魔法少女リリカルなのは 〜the cross of moon light〜【凍結】 作:たけのこの里派
難産です。致命的なミスがあったら修正を掛けるかもしれません。
「俺が
脅迫という名の強要をし、月村邸のリビングのソファーに座ったアークライトが口にした言葉に、月村忍と綺堂さくらはズッコケ、肩を落として盛大に溜め息を吐いた。
ちなみに高町恭也は、別室でノエルの治療を受けていた。やはり打撲ぐらいはしていた様だ。
「……トラップの数々を破壊しつくして恭也君や私を攻撃しておいて、挨拶したかっただけ?」
「オイオイ。常識的なな来訪をしたにも関わらずトラップの嵐。それでも自衛するなと? 本気で言ってるなら呆れて物が言えんな。今すぐ同じ状況に叩き込んで同じ言葉を吐けるなら納得するが?」
「む……」
つまりは正当防衛。法律的にも常識的にも、打撲程度なら正当防衛で済む。
それに忍はアークライトが恭也達に手加減をしていたことを理解している。
忍には何をしたか全く解らなかったが、まるで流星の如く壁にぶつかって打撲傷で済んでる事が何よりの証拠だ
「新参者が
「……ハァ。誤解とは言え、私達が過剰反応し過ぎたって訳? 後数日調べられたら……いえ、どっちにしろ私達には対抗出来なかったわね」
「ンな気落ちする必要は無いだろう。自惚れで無ければ、地上で今の俺に対抗出来る奴なんざ精々二、三体ぐらいだろうに」
アークライトの脳裏に白い巨大犬としか形容出来ないガイアの魔犬と、一度挨拶に行ったら寝惚けて殺されかけた巨大な蜘蛛の形をした、水晶としか形容出来ない
そして最後は、面白い悪戯を思い付いた悪餓鬼の様な笑みをしたウルトラジジイを。
「あぁ。そういえば、すずか嬢は? アレだけ五月蝿くしたら流石に判る筈かだが?」
「すずかは今日ファリン――――もう一人のメイドと一緒にアリサちゃんの家に泊まっているわ。一応避難させる為に。アリサちゃんに申し訳無かったけど」
「……悪い」
「別に構わないわ。此方も鋭敏になりすぎたのが悪いんだし。
それに二、三体……ね。じゃあコッチも一つ聞いていいかしら?」
「一つと言わず、幾らでも」
「――――貴方、一体何?」
忍の質問に、しかし答えるべきアークライトは悩む様に口に手を添える。
「……色々呼ばれてるが、それは俺と言う存在を指すには正しいか判らない。月から来訪した宇宙人? 千年を生きる化物? 月が生み出した王サマ? 確かに間違いじゃ無いが、意味が解らないだろ? だから単的、率直に、俺が何なのか伝えるにはコレが一番だと思う」
――――
◆◆◆
――――アリストテレス。
遥か未来、地球は人間の手によって滅び、殆どの生命は死に絶えていたが人類はまだ生き延びていた。そんな人類を滅ぼす為、ある日突然やってきた謎の生命体の総称がアリストテレス。名前は哲学者から取ったとされる。
その存在が知られる様になった原因は、地球が自らの死後も生き延びている人類に恐怖を覚えたことに起因する。
地球としては、自らが生み出した人間達の手で死を迎えることは自らを滅ぼした生命も地球と共に死ぬ為許容出来たが、その後も生き延びている人類に対して恐怖を覚えた。
そして死ぬ寸前に「どうか、いまだ存命する生物種を絶滅させて欲しい」とSOS信号を発信し、星の意思を受信した各惑星の星の意思が自らの星の生態系の最強種=星そのものを派遣したのだ。
その正体は各惑星の最強の生命体。アルテミット・ワンとも呼ばれる他天体という異常識の生態系における唯一最強の一体。
星の意思の代弁者であり、その星全ての生命体を殲滅できる能力を有する存在。その星の生命種の王。
それは地球のガイアやアラヤの様な、星が生み出した一つの抑止力の形である。
それこそが彼等、地球のSOSサインを聴いて来襲してきたのは太陽系惑星九種と月一種の計十体。
。
――――タイプ・マーズ、火星のアルテミット・ワン。
――――タイプ・ジュピター、木星のアルテミット・ワン。
――――タイプ・ヴィーナス、金星のアルテミット・ワン。
――――タイプ・サターン、土星のアルテミット・ワン。
――――タイプ・ウラヌス、天王星のアルテミット・ワン。
――――タイプ・ネプチューン、海王星のアルテミット・ワン。
