魔法少女リリカルなのは 〜the cross of moon light〜【凍結】   作:たけのこの里派

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更新が五ヶ月も遅れてしまうという惨事が起こってしまい、大変申し訳ありませんでした。
今後の活動は後書きに書かせていただきますので、取り敢えず六話をどうぞ。


六話

 

 海鳴市の暗闇の夜に、異質な存在が混じっていた。

 

 金髪に碧眼。民族衣装の様な服に、まるで少女の様な顔立ちの少年。

 その少年は駆けていた。少年を追う、決して既存の生物では無い、塊としか形容出来ないような黒い獣から逃げるように、戦うように。

 

 そして何より、彼は虚空を駆けていた。

 

 「ハッ、ハッ、ハッ」

 「――――Gaaaaaaaaa!!」

 「くッ! レイジングハート!」

 

 少年の胸元で輝く赤い宝石は鳴動し、少年を護るように現れた光の壁を作り出し獣を阻む。

 壁にぶつかった獣は苦しむように不気味な唸り声を漏らすが、その隙を少年は見逃さなかった。

 

 少年が掲げる手に呼応する様に、虚空から緑色の鎖が獣を拘束せんと殺到し、

 

 「ジュエルシードッ、封――――」

 「Gaaaaaaaaaッ!!!!!!」

 「――――ッ!? ぐあッ!」

 

 しかし獣は少年の鎖を引き千切り、少年をその黒い肉体で吹き飛ばした。

 黒い獣は、吹き飛ばした少年に構わず何処かへ逃げるように消え、その場に残ったのは破壊痕と少年だけだった。

 

 「う……くッ……」

 

 腹部から血を流しながら倒れ伏した少年は、赤い宝石の光に包まれて姿を消した。

 少年と全く同じ傷を負っているフェレットが、代わりに倒れ伏して。

 

 そして少年(フェレット)は叫ぶ。音という空気の振動では無く、念話という魔力の振動を用いて。

 

 全てを始まらせるその声を。

 

 

 

 

 『――――助けて』

 

 

 

 

 

 

 

 その夜。二つの大きな出来事が起きた。

 

 

 空高く異次元の海から降り落ちた二十一個の蒼の願望機。

 ありとあらゆる願いを叶え、しかし歪ませてしまう歪な宝石。

 この地に争いと災い、そして出会いを齎し、この世界の物語の始まりを告げる星屑の雨。

 

 不屈を冠する石と出逢い、新たな世界を知る少女と、母親の愛をただ求め続ける金色の少女を中心として起こる物語。

 その始まりが。

 

 千差万別数多の可能性を見せるこの物語には、しかし異物は存在する。

 

 極大の異物が。

 

 二つの世界の力、そのどちらにもに属さない、可能性の海から訪れた人間らしい怪物が。

 

 しかし、怪物が一人存在するのでは、物語は語れない。

 コインに表と裏が必要な様に、悪には善が対するように、怪物が存在する物語にはやはり怪物を倒さんとする勇者が必要だ。

 英雄が必要だ。

 

 そう。それが二つ目に、とある一夜に起こった二つ目の出来事。

 

 それは偶然だろうか必然だろうか。将又(はたまた)あらゆる可能性の海を旅する、()の宝石剣の担い手による計らいだろうか。

 彼――――いや彼女(・・)が数多の世界の中からこの世界に辿り着いたのは。

 

 元々の赤が、血で紅く汚れた様はその者の辿った道筋を現していた。

 

 「……うッ……此処は……」

 

 その者が目覚めたのは、海鳴市の八束神社の更に山奥。

 伝承では百鬼夜行、または大妖やぐらが封印されたと謂われる場所だった。

 

 その者は意識を取り戻したと同時に、まるで日課と言わんばかりの緩やかな手つきで周囲と自身の姿を確かめ。

 直ぐ様絶句した。

 

 「は……?」

 

 そもそも格好が、汚れ云々以前に奇妙だった。

 ダブダブの服に、大きすぎるボディーアーマー。

 その体に間違いなく釣り合わないサイズの服だったのだから。

 

 まるで体が縮んだ様に。

 

 彼女は自身の体がどうなっているかひとしきり確認し、暫く絶句した後近くに落ちていたアタッシュケースを見付けて立ち上がった。

 

 「……橙子さんの仕業か? それとも凛か? 恐らく縮んでいるのは修正力なのだろうが……まぁ良い。先ずは寝床を確保しなければな。最悪野宿でも構わんが……この血塗れの格好を何とかするしかあるまい。全く以て、前途多難だな」

 

 アタッシュケースの中身が、魔力の籠った宝石とかなりの量の魔術礼装である事に、溜め息と感謝の念と現実逃避を抱きながらその者は再び、その白銀の髪を翻しながら(・・・・・・・・・・)歩き始めた。

