その日の天気は曇り。
今でも覚えている程憂鬱な気分で、道端に座り込んで通り過ぎる車を見つめていた。
掃き溜めのような所から抜け出しても、その性質は大きくは変わらなかったようだ。
エンジンの音と、自分の心音が同じリズムに聞こえてくる。
心音を聞いていると、ふと空を見上げてみたくなった。
雲の間から覗く、その太陽は。
私には眩しすぎた。
ポケットに手を突っ込もうとして、そういえば今はスカートを履いていたな、と気がつく。
仕方なく、履いている靴に仕込まれた小刀を引き抜く。
刃だけなので持ち手はないが、側面を持てば切れない。
太陽が小刀に反射して、つい目を閉じてしまう。
眩しい。
眩しすぎる。
その眩しさに目を閉じていたら、いつの間にか死体と金は積み重なっていた。
決して、金の為に殺しをしていたのではない。
私は、太陽が眩しかったから、殺したのだ。
きっと、誰にも理解されない。
皆んなが皆んな、私の事を変態だと嗤うだろう。
理解している。
私は女性が大好きである。
女装癖は、愛から来ている。
好きなのだから、突然抱きしめたり、尻を揉んだり。
ごめんなさい、その後のことは。
眩しかったんだ。
太陽の眩しさを恐れて、私は夜に活動する事にしていた。
そんな時に出会ったのが、あの人だ。
金髪碧眼、そして美青年だ。
眩しいような爽やかさの奥には、ドス黒い闇が見える。
この人は、私が殺したい。
有り体に言うなら一目惚れだ。
今度は、眩しいから殺すのではない。
殺したいから殺すのだ。
初めて、自分の意思で殺そうと思った。
スカートの下から拳銃を取り出し、マガジンを入れる。
安全装置を外し照準を頭に合わせ、引き金に指をかける。
が、引き金を引くことはできない。
何故だ、と困惑しているこちらに、あの人はようやく気がつく。
拳銃を構える此方を見て、怯えもせず、逃げもせず。
ただ、微笑んでみせた。
手が震え、拳銃を取り落す。
私はあの人を殺したいが、私はあの人を殺せない。
連鎖する矛盾と、紅潮する頰。
固まっている私を見かねたのか、あの人は歩み寄ってくる。
「えっーと。…お友達から、でいいかな?」
呆れた。
どうも私は顔に出やすいようだ。
まだ告白すらしていないというのに、振られてしまった。
初恋で振られ、しかし、少し楽になった。
これて初恋じゃない。
もう一度、何度でも、この人に恋をしてみせる。
取り敢えず、友達、いや
「貴方の下で働かせてください。」
取り敢えず、メイドから。
「はは、うちには我儘な人が居るよ?…勿論、願ってもない申し出だね。」
これは振られなかった。
輝く太陽を掴むように、近づけば近づく程、燃えるよう。
今日も今日とて、太陽は眩しい。
博士と、あの人が居を移した場所に、見知らぬ人物が二人。
一人は中年。
多分諜報とかやってた。
もう一人は、美少女。
唆られる。
純粋無垢ながら、闇を抱えてる感じが堪らない。
あの人への欲情は博士にぶつけていたのだが、また良さそうな子が来た。
早速、唐突にモノでも見せつけに行こうかしら。
あの子は未だに私の事を女だと勘違いしているようだし、良い反応が得られそうだ。
私は往く。
今日も太陽は眩しいから。
変態女装メイドはどのようにして出来たのか。
変態女装メイドは恋心の夢を見るか?