――――タイプ・プルートー、冥王星のアルテミット・ワン。
しかし他の二種は、その遥か以前に地球に来訪していた。
『約束の日』の五千年も早く地球に到着し、と言うかそもそも呼ばれたかどうかあやしいにも関わらず西暦以前に南米に落ちてきた
捕獲にやって来た先代死徒二十七祖第五位を瞬殺、捕食し吸血種としての能力があると判明して空席となった第五位を引き継ぐことになったアリストテレス。
――――水星のアルティメット・ワン、タイプ・マアキュリー。死徒二十七祖第五位、『
――――そして、地球が人間の誕生に不安を覚えた時、その意思を受信して地球を守るためという名目で地球に降り立って協力を持ちかけた。全ての真祖のオリジナルとなった生命体。
真の目的は何にも無くなった自分の
――――タイプ・ムーン、月のアルテミット・ワン。朱い月のブリュンスタッド。
しかし彼は、とある一人の
そして彼が滅ぼされた1400年前から百年後、奇跡と偶然と一つの星の意志と運命の悪戯によって、新たなアリストテレスが誕生した。
それが―――――――。
◆◆◆
「……」
流石に予想外なのか、忍が手を抱える様に頭に添える。
さくらは怪訝な表情をしながらアークライトの方を睨んでいるが。
「
「パラレルワールド。例えば量子力学のエヴェレットの多世界解釈。宇宙論のベビーユニバース仮説もだったか? 後はシュレディンガーの猫ぐらい知ってるだろ」
「仮にそんなものが有ったとして、どうやって行き来したのよ」
「1400年前にソレを運営することの出来る様になった、問題ばっか起こすジジイが居るんだよ。見付けたのは偶然だが」
彼の魔法使いは、本当に問題しか起こしていない。アークライトの彼への評価は『だいたいコイツのせい』である。
「じゃあ何? 貴方は剣と魔法が溢れたファンタジー世界から来たって言うの?」
「いやいや犬耳の
――――――表は」
犬耳――さくらが、少々馬鹿にした風な台詞を口にする。しかし残念ながらそんなキャピキャピしたファンタジーは存在しない。
珍しいという理由だけで、他人をホルマリン漬けとかを平気でやるようなキャピキャピ感なんて嫌すぎる。
「表……つまり裏は」
「その前に確認だ。表はつっても、裏がコッチとは違う保証がある訳じゃない。だから裏に詳しそうだから聞きに来たんだよ、お嬢ちゃん」
「お嬢ちゃん呼ばわりは止めてくれないかしら。貴方歳幾つよ? さっき千年とか言ってたけど……何で小学生やってるのよ」
「そんなことはどうでもいいだろう? たかが千年や其処らの若造捕まえて。こちらには不老不死の一人や二人、居なかったのか?」
「不老不死……ッ!!?」
不老不死。死者蘇生に次ぐ、人類が最も求めた願望の一つ。そして同時に
不老であり、アリストテレス特有の『死の概念が無い』という特性故、第三魔法に次ぐ文字どおり不老不死を自称していい数少ない不死者と言えるだろう。
“生きているなら、神様だって殺して見せる”とヤンギレヒロインに言わしめた直視の魔眼ですら、殺害不可能な存在だ。と言っても、
「後者は誠に遺憾だが、こうしないと動物が寄り付かねェんだよ。元々はちゃんと大人やってるぞ? 苦手なんだ。違和感撒き散らしながら街を闊歩するのは。だからこんなガキの姿をしてる。だが世間体的に学校に通わなきゃ駄目だったんだよ」
アークライトが本来の青年体で歩けば、裏の人間ならば必ず気付かれる。匂いがプンプンなのだ。
行き交う人々に紛れ込もうとしても、明らかに失敗してしまう、まともではない者の匂いが。
まぁそれ以上に、良くも悪くもアークライトの容姿は目立つのだ。
街中を平然と歩いていたアルクェイドと同じ様に。
「判るか? そこいらを歩くだけでおじさんおばさん。お姉さんニイちゃん。警官婦警。お爺さんお婆さんがひっきりなしで補導してくる。アレを一週間続けたらキレて何もかもブチ壊しちまいそうだ」
言葉を重ねる毎にアークライトの表情が険しく目に光が消え、それを見た忍達の背中に恐怖と言う名の寒いものが走った。
実際問題これは冗談や比喩ではなく、本気で海鳴市が地図から消えていただろ。何よりアークライト自身にヤってた自信がある。
まぁ、冬木市の様な英霊溢れる街や、三咲町の様な人外溢れる街ならば、この違和感はある程度許容されるのだが。
