魔法少女リリカルなのは 〜the cross of moon light〜【凍結】   作:たけのこの里派

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携帯からログインして投稿しようとしたらまたログイン画面になるという意味不な状況に。今まで出来てたのにちょっとショックです。




一話

 第二魔法によって呑み込まれた暗闇の中に光る、小さな光に向かって進む。

 その光に近付くと、先程の様に光が俺を飲み込んでいく。

 

 そして光が呑み込まれた後に現れた光景は、夜の、日本によくあるような公園だった。

 

 しかしここが俺の知る様な日本の公園かはまだ判らない。何故ならここは並行世界、俺の居た世界とは異なる可能性を秘めた世界だからだ。

 

 

 この世界には魔術が無いかもしれないし、あるかもしれない。死徒がいるかもしれないし、いないかもしれない。将又単純に『ルート』が違うだけやもしれない。そういった相違点を調べなければならないだろう。

 何、俺は10世紀以上昔に似た様なことをしたことがある。慌てる必要はない。風景上現代的ならば、先ずは魔眼を使って戸籍と住所の獲得が必要だろう。

 

 

 だが、だが先ずそんな事より、俺は問わねばならない。

 

 

 

 

 

 

 

 「何で居んの?」

 「えへへっ、私アークの使い魔だもん。どこまでもお供するよ」

 

 俺の横で活発に笑う女の子に問う。

 

 

 彼女の名は、シャーレイ。ファミリーネームは捨てたとのこと。

 ポニーテールにまとめた黒い髪に、褐色の肌。そして何より“死徒”である何よりの証拠の瞳孔が割れた赤い瞳。

 故郷のアリマゴ島で、とある封印指定の魔術師(衛宮矩賢)の助手だったが、その魔術師の誘導を受け不完全な死徒となり体が崩壊しかかっていた所を保護、俺が拾って完全な死徒にし、育てたのだ。

 そう、彼女は彼の『魔術師殺し』が冷徹な正義に目覚めた原因の一つとなった、衛宮切嗣の初恋の女性。

 

 今は十八や其処らの見た目だが、もうかれこれ30年以上の付き合いになる。

 俺が保護する前、ただ一人の例(・・・・・・)外を除いて(・・・・・)その島を丸ごと死都にしてしまった過去を持つ。

 まぁその島は聖堂教会と魔術協会に潰されたが。

 ちなみに彼女が不完全な死徒となる原因の魔術協会に回収された衛宮矩賢の死体は、俺が強奪。魔術回路と魔術刻印を摘出し、衛宮切嗣が持つ二割を除いた八割をシャーレイに移植した。

 

 元々才能もあり、『時間操作』――つまりは時間旅行という第二魔法に傾倒する魔術から、興味を持ったゼルレッチが指導した事と衛宮切嗣の死後、残りの魔術刻印も回収し移植した事も相俟って、数年前に『時間操作』を完全に習得。限定的故、魔法使い見習いになる(遠坂凛と同様)。

 

 実質、二十七祖の中の下ぐらいは実力もあるだろう。

 

 封印指定を受けた死徒というめずらしい存在でもある。

 まぁ、固有結界持ちの死徒なら二十七祖には数体いるから微妙だが。

 

 アリマゴ島での一件を酷く後悔しており、以降人を襲ったことは無く、吸血は全て輸血パックで行っている。

 無関係な人間、一般人を襲う死徒を憎んでおり、死徒でありながら教会から『死徒殺し』を冠する俺の最初の死徒であり、使い魔であり、家族である少女。

 

 実は封印指定ににも関わらず、メレムから埋葬機関に誘いを受けたりしたりもした。

 まぁシャーレイは断ったが。

 

 

 

 「俺が並行世界(こんなトコ)に居る理由知ってる?」

 「うん? 千年以上生きてるのにヘタレだから?」

 「ヘタレ違わいっ!!」

 

 結婚する前のジャンヌのラッキースケベと遭遇した時、何事も無かったように接したら同じこと言われたけど、断じて違う!!!

