花咲探偵 氷川姉妹   作:フレット

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少女=A/まさにルミナス(ライアー編完結)

「…さよなら。私のアイドル人生。」

 

収録が始まっている時間、彩は誰にも言わず、ひっそりと花咲ビーチに来ていた。

その手にはお気に入りのマイクが握られており、その目には大粒の涙が流れている。

 

「うぅっ…!わあぁぁっ!!」

 

彩は手のマイクを強く握り直し、そして勢い良くその手を海へと振る。

 

「やっぱりあなた、決勝戦を休むつもりだったのね。」

 

しかしその刹那、不意に紗夜が現れて彩の腕を力強く掴む。

止められた彩は驚いてしまい、マイクを持ったまま紗夜から離れる。

 

「紗夜さん!?どうしてここに…」

「…あなた、才能がないタイプよね。努力ばかりして、結果が追い付いてこない…そういう人間は、だいたい行き詰ったら海を見て黄昏れるものよ。」

「…もしかして、紗夜さんも?」

「…まぁ。」

 

紗夜は少しバツが悪そうになり顔をそらすが、すぐさま彩に向き直る。

 

「私も気持ちはわかります。…この世のすべてとも言える知識を持つ妹。その存在に、ずっと悩まされていました。努力をしても、追いつけない。妹に劣ってばかりの、頼りないお姉ちゃんで…。」

「…紗夜さんは、どうやって乗り越えたんですか?努力が実らない、この辛さを…。」

「…出来ませんでした。」

「えっ?」

 

驚く彩を置いてくように、紗夜は話を続ける。

 

「私は日菜を、越えられませんでした。どれだけやっても、日菜には勝てない。そう思って諦めたわ。」

「…そんなのっ、」

「でも、それ以外で勝ればいい。」

 

紗夜は地平線の彼方を見つめ、力強く断言した。

 

「知識で勝てないなら、探偵としてのスキルが高ければいい。それも劣るなら、もっと別のことを頑張ればいい。私はそう思うわ。」

「でも、それって逃げじゃ…。」

「…そう見えるかもしれないわね。でも私にとっては、それは逃げじゃない。進歩よ。」

「進歩…?」

「ええ。私が優先しなければいけないのは、知識を積むことじゃない。探偵としての経験値を増やして、立派な探偵になること。それに気づいたっていう進歩よ。」

 

紗夜は彩に向き直り、彩の肩を強く掴む。

 

「あなたもそうよ、丸山さん。あなたがしなければならないのは、歌が上手くなることだけじゃない。」

「え…?」

「あなたはアイドル、なんでしょう?ならやることは、いい歌を歌うことよりもみんなを笑顔にさせることじゃないのかしら?」

「笑顔に…させる…。」

 

彩は顔を下げる。

 

「あなたのここまでの歌、笑顔が一切ないわ。そのせいで、観客も誰も笑顔にならない。

…笑顔は人から人に伝染していく、と言われているわ。あなたがすべきことは、伝染元となる笑顔を作り出すこと……それが本物のアイドルだと、私は信じているわ。」

「でも…私の歌なんて、もう誰も…」

「あなたがそう思ってるだけよ!これを見なさい。」

 

そう言って、紗夜は持ってきた大量の資料を見せる。

そこには、数々のネット記事の書き込みが書いてあった。

 

「これは…私のことの書き込み…!?」

「そうよ。しかも、それは『3チャンネル』。特に厳しい書き込みが多くて、有名なサイトよ。それをしっかりと見てみなさい!」

 

彩は静かに、資料を読み始める。

そこには多くの、彩を応援する言葉や元気のない彩を心配する言葉が書いてあった。

 

「どうして……」

 

彩は耐えきれず、涙をボタボタと流し始める。その涙は資料へと落ち、資料はグシャグシャになってしまった。

 