そもそも一般人の精神体がアリストテレスの肉体に宿り続け、影響が出ない訳がない。
アリストテレスはどの種も凶暴性が非常に高い。それはアークライトとて例外ではなく、アークライト自身に強いストレスや心的ショックを与えてしまえばその凶暴性が表に出てくる。
普段明るく、ふざけた物言いをするのはアリストテレスの本能とも言える凶暴性を抑え付けるために無意識にしていると言ってもいい。
『何ソノ厨二設定。「クッ、お前は出てくるな……!」とかやらなきゃイカンのか……?』と、地味に頭を抱えていたが、正確には二面性が強いだけなのだが。
過去に一度だけ、アークライトはその凶暴性を自らの意思で全開にした時がある。それが何の為かは、容易に予想出来るだろう。
結果、十万の十字軍の命が一瞬で消えたのは、言うまでもない。
故にアークライトは本気では戦えない。抑止力の事もあり、地球上で本気を出すことは殆んど不可能なのだ。アークライトは何の理由も無く人を殺す獣にはなりたくない。自身が紛れもない化物と理解していても。
――――生誕直後と同じ様に振る舞うのは、別に理由があるのだが――――。
「俺はこれでも一応平穏で適度に刺激のある暮らしがしたい。だが裏の情報がない以上、何かに襲われても対応策が出ない。だから答え会わせだ。裏世界の大体の情景を教えてくれ」
「……」
忍は思考する。彼の話には筋は通っている。彼が警戒しているのは未知の脅威だ。そして此方への敵対心も無い。何より、嘘を吐き私達を騙しても彼にはメリットが無い。先程見せた力で蹂躙すれば良いのだから。
「……貴方は、『夜の一族』って知ってる?」
「いや、初耳だ」
「そう、貴方の言葉を信じるなら知る訳無かったわね。
夜の一族ってのは、人類の突然変異が定着した吸血鬼の種族の総称なのよ。優れた容姿と明晰な頭脳、高い運動能力や再生能力、あるいは心理操作能力や霊感など数々の特殊能力などの、本来人間には備わっていない様なものを生まれ持つ存在の」
故に自分達が優れた種とし、一般人を見下す傾向を持つ者も存在する。勿論人間と共存を臨む者も居る。
「そんな能力の代償なのかしら。体内で生成される栄養価、特に鉄分のバランスが悪いの。そのバランスを保つために人の、特に異性の血が必要なのよ」
「……吸血鬼というより、吸血種だな」
「そうね。御伽話で出てくるような吸血鬼を見たことが無い私では判断出来ないけど、夜の一族の絶対の共通点よ。つまり夜の一族は例外無く吸血
「そこの犬耳ちゃんは吸血鬼っぽくないが、吸血犬か?」
「犬耳ちゃんは止めてくれないかしら……」
「だが断る」
さくらが隠していた犬耳をダラリと垂らしながらゲンナリする。
見た目小学生にそんな呼ばれ方をされると、流石に恥ずかしくなる。しかもその小学生が自分より遥かに歳上ならば尚の事。
「あぁそうだ。一応敬語使った方が良いかしら? 貴方はかなり目上の人間になるんだし。全然見えないけど」
「いいよ、どうせこの姿じゃ違和感が溢れるしな。でも一応元の姿に戻ったら敬語とか検討してくれ。年寄りのなけなしの威厳が失われる」
忍とさくらが、その元の姿が非常に気になるのは仕方がない。まぁ、元の姿で口を開いて仕舞えば今と指して変わらないのだが。黙っていれば朱い月と同等の
「しかしさっきハーフって言ってたが……」
「私は吸血鬼の父親と人狼の祖父を持つワーウルフヴァンパイアなのよ。」
「は?」
随分軽く人狼の名前が出てきた事に如何にアークライトでもそれは流石にスルー出来ないと驚愕を隠せなかった。
「(げ、幻想種だァあ?)」
幻想種とは、通常知られている生命の系統樹からは外れている、いわゆる『伝説上の獣』。『魔獣』『幻獣』『神獣』のランクがあり、魔獣ランクならば未だ未開の地の奥深くで発見できなくはないが、幻獣ランク以上のものは既に世界の裏側にシフトしてしまっているという、存在そのものが異常である者もいる。文字通り物語や神話に登場するような生き物だ。
デュラハンやペガサス、ドラゴンや神牛。人狼もソレにあたるだろう。
しかし昨今に於いて、幻想種は殆んど姿を見せなくなった。アークライトも、精々ライダーのペガサス位しか見たことが無い。
しかも
勿論こんな思考は非常に失礼極まるのだが。
