グレン「令和初投稿にしちゃ結構重い話だが…………いいのか?」
アラン「それに関しては作者からプラカードを預かってる。えーなになに?『本当は明るい話の方がいいのは分かってたが………話の流れ上仕方がなかった。申し訳ない。』だってよ。」
グレン「まぁ、投稿遅いせいでこの時期に被っちまってるわけだし。完全に自業自得だがな。」
作者「非常に申し訳ない。できるだけ早い更新を心がけて行きますので、よろしくお願いします。」
アラン「急に出るなよ作者……。まぁいいや。さて、若干重めの第3話、『過去の記録』。」
「「「どうぞ!」」」
「着いたぞ。ここが俺んちだ。」
「へぇ〜。『Cafe アイアス』か。小洒落た店構えてんな、アイツ。」
お似合いっちゃお似合いだな、と零すグレンを後目に、ドアを開く。
チャリン、という軽やかな鈴の音と共に空いたドアの近くに、シロウが立っていた。片手に布を持っている辺り、恐らく窓拭きでもやっていたんだろう。
「おかえり。アラ……ン…………」
シロウはたっぷり5秒ほどこっちを見て硬直し、はぁっと大きなため息を吐く。そして、忌々しげに俺の後ろのグレンを睨むように見遣り、毒を吐く。
「アラン。家じゃそんな大きなバカ犬は飼えん。さっさと捨ててこい。」
「おいコラてめぇ。それが久々に会った奴に対する態度かよ?」
「冗談だ。で、なんの用だ?用がないなら帰りたまえ。」
「ったく。相変わらず口の悪い野郎だぜ。」
「それはお互い様だろう?」
互いに数秒睨み合い、ふっと笑う。
数年来の邂逅だったが、どうやら上手くやれたようだ。
「で、本当に何の用だ?まさか、お前ともあろうものがわざわざ俺の顔を拝みに来たわけでもあるまい?」
「誰がお前のしかめっ面見るために来るかよ。コイツに言われたんだよ。過去の話がしたいって。」
そう言い、俺の肩を叩くグレン。
怪訝そうに見るシロウを見て、俺も覚悟を決める。
……俺も理由を話さなきゃいけないな。
「だってシロウ、俺にまだ教えてくれてないじゃん。あの事件で何があったとか。」
ビシリ。と、空間にヒビが入ったような錯覚を覚える。
そして様々な感情がないまぜになった表情をシロウは浮かべる。
「…………話せる部分は話したじゃないか。」
「でも、全部じゃないだろ?」
俺の言葉を聞いたシロウはバツの悪そうな表情を浮かべた後、苦しげに続ける。
「それはお前がまだ小さかったから……」
「じゃあ今ならいいいな?」
「…………………………………」
シロウは黙り込む。
そして、頭を抑えて悩んだ。
やがてひとつ深呼吸をし、何かを決意したように言う。
「本当にいいんだな?」
「あぁ。勿論だ。」
「…………良いだろう。資料をとってくるから居間で待っておけ。グレンもな。」
覚悟を決め、2階へと上がって行くシロウを見送り、グレンと2人で居間に移動する。
俺がお茶を準備しながら、グレンに謝る。
「…………すみません。先生。俺の勝手に巻き込んじゃって。」
「別に構いやしねぇよ。あと今更敬語使わんでいいぞ?俺は気にしねぇし。」
「………あぁ。すまんな。」
「気にすんな。それに、俺もお前の過去には興味があるしな。」
どこか暗い目をしたグレンは、真っ直ぐ前を見つめる。いや、目線こそ前を向いているが、何処を見ているという訳でもない。何か、ここではないどこかをみている様な…………
「待たせたな。」
グレンの目線について考えていると、シロウが分厚い封筒を持ってきた。仕方ないので思考を中断し、シロウへ向き直る。
「まずお前の過去について、単刀直入に言おう。お前は───────────
人間じゃない。」
グレンはかなり驚いたようだが、俺は知っていたため、ショックを受けただけだった。いや、結構ダメージ入ってるな。
多分、普段から周りのシスティやルミア達のような「普通の人間」と一緒に生活しているから、改めて突きつけられた現実に理解はできても感情が追いつかないのだろう。
「お前の正体は人間ではなく、人造人間。平たくいえば、ホムンクルスの様な物だ。」
「ちょ、ちょっと待て。コイツがホムンクルスだって!?ありえねぇだろ!?」
「あぁ。普通に考えれば『こんなホムンクルスはありえない。』あくまで、普通に考えれば。だがな。」
1口紅茶を飲み、舌を湿らせてから更に事実を告げる。
「だが、アランを作った組織は、あの『天の知恵研究会』だ。」
天の知恵研究会。それはこの国に古くから存在する組織であり、魔術を使って色々悪いことをやってるクソ組織のことだ。
グレンやシロウ、そしてアルフォネア先生がかつて所属していた宮廷魔術団はそいつらとも戦っていたため、なにかと縁の切れない組織でもある。