「…あなたには、それだけ素晴らしい魅力があるということよ。あなたのその笑顔、ダンス、歌声……その他にも色々な魅力があり、みんなそんなあなたが好きなのよ。」

「…ううっ、ぐすっ……」

「あなたはきっと今まで、受かるために、勝つためにって気持ちで歌ってたんじゃないかしら。あなたの今までの映像を見て、そう思ったわ。」

「え…映像なんて、どこに…」

「テレビ花咲の資料室に、山ほど置いてあったわ。全部チェックして、全部分析したわよ。」

「全部…?なんで、そこまでしてくれるの…!」

「依頼人のために、全力で依頼を全うする…それが探偵だからよ。」

「紗夜さん……でも私、決勝に出る資格なんてない!みんなを散々蹴落としといて、決勝のステージで歌うなんてことが、許されるはずはないよ!」

 

彩は溜めていた物を吐き出すように、声を荒げる。

 

「スタチャレは、若手にとっては登竜門と言っても過言じゃないんだよ!参加者はみんな、売れるために今までの人生を全てかけてるの!それなのに私がこんな感じで決勝に行くなんて、許されるはずがないじゃん!」

「じゃあ何よ!あなたが決勝を休んで、いったいどうなるっていうのよ!!」

 

彩に釣られるように、紗夜も声を荒げ始める。

 

「あなたが決勝を休んだら、他の人は嬉しいって思うの!?それのどこが嬉しいのよ!確かにあなたの勝利は不本意なことかもしれないけど、だからって休んだところでいいことないわよ!あなたがスタチャレ参加者は全てを懸けて全力でやっているってわかってるのなら、その思いも汲み取って彼女達の分まで頑張りなさい!それが、あなたがしなければいけないことでしょう!?」

「っ!!紗夜…さん。」

「…私はあの時、日菜には絶対勝てないと諦めた。そして違うことを頑張った。それが許された理由は、私がそうして困る人がいなかったからよ。でも、あなたは違う。…私とあなたの決定的に違うこと、それは『あなたを応援してくれる人がいること』よ。」

 

紗夜は彩を軽く抱きしめ、消え入るような声で話し始める。

 

「歌ってください…丸山さん。資格とか、そんなのどうだっていい。ただ、あなたを待っているファンの方々のために。今日の収録に来ている、全ての観客のために。」

「紗夜さん…!」

 

彩は紗夜を抱き返し、二人は抱き合う形となる。

 

「…ありがとうございました。私…もう逃げません。」

「本当に、大丈夫ですか?」

「はいっ!」

 

彩は紗夜から離れ、テレビ局の方へと歩き出す。

そしてしばらく歩いたのち、彩は紗夜の方へと振り返った。

 

 

「だって私、みんなの笑顔を作る『本物のアイドル』だからっ!!」

 

 

そう言い切り、彩はテレビ局へと走っていった。

 

「(ずっと、丸山さんは噓つきだった。『アイドル=歌が上手い』をいつしか『歌が第一優先』という風に考えてしまっていた…。そしてその考えに飲まれていってしまった。結果的に彼女は、ファンの応援を裏切り、自分のことしか考えていなかった。

…本当の嘘つきは、彼女かもしれない。でも、それは今から変えればいい。だから私は、その手助けをするッ!)」

 

紗夜もまた、テレビ局へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「社長さーん!こんにちはー!」

「ん?あぁ氷川さん。どうしたの?」

 

日菜はテレビ局に来て、社長を待ち伏せしていた。

 

「家に居ても暇だったから、ちょっと遊びに来てたんだ!ねぇ社長さん!今からちょっとお喋りしない?」

「いや…ごめんね氷川さん。私、今から行かないといけないところがあってね…」

 

じゃ、と言って、社長は走り出す。しかし日菜は、走り出した社長の肩を思いっ切り掴み、社長の動きを止める。

 

「あの…氷川さん?」

「いけないところ、それは…」

 

日菜はウィッグを取る。

 

「第4スタジオ、かしら?」

 

その正体は、紗夜だった。

氷川紗夜の姿を見て、社長は驚き、尻餅をつく。

 

