花咲探偵 氷川姉妹   作:フレット

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前回湊友希那が出ましたね。なのに設定に書いてない…ごめんね。

湊友希那:プロ歌手。ドーパントに襲われたのをきっかけに紗夜達と交流を持つ。ちなみにリサは友希那の大ファン。


少女=A/やはり噓つき

あの後、決勝戦は彩と香澄が戦うということになり、収録は終了した。

リサは事務所で、泣いている彩をなだめていた。

 

「ううっ…!うう…!」

「彩さん…落ち着いてください。」

「だって、まだ解決してないんですよね!?だったら、私はまだみんなを裏切るアイドルになったままで…!」

 

前回、ドーパントは倒されたはずだった。

しかし、実際はその効力が残っており、彩がドーパントに勝たされている状態はまだ続いている。

 

「私…アイドルにならない方がいいのかな…。このままじゃもっとみんなに迷惑かけちゃうよ…!」

「…大丈夫ですよ、彩さん。悪いのはドーパントなんですから。」

「でも…でもぉ…!」

「う~ん、困ったなぁ…」

 

いくらなだめても、彩は心を落ち着かせてくれない。さっきから同じような結論に行きつき、一切の進展が見えない。

 

どうしたものか、と思ったリサに、一つの方法が思い付く。

 

「そうだ彩さん!クッキー作りませんか?」

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

「今回のドーパントはおそらく『幻覚』を利用したドーパントじゃないかしら。ジョーカーエクストリームを放った時に見えたもの。あれはつまり幻影のようなもので、私達はそれを勝手に倒したと思い込んだ。」

「そして幻影を消した後、敵は壊れたお菓子の箱を置いた。あたしたちはドーパントを倒したと思っていたから、思い込みでそれをメモリだと思った……ちょっと納得いかないとこもあるけど、まぁそれっぽいよね。」

 

 

ドーパントに攻撃が命中しない。

前回回収したメモリは、壊れたお菓子の箱であった。

 

 

その二つの謎の現象を、紗夜と日菜は考えていた。

 

「でも幻覚…うーん……やっぱり違う感じなんだよねー…。」

「…そうよね…。相手が催眠術等をかけた感覚はない…。」

「くらったのと言えば、あの変な針だけ………まさかっ!」

 

日菜は面食らったかのように、ホワイトボードに向かい始めた。

 

「大変だよおねーちゃん!あたしたちは多分、大事なことを見落してたかもしれない…!」

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん!おいしい!ね、彩さん!」

「はい!すごくおいしいです!あっ…」

 

日菜と紗夜が話し合っているとき、リサと彩は作り終わったクッキーを食べていた。

リサはクッキーをただひたすらに貪っていたのだが、対する彩はふと我に返ったかのように顔を上げ、ブツブツと呟き始めた。

 

「私…ここでクッキー食べてていいのかな…」

「…彩さん?」

 

唐突にマイナスなことを言う彩に、リサは疑問を抱いた。

 

「……ひゃっ!?ご、ごめんなさい急に!」

「…どうかしたんですか?急にそんなこと言って…。」

「……私、次の決勝戦でまた、勝っちゃうのかなって…。それだったらせめて、聞く人が聞くに堪えないなんてことがないようにしたいんです。けど、歌う気持ちが出なくて…。でもここでクッキー食べてても、うまくならないのになぁって…。そう思ったらもう…ぐちゃぐちゃになって…」

 

するとリサは彩を抱きしめ、言葉を遮った。

 

「リサ…さん?」

「彩さん…落ち着いてください。」

 

リサは気づいたのだ。今の彩に足りないのは、多分必死さ故に失われた、元気であると。

 

「彩さんが歌っているのを見る時、ずっと気になってたんです。彩さん、楽しく歌ってないって。」

「楽しく…?」

「苦しそうに、もがくように歌ってて…。アタシ、まだ彩さんの笑顔見てないんです!会った時に見た作り笑いじゃなくて、心の底からの笑顔を!」

「っ!!」

「…クッキーを食べることは、悪くないことです。むしろいいことだと思います。きっと彩さんは、責任を感じすぎていて、上手く歌えないんです!だから一度休んで、元気になってほしい。そこからまた、頑張ってほしいです!」

「リサさん…うっ!ううう…!」

「泣かないでください。アタシは笑顔が見たいんですから。ほら、」

 

リサは彩の頭をなでているのと反対側の手でクッキーを一枚持ちあげ、

 

 

「クッキー、食べましょう?」

 

 

彩にクッキーを差し出した。

彩はゆっくりと受け取り、震える歯でそれを割った。

 

