ある時、唐突に私の元に転がり込んで来た彼は、私に対して異常な迄の愛情を示してきた。
人を信用できず、陰気で、ただただ研究に打ち込んでいた私に、どうしてこんなに、と、何度も思った。
実際に、本人に訊ねた事もある。
どうして私を?なんの魅力も無いような、こんな私を愛しているんだ?と。
彼は何時でもこう答える。
「博士だからですよ。博士じゃないと駄目なんです。」
それを聞くと、私は更に訳が分からなくなる。
1+1=3でしょ?と、当然のように答えて来るような、そんな心持ちだ。
理解出来ないことを、私が間違っているかのように、笑みを浮かべている。
彼の態度や気持ちが、嘘ではないことは充分、今まで一緒に過ごしてきた中で分かった。
そして、私も彼の事が好きなのだろうと、何となく、ふわっとした感情ではあるのだが、分かって来た気がする。
私は他人と、普通の人間とは考え方や感性が違うと自覚している。
過去からか、それとも産まれた時からそうだったのかしれないが、兎に角、何処かズレている。
遠くの、見知らぬ人間を殺す為の人間を殺す為の兵器を造り、それを愛している。
普通に考えれば異常という他無いだろう。
私は異常だ。
そんな私を愛し、肯定する彼も、また異常なのだろう。
彼は私がまともに見える位には変人で、同居人からも対処を迫られる事がある。
が、変人と言えば、彼の周りに集まる人間も、変人が多いと言えるだろう。
特に、いつの間にかアジトに先回りし、身の回りの事をしてくれるメイド。
彼の知り合いらしいが、どうにも変態だ。
身の回りの世話をしてくれるのはありがたいし、気も利く。
私のような生活力の無い人間にとっては、救いの神のような存在だ。
しかしながら、後ろに忍び寄って来て体(主に尻か胸)を触ってきたり、突然露出してきたりするのは、流石は彼の従者だなぁ…と、何処か感心すら覚えてしまう。
このメイドの本命は彼のようだが、残酷な事に彼は私のものだ。
一生メイドの方を向くことは無いだろうし、私も向かせようとも思わない。
私は彼の事が好きだ。
どんなに酷い事をされても、変態的な事をされても、私は彼を嫌いになれない。
きっと私が死んで、来世があったとしても、それは同じだろう。
普段は同居人たちへの体裁やら、気恥しさやらで素直になってはいないが、まあ、偶に、今日くらいは良いだろう。
私は彼の事が好きだ。
彼、私の助手が。
「博士ー?博士ー?!…これ、どうぞ。今日はバレンタインですので。綺麗な薔薇でしょう?」
「…ありがとう。じゃあ、私からも受け取ってくれ。…不格好だが、食えん事は無いと思う。」
「チョコですか?…ああ、日本ではそういう日でしたね。えへへ、嬉しいです。」