 

 「桜ちゃんやライダーさん、アルトルージュさんは兎も角、私はアークの奴隷で下僕で相棒なんだから。置いてきぼりは嫌なんだからね」

 「ぐぬぬぬ…………はぁ。アルトルージュか桜が来たら自殺してたかも知れないが……お前なら構わないか」

 「あれれ〜? それは俺の嫁宣言と解釈していいのかなぁ〜?」

 「寝込み襲った奴が調子に乗るな」

 「ごめんなさい。反省はしてるけど後悔はしてない」

 「コイツ……あぁもう、話が進まん。取り敢えず戸籍作って寝床確保するぞ」

 「それは良いけどアーク」

 「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 「何で子供の姿なの?」

 「ビビって動物が寄って来ないから」

 

 アルトルージュの真似をしてみました。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 月の最強生命体、死徒二十七祖第三位。総ての真祖の原型(アーキタイプ)たるアークライトは、存在するだけで動植物を威圧してしまう。

 強いて言うなら、アークライトは月。星そのものなのだ。

 なまじ理性がある人間に敵意や殺気など向けようものなら、目線だけで絶望と重圧でショック死させてしまう可能性がある。

 本能が敏感な動物が寄ってくる筈もない。

 

 死徒や真祖、魔術や錬金術、聖堂教会と魔術協会などがあり、神秘性が認知されている前の世界なら兎も角、この世界はやはり全く異なる可能性を持っているのだ。

 もしこの世界が科学、つまりは神秘とは真逆の可能性を歩んだ世界なら非常に面倒な事になる。

 

 人類はすべからく自身と異なる存在を忌避する。それがアークライトになる可能性は充分にあるのだ。

 実際アークライトの正体が衆目にさらされ、人類の敵としてアークライトが捉えられてしまえば、アークライトは人類に対し大打撃を与えなければならなくなる。

 

 それこそ人類がアークライトに敵対するのが馬鹿らしくなる程の絶望を。人類のアークライトに対する敵対心を折らなければならなくなる。

 

 

 それが可能なのは、そんな事があり得るのが『タイプ・ムーン』。アリストテレスの一角、月のアルテミット・ワンなのだ。

 

 しかし、嘗て地球を掌握しようとした前アルテミット・ワンの『朱い月』なら兎も角、一応平穏無事に暮らしたいアークライトは、そんな『化け物がここに居ます』みたいな本能的な信号をバンバン出すのは御免被りたい。故に力を抑えるために幼年体になったのだ。

 実質姪、感覚的に妹であるアルトルージュが不安定な力をそうやって抑えて居たように、アークライトも実践してみただけ。

 

 

 「その心は?」

 「『ハッ、どうだ? 初めて見るアリストテレスの刀剣解放は』とかしてみたかったからですッ!」

 

 心は餓鬼であるこの千歳児。

 

 

 

 その後彼等は、戸籍を作るために虹の魔眼を乱用し、それなりの金まで手にいれた。勿論、大企業が不正に扱っていた様な汚れ金のみだが、それでも数年は暮らしていける金が手に入った。

 

 

 「あの会社の社長、こんなに金貯めてたんだね。最近の日本は怖いよ」

 「こんなもん、中世ヨーロッパに比べればカワイイモンだって。それと、バニングスって会社のトコは白だったなぁ」

 

 

 汚いのはお前らである。

 

 ちなみにこの魔眼とは、外界からの情報を得る眼球が、外界へ働きかける事が出来る物の事だ。

 先天的な物もあるが、魔術師などはこれを人為的に、後天的に作り替えた物だが、死徒や真祖。その原型たるアークライトや朱い月も、この魔眼を所持、保有している。

 

 しかも朱い月とアークライトの魔眼はこの世に現存する魔眼の中でも最上位。桜のサーヴァントである地母神メドューサの『宝石』すら超える『虹』。

 そんなものを『戸籍を作るのが楽』という理由で乱用されては、並の魔術師ならば例外無く卒倒するだろう。

 

 戸籍の次に住居だが、死徒である前に魔術師であるシャーレイが住む住居ということは、それだけ環境が求められるのだ。

 

 幸いアークライト達が落ちた『海鳴市』は文句無しの一級霊地だった。

 特に地脈が流れている土地は四つ。

 

 最大の地脈的好条件は、さざなみ寮という元女子寮なのだが、一般人が共に住む寮に住宅する訳にもいかないので却下。

 何より世界が『あそこに死徒とアリストテレスも投入すると手がつけられない』と告げてきていた。

 

 

 次に好条件の土地は、『月村』という屋敷だが……。

 

 

 「監視カメラ……多すぎね?」

 

 

 明らかに日本とは思えない程の重警備によって遮られていた。魔術的な結界の一つも張られていなかったので、魔術師では無いと一応判断。

 

 勿論監視カメラも判らない様配置されていたりカメラだけではない。そこかしこに銃が。常人では視認できない赤外線センサーもビッシリと仕掛けてあったりする。

 だが、

 