「あったかい…」

「…出来立てですから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まさか、いえ。そんな…。」

「…確かに信じがたい能力だよ。でも、間違いない。それにメモリは『Liar』だった。あたしたちが効かないと思っていたあの針は、噓を信じ込ませるあいつの必殺技だったってわけだよ!」

「じゃあどうすればいいのよ…!針を当たらないようにしたって、それじゃマキシマムドライブを当てられない!せめてメモリの所有者さえわかれば…!」

「…確かに誰が持ってるかはわかんないだよね、もうちょっと調べなきゃ…。」

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね。だから今日テレビ花咲に来たってわけか。」

「ええ。まだ第4スタジオをよく調べてなかったから、調べたいと思ったのよ。今日は第4スタジオを使ってないそうだから、隈なく調べつくすわよ。」

「はーい。じゃあ行こっか。」

 

 

 

リサと紗夜はスタッフに案内され、第4スタジオに向かい始めた。

 

「ねぇ…紗夜?」

「何ですか?」

「ちょっと顔怖いよ?スタッフさんビビってる…。」

「…すみません、考えこんでしまって。」

 

紗夜が思い詰めるのも、無理もない。

次のスタチャレの収録は、三日後に迫っている。紗夜はもう一日一時間一分一秒すら無駄にしたくない、出来ない状況なのだ。

 

「(かと言ってここまで顔が引きつってるとなぁ…。ここはアタシとスタッフさんで話して、紗夜を間接的に一人にさせないと…でも話題が…。)」

「あー…、うーんと……そうだ!後でちょっと社長さんに話を聞きたいんですけど、お話通してもらっていいですか?」

「えっ、社長、ですか…?すいません。社長ついさっき出かけまして…どこに行ったのかもわからず…。」

「…?行先がわからないんですか?」

「はい。」

「っていうことは社長が出かけたのは、元々あった仕事ではなくてただ急にどこかに行ったってことですか?」

「…はい。スタッフ全員、社長の場所がわかりません。」

「全員…!?」

「はい。同行しているであろう秘書ならわかると思うのですが……っと、スタジオに着きましたね。では私はここで。」

「あっ、ありがとうございましたー。」

 

案内していたスタッフは戻り、第4スタジオ前に紗夜とリサだけになった。

 

「よし…!紗夜、始めよっか!」

「ええ。隅々まで調べるわよ。」

「それじゃあ~……調査開始―!おー!」

 

こうして、紗夜達は調査を開始した。

 

「これは…いえ、関係ないわね…。」

「う~ん、これはどうでもいいかな~…。」

 

真剣に手掛かりを探す紗夜達。

そして、そのまま小一時間程度経った。二人は共に暗い顔をしながら、一度集まった。

 

「ごめんなさい今井さん。何も見つからなかったわ…。」

「アタシも…。これさ、ホントに何かあるの?」

「でもここしか現場はないわ。調べられるのはここしか…」

 

万事休すかと思われたその時、紗夜は一つの場所を思い付く。

 

「資料室…そうだわ今井さん!資料室よ!そこならきっと何か…!

「…そっか、なるほどね~。調べる価値はありそう。」

 

紗夜達は第4スタジオを離れ、資料室へと向かう。

しかし彼女達はまだ、背後からついてくる影に気づいていない……。

 

 

 

 

「うわ…この量を調べるのかぁ…。しんどいなぁ~。」

「とにかく、最新の資料から順に探しましょう。ここしかもうチャンスはないわ。」

 

2人は資料室で、黙々と資料を漁っては読み、漁っては読みを繰り返す。

そしてまた小一時間程度経った時、紗夜があることに気付く。

 

「…あら?この資料からこの資料、だいぶ期間が空いてるわね……。」

 

気になった紗夜はスタッフを呼び、話を聞いた。

 

どうやら不要とされた資料は倉庫へと入れられ、毎月末にまとめて処分するそうだ。そのため一部の資料は倉庫にあり、資料室にはないらしいのだ。

 

話を聞いた紗夜は、倉庫の調査をするべきだと思い、スタッフに聞いた。

 

「…一度、倉庫の中を拝見しても?」

「ええ。構いませんよ。」

 

結果、この通りオーケーをもらい、紗夜達は倉庫へと向かった。

 

 

 

 

 

「なんか、徐々に答えに近づいてきてる感じあるよね。うんうん。」

「ええ。確かにいい感じね。恐らく、そろそろ核心にたどり着けるかと…」

 

紗夜達が話しながら倉庫へ向かっていたその瞬間、上からライアー・ドーパントが飛び降りてきた。

 

