グレン「同じくグレンだ。さて、今回も原作第1巻の話だな。」
アラン「あぁ。ここからちょっとづつだが前作と乖離する部分が出てくるから、そこも楽しんでくれると幸いだ。」
グレン「つってもそこまで大きく変わるのか?」
アラン「変わるとも。俺の過去とか、シロウのこととか、他にもいろいろ。」
グレン「へー。ま、そのへんは乞うご期待ってやつだな。」
アラン「そうだな。……おっと、そろそろ本編に行くとするか!」
グレン「おう!じゃ、第2話を」
「「どうぞ!」」
昼食が終わり、午後の授業が始まった。
だが、相も変わらずグレンは1時間どころか午後の授業を全て寝て過ごすんじゃないかと疑うほど爆睡していた。
さすがの俺でもこのままではやばいと思い、寝てるグレンに声をかけてみる。
「なあ先生。いい加減授業してくんねえか?流石にこのままだと次のテストとかやばいんだが。」
「へっ。知ったことかよ。どうせこんなろくでもないことしたって変わりゃしねえよ。そんなことより体でも動かせ。こんなことよりよっぽど有意義だぜ?」
「……まあ、そう言われちゃそうなんだが。」
俺はこの学園に通ってる割には魔術がそんなに好きではない。まあ嫌いではないのだが……どうにも苦手なのだ。
それは俺の魔術特性にも関係がある。
俺の魔術特性は「■■■■■の解析・改造」。何に対して効果を発揮するかも分からない上、仮に分かったとしてもどう考えても通常の魔術に合わないものなのだ。
魔術とは先人である魔術師達が何世代もの月日を欠けて完成させた術式であるので、下手に改造しようもんなら魔力の効率は落ちるわ威力は下がるわといいことなんて全くと言っていい程ない。
成功しさえすれば「固有魔術」として扱える程の規格外魔術なり得るのだが…………まぁ、普通はできない。
俺は「ちょっとした裏技」みたいなので一応固有魔術は持ってはいる。だが…………まぁ、あんまり使うことは無いだろうな。
話が逸れたが、ともかく俺の魔術特性は、魔術の特性なのに魔術に適してないという矛盾した性質のため、あまり魔術が上達しない。
どうにか初等魔術は習得したものの、それ以上はからっきしだ。
それに魔術を極めたからと言ってそれで食っていける確証がある訳でもない。
だが、それとこれとは話が別だ。なにせ単位が取れなくなる。
「でも最低限授業くらいはしてくれ。でないとわかんねえ。」
「……ったくしゃーねーな。授業してやるよ。みんな席つけ。」
みんながほっと息をつく音が聞こえる。
まあみんな不安だったんだろうな。
「では授業を始める。えーっとここか?」
授業が始まった。……始まったのだが、
「ここは〜まあこうじゃないかな?でここが多分こうで、んでもってこっちは恐らくこうだと思われる。」
………こんな感じでぐだぐだと教科書を読むだけという授業(笑)としか言えないようなものだった。
しかもわかりづらい。これなら自習してた方がマシだったわ…………
そんなこんなで1時間たち、最終授業終了のチャイムがなる。
「お〜っともうこんな時間か。では諸君、さらば!」
と言って颯爽と姿を消した。
「な、な………なんなのよアイツぅううううう!」
空っぽの教壇に向け、システィの魂からのツッコミが刺さった。
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「………あ〜もう!なんなのあいつ!どんな先生かと期待してみたらただのロクでなしじゃない!」
帰り道でシスティがそう言う。
魔術がそんなに好きじゃない俺でもちょっとイラッと来たくらいだ。
生粋の魔術師であり、メルガリアン──メルガリウスの天空城の秘密に焦がれる人種である彼女にとってはまさに腸が煮えくり返るほどの怒りであろう。
魔術を「そんなもの」呼ばわりしてたし。
「うーん。これはちょっとね。」
優しいルミアでさえこの反応と苦々しい顔だ。
明日教室でテロが起きても不思議じゃないくらいの不満をみんな持ってるだろう。
システィ「とにかく明日、ビシッと厳しく言ってやらなくちゃ!」
「おうおう!言ってやれ!」
そんな軽口を叩きあいながら歩いていると、朝待ち合わせをした広場に差し掛かった。
「んじゃ、俺こっちだから。」
「うん。また明日ね!」
「じゃあねアラン君、また明日!」
「おう。また明日。」
そう言って美少女2人と別れ、自分の家へと足を向ける。
しかしあれだな。システィは勿体ねえなぁ。
顔もスタイルもいいのに男ウケが悪いのは。
まあ俺からすれば見る目がないと思わざるを得ないのだが。
「しかし、グレン=レーダス。ねぇ………」
なんか頭の片隅に引っかかる名前だな。
どっかで聞いたことあるような気が…………
そんなことを考えながら歩いていたからだろうか。
前から飛んでくる槍──いや、これは剣か!?