「ひえぇっ!かっ、かかか!仮面ライダー!?」

「あら、やっぱりあなただったのね。嘘つきさん。」

「な、何が…。いったいどういうことだ!」

 

状況が理解できず、混乱している社長。

紗夜はそんな社長に向かって、堂々と説明を始める。

 

「あなたは私が仮面ライダーだと知り、怯えていた。だから私がテレビ局に来た時、急に姿を消し、私達を影から監視していた。だから日菜の格好をして、あなたに接触を試みた。というわけよ。まさかここまでうまくいくとは思わなかったけど。」

「なぜ…俺の正体が…。」

「ここの倉庫にあった、廃棄予定だったこの資料。この資料の中にあった写真を見たら、すぐにわかったわ。」

 

そう言い、紗夜は社長に写真を投げつける。

その写真にはなんと、社長がメモリをもらう瞬間がバッチリ撮られていた。

 

「さらに資料を見ていくと、ドーパントになる瞬間の映像もバッチリ残ってたわ。あなたは隠し撮りされていることに、一切気づかなかったのよね。」

「…あぁ、その時、『会社の社長はホントにどこもいい人なのか?』という企画をやってたんだ…。」

「…ええ、存じ上げております。人間性を探るために、色々な社長に密着する、という企画ですよね。そして最後に、ドッキリという体であなたは密着ではなく隠し撮りをされた。」

「…ご名答。それで、俺がメモリを使ってると一部のスタッフにばれた。だから俺はすぐさまメモリを使い、」

「その人達に怪物の正体は自分じゃないと噓を信じ込ませた…というわけね。予想通りだったわ。

…でも一つ、聞きたいことがあるのだけれど。」

「…なんだ?」

「どうして丸山彩を優勝させようとしたのか…その動機がわからないわ。」

「…あぁ、なんだそれか。」

 

社長は立ち上がり、紗夜の方へ背を向けて語り出す。

 

「実を言うと俺、丸山彩がタイプなんだ。ほら、俺って可愛い女の子好きじゃん?」

「知りませんよ。」

「それで彩ちゃんを見た時、一目で好きになった。ファンになって、ずっと応援しようと心に決めた。ただ…。」

「彼女は歌が下手だった…。」

「あぁ。下手だった。でも彩ちゃんは、決してサボってて下手なわけじゃない。むしろ人一倍頑張ってて、歌が下手なんだ。……だったらよ、彩ちゃんは報われていいんじゃないかって、普通思うだろ!彩ちゃんは報われるべき。だから俺はこの力で、彩ちゃんを勝たせると決めたのさァ!」

「へぇ……なるほど。そういうことだったのね。」

「なぁ探偵さんよ!俺は悪いことをしたのか!?俺は全部彩ちゃんへの善意でやってたんだ!お前はこれを、咎めてもいいと思ってんのか!?」

 

狂ったように喋り散らす社長の勢いに、紗夜も思わず体がよろけそうになる。

しかしここで引き下がっては意味がない。紗夜は反撃するように、社長に強い口調で

 

「咎めてもいい…もちろんですよ!!」

 

そう、断言した。

 

「善意でやったから大丈夫なんて考え方は、ただの自己満足です!彼女がそれを望んだと思いますか!?」

「売れたいっていうのはみんな思ってることだろ!何がダメなんだよ!」

「なんで気づかないんですか!?あなたは彼女のファンなのでしょう!?だったらわかるはずよ、彼女が努力してきた理由は、自分の力で売れたいからだって!あなたが強引に売れさせたところで、何の意味もないって!!」

「うるせえっ!!黙ってろ!」

 

『ライアー!』

 

耐えきれなくなった社長はメモリを取り出し、コネクタにメモリを当てる。

彼はたちまちドーパントになり、紗夜の方へ襲い掛かる。

 

「あなたの暴走を止めて、丸山さんを救う!そしてあなたも救うわ!」

 

紗夜はライアーの攻撃を躱し、出来た背中の隙を力強く蹴り飛ばした。そしてダブルドライバーを取り出した。

 