「これ以上先へは…行かせんぞ!」

「ライアー…!」

「ほう…?私のメモリを見破るとは、中々やるじゃないか。」

「やけに癇に障る話し方ねあなた…!今井さん!スタッフさんを安全な場所へ!」

「わかった!紗夜、気をつけてね!」

 

リサはスタッフを連れて逃げ、その場はドーパントと紗夜だけになった。

紗夜はダブルドライバーを巻き、ジョーカーメモリを取り出す。

 

『ジョーカー!』

 

日菜も事務所で立ち上がり、サイクロンメモリを取り出す。

 

『サイクロン!』

 

「「変身!」」

 

『サイクロン!ジョーカー!』

 

「ふん…『お前は私のご主人様だ!』はあっ!」

 

変身直後のダブルに、ライアーが針を飛ばす。

 

「そう来ると思ったわ!」

 

『メタル!』

『サイクロン!メタル!』

 

ダブルはサイクロンメタルとなり、メタルシャフトで針を叩き落す。

 

「当たらなければ、怖くないっ!おねーちゃん、さっさと決めるよ!」

「ええ!」

 

ダブルはメタルシャフトを振り回し、ライアーを殴り続ける。

 

そして何回か殴って、ライアーの体力が消耗していると感じたダブルは思いっ切り突き攻撃をして、ライアーを吹っ飛ばす。

その間にメタルシャフトにメタルメモリを入れ、ダブルは構える。メタルシャフトは大きな風を帯び、その力が先端に集まる。

 

「くらえ…!」

「「メタルツイスター!!」」

 

ライアー向かって、振られるメタルシャフト。しかしその勢いは、何故か壁のような物に当たり、止められてしまった。

 

「なに!?一体何が…!?」

「…悪いけど、今ライアーが倒されちゃ困るんだ。ごめんね、紗夜ちゃん。」

 

壁の正体はクレイドール・ドーパントだった。クレイドールはダブルを抑え、その間にライアーを逃がした。

 

「しまっ…!」

「良かった。ちゃんと逃げたかな。それじゃ、私も帰ろっと。」

「待ちなさいクレイドール!」

「ごめんね、今は戦う気ないんだ。じゃあね。」

 

クレイドールは地面に砲撃を放ち、その煙で身を隠した。

煙が晴れた頃には、もうクレイドールの姿はなかった。

 

変身を解除した紗夜はリサ達を連れ戻し、再度倉庫へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

倉庫での調査を終え、紗夜達は事務所へと帰ってきた。

帰ってきた紗夜はすぐさま日菜と検索を始め、リサは夕食の準備をすることにした。

 

「どうおねーちゃん。何か手掛かりはあった?」

「ええ。…廃棄予定だったこの資料。これが証拠となるわ。」

「へぇ、どれどれ~…」

 

パラ、と資料をめくる日菜。

するとそこには、衝撃の事実があった。

 

「なるほどねっ。これで犯人は特定完了。メモリも特定完了。後は対策をするだけだね。」

「ええ、だから日菜。私は明日出かけてくるから、作戦を立ててもらえるかしら?」

「いいけど…何かあるの?」

「……この事件、ただドーパントを倒すだけじゃ、解決しない。そのために、行かなければいけないところがあるの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「先々週と先週のスタチャレの書き込み…ですか?」

「ええ。丸山さんの話題をできる限りピックアップしてほしいのだけれど…いいかしら?白金さん。」

「氷川さんの、頼みなら…もちろん、大丈夫です…。でも、長くなるかも…しれないんですけど…。」

 

スタチャレ収録二日前。昨日紗夜が言っていた『行かなければいけないところ』とは、燐子の家であった。

 

「でも…どうして3チャンネルの書き込みを…調べるんですか?ネットだったら、トゥイッターの方が……その…誹謗中傷は、少ないですよ…。」

「…だからよ。」

「え…?」

「丸山さんは、『自分が歌わなければいけない理由』がわかっていない。それを教えてあげられるのは、影の意見よ。」

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……。氷川さん、一応。調べつくしました…。」

 

結局調べ終わるまで、半日程度かかってしまった。

燐子は時間がかかってしまい、申し訳なさそうにしながら資料を渡している。

 

「…ふむ、なるほど。ふんふん……」

 

紗夜はそんな燐子の様子など気にもせず、ひたすらに資料を読み込んでいる。

しばらくして紗夜は資料を読むのを一時中断し、眼鏡を取って燐子の方へ顔を上げる。

 

「ありがとう、白金さん。これでようやく、解決へのルートがすべて繋がったわ。」

「は、はい……!」

「それでは白金さん、失礼しました。ありがとうございました。」

「は、はい!あの…!」

「はい?」

「頑張って、ください…!」

「…ええ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、とうとう運命の日___スタチャレ決勝戦の日___がやってきた。