気づくのが遅れてしまったがこれはまずい!
「ッ!」
慌てて横に飛んで回避する。
すると前から強烈な殺気が飛んできていることに今更気がついた。
こんな殺気に気が付かなかったなんて、俺もまだまだ鍛錬が足りんということか。
「【投影】!」
遅れを取ってしまったが、手元に赤き槍『ゲイ・ボルグ』を投影させながら、引き続き飛んでくる矢を躱す。
ゲイ・ボルグから『記憶』を引っ張りだそうかとも思ったが、その場しのぎにしかならないと判断し、断念。
代わりにお返しとばかりにゲイ・ボルグを矢が飛んできた方に投げるが、当たった感触はない。
次の矢に用心しながらも、次は接近されてもいいように刃を付与した弓を投影する。
「さあ、どっからでもかかって来やがれ!」
威勢よく放った声を聞いたのか、男が思いっきり切りかかってきた。
その男は赤いコートを身に纏い、手に双剣を持っていた。
というか案の定シロウだった。
そりゃまぁこんな場所で切りかかってくるクレイジーな野郎はシロウくらいしかいないしな。
「ふむ。腕は鈍っていないようだ。それどころか上達したか。鍛錬は怠っていないようでなによりだ。しかし、最後のは頂けないな。大声を出すのは悪手だ。」
「ご助言どうも。にしても、もうちょっとマシな確かめ方はないのか?」
「すまないがこれ以外思いつかん。それに、これが1番手っ取り早かろう?」
「まあな。」
「だろ?さ、帰るぞ。アラン。」
「はいよ。」
お互い投影してた武器を消し、家路につく。
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「そういえば今日非常勤講師が来たんだが、凄いやつだったぞ。」
夕食が終わってゆっくりしていたシロウにそう切り出すアラン。
食後の紅茶をすすっていたシロウはカップを置き、水面を少し見つめてから答えた。
「知っているぞ。グレン=レーダスだろう?」
「なんだ、知ってたのか。知り合い?」
「知り合い………というか、元同僚だ。軍属時代のな。」
「へぇー……って、すごい経歴だな。そんな凄そうには見えなかったぞ?」
「だろうな。なにせアイツは軍属時代から魔術の腕はさっぱりだったし。」
「そうなのか?」
「あぁ。だが、アイツは魔術に対する造詣は人一倍凄い 。明日聞いてみるといいさ。」
「了解。っと、宿題しなきゃな。んじゃ、おやすみ。シロウ。」
「あぁ。おやすみ、アラン。」
アランが姿を消した後、シロウは呟く。
「全く。本当にアイツは変わらんな。」
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次の日学校へ行っても、グレンの態度は変わらなかった。
それどころか日に日に悪化し、最近では教科書を日曜大工よろしく黒板に打ち付けている。
そんなグレンについに堪忍袋の緒が切れたシスティがグレンに決闘を申し込んだ。
「……お前、正気か?」
「ええ。その代わり、私が勝ったら今までの態度を改め、真面目に取り組んでもらいます。」
「全く……。こんな決闘なんざ持ちかける骨董品がまだ残ってたなんてな……。いいぜ。受けてやる。後悔すんなよ?」
そんなこんなで全員中庭に移動し、システィとグレンの勝負を見守った。
……のだが。
「【雷精の紫電よ】──!」
「ぎゃぁあああ!」
始終こんな感じで終わった。
しかもグレンは負けたのにも関わらずあろうことか約束を反故にしたのだ。
これにはシスティの怒りが大爆発。
またもや口論をしながら本日の授業も終わった。
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次の日も、そのまた次の日も全く態度を改めないグレン。
だが一応学校には来るし、授業をする。
ここ最近ではもうグレンに対する信頼は0に近く、みんな思い思いに自習をしている。
そんななかでもグレンに質問に行くリン。
そんな生徒に対するグレンの返答は
「これ、辞書な?これで調べろ。」
簡潔に言うとこんな感じの塩対応。
「こいつに何聞いても一緒よ。こいつは魔術の崇高さを全く理解してないもの。それどころか馬鹿にしてるわ。さ、一緒に勉強しましょ?」