 

 「フッ、相手が悪かったな。その圧倒的警備システムによって張り巡らされたトラップも、ホワイトハウスに面白半分で忍び込んだ経験がある視力53万の俺の目は誤魔化せん」

 

 

 この、隠れた監視カメラに向かってドヤ顔をしているアリストテレスが、根本的に駄ァ目な事が再確認された。

 

 残りの二つは、無人の廃墟と化している洋館と、土地が売られているだけの空き地。

 アークライト達は迷わず空き地を選んだ。

 

 

 「だってあの洋館、流石に掃除すんの苦労しそうだし」

 「どこぞの弓兵(バトラー)じゃあるまいしなぁ。

 土地があるなら『空想具現化(マーブル・ファンタズム)』で一発だろ」

 

 

 そう言って土地を購入し、家を建てた彼等の“時は金なり(早く寝たい)”という言い訳を一応認めておこう。

 副音声など聞こえないし認めない。

 

 

 「今後はどうする? 最低数年は居るんだし、あの月村って家には挨拶してたほうがいいと思うけど。

 アークの話じゃ、カタギじゃないんでしょ?」

 「あの警備システムじゃなぁ。入った途端ズドンパッ! になること請け合いだぜ? 死人出るべ死人。

 取り敢えず魔術的要因は皆無だったけど、この世界の裏情報に詳しいかも知れない。

 まぁ、また今度出向いたほうが良いだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――ていうか、何で俺のベッドに潜り込んでんの? そして何で胸当ててんの? ドキドキはしてもこの体は反応せんぞ」

 「いいよーだ。ドキドキしてくれるだけで満足だよ。

 うりうりー、桜ちゃんにも負けない自信あるもんねー。

 あー! ちっちゃいアークも可愛いなーもうっ!」

 「訂正しよう。

 お願いします。離れてください眠れません」

 「だが、断る(キリッ」

 「『親』の命令権使うぞゴラァ!!!」

 

 

 そうして、並行世界に来た彼等の始めての夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 「なんなのこの子……」

 

 先程アークライトが寄った月村邸の一室で、呟きが響かせる二人の女性が存在した。

 

 一人は月村忍。若くして『夜の一族』をまとめる月村家当主を務める女性だ。

 もう一人はメイドのノエル。

 

 「こちらのダミーの監視カメラは勿論、恭也様や士郎様も念入りに仕込んだ、素人では絶対に判らない箇所のカメラまで、全て視認しています。」

 「素人じゃ……ううん、そこいらの雑魚じゃ絶対に無理な配置なのに……それこそ恭也や義父さんクラスの経験と技量を持たないと……」

 

 この月村邸の警備システムはとある御神流の二人の剣士によって強化され、その侵入難易度は殺人的なまでな領域に達している。

 不用意に侵入などしたら本当に死人が出るかもしれない程の要塞に近かった。

 

 それを――――、

 

 

 「それにこの子――――――こっちを見て嗤ってる」

 

 カメラの映像に映っているのは、金糸の様な美しい月光色の髪で、こちらを視て嗤う容姿端麗な少年。

 そのルビーの様な赤い瞳が、一瞬万華鏡の様な虹色に変わったのをカメラは逃さなかった。

 

 その美しい容姿も、刺客の可能性があると思うと不気味にすら見える。

 

 

 「どこの手の者かしら。こんな子供を使うなんて……。

 ノエル、この映像からこの子の事を出来る限り調べておいて」

 「はい。……すすがお嬢様には?」

 「そうね……あの子にはもう少し調べてから判断するわ」

 

 

 彼女には幾つか疑問があった。もし仮にこの少年が刺客なら、今回顔を見せた理由が判らない。捨て駒にしても見た目が余りに目立っている。

 

 事前に調べて捨てる前に潰してくれと言っている様なものだ。

 ではそれほどの手練れか。どちらにせよ情報が少ない今は判断がつかない。

 

 しかし怪しい事には変わらない。

 寧ろ彼女は警戒していた。

 

 「この子の、この眼……」

 

 七色に輝く万華鏡の瞳など、人類ではあり得ない。それに誰もを惹きつけるこの笑みに、何か生き物として根元的なは恐怖を覚える。

 異質極まりないのだ。

 それこそ自分達とも(・・・・・)比べ物にならない程に。

 

 

 「ノエル」

 「はい、恭也様にご連絡しておきます」

 「トラップの強化もお願い」

 「畏まりました」

 

 

