断される。

 切断された鎧達は地に落ち、動かない。

「逃したか・・・・・・!」

 ROOMから出ることによって切断から逃れた一体が、突っ込んでくる。能力が間に合わないと判断したローは、通常の斬撃で対応する。

 斬撃は敵の兜をかすめ、弾き飛ばす。

「・・・・・・!?」 

 そこにはある筈のない人間の顔が存在した。

 見覚えがある顔、ローがこの島での活動の為、事前に集めた情報の中にその顔があった。

(この国の・・・・・・王!?)

 威厳のある顔立ち、禿げた頭、間違いなくこの国の王だとローは思う。

 王は何故か親愛の情が混じった眼差しを向けている。

「いや、素晴らしい。強いな君は。・・・・・・そうでなくては!蹂躙されるだけの弱者に価値はないのだから!」

 ――一瞬だった。

 驚愕の隙を突く一撃。

 武装した拳が放たれ、ローの顎に命中した。

「がっ・・・・・・!?」

 体が吹き飛び、地面を転がる。

 彼の意識はそこで途絶えた。

 

「キャプテン!!」

 仲間達が倒れたローに駆け寄る。頼りになるキャプテンがやられたことで、ベポ達はかなり動揺していた。

「くそ!なんてこった!なんなんだあの爺は!?」

 突如現れた驚異。恐らく自分達では敵わない敵が前方から歩み寄ってくる。蹴散らした鎧達も集まってくるだろう。

 ベポ達は逃げることを考えるが、逃げられるかどうか。

「・・・・・・やるしかねぇか」

「・・・・・・そうだな」

 それでも逃げるしかない。いざとなったら自分の命を犠牲にする覚悟を決めて。

 かつてローに救われた、二人の想いは強い。

「覚悟は決まったか。では――!?」

 王の動きが止まる。彼の耳に聞こえるのは、あまりにも重々しい足音と、風切り音。

「なんだ・・・・・・?」

 王の真横、三十メートルほどの距離、そこから迫る上半身裸の巨漢。凄まじい疾走、男は巨体からは想像できない速さで王との距離を詰める。

「ふんっ!!」

 力強い筋肉が躍動する。全力全霊を込め、右腕を振り絞り、男は目の前の王に向け、走る速度そのままに拳を放つ!

「ぐゥっ!?」

 広場に響き渡る轟音。拳は王の体に直撃し、腹にめり込む。

「ぬんっ!」 

 巨漢はそこから更に力を振り絞り、王を遠くヘと殴り飛ばした。

「なんにっ!?」 

 ベポ達はその光景に驚愕するしかない。

「な、なんだアンタはっ!?」

「変態かッ!?」

 目の前にいる敵か味方かも分からない男に困惑するハートの海賊団。分かっているのは、男が強大な力を持っている事だ。

 

「詳しい話は後だ。――逃げるぞ。ついて来なされ」

 

 漢の背中が、そこにはあった。

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