もはやシスティでさえこんな対応。
「全員に諦められてる」。これがグレンの現状だ。
そんなグレンだが、いつもなら「へいへい。」と言わんばかりにスルーし、ふて寝しているはずの発言。
だが今日に限っては、なぜかスルーしなかった。
「魔術って、そんなに偉大なもんかね?」
教室が凍りついた。
「え……?」
流石に困惑するシスティ。
そんなシスティの態度なんて意に介さず、言葉を続ける。
「この世で術と付くものは必ずと言っていいほど人の役に立ってる。医術がなければ大勢人が死ぬ。農耕技術があるから作物は育つ。冶金術があるから包丁やらが作れる。だがどうだ?魔術はなんの役に立ってる?」
「そ、それは……。」
「あー皆まで言うな。わかってるよ。魔術はとっても役に立ってる。」
そう言うと、グレンは口を釣り上げ、どこか自嘲気味に言葉を紡ぐ。
「『人殺しの道具』としてな。」
その瞬間、時間が止まったような気がした。
「普通の兵士が10人殺すあいだに、魔術師は100人殺せる。大勢の兵士をいっせいに焼き払うことも出来る。ほら?役に立ってるだろ?」
「そ、そんなこと………!」
「反論できるか?できないよな?しかもその恩恵は自分にしか帰ってこない。だったらそんなもんはただの趣味だ。ただの自己満足でしかない。」
言い返せない悪魔の証明のような言葉が続く。
確かに、その主張は間違ってはいない。
魔術とは表裏一体であり、力そのものだ。使い方によっては、万物に対して牙をむく。
だが、それだけではないのも事実だ。
「おい、その辺にしといてくれないか?」
「いーや。言わせてもらうね。過去の戦争でも魔術は大活躍したさ。大勢の兵士を殺す意味でな。ほらみろ。魔術なんてろくなもんじゃ……」
俺の静止を振り切り、言い続ける。
だが、そこまでいったグレンはようやく気づく。
目の前の少女が目に涙を浮かべ、必死に睨んでいることに。
「ま、魔術はそんなもんじゃ……ない……」
消え入りそうな声でグレンに意見していることに。
「なんで……そんなことばっかり言うの……。あんたなんて……大っ嫌いよ………!」
そう言って勢いよく教室を出て行くシスティ。
「シ、システィ!」
慌ててそれを追いかけるルミア。
「………チッ………。」
重苦しくなった教室の雰囲気に舌打ちをするグレン。
重苦しい空気の中なった終了のチャイムは、いつもよりも大きく、寂しげに聞こえた。
──────────────────────
「はぁ……。なんだかなぁ………。」
ため息をつきながら1人帰り道を行く。
クラスの雰囲気が重苦しいわシスティもルミアもいないわで結局1人で帰るハメになってしまった。
「グレン探したけどいなかったし……。そのせいで遅くなったし。全く………。ん?あれは。」
愚痴を零しながら歩く道の先に、二人分の影が見えた。
「ルミアにグレンか。」
なぜ一緒なのかは分からないが、グレンに用があったのだ。丁度いい。
広場でルミアと別れたグレンに声をかける。
「うっす。先生。」
「なんだ。今度はお前か?今回は蹴ったりしないよな?あれ痛いんだぞ?」
「知ってますよ。今日は別件です。」
「あぁ?なんだよ急に敬語なんざ使って。金なら貸さねえぞ?俺もピンチなんだ。」
俺の真剣さを茶化すように話すグレン。
「用事って言うのは……真偽を確かめに来ました。グレン先生。いや、『愚者』さん。」
グレンの纏う雰囲気が氷のように冷たくなった。
「てめえ……。なんでそれを知ってる。」
「簡単なことですよ。覚えてますか?あの組織であった実験のこと。」
「…………。ってことはあれか。お前、『弓兵
』の坊主かよ。」
「やっぱり間違いなかったか。………なぁ、ちょっと昔話をしてもいいか?」
「ああ。聞いてやるよ。聞いてやるが…………条件がある。」
「なんです?条件って。」
「………アイツに。シロウにも会わしてくれや。」
自らの過去を語るため、グレンを家に招くアラン。
シロウと対面したグレンは懐かしさに身を置きながらも、アランの過去について詳しく知ることになる。
アランの過去とは一体?
そしてアランの名にある秘密とは?
次回、ロクでなし魔術講師と投影者、第3話。「過去の記録」。
次回をお楽しみに!