魔法少女リリカルなのは 〜the cross of moon light〜【凍結】   作:たけのこの里派

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番外編 if. Fourth Holy Grail War

 

 

 その魔法陣は、とある異界の城に存在するその場所一杯に花で包まれた、一つの墓を囲むように描かれていた。

 

 「――――素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公」

 

 今行われている儀式は、戦争の物だった。

 

 ――――聖杯戦争。

 万物の、ありとあらゆる願いをかなえる万能の願望機たる『聖杯』を奪い合う為の、六十年に一度行われる争い。

 その四度目の戦争。

 

 「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 聖杯を求める七人のマスターと、彼らに召喚され契約した七騎の英霊(サーヴァント)のコロシアイ。

 そして聖杯は、より真摯に自身を望む者を選抜しマスターにする。

 

 「閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 人ならざる、最早幻想とも呼べる程の美貌を持つ美しい月光色の髪をしたこの男にも、聖杯戦争の参加、『英霊』を召喚し使役する資格たる令呪がその拳に刻まれていた。

 そしてこの男も、聖杯を――――正確には聖杯戦争参加資格を(・・・・・・・・・)強く望んでいた。

 

 別にこの男が、生粋のどうしようもない戦争狂な訳ではない。

 そして万能の願望機たる聖杯すら、精々オマケ程度にしか思ってなかった。

 

 「――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 

 本来この男には聖杯戦争の参加資格の魔術回路は存在していない。

 ならどうやって聖杯に選ばれ、令呪を得られたのか。

 

 『足りないのならば他から補うのが魔術師』という言葉から、その男は自身を狙う魔術師から魔術回路そのものを奪い取ったのだ。  

 

 元々刺客たる魔術師は後を絶たないので、結果数分千人分もの魔術回路を取り込むことに成功した。

 勿論ソレを実際に魔術に使うつもりは無い。魔力を魔術回路を用いずに使用出来るこの男には無用の長物だ。用を済ませば自分のたった一人の眷属にでもやるつもりだった。

 

 全ては、この英霊召喚一つの為に。

 

 「誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

 死の概念が存在しない虹色の瞳を持つ月の主にて、非常識を蹂躙する理不尽たるこの男が、最愛の妻に会う唯一の方法。

 

 「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――――――!!!」

 

 これは、唯のありふれたifの物語。無限に存在する可能性の一つの、怪物が始まりの悲劇をしっちゃかめっちゃか荒らして回る、ただそれだけの物語。

 怪物とは、本来そういう存在なのだから。

 光が召喚陣から溢れ出し、同時に凄まじい魔力の奔流が流れる。

 

 

 「――――お久しさ、ジャンヌ」

 「――――えぇ、久しぶりです。アーク」

 

 

 その物語は、そんな気軽なやり取りから始まった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 「反則だろうて」

 「うるせェ」

 

 第四次聖杯戦争が行われる一ヶ月前。

 イギリスの時計塔。魔術協会総本山と言える場所のとある一室に、一人の老人と一人の青年がいた。

 

 老人の名は、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。

 

 第二の魔法使い。死徒二十七祖第四位。

 魔導元帥。宝石翁。万華鏡。カレイドスコープなど、様々な異名を持った、並行世界を旅する世界で現存する四人の魔法使いの一人が、魔術協会には秘密でそこにいた。

 

 しかしもう一人の青年も負けてはいない。

 

 ゼルレッチが滅ぼした、当時世界の頂点。

 「月世界の王」朱い月のブリュンスタッド――――その完全なる次世代機。

 現死徒二十七祖第三位、「タイプ・ムーン」「月のアリストテレス」。

 朱い月亡き後、月自らが生み出した世界最大のバグ。

 

 自称人類の隣人。原初の一(アルテミット・ワン)緋い月の(アークライト・)ブリュンスタッド。

 

 何故客観的人類の敵の頂点と、客観的魔術師の頂点が一同に会しているかというと、

 

