星屑の狭間で   作:トーマス・ライカー

3 / 4
記者会見

ほぼ入れ替わりでエリック・カンデルがドアを開けた。

「・・おう、いたか・・準備は出来た・・行くぞ・・」

「・・分かりました・・」そう応えて、一緒に控室から出た・・。

廊下を少し歩いて、舞台の外(そで)に入る・・舞台の後方左側には、会議室にあるようなテーブルにパイプ椅子が三つ用意されている・・舞台の中央前面には、小振りな演台が据えられていた・・『・・発表会かよ・・』私は心中で独り言ちて、パイプ椅子に座った。

ホールの中は見えないが、大分騒めいているのは判る・・。

席に着いて2分ほどしてハーマン・パーカー常務が舞台外(そで)に入って来た。

私とエリック・カンデルは立ち上がったが、常務は座るように合図した・・笑顔を見せて頷いたので、私も会釈して座り直した・・。

「・・宜しくお願いします・・私は演台の方で・・」エリック・カンデルはそう告げて一礼すると、舞台に出て演台の前に立った・・数秒して、カーテンが左右に開き始めた。

凄まじいストロボの閃光が連続して浴びせられ、エリック・カンデルは思わず藪睨みになったが、何とかにこやかな笑顔を作る・・凄い・・カメラの砲列が幾つあるのか分からない・・60・・いや80はある・・ライヴカメラの数も凄い・・40はある・・・。

「・・こんにちは・・本日はお忙しい中、弊社にようこそおいで頂きました・・私は今回の会見で、司会を務めさせて頂きます、エリック・カンデルと申します・・宜しくお願い致します・・それでは、弊社常務取締役のハーマン・パーカー営業本部長より、概略を説明致します・・」

そう言ってエリック・カンデルは舞台の外に退がり、入れ替わりにハーマン・パーカー常務が演台の前に立った・・。

「・・皆さん、こんにちは・・ようこそおいで頂きました・・ハーマン・パーカーです・・今回は、弊社の営業社員が『サバイバル・スペースバトルシップ』の出場者募集に応募し、当選致しました事を受けての、会見であります・・それでは、本人を紹介する前に・・私から概略を申し上げます・・弊社営業第二課のルテナント・オフィサーであります・・アドル・エルク氏が当選致しました・・彼は現在38才で、弊社勤続17年になります、非常に有能・有力な戦力であります・・それでは、ここでご紹介しましょう・・アドル・エルク氏です・・」そう言って彼は私を見、左手を上げて舞台に出るよう私を招いた・・。

私は立ち上がり、居住まいを正して舞台に出た・・。

先程よりも遙かに激しい閃光の奔流が湧き起こった・・とても客席の方を見られない・・何とか演台に辿り着くと、パーカー常務の左隣に立つ・・常務も前方を見られないようだった・・左手で眼を庇うようにして待っていると、30秒ほどで落ち着いてきたので腕を降ろして真っ直ぐ前を見た・・・。

スチール・カメラマンとライヴ・カメラマンと記者の数が凄い・・数えられない・・・。エリック・カンデルが舞台の右端でハンド・マイクを持って立った・・・。

「・・それでは、ここからは質疑応答の時間とさせて頂きます・・質問のある方は、挙手をお願い致します・・・A7の方・・」

「・・セントラル・ニュース・ネットワークのルディ・ヴィーナーです・・先ず・・当選した事が判った時のお気持ちを教えて下さい・・・」

「・・それはもう・・驚きました・・まさか、当選するとは思っていませんでしたから・・・」

「・・どうして、この『サバイバル・スペースバトルシップ』に、応募しようと思ったのですか・・?・・」

「・・私は、このようなバーチャル体感システムでのゲーム大会が好きでして・・この3年間に開催された・・主だった大会には応募していたんですね・・勿論全部外れましたけど・・その流れで、この大会にも応募していました・・」

「・・はい! 次の方、どうぞ! B 12の方・・」

「・・グローバル・ニュース・ネットワークのスキート・オーティスです・・選ばれる艦種は、何にするのですか・・?・・」

「・・軽巡洋艦にしようと考えています・・」  「・・その理由は・・?・・」

「・・ヒット・アンド・アウェイで戦っていこうと考えているからです・・ゲーム・フィールドが、デブリや岩塊や障害物の多い空間として設定されているのも・・理由の一つです・・ヒット・アンド・アウェイで・・ゲリラ戦を展開する事にも・・なるだろうかとも思います・・・」   「・・はい! 次の方、どうぞ! C 27の方・・」

「・・ホット・ニュース・ステーションのモリー・ヴァッシーです・・応募されたことを、奥様には伝えていましたか・・?・・」

「・・いや・・この3年間・・色々な大会に応募していまして・・2年目ぐらいの頃までは・・伝えた事もありましたが、今回の大会については、伝えていませんでした・・・」

「・・当選された事を奥様に伝えられた時・・奥様は何と仰られましたか・・?・・」

「・・先ず・・応募した事を伝えていませんでしたので・・その事については、言われましたね・・あとは・・身体には気を付けて、無理にならない範囲でやって欲しい・・と言うような感じでしたね・・」  「・・はい! 次の方、どうぞ! D 11の方・・」