「「変身!!」」

 

『サイクロン!ジョーカー!』

 

「「さあ、あなたの罪を数えなさいっ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、第4スタジオでは戸山香澄が既に歌い終えてから、10分近く経っていた。

周囲も諦めムードになり、もう彩は来ないと確信した。

 

「えー…それでは今回、丸山彩さんは来なかった、ということで…」

 

しかし、その時。

 

「待ってください!」

 

勢い良く開けられたドアと共に、丸山彩がやってきた。

 

「彩さん!!」

「お願いします!私に歌わせてください、お願いします!!私はもう…誰も裏切りたくない!」

 

彩は司会者の前で土下座をし、懇願する。

 

「…友希那さん、どうします?」

「…そんなの、決まってるわ。」

 

友希那は立ち上がり、彩の顔を上げさせる。

 

「待ってたわ。丸山さん。さぁ、歌って頂戴。ここに相応しい歌を。あなたの、最高の歌を!」

「……はいっ!!!」

 

彩はすぐさま立ち上がり、ステージへとダッシュで登る。

 

「それでは行きましょう!曲は『天下…』

「あの!」

「ん?どうしたの?」

「曲を、変えさせてください。」

「えっ、でもここには、この音源しか…」

「だったらアカペラで歌います!」

「えええっ!?」

 

唐突の彩の宣言に、司会者も観客も驚きを隠せない。

 

「お願いします!私は、この曲じゃなきゃダメなんです!」

「…わかった!もうどーんとやってくれ、丸山さん!」

「はい!精一杯歌います!『もういちど ルミナス』!」

 

彩はその言葉を合図とし、一人で踊り始めた。

音楽がないのに、まるでそこに流れているかのような躍動感で力強く、それでも可愛く、踊っている。

 

「すれ違う温度~心が~擦切れて痛い~」

 

そして本当に、アカペラで歌い始めた。

彩はこの状況にもかかわらず、満面の笑みで歌っている。

 

「(私は、みんなに噓をついてた。みんなのアイドルになりたいって言い張ってたのに、結局は自分が歌をうまくなること、そして売れることばかり考えていた。そんな私は、もうさよならっ!)」

 

「今はまだ~弱いままでも~!」

 

「(私は、嘘つきのアイドルにならないっ!強い本当のアイドルに、なるんだっ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ダブルはサイクロンメタルとなり、ライアーと戦っていた。

 

「こうなったら、これで…!てやあぁ!」

 

目にも止まらないスピードで針を連射してくるライアー。

しかし、ダブルも負けていない。

 

「はあぁっ!」

 

ダブルはシャフトを回し、飛んでいた針を全て落とした。

 

「なんだとっ!?」

「よし!」

「あっ、そうだ!」

 

するとふと日菜が思いついたように顔を上げ、ルナメモリを取り出す。

 

『ルナ!メタル!』

 

「ちょっと日菜!勝手にメモリ変えてどうしたのよ!」

「まぁまぁおねーちゃん!いいからいいからっ!」

 

日菜は紗夜の言葉を聞かず、メタルシャフトを自分の手に持つ。

そして鞭のようにしなるシャフトを、ライアーの口目掛けて振り続ける。

ライアーはかなりのダメージを受け、その場に倒れてしまう。

 

「すごいわね日菜、いったいどうやって……」

「ふっふっふっ…実はちょっと前、興味深いことを見つけちゃったんだ!おねーちゃんは知ってる?」

「何をよ。」

「噓をつくと閻魔様に舌を抜かれる……なんちゃって!」

「…はぁ…呆れた。だから相手の口、正確には舌にあたるであろう部分を狙っていたのね…」

 

うなだれる紗夜。しかし日菜はノリノリで、解説を続ける。

 

「だってさ!ダブルの武器って『やっとこ』みたいなやつないじゃん!だからルナメタルでなるべくそれっぽくしたんだよ!このこだわり、むしろ褒めてほしいくらいだよね。」

「はいはいそうね、すごいわよ日菜」

「えへへ~おねーちゃんもっと言って~」

「まったく…」

 

