USJ各所に飛ばされた生徒たち。
多くの者が、各々の個性を最大限に使い多対一という危機的な状況を乗り越えていた。
移動して直ぐに敵たちを一瞬で氷漬けにし煽り文句と共に格の違いを見せつけた、推薦入学者で圧倒的な実力者の【轟焦凍】
山岳ゾーンでは、絶縁体シートを【八百万百】が創造し【上鳴電気】の個性で敵全体に放電した。
対人戦闘に於いて優位な個性を使い、倒壊ゾーンで確実に敵たちを倒した爆豪に切島。
水難ゾーンに於いては【緑谷出久】の機転により他2人の個性も十分に活用する事で、初戦闘にして初勝利を得る事が出来た。
そんな中で最も激戦、と言うより最早一方的なリンチの様相を呈しているのが広間だ。
単身で集団を相手にしてきたイレイザーヘッドにも疲れが見え始め、敵連合のリーダーである弔の個性【崩壊】をモロに貰う。
「動き回るので分かり辛いけど、髪が下がる瞬間がある。1アクション終える毎だ。そしてその間隔は段々短くなっている」
無理をするなよ、とイレイザーヘッドに呟く。イレイザーは敵の中でも特に危険そうな内の1人である目の前の男に、内心歯噛みした。
更に目の前の男の後ろには、明らかに人間離れした生命体と圧倒的に不気味な少女が居る。
正しく絶体絶命の危機。
そんな彼の心を見透かすように、弔はイレイザーヘッドに最悪の事実を突きつけた。
「ああ。そうだイレイザーヘッド。本命は俺だけじゃない、むしろ俺の後ろの奴らは俺より上ーお前如きの力では絶対に倒せない」
弔のその言葉に呼応するように。
後ろに控える脳無が動き出す。
個性を消す個性は確かに強力だが、素の力で人間離れしている脳無相手は無理な話だ。
攻撃を与える間もなく、脳無の有する圧倒的な超スピードと超パワーでイレイザーヘッドは一瞬にしてボロボロにされる。
「個性を消せる。素敵だけど何て事はないね。圧倒的な力の前ではただの無個性だもの」
イレイザーヘッドを見下す弔。
だが、都合の良い展開ばかりではない。個性を使い弔の近くに現れた黒霧は、生徒の1人に逃げられた事を静かに伝えた。
その報告に弔の機嫌が悪くなる。
「おい黒霧、お前油断し過ぎだよ。さすがに何十人ものプロ相手は骨が折れるだろうな。まあ良いあと暫くは暴れよう。残穢も暴れてないし、何よりオールマイトも来てないからな」
首をボリボリ掻きながら、呟いたその言葉は近くで聞いていた緑谷たちを絶望させるに十分だ。
この敵たちは、何十人ものプロ相手は骨が折れると言った。だが、それは決して勝てないと言っている訳ではないのである。
目の前で相澤がやられる姿を目の当たりにした彼らは、それを嫌と言う程理解した。
初戦闘にして初勝利。
彼らはチンピラ相手に勘違いしたのだ。
「そうだな。先ずは子供を何人か殺すか。平和の象徴なんてクソみたいな矜恃を圧し折ろう」
その言葉と共に放たれる悪意。
その悪意に当てられて呆然とする緑谷たちだが、彼らの妙に冷静な思考が自分たちは気づかれていて狙われているのだと答えを導く。
回避も防衛する間もなく。弔が個性を発動する為に【蛙吹梅雨】の顔に触れた。
死を覚悟する蛙吹。
しかし、その予想に反して何も起きない。
緑谷たちは、その理由を直ぐに理解出来ていないが弔は一瞬でそれを看破した。
「……本当にカッコイイぜイレイザーヘッド」
興が削がれたのか離れる弔。
緑谷たちは、目の前の敵の行動に安堵する。
そして、その瞬間USJに1人のプロヒーローが現れた。この国に於いて知らぬ者は居ない倒れぬ平和の象徴【オールマイト】だ。
彼は普段の笑顔とは違う。