 

 それは嘗て憧れ、破綻した見果てぬ理想(ゆめ)を、自ら被った道化の様に愚直にもを求める続けるためか。

 将又(はたまた)自身の師とも呼べる女性の望む様に、女性が永年研究した成果で示された自らの幸せとなる道を選ぶのか。

 それとも――――――

 

 

 物語に必要な登場人物は揃った。さぁ、物語を始めよう。

 何、気にすることはない。

 これはただ怪物が戯れ。

 少女達が飛び交い。

 英雄が抗うだけの物語だ。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 アークライト達がこの世界に来てから数ヶ月。いつの間にか新たな季節がやって来ていた。

 

 つまりは新学期。

 

 「……三年生か……何時まで俺は小坊やっているのか……」

 「師匠様、時間軸がズレてるから向こうと時間差かなり有るって言ってたもんね」

 「まだボロボロじゃなかったな」

 「中々スリルあるって言ってたもんね」

 「死徒二十七祖一桁台二人に、飛行可能の英霊が相手だからな……スリルぐらいあらァ」

 

 そのスリルは、どれだけ才能溢れる魔術師であろうと、間違いなく絶望するレベルである。

 玄関前でアークライトとシャーレイは、先日やって来たアトラクションを楽しんだ後の様な、爽やかな汗を掻いて悪戯坊主のような老魔法使いを思い出していた。

 

 「まさか向こうとの時間軸がズレてるとはな。コッチの数ヶ月が向こうじゃ数日にもなって無い……オイ、ゼルレッチ(第二魔法)系列者(シャーレイ)。お前は解らなかったのか?」

 「私は第二魔法の中でも『時間旅行』専門。師匠様じゃあるまいし、流石に別の並行世界の状況まで解らないよ。そもそも私じゃ、時間旅行すら完全会得は少なくとも百年掛かるって」

 「……ま、イイか。正直来年一杯が引き際だろうし。それ以上はゼルレッチも詰むだろ」

 

 死徒二十七祖に魔法使いなんて馬鹿げた属性を併せ持ったジジイでも、同じ死徒二十七祖二体に英霊相手から永遠と逃げ続けるのは簡単ではないだろう。それこそ別の並行世界に逃げない限り。

 しかも内一人と一匹は、機動力に事欠かないのだから。

 

 「それまでに心の準備は整えないとね」

 「チッ……」

 

 ニヤニヤした笑みをアークライトに向けているシャーレイに、忌々しく舌打ちをするアークライトの顔が、疲労に満ちていたのは見間違いではないだろう。

 

 「……ねぇ、アーク」

 「何」

 「どうしてアークは第五次聖杯戦争で、ジャンヌさんを喚ばなかったの?」

 「……………」

 

 シャーレイが口にした疑問。

 それは数年前、桜に令呪が宿った時に、ライダーを召喚してからずっと抱いていた物だった。

 

 英霊召喚。

 

 それは死の概念が存在しないアークライトが、魔法という反則を除き、亡き最愛の妻であるジャンヌとの会う唯一の方法だろう。

 

 アークライトには死の概念が無い。

 故にアークライトを殺すには、物理的に跡形も無く破壊し尽くす他に無いのだ。

 しかしそれは、アークライトにとって“死”ではなく“消滅”という表現が正しい。下手をしたら消滅後、復活する可能性がある。つまり死後が存在しない可能性があるのだ。

 

 かつてアークライトは、魔女狩りによって死亡する約1000万の犠牲者を救うという偉業を成し遂げたが、死後が存在しなければジャンヌの居る英霊の座に辿り着くことすら出来ない。

 故にアークライト側からジャンヌ・ダルクに会いに行くのはほぼ不可能に近い。

 或いは、『アークライト・ブリュンスタッド』という生き物として存在していた■■■■として逝くのか。

 

 だからこそ、万能の願望器による英霊召喚は、まさに千載一遇の好機だった筈だ。

 それをしなかったのは――――

 

 

 「俺は令呪を得られなかったからな。つまりは俺はその権利が無かったんだよ」

 

 つまり“世界”は、アークライトを彼女と会わす気が無かった。

 ジャンヌ・ダルクは世界の後押しを受けた、言ってしまえば『特別』だ。

 それこそ、イレギュラークラスとして『ルーラー』を冠する程に。

 

 そもそもの話、アークライトはジャンヌを召喚しなかったのではなく、出来なかったのだ。

 桜の英霊召喚時でも、触媒は確かにジャンヌの遺品を使った。しかし召喚されたのは、まるで何かに妨げられるようにライダーたるメデューサだった。

 

 つまり、修正力。

 