何故か急に茶番を始める紗夜と日菜。

その隙に立ち上がったライアーは、口に手を添えて針を構える。

 

「『俺の姿はお前には見えな…」

「っ!よっと!」

「ぐえっ!」

 

しかし、伸縮性に定評のあるルナメタル。シャフトを足めがけて一振りし、針を撃たれる前にライアーを転ばせる。

 

「よしっ!じゃあちゃんとやろうかなっ!おねーちゃん、スパイダーショック!」

「え、ええっ!」

「その間に…」

 

『サイクロン!メタル!』

 

再びサイクロンメタルになり、シャフトにスパイダーショックを取り付ける。

 

「いったいそれをどう…あぁ、そういうことっ!」

 

日菜の作戦を理解した紗夜は、メタルシャフトを力強く振る。

するとシャフトから無数の糸が現れ、ライアーの口周りを覆った。

 

「あっ、な、なんだこれ!?」

「なるほど。こうすることで、敵は針を打てない…考えたわね、日菜。」

「でしょでしょ~!?ふっふっふー…名付けて『口は災いの元だから防いじゃおう作戦』!」

「…あなた、ことわざにハマったのね。」

「うん!ことわざってすごいんだよ?平安時代に作られた世俗諺文っていう…」

「日菜落ち着いて。話は後で聞くから。今はドーパントを倒すわ!」

「はーいっ!」

 

ダブルはメタルメモリをベルトから抜き、シャフトに入れる。

 

『メタル!マキシマムドライブ!』

 

「今度こそっ…!」

「「メタルツイスター!!」」

 

風の力を帯びたシャフトで、自身の体を回しながら相手を殴る必殺技『メタルツイスター』。

その攻撃は全てヒットし、ライアーのメモリは壊れた。

 

「がはっ、なぜ…俺の邪魔をした…!俺がいなかったら、彩ちゃんは勝てないんだぞ…!」

「いいのよ。丸山さんは、自分に勝ったのだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「も一度…ルミナスっ!」

 

ダブルがドーパントを倒し終えた同刻、彩のステージは終わった。

 

「…ありがとうございました!」

 

固まっていた観客。しかしその瞬間、彼らは恐ろしい量の歓声を上げた。彩は困惑して、ステージから逃げるように降りようとする。友希那はそんな彩の腕を掴む。

 

「あなたの歌は、正直言って下手よ。音程もリズムも、全然取れてない…」

「…っ」

「…でも、」

 

友希那は彩に、優しく笑いかける。

 

「あなたの気合い、そしてアイドルらしさ…そういったものは、しっかりと感じたわ。…ただうまいだけの人より、ここに相応しい歌だったわ。

…最高の歌をありがとう、丸山さん。」

「ううっ、うっ…ぐすっ…ありがとう、友希那ちゃん…!」

「…ええ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(結局、丸山彩は決勝で敗退した。優しい言葉をかけた湊さんだが、やはり審査はちゃんと技術で考えたらしい。…でも、それでよかったと思う。本気の失敗には価値がある。だからこの負けは、彼女を確実に成長させる。私はそう、実感している。

…しかし、気になっている事がある。なぜ戸山香澄は、この大会に参加したのか?少なからず有名人になると、動きにくくなるものではないか?…嫌な予感がする。彼女の今回の優勝は、きっと何かがある。)」

 

「こんにちはー!」

 

紗夜が報告書を書いていると、急に勢い良くドアが開けられた。

その犯人は彩で、手には分厚い封筒があった。彩は入るやいなや、その封筒を紗夜に渡した。

 

「あのこれ…ありがとうございました!」

「あ、はい…」

「どれどれー?」

「おっ、アタシにも見せてよ!」

 

紗夜の両側に立ち、一緒に封筒を見る日菜とリサ。

 

「一体何が入って……ってええっ!?」

「す、すごいよおねーちゃん!すっごいるんってきた!」

「ま、眩しい…!この額はアタシには眩しすぎるよ…!」

 