 「まさかお主に令呪が宿るとは……此度で聖杯戦争は終わったな」

 「酷くないか?」

 「お主自分がどんな存在か判っとるのか?」

 「たこ焼き屋のアルバイター?」

 

 そんなことやってたのかオマエ、と裏を知る人間は勿論、同じ死徒二十七祖の第九位(アルトルージュ・ブリュンスタッド)でも卒倒する様な言動を取るアークライトの右手には、確かに月の形を模した令呪が刻まれていた。

 

 アークライトは、言ってしまえば星の触覚たる真祖の原型。

 神霊すらも屠れる文字通り化物。

 召喚された英霊を戦闘機に例えるなら、アークライトが聖杯戦争に参戦すると言うのは戦闘機同士の戦いにフリーダムガンダムをブチ込むに等しい暴挙なのである。

 

 何処に折角召喚した英霊より遥かに強い、天災とも呼べる存在を相手にしたい魔術師が居るのだ。

 

 「今年はおそらく60年周期故、詳しいことは解らぬがもうじき聖杯戦争が始まる。聖杯に望む願いがあるのなら、今から準備をしても良いだろう」

 「そうだな。魔法陣やら呪文やら用意しないといけないからな。そこいら全然分からんし」

 

 しかしアークライトには決定的に足りないものがある。

 知識が足りない。技術が足りない。技量が足りない。

 それらを補う為に、一体何をすれば良いのか。

 

 「――――というわけで、間桐家を乗っ取ります」

 

 そうだ、冬木行こう。

 

 数日後。聖杯戦争御三家の一角が、人知れず消滅した。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 もしも――――――。

 それは誰しも思うことである。

 一般人だろうと魔術師であろうと英霊であろうと化物であろうと。

 

 もしも聖杯が汚れなければ、聖杯戦争はここまで歪まなかったように。

 もしも衛宮切嗣が正義の味方を夢見なければ、そもそもアインツベルンに婿入りしなかったように。

 もしも言峰綺礼が人格破綻者でなければ、そもそも聖杯に選ばれなかったように。

 もしも遠坂時臣が魔術師らしくない人格であれば、あそこまで悲惨な最後にならなかったように。

 もしもウェイバー・ベルベットが聖遺物を盗まなかったら、征服王に導かれることがなかったように。

 もしも間桐雁夜が遠坂葵に惚れなければ、幸せな人生を送れたかもしれないのに。

 もしも雨生龍之介が殺人鬼で無ければ、何の罪もない子どもたちが無残に殺されることは無かったのに。

 

 これは、そんなありえないifの物語。 

 

 「ほう? 間桐に何用かな御じッ!?」

 「ハァイ。キモ過ぎなんで聖杯戦争とそれに関する魔術の知識をレポートに纏めてから死ね」

 

 間桐桜は十年間の苦しみに絶望することは無く、

 

 「ふむ、折角サーヴァントがこんなに集まってるんだ。ここ消し飛ばせば勝利確定じゃね?」

 「「「「「えっ」」」」」

 

 そもそも殺人鬼はただの殺人鬼で終わり、青髭のが召喚されることも無く、

 

 「言峰璃正。私は『裁定者(ルーラー)』として貴方を監督役に認めるわけにはいかない」

 

 言峰璃正は殺されることなく、自らの神に近い聖処女に裁かれ、

 

 「二度も言わんぞセイバー。お前の願いは現在を生きる一個の存在として、絶対に認めない」

 

 そしてセイバーは己の願望を否定される。

 

 「聖杯汚れてるんだ」

 「はい」

 「じゃ、壊そうか」

 「――――――はい」

 

 錬鉄の英雄は生まれない、五度目の戦争が起きないそんな物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *・゜゚・*:.。..。.:*・゜b(* ´∀`)d ウソです゚・*:.。..。.:*・゜゚・*

 

 




次回の更新は作品が出来次第となります。

つまり遅れます。ご容赦ください。
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