 「おそらくあの戦争でジャンヌを召喚するには、抑止力の直接的な影響を受けない俺が、直接ジャンヌを召喚しなけりゃ不可能だろう」

 

 斯くしてアークライトは令呪を得られず、そして他人から令呪を奪うのと、正史における間桐臓硯のようにサーヴァントを生け贄にサーヴァントを召喚するほどの技術や知識は無い。

 

 「つまり俺が直接令呪を得られなかった時点で、アイツを召喚するのは無理だった。それが全てだ」

 

 それで話は終わりだと言うように、アークライトは玄関の扉を開けた。

 

  

 

 

 「……それより、数日前と昨夜のアレ(・・)の解析はどうなってる?」

 

 

 その言葉で、悲しみを帯びていたシャーレイの表情が、魔術師のそれに変わった。

 

 「……ヤバイよ、アレ(・・)。聖杯ほどじゃないけど、おそらく目的(・・)は一緒だと思う」

 「……面倒だな。そんな物が、あと最低十個以上も墜ちて来るとは……」

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 「ふぅ……。こんな物か?」

 

 彼女の居る場所は、かつてアークライトが拠点候補に挙げた、とある古びた無人の洋館だった。

 

 近隣の住民と土地の所有者に暗示を掛け、無事洋館を手に入れて、アークライトとシャーレイが極めてメンド臭いと一蹴した廃洋館が、新品とまではいかないが少なくとも住宅としてはこれ以上無い物に生まれ変わらせた彼女のスキルは、流石なのだろう。

 

 「これで私も立派な犯罪者だな。魔術協会も聖堂教会も無いと言うのに、この有り様とは」

 

 そう。彼女が警戒すべき二大組織は存在しなかった。

 これ程の一級霊地に魔術協会、または魔術師が見逃す訳がない。そして聖堂教会も。

 だが現状はそのどちらも姿は見せず、魔術協会に至っては時計塔に存在するべき総本山も、間接的な調べでは存在しないのだから。

 更に彼女の魔術が、効率や効力が以前よりも格段に上がっているという疑問も浮上している。

 まるで神秘を彼女がほぼ(・・)独占しているかのように。

 

 魔術はその『秘儀』を知る人間が増えれば増えるほど、その神秘性を失う。

 逆に言えば、魔術を知る者が少なければ少ないほど、扱う者が少なければ少ないほどその力は増していく。

 故に魔術師は自分の魔術を秘匿するのだ。

 

 この事から予想するに、下手をすれば魔術そのものが存在しない可能性がある。

 

 しかし直ぐ様安心は出来なかった。彼女の懸念すべき事は幾つかあった。

 

 勿論数多くあるが、その中でも挙げるならば二つ。

 一つは、地脈として魔術師の工房を造るにあたって、彼女が今居る洋館以外にも三つ存在しているが、この三つ目が問題だった。

 

 地脈を辿って行くも、その場所に辿り着けない(・・・・・・)

 行こうとしてもいつの間にか通り過ぎてしまう。

 

 「アレは一体……? 暗示が掛かった様子も、結界が張られている様子も無いと言うのに……」

 

 それがアークライトが造った異界による効果なのは、今の彼女は知るよしも無い。

 

 そしてもう一つ。彼女がこの世界に訪れたすぐに、空から莫大な魔力を秘めた何かが多数落ちてきたこと。

 

 此方はハッキリ言って洒落になら無い。一つ一つが最低町一つ軽く吹き飛ばせる魔力の塊が、しかも複数一つの町に落ちてきたのだ。

 

 これは彼女の信念からも、神秘を行使する者としても見過ごせる話では無い。

 

 「取り敢えず……自分の分相応な事をするか……」 

 

 ――――そしてここに、嘗てアークライトが苦しんだ事と同じ状況に陥っている人間が居た。

 

 

 

 

 「学校か…………何でさ」

 

 

 

 




原作開始に加え、英雄(ヒーロー)投下ッ!!
漸く原作に入り、ユーノくんのSOS信号が発信されましたが、直後謎の少女の影がッ……!?
まぁ、誰かはメッチャバレてると思いますが。

今回は少し文字数は少なめですが、申し訳ありませんがこれからはこれくらいの文字数が限界になります。


――――さて、今回更新が非常に遅れた原因なのですが、進学準備のポートフォリオ製作やら父親の退院手続きor処置に看護やら、それによるストレスでモチベーションの崩落やら、ぶっちゃけリアル事過ぎるのであまり言えません。
今後の活動ですが、一応執筆は続けるつもりです。
が、やはり更新速度は下がってしまうかもしれませんし、またはストックが溜まり次第大量投下、という手を取るかもしれません。

兎に角、今までの応援、またお待ちしていただいた方に、心からのお礼申し上げます。


修正が入るかもしれませんので、御了承ください。
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