今井探偵事務所一同は、彩にエールを送っていた。

 

「彩ちゃん、ズガガガーンと頑張ってきてね!」

「彩さん、ファイトです!応援してます!」

「あ…皆さん。ありがとうございます…。」

 

しかし彩は元気なさそうに、小さな声で呟いたかのようにお礼を言う。

 

「ほら、おねーちゃんもはやく!」

 

日菜はまだ言ってない紗夜を促すように、大きな声で紗夜を呼ぶ。

しかし、対する紗夜は暗い顔のまま、

 

「…特に言う事はありません。」

 

と、ぶっきらぼうに吐き捨てる。

時間が凍り付くように一瞬止まったが、すぐさまリサが立て直そうと言わんばかりに、

 

「そうだ彩さん!意気込み教えてください!」

 

と尋ねる。

 

「あ、その……意気込み…。が、頑張ります…」

 

彩はまだ元気がなさそうに、その問いにゆっくりと答える。

 

「も~彩さん!いくら決勝だからって、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ!オーディエンスが自分の声を聞いてくれるように頑張るって言ってたじゃないですか!大丈夫です!アタシ、彩さんを信じていますから!」

「そーだよ彩ちゃん!一気にギュイーンって歌って、スタっとやるだけだから大丈夫だよ!あんなに頑張ってたから、出来ないはずないよ!」

「は、はい…それじゃあ、行ってきます…」

 

彩は二人の応援を受け取り、テレビ花咲へと歩き始める。

残った三人は、今日の作戦会議を始める。

 

「さて、じゃあアタシも後で行ってくるよ。日菜達は?」

「あたしはここで待機!おねーちゃんの作戦がうまくいくまで、調べなきゃいけないことがあるから。」

「おっけ~。紗夜は?」

「…今井さんと一緒に行って作戦を実行するつもりでしたが、急遽やらなければいけないことが出来ました。…資料をまとめてから、すぐに行きます。」

「すぐに!?でもまだ、だいぶ時間が…」

「…すぐ行かないとダメなの。あのままじゃ、きっと…」

「…わかった!よーし!じゃあ今日はみんな頑張ろー!」

「おー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、運命の時が遂にやってきた。

 

「さぁさぁ皆さん!お待たせしました!スタチャレ、遂に決勝戦の日がやってきました!皆さん盛り上がってますかッ!!」

 

ワー!!キャー!!

 

「うわっ!やっぱすごい人だなぁ…。」

 

観客に来ていたリサは、あまりの人の量にびっくりしてしまう。

 

「さて!それじゃまずは、厳選されたファイナリスト二名に登場していただきましょう!一人目は、戸山香澄さんです!どーぞっ!」

「はーい!みなさんこんにちは~!戸山香澄です!」

「香澄…!」

 

香澄の登場に、つい顔が強張るリサ。

 

「いやいや!今は彩さんを応援しないと…!」

「続いて二人目!丸山彩さんです!どーぞっ!……あれ?」

「あっ彩さ……!あれ?」

 

彩を呼んだ時、司会者、観客はみなかたまってしまった。リサも動揺を隠せず、辺りをキョロキョロとしている。

 

そう。なんと、丸山彩は現れなかったのだ。

 

「あれ…?彩さん…?え…何だって?来てない?うそーん!じゃあどうすんのさ!え?何とかしろ?えー…。」

 

どうやらスタッフすら、彩の休みを聞いてなかったようだ。司会は何とか、この場を進めようとする。

 

「あー…あっ、友希那さん、どうします?」

「…遅刻したとかしてないか、そんなものはどうでもいいわ。大事なのは、この決勝戦の場にふさわしい歌をしっかりと歌うこと。戸山さんが歌った後しばらく待って、来なかったなら逃げたということにすればいいけど、もしこの時間すらも練習して後から来るつもりで遅れるというなら大いに結構、私はそう思ってるわ。」

「…なるほど、わかりました。それでは、まず戸山さんに歌ってもらいましょう。戸山さん、準備はいいですか?」

「はい、もちろんです!」

「よーしそれじゃ行きましょう!曲は『どきどきSING OUT!』です!お願いしますどーぞっ!!」

 

何とか番組はペースを取り戻したが、リサにとってはそんなの気にならなかった。リサは、なぜか来てない彩のことで頭がいっぱいなのだ。

 

「(彩さん…どうして!!頑張るって言ってたのに、あれは嘘だったの…!?)」

 

香澄は歌い始めたが、まだ彩は来なかった。

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