「・・ハイパー・ニュース・サービスのニコール・ユンジンです・・搭乗される艦のクルーとなるメンバーの選抜は、終わりましたか・・?・・」

「・・まだ、始めてもいません・・」

「・・運営サイドから、クルー候補者のリストは、送られましたか・・?・・」

「・・はい・・それは、届けられました・・」 「・・何人のリストでしたか・・?・・」

「・・500人ほどのリストでした・・」 「・・はい! 次の方、どうぞ! E 23の方・・」

「・・データ・ストリーム・ネットのマイロ・オーサーです・・パーカー常務にお訊きしますが・・今回、御社はアドル・エルク氏に対して・・どのようにサポートされるのでしょうか・・?・・」

「・・はい・・現状で、取敢えずと言う事にはなりますが・・番組の収録が祝・休日に行われる場合・・時間外勤務手当と出張手当と日当が付与されます・・平日に行われる場合にも出張手当と日当が付与されます・・就業時間終了後にも収録が続くようであれば、時間外勤務手当が付与されます・・無論交通費に於きましても・・事後にはなりますが・・弊社が負担します・・」

「・・御社の商品を・・アドル・エルク氏が番組の中でPRする、と言うような事も考えておられるのでしょうか・・?・・」

「・・誓って申し上げますが・・そのような下品な事は考えておりませんし・・今後も考えるような事は無いでしょう・・」 「・・はい! 次の方、どうぞ! F 31の方・・」

「・・ニュース・データ・ストリームのトレイシー・エイムスです・・クルー候補者となる女性芸能人リストが送られる前に・・運営サイドに対して何か条件は出されましたか・・?・・」

「・・はい・・二つだけ、伝えました・・35才以上の人はリストに含めないで欲しいと言う事と・・クルーの人事と艦内配置については艦長と艦内司令部の専任事項として欲しいと言う事でした・・・」「・・どうして、35才にラインを引かれたのですか・・?・・」

「・・私は・・同年代から年上の人に対して・・命令じみた物言いをするのが苦手なので・・・」

「・・女性は年下がお好み、と言う事ですか・・?・・」

「・・それは・・ご想像にお任せします・・・」

「・・はい! 次の方、どうぞ! G 43の方・・」

「・・ワールド・データ・ニュースのマシュー・キリアンです・・現状で決まっている日程について、教えて頂けますでしょうか・・?・・」

「・・今月の30日に・・土曜日ですが・・私が運営本部に出向きまして・・番組のプロデューサーやディレクターの方々との顔合わせと・・最初の基本的な打ち合わせを行います・・その後に撮影セットについてのレクチャーを受けて・・セットの見学をさせて貰える事になっています・・」

「・・それまでに、クルーの選抜は・・終わらせるのでしょうか・・?・・」

「・・まあ・・そう出来れば良いかなとは、思っています・・」

「・・はい! 次の方、どうぞ! H 57の方・・」

「・・セントラル・ネット・ストリームのカミール・キートンです・・参加されるに当たっての意気込みをお願いします・・」

「・・まあ・・初めて参加する大会ですので・・思い切り楽しみたいと思っています・・」

「・・勝算は・・どのように考えていますか・・?・・」

「・・そうですね・・無理はしないで・・熱くならないで・・その日その日を生き延びられるように・・頑張りたいと思います・・」

そこまで話したところで、ハーマン・パーカー常務が私とマイクの間に割って入った。

「・・はい、それではそろそろ質問も出尽くしたように見えますし・・まだ始まったばかりでもありますので・・今日の会見はこれで切り上げさせて頂きたいと思います・・ゲーム大会が実際に開始されれば・・また皆さんにお話できる事も・・判ってくるかとも思います・・ですので、それまで見守って頂ければ、幸甚に思います・・今日はお疲れ様でした・・お気を付けて、お帰り下さい・・昼食がまだでしたら、どうぞ、ラウンジにて召し上がって行って下さい・・どうも、ありがとうございました・・・」

そこまで言ってパーカー常務は私を誘って後ろに退がった・・直ぐにカーテンが左右から閉まり・・舞台と観客席とを隔てた・・観客席からは会見の続行を求める声が暫く聴こえていたが・・エリック・カンデルが宥めて誘う声が聴こえ始めると・・それも治まっていった・・。    「・・常務・・これで良かったんでしょうか・・?・・」

「・・はい? ええ、上出来ですよ・・マスコミ対応なんて、こんなものです・・お疲れ様でした、アドルさん・・良ければお昼を、フロア・ファースト・チーフもご一緒に如何ですか・・?・・」  「・・ありがとうございます・・ご一緒させて頂きます・・」

終ってみればあっと言う間だった・・こんなものかとも思った・・緊張が解けてほっとしたのと・・あっけに取られたような感覚を、同時に感じていた・・。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。