封筒の中には、諭吉が10枚程度入っていた。

紗夜達は本当かと訴えるように、彩の方を見つめる。

 

「実は私、あの大手事務所の○○に入れたんです!だから、それ受け取ってください!私にとって紗夜さんたちは、人生を変えてくれた恩人なんです!」

 

彩の言葉を聞き、その額が本当だと知る日菜とリサ。

すると日菜は飛び跳ねて喜び、リサは『探偵冥利に尽きる…』なんて言いながら泣いて喜んでいる。

 

紗夜は彩に近づき、手を差し出す。

 

「おめでとう、丸山さん。あなたのその頑張りが、とうとう身を結んだわね。」

「はい!ありがとうございます!」

 

彩も手を出し、二人は熱い握手を交わす。

 

「私はあなたの一ファンとして、これからもあなたを精一杯応援するわ。もちろん、私に出来る事なら何でもする。」

「…その言葉、嘘じゃないですか?」

「…もちろんです。」

「えへへっ、じゃあ…氷川紗夜さんっ!」

「は、はいっ!」

 

「…私のマネージャーになってください!」

 

「…えっ?」

 

彩の衝撃の発言に、思わず固まる紗夜。後ろで感極まっていたリサ達も、急に動きが止まった。

 

「紗夜ちゃんが本当のアイドル像を教えてくれたから、私は頑張れた。紗夜ちゃんがいなかったら私は、今頃私は決勝をすっぽかした最低女としてバッシングに会ってたと思うの!」

「え、ええまぁ、そうかもしれませんね。というか丸山さん呼び方が」

「だから、私には紗夜ちゃんが必要なの!紗夜ちゃんが私を、正しい方向へと歩む手助けをしてくれる…紗夜ちゃんがいないと私、きっとちゃんと仕事が出来ない!」

「あ、あのですね…」

「待って彩ちゃん!おねーちゃんは渡さないよっ!おねーちゃんは、あたしの相棒なんだから!」

 

意識を取り戻した日菜が、彩と紗夜を引きはがして紗夜と腕を強引に組む。

彩も負けじと、紗夜の反対側の腕を掴む。

 

「離してよ日菜ちゃん!紗夜ちゃんは私のマネージャーになるんだよ!」

「違うよ!おねーちゃんはあたしの相棒だよ!」

「それは今までの話だよ!そうだよね、紗夜ちゃん!これからは私のマネージャーだよね!」

「違うよねおねーちゃん!おねーちゃんとあたしはずーっと相棒だもんね!」

「ずっとなんて…そうやって決めつけるのはよくないと思うなぁ!日菜ちゃん!」

「彩ちゃんこそ、急にマネージャーになってくれなんておかしいと思うなぁ!ねぇ!どうなの彩ちゃん!」

「ふーんだ!それなら私にだって考えがあるよ!」

「へぇ!言ってみてよ!」

「マネージャーになってくれなかったら依頼未達成ということで、お金は返してもらうよ!」

「ちょっと丸山さん!それは流石に困ります!私達は家計が…!」

「じゃあマネージャーになろうよ!そうすれば解決だよ?」

「ちょっと彩ちゃん!それは都合が良すぎるよ!」

「そっちだって依頼達成してないのにお金だけもらうなんて、ずるくないかなぁ!?」

「がるるるる!」

「がるるるる!」

 

デッドヒートする両脇に疲労困憊する紗夜。そんな紗夜に、リサが耳元でゆっくりと囁く。

 

「まったく、隅に置けないなぁ。さーよっ。」

「~~~!!あなたまで!あーもうっ!」

 

言い合いする日菜。

顔を真っ赤にして慌てる紗夜。

そして紗夜をからかって、楽しいアタシ。

 

…最高に幸せだ。

この時間が、ずっと続けばいいな……。




ということで!バンドリダブルライアー編終わりですっ!

今まで見て頂きありがとうございました。

次も出す……かも?その時はよろしくねっ!
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