 彼女等の中で、映像の少年に対する警戒度はどんどん跳ね上がっていく。

 そう、誰も思わないだろう。考えないだろう。

 

 

 

 この誰もを魅了する蠱惑的な笑みが、彼なりの精一杯のドヤ顔などと。

 思う、筈もない。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 「喜べ子猫ちゃんー。絶望しろ野郎どもー。

 これから皆の仲間になる袴灯(ことう)緋月(ひづき)ちゃんです。皆、仲良くしてあげてくださいねー」

 『はーい!』

 「……はぁぁぁぁぁぁああああ……」

 

 

 

 私立聖祥大学付属小学校のとある教室で、溜め息と共に聖杯の泥も吐き出しそうなぐらいどんよりとした、編入生としてのアークライトがそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 小学校編入。勿論これには理由がある。10世紀以上生きた事もあり、現代の小学校に対して好奇心というのも無くはないが、だからと言って編入するほどアークライトも物好きでは無い。

 というか嫌だ。

 しかしアークライトは決定的な失策を犯した。

 

 幼年体化という、決定的なミスを。

 

 

 町を歩けば補導され、道を進めば尋ねられる。

 何故こんな時間帯に歩いていたのか。学校はどうしたのか。親御さんの御名前を教え――――等々。

 魔眼で暗示をかけたからこそ、なんの問題も起こっていないのだが。

 

 

 「もう面倒臭い。ウザいダルいやってらんねぇ」

 

 

 彼の精神に凄まじいストレスを与えていた。

 これ以上溜まるとムシャクシャして『月落とし(ブルート・デァ・シュヴェスタァ)』ぐらいやってしまうだろう。ガチで抑止力(世界)が動く。

 そこで現在この世界に唯一存在する家族であるシャーレイは、

 

 

 「だったら見た目通り学校行けば良いじゃない。私も高校行きたいしさ」

 

 

 そして現在。

 

 

 「袴灯緋月です。これから数年間よろしくお願いいたします」

 

 ショタコンなら残らず撃墜、通常の女性を年下好きにしてしまい程の笑みのアークライトの体から、なんか出てた。疲労感みたいなのが。

 理由は勿論、

 

 

 

 

 「(緋に月とか、なんというDQNんんんんん!!? まんまだけど!!)」

 「え、えーっと。袴灯ちゃんの席はあそこなのですよ」

 「あ、有り難うございます」

 

 勿論偽名であり、命名はシャーレイ。戸籍上はアークライト・ブリュンスタッドになっているが、勿論学校側には魔眼で暗示をかけている。が、それでも彼の表情を引き吊らせるには十分だった。

 

 何より認められないのは、この明らかに同じ小学生にしか見えないピンク髪のこの教師、月読教諭だ。

 校長によると、教員免許は勿論、普通自動車免許も取得している、歴とした教師である。

 

 アークライトは約千年程生きているが、こんな人間は見たことがない。死徒か、封印指定の魔術師か、何らかの不老不死と言われた方が余程納得する。

 

 

 

 窓側の後ろ辺りという最高の場所を手に入れたアークライトは、そのままポケットから缶コーヒーを出して飲み始める。煙草があったら吸い出しそうだ。

 その後、何とも言えない哀愁が漂った空気の教室は、チャイムがなるまで授業は進まず、アークライトが月詠教諭に頭を下げていた。

 

 何だこの小学生。

 

 

 

 

 

 その後、アークライトはその容姿、そしてオッサン臭い行動も有り、好奇心旺盛なクラスメイトから質問攻めにあっていた。

 

 

 「趣味は何―?」

 「綺麗な髪だねー」

 「どこから来たの?」

 「ホントに日本人?」

 「好きなタイプは?」

 「うにゃー、やっぱ至高は義妹に限るにゃー」

 「サッカーは好き?」

 「ツキやんは何派? 前から派? 後ろから派?」

 「先生はどっちでもないです、タイニーズです。エッヘン」

 「肉が……」

 「目が真っ赤ー」

 「明日休みだー!!」

 「上条ちゃんは馬鹿だから補修です」

 「不幸だぁぁぁあああああああああ!!」

 「とうまとうま! 私はお腹が空いたんだよ!!」

 「カッコいいねー」

 「小萌先生、最高やで―!」

 「どんなスポーツが好き?