しかしさくらはまた違った想像をしてしまったのか、表情を暗くする。
恐らく血のせいで迫害、差別、苦悩した事があるのだろう。
アークライトはそんな人間を腐るほど見てきた。
「あぁ、差別とか嫌悪とか皆無だと先に言っとく。吃驚しただけだから。と言うか化物度合いは俺の方が遥かに上だろ」
「そ、そう? いえ、別に何でもないわ」
そんな様子に気が付いたアークライトがフォローをいれると、何でもないと振る舞う癖に、明らかに嬉しそうにする。少し顔が柔らかくなって、尻尾を嬉しそうに振っているのが証拠だ。
「(何この可愛い生き物)な、なるほど。コッチの吸血鬼や混血とはちと違う訳だ」
「吸血鬼も気になるけど……混血?」
「かつてヒトならざるものと交わって血と力を得た人間の末裔だ。ぶっちゃけ先祖帰りの異能者だよ。
ソッチみたいにそんな全体的能力向上とかじゃなく、一機能特化型と思ってくれて構わない」
「へぇ……それは色々能力に種類が存在するって事?」
「あぁ。俺が知ってんのは、有機物・無機物如何に拘わらず、視認した対象の熱を任意で奪う能力や、対象を燃やし尽くす能力とか。能力は一族の血が濃いほど能力が高まってて、近親相姦を繰り返してる。まぁ普通に他人と結婚した例も勿論あるがな」
アークライトが語るそのあまりに超能力然なチカラと家庭事情に、忍とさくらの顔が引き攣る。
仮に夜の一族屈指の実力を持つさくらと混血が相対した場合、十中八九混血が勝つだろう。
相性が悪いと言うのも有るが、混血の中には白兵戦で英霊とタメ張れる出鱈目な存在もいるのだから。
そして夜の一族に吸血という欠陥が有るように、混血にも欠陥が存在するのだが、今は止めておこう。
「月村家は、夜の一族の総まとめ。裏の世界の事実上のトップと言った処かしら。だから色々狙われるのよ。そのせいで過剰反応しちゃったんだの。
そして後は退魔師やHGSって呼ばれる結果的に超能力の様な力を使えるようになる病気。大体はこんな感じかしら。
後は
「精々神秘性は退魔師ぐらいか……。退魔師の詳細は?」
「私が知ってるのは悪霊などの魔の除霊や討伐ね。殆んどが悪霊相手で、たまに妖怪もって話も聞くけどそれは滅多に無いわ。詳しい事はノエルに聞いて」
「……判った。有り難う」
――――その後、恭也の治療を終えたノエルが戻ってき、退魔師の名門一族は日本警察にも繋がっている等の話を聞いたのだが、
「(――――それだけか?)」
アークライトの感想はそれに尽きた。
聖堂教会の様な絶大な戦力を有した神様オンリーの異端討伐組織も無ければ、魔術オンリーで派閥争いが下らなさすぎる魔術協会も無い。夜の一族の様な強者もいるが、アークライトが居た世界に比べれば脆弱極まりない。そもそも――――、
「――――魔術。魔法。根源。魔術協会。時計塔。聖堂教会。アトラス院。死徒。真祖。いずれかに聞き覚えは無いか?」
「うーん。時計塔はイギリスのアレよね? 後は……魔術と魔法って、あのファンタジーの? 違いが分からないわけど……後は聞き覚えは無いは」
そもそも、魔術が存在していない可能性すらある。
「(オイオイマジか。ギャルゲーか何かの世界に送ったんじゃねぇだろうなあのジジイ。平穏なのは結構だが、こうもユルいのは調子が狂うんだが)」
あまりの現状に拍子抜けが過ぎた。
「その程度……って顔してるわね」
「まぁな」
「まったく、貴方が居た……並行世界? 一体どんな所だったのよ」
「目的の為ならどんな外法だろうが何だろうが、平然と他者を使い捨て、珍しいし貴重だからと言う理由で人間をホルマリン漬けにする、場合によっては目的さえ遂げられるのなら全人類が死に絶えても構わない探求者共や、人間を餌か食糧にしか見ていない化物共。神の名の元に気に入らない奴をブチ殺す狂信者。一般人に知られたらソイツ等全員が口封じに殺しに来る様な、人間の命が軽すぎる暖かくも残酷な、都合の良い悲劇と喜劇に溢れた世界」
「…………この世界に生まれて、本当に良かったわ……」
絞り出した様な声を、さくらが捻り出す。忍やノエルは絶句して声も出せない様だったが、暫くして漸く忍が口を開いた。
「……そんな世界にいたのに、貴方結構軽いわね」
「そんな世界だからこそ、一人ぐらい軽い奴が居ても良いだろう?」