珍しい憤怒の形相で敵たちを睨みつけた。
「もう大丈夫!私が来た」
その言葉は広間に居た生徒たちを安堵させる。
悪を倒す英雄の登場。この場の救世主。
弔はニヤリと狂気的な笑みを浮かべ、これまで傍観に徹していた残穢もまた静かに笑った。
◇◆◇◆
超スピードと超パワーによる一瞬の制圧と緑谷たちの救助。平和の象徴として容易くそれらを成し遂げたオールマイトは告げる。
「皆入口へ。相澤くんを頼んだ、意識がない!」
この場に於いて、緑谷たちは間違いなく力量不足で足でまとい。だが、出来る事がない訳では決してない。だからこそ、この危機的な状況を改善させるだけの最適解の指示を出す。
圧倒的なオールマイトの迫力。
決して感嘆する訳でもないが、敵からして見れば国家公認の暴力である彼の力に呆れてしまう。
だが、弔は冷静に観察する。
そして、1つの予想の正確さを確かめた。
「助けるついでに殴られた。……ハハ国家公認の暴力ださすがに速いや目で追えない。けれど思った程でもない。やはり先生の言っていた事は本当だったのかな、弱ってるって話」
緑谷が自身のフルパワーが効かなかった事をオールマイトに伝え焦るように心配する。しかし、オールマイトは笑顔で大丈夫と告げた。
「CAROLINA SMASH!」
駆け出すと、腕をクロスさせ脳無に攻撃を放つオールマイト。しかし、幾ら攻撃を加えようとも脳無は全くビクともしない。
その種明かしをする事もなく、笑みを浮かべてその様を観察する弔と残穢たち。
それでも何とか地面に脳無を突き立てる事で行動停止にさせようとするが、その行動を読んでいた黒霧の個性で逆に脳無に拘束される。
先程までオールマイトの強さに歓声を上げた生徒たちもその様を不安そうに見る。
緑谷は呆然とした。
「コンクリに深く突き立てて動きを封じる気だったか?それじゃ封じられないぜ?脳無はお前並みのパワーになっているんだから」
「目にも止まらぬ速度の貴方を拘束するのが脳無の役目。そして貴方の身体が半端に留まった状態でゲートを閉じ、貴方を引きちぎる」
此処に来て種明かしをする2人。
緑谷はその様を見て、最早躊躇は出来なかった。
駆け出す緑谷。しかし、黒霧は冷静だ。
ーその時。3人の生徒が場を変えた。
「どっけ邪魔だ!モヤモブが!」
「平和の象徴はてめェら如きに殺れねえよ」
「くっそ!いいとこねー!」
爆豪は黒霧の個性の弱点を突き止め、その観察眼と個性で黒霧を一瞬の内に拘束した。
躱されたものの、弔を攻撃する事に成功した切島にオールマイトが凍らないギリギリの調整をしながら脳無を凍らせる轟。
一瞬にして形勢逆転。
しかし、弔がイラつき黒霧が自身の詰めの甘さに悔しがる中でUSJに来てから全ての動きを静観していた残穢が遂に動き出した。
まるで、生徒たちもオールマイトでさえ有象無象だと言わんばかりに悠然と歩く残穢。
それを全員が警戒する中で彼女は笑う。
「やっぱり凄いな雄英高校は。皆優秀だし、それに皆綺麗でマトモな目をしてる」
だけどね、と加えて呟く残穢。
彼女からは、生徒たちは勿論オールマイトでさえAFO以来感じた事のない圧倒的な悪意ー負のエネルギーが放出された。
それを浴びるだけで、顔を青くし死を本当に初めて実感させられる生徒たち。
推薦入学者だろうが入試1位だろうが。
今直ぐに地面に手をつきたくなる。
「本当の絶望も本当の悲しみも知らないような子供に私をどうにか出来るとでも?黒霧くんから離れろ余り調子に乗るなよ子供たち」
最凶の怪物が動き出した。
幾つか新作書くので続き少し遅れます。エタらないので許して下さい。