 「さっき何飲んでたの?」

 

 

 質問の言葉と言葉が重なり、最早言語が理解出来ない。

 そんな中、救いは勝ち気な金髪の少女がもたらした。

 

 「皆いい加減にしなさいッ! 困ってるでしょっ!!」

 

 

 彼女がこのクラスのまとめ役なのか、瞬く間に質問攻めをしていた少年少女を散らしていく。

 

 「(へぇ……)」

 

 

 アークライトが内心、感嘆の息を漏らす。

 ハーフなのか、外人の様な金髪と整った容姿は勿論、小学生とは思えない程ハッキリとしたその強い意思が感じられる瞳は、長年生きているアークライトでもめずらしいだった。

 

 「(何年ぶりだ? 十数年前の遠坂凛、もしくは美綴綾子ぐらいか?)」

 

 曾て間桐桜を助けた後、一度見たことがある嘗ての『魔法使い』見習いと、その悪友を。

 

 「にゃははは、凄いねアリサちゃん」

 「うん。私じゃ真似出来ないよ」

 「えっ……と」

 

 するとアリサ同様質問攻めに参加していなかった少女が二人やって来た。

 

 「あっ、私の名前は高町なのは! よろしくっ!!」

 「……月村すずか、です。よろしくね」

 「あぁ、袴灯緋月だ。宜しく、高町。月村」

 

 

 なのはと名乗った少女は、アリサであろう金髪の少女よりかは我は強くなさそうだが、活発で容姿も整っている。まだ『小学生』らしい少女だ。

 

 

 

 もう一人の月村すずかは、サラサラの紫がかった黒髪にカーチェと、二人よりかは大人しい風の、これまた将来美人になろう整った容姿の美少女だ。紫がかった黒髪と大人し気な雰囲気が、元居た世界に置いてきた妹同然の娘に似通っている。

 

 

 ただ――――――、

 

 

 「(この子、人間か?)」

 

 違和感を感じる。否、違うと断じれるだろう。

 強いて挙げるならば、混血に似たり寄ったりの感じもする。

 

 

 「(『月村』、か……)」

 

 おそらくあの要塞染みた殺人的警備の家の者だろう。なのだとしたらあの屋敷の者が混血のような異能者の可能性が出てきた。

 

 

 「(『裏』の臭いはしないから無害だろうが、あの地脈のポイント加減は偶然か? いやまぁ偶然なんだろうけど、魔術的要因皆無だったし……解らぬ)………はぁ」

 「さっきから溜め息ばかりでどうしたのよ」

 

 

 アークライトがまた無意識に溜め息をついていると、見かねたアリサがやって来た。 

 

 「ん? あぁ、私はアリサ・バニングス。よろしくね」

 「あぁ宜しく。さっきは有り難うな。

 ってまた溜め息してたか……ちょっとストレスが溜まっててな、甘味処を探してる所だよ。引っ越して来たばかりでよく分かんないんだが」

 

 

 糖分は頭の血流を良くする。勿論食べ過ぎれば害にもなるが、アークライトはそんな甘党でも暴食でもない。

 

 冬木市に居た十年間は、特にストレスになるような事もなく、第五次聖杯戦争で不幸に苛まれていた少女達は助けられ自己満足も出来ていた。

 

 ここでアークライトの前世の原作知識が役立ったのだが、アークライトは既に千年以上の歳をとっている。前世のことなど殆ど覚えていない。

 

 そんなアークライトがfateなどの原作知識を記憶していたのは、偏に作品への愛情と世界に対する警戒だったのだが、それでも完全ではなかった。

 事実、第四次戦争戦争には間に合わなかったし、シャーレイの時も一歩遅かった。

 

 ネタは無意識に口からでるが、その元ネタを尋ねられれば困ってしまう。故に型月以外の作品の原作知識は勿論、前世のエピソード記憶が著しく欠損していった。

 

 それこそ、『リリカルなのは』を完全に忘れてしまうほどに。

 

 

 「だったら、(ウチ)に来れば良いよ!」

 「……はい?」

 「「成る程」」

 

 

 故になのはが言った意味を、アークライトだけは理解出来なかった。

 

 

 「うん! 翠屋だよ!!」

 「いやだから説明プリーズ」

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 翠屋。海鳴市で知らない人間こそ少ないと言われる喫茶店である。

 

 その店主こそ、高町なのはの両親である高町士郎と高町桃子である。

 この二人の間には長男と長女次女が存在する。

 

 まぁ長男は桃子の息子では無く、長女も義理が付くが。

 

 この高町桃子はパティシエとしての実力は一級品。愛想の良いイケメンの夫と、(異常な程)若く(見える)美しい妻。人気が出ない訳がない。

 