「だからって戦闘時にふざけすぎよ」
「――――何だ? 『戦闘』して欲しかったのか?」
忍、さくら、ノエル。そして部屋のドア越しに聞いている恭也の息が呑む。それがハッタリでも嘘でないことが判る。
巫山戯て同然だ。戯れて当然だ。恭也やさくら達との攻防など、目の前の怪物にとっては児戯に等しかったのだから。
今のアークライトは全身を拘束されて重りを背負っいるのも同然の状態。そもそもアークライトにとって戦いとは、本来の姿で周りを気にぜず、地上で出せる全力を持って挑む事を“戦う”というのだ。
魔術師でも死徒二十七祖でも魔法使いでもアリストテレスでも無い、ただちょっと人間より強い程度の相手に本気を出すこと自体あり得ない。
忍達は忘れてはいけない。そして確かめなければならない、目の前の存在がどういう者かを。
「……その、その貴方が居た世界で、貴方はどういった存在だったの?」
正しく理解しなければならない。目の前にいる存在が、何れ程自分達にとって危険なのかを。
「……言ったろ? 俺をどうにか出来る奴なんて二、三体が精々だってよ」
「………ッ!」
――――地上で三番目に人類を絶滅させるのが速い化物だよ
◆◆◆
「…………どういう、意味よ……ソレ」
「そのままの意味だが? 更に付け加えると、地上の動植物全ての生命種を皆殺しに出来るのが二番目に速い生命種も兼任だな。あの良くも悪くも、魔犬は殺人に特化し過ぎている。霊長のみなら兎も角、生命種の絶滅なら時間が掛かる筈だ」
「な…………」
忍達の理解が追い付かない。
目の前の子供は本当に何を言っている?
絶滅? 人類を?
「そ、そんなの……出来る訳が……」
「絶滅案その一。手っ取り早く小惑星クラスの隕石を地球に叩き落とす。
絶滅案そのニ。地球の自転を停止させ創成の炎を再現する。
絶滅案その三。地殻変動を利用して大陸同士をピンボールさせる。
絶滅案その四。南極と北極の氷を融かし大陸を残さず沈める。
絶滅案その五。大気中の酸素濃度を7%以下に落とし、又二酸化炭素濃度を15%以上引き上げる。
絶滅案その六。面倒だが一人一人直接殺していく――――イカンな、キリが無さそうだ」
「――――」
冷徹な目をしながらスラスラと出てくる手段に絶句するしかなくなり、忍達は確信する。
やれる。目の前のバケモノは、やろうと思えば間違い無く人類の塵殺し切るだろう。
しかしそれは――――、
「勿論やれば、の話だがな。特技人類絶滅っても、実行出来なきゃ意味が無い」
「…ちなみに聞くけど、実行する気は」
「ある訳ねェだろ。そんなデメリットしかない行為」
「ほっ……」
実行しようとすれば
アークライトはアラヤやガイア、両方に属していないのだから。
「一応これから関係を続けていくんだ。ヘラヘラしている奴が後々街一つカッ飛ばせる事が分かったら色々不安だろ? お嬢ちゃん達には俺の危険性を知っても付き合えるか聞きたかったしなー」
「行き成りカリスマブレイクしたわね」
「元々存在しない物は壊せねェよ。て言うか見た目ガキがカリスマ振り撒いてもキモいわ」
あーやだやだ。と、放っていた威圧感を散らして、テーブルのアイスコーヒーを口にする。茶菓子はとっくに食べ終えていた。
「つー訳だ嬢ちゃん。俺は恐らく歩く核倉庫みたいなモンだ。そしてその核倉庫はアンタ達とこれから付き合って行こうと思ってる」
「……」
「それでアンタ達は、こんな化物を街に置いとくことが出来るか? あまつさえ付き合っていくのか? 付き合っていけるのか?」
「核ミサイル単体じゃ無いのね……。私達に害意は?」
「
「この街の人間に危害を加える気は?」
「
「……条件を出せる立場か解らないけど、条件が一つ」
「此方が勝手に住み着いたんだ。構わんよ
――――さて、一体どんな無理難題だ? 裏社会を完全掌握でも望むか?」
「――――私の事を『お嬢ちゃん』呼ばわりしない事!!!」
その忍の発言に、アークライトは思わず目をパチクリさせる。現在この星で、最も危険で出鱈目で無敵で最強でなんとも馬鹿馬鹿しい生命体に対して、彼女はあまりにも『対等』だった。
月村との会談。主人公があまりハっちゃけてないですが、基本こんな感じで行くつもりです。
未熟な身ながら、これからもチョクチョク投稿していく所存です。