 

 しかしこの高町士郎、高町桃子と再婚するまで、旧姓を不破士郎といった。

 

 永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術という、二刀流の小太刀と体術、飛針、鋼糸などの暗器を駆使する完全な殺人剣というトンデモ流派を修得している。

 

 まぁ、10年ほど前に本家が爆破テロを受け、その際にほとんどの使い手が死に絶えているが、しかし高町士郎はそれを生き残り、数年前までボディーガード等の裏の仕事もしていた紛れもない強者である。

 

 現在は、数年前にボディーガードの仕事で一度意識不明の重傷を負い、回復後、裏から足を洗ったが、その(わざ)は衰えていない。

 

 長男の恭也とその義理の妹の美由希も御神流剣術を学んでおり、長男の恭也は父親の士郎と並ぶ程の実力を持っている人外ファミリーである。

 

 まぁ例外な妻の桃子や、次女であるなのは、士郎の娘にも関わらず運動が苦手なのだが。

 

 

 ただここで重要なのは、長男の高町恭也が、月村忍の恋人である、と言う一点に尽きるだろう――――。

 

 

 

 

 

 

 「――――あぁ、判った。ではこちらは準備しておくから」

 『有り難う! お父さん!!』

 

 娘から電話越しに喜ぶ声が聞こえる。

 電話の内容は、編入した友達が甘味処を探しており、それを聞いたなのはが翠屋へ他の二人の友達と一緒に休日の明日に連れてきても良いか? という物だった。

 

 

 返事は勿論是である。

 

 昔士郎が仕事で重傷を負った際、どうしてもなのはを一人にしてしまった時があり、友達もあまり居なかった。

 そんななのはが友達を連れてくる。士郎にとってこれ程喜ばしい事は無い。

 

 うち二人はなのはから良く話を聞いているし直接会ったこともある。

 まぁ、その編入生が男の子という点に置いては、少々親バカ心が動きそうになるだが。

 

 

 「その袴灯という子は、どんな男の子なんだい?」

 

 故に、娘の印象を聞かねばならない。

 

 

 『なんだか同い年には見ないの。私が誘った昼御飯の時も、お弁当を食べてる時何だか遠い目をして溜め息つきながら缶コーヒーを飲んでたよ』

 「そ、そうか」

 『緋月君が屋上で一人でごはんを食べてたから、折角だし一緒にってことだよ。でもこれからも一緒に食べたいなぁ』

 「なるほど。良い友達が出来たんだな(しかし既にしたの名前で……恭也が暴走しなければ良いがな。

 しかし遠い目をして缶コーヒーを飲む少年……か。随分シュールな……いや、随分大人び小学生も居るんだな)」

 

 

 心配なのは、少々妹に対して過保護な長男の恭也だ。恭也は士郎が認める程の剣士。その緋月という少年になにかしないか心配なのだ。

 ぶっちゃけ、恭也はシスコンである。

 

 

 「(なのはと言いアリサちゃんやすずかちゃんと言い、最近の子供は早熟が多い)」

 

 その小学生が実年齢四桁台などと、流石の士郎も想像する事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『――――でも凄い綺麗な髪をしてるの! まるでお月様みたいな!!』

 「――――――」

 

 

 しかしそんな思考も、なのはの一言で停止する。

 

 「…………なのは、その子の瞳は何色だい?」

 『? キレイな赤色だよ?』

 

 息子の恭也の恋人の忍が言っていた謎の少年も、月の様な金髪に、一瞬万華鏡の様に変化したらしいが、基本はルビーの様な赤色の瞳をしているらしい。

 

 偶然、というには材料が揃い過ぎている。

 

 「……そうか。

 有り難うなのは。明日なら大丈夫だ、気を付けて帰ってくるんだぞ」

 『うん! じゃあねお父さん!』

 

 

 通話が切れた電話を置く。 

 

 

 「これは、気を付けなければならないな」

 

 そこには家族を愛する父親の顔と、家族を護るために戦う剣士の顔をした士郎がいた。

 

 

 「恭也は、忍君の所か――――」

 

 士郎は受話器を再び取る。

 

 

 

 

 

 アークライトが来るのは、明日の休日の昼間。

 

 

 




シャーレイ魔改造。元々才能あったみたいだし、魔法使いクラスの指導者がいるならこれくらいイケんじゃね? と思いこんな感じにしました。時間回帰と東方の咲夜さんみたいなことができると思ってください。
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