「あのクソッタレ組織かよ………!考えるのも癪だが、アイツらなら造れても可笑しくねぇ。」
「あぁ。そして、その同機だが…………これはアランにも話してない。覚悟はいいか?」
「………あぁ。」
ふぅっともう一度息を吐き、シロウはとんでもない事実を告げた。
「アランの身体は『聖杯の欠片』が入っている。有り体にいえば、『器』としての機能を有しているんだ。」
「「………………は?」」
ハンマーでぶん殴られたような衝撃が頭を襲う。
「俺が…………器?」
「そうだ。」
鷹揚に頷くシロウは、俺に更なるショックを与える。
「器として作られたアランには、本来なら『魂を喰らう』性質があるはずだったんだ。最も、アランは所謂『失敗作』だったらしいがね。」
そう言って、封筒から一札の資料を出す。
目を通すと、そこにはとんでもないことが書かれていた。
「『Project;Grail&Servant』(英雄召喚)………だって………?」
「か、『過去の英雄をそのまま現代へ蘇らせる術式』……だと!?」
「嘘だろ!?もしそんなことが可能なら………!」
「あぁ。天の知恵研究会に英雄がぞろぞろと連なるだろうな。」
「なんでこんなことを今まで黙ってたんだよ!」
グレンはシロウの胸元をつかみ、捻りあげる。
しかし、シロウは余裕の表情を崩さない。
「落ち着け。よく資料を読んでみろ。」
読んで書いてあることを要約すると、どうやら俺は本当に失敗作らしい。というか、『放棄せざるを得なかった完成品』と言った方が近いかもしれない。
完成目前だったらしい俺の体に自我、つまり今の俺の意識が芽生え、反逆。そのまま逃げ出したらしい。…………記憶にはないが。
んで、結果的に意識が芽生えるという結論に至って欠陥が発覚。そのままプロジェクトは凍結、ってなったってことらしい。
「とすると、俺に子供の頃の記憶が無いのも?」
「恐らく、作られた存在だからだろうな。」
「名前んとこの空白は?」
「実験中に呼ばれていた名前、もしくは素体の元となった遺伝子の人物の名残だろうな。」
「…………そうか。」
正直いって、いい気分はしない。
俺が造られた存在だとかそんなのはどうだっていい。
だが人間としてではなくモノとして、しかも他人の犠牲となることを前提に造られた『死体』だと言うことだけは、どうしても容認できない。
「………大丈夫か?アラン。顔色が悪いが。」
「あ、あぁ。確かにショックだったが…………ま、大丈夫だ。」
まだいやーな気持ちは残っちゃいるが………まぁ、問題ないだろう。
それに、シロウは俺の過去を知りながら普通に接してくれた。それだけで充分だ。…………恥ずかしいから口に出しては言わねぇけど。
「俺の過去はだいたいわかった。サンキューなシロウ。話してくれて。」
「…………………いや、礼には及ばないさ。俺もそろそろ話しておいた方がいいと思っていたところだったしな。ちょうどよかった。」
「そっか。」
「あぁ。よし。そろそろご飯にするとしよう。グレンもせっかくだし食べて行くといい。」
「あぁ。そうさせてもらうわ。」
こうして俺の過去を知れたし、グレンとも仲良くなれた。めでたしめでたし、だな!
───────────────────────
その夜。
グレンとシロウは酒を飲みかわしていた。
アランは既に就寝しており、この家で発せられた音はグレンとシロウ2人だけのものだった。
「なんだよ、珍しいな。お前から酒に誘うなんて。」
「いや、ちょっと、な。」
どうにも歯切れの悪いシロウ。
軍属時代にもあまり見せなかったような態度に痺れを切らしたグレンは、核心を付く問を投げる。
「アランのことか?」
「………………あぁ。」
「やっぱりな。お前のことだ。変になんか隠してると思ってたぜ。んで、何を隠してたんだ?」
「…………これだ。」
そう言うと、懐から1枚の写真の様なものを取り出す。
写真には紋様のようなものが白黒で描かれており、まるでレントゲンのようにも見えた。
「これは………『』か?」
セラフィスマップ。それは、人なら誰しも持っている「魂紋」を形として表した図のことだ。
個人個人によって当然魂紋は違うので、パッと見て一概に違和感があるとは言えない代物だ。
だが、アランの魂紋は明らかに『異常』だった。
「な、なんだこりゃ!?魂が……………魂が半分ねぇじゃねぇか!!」
そう。アランのセラフィスマップは半分が真っ黒に塗りつぶされたように何も無かったのだ。
人によってパターンが違うといえど、半分しかない状態では本来、人は生きていけるはずがない。
「違う。半分しかない訳では無いんだ。正確に言えば、『半分に押し込められている』んだ。」
「なんでだ!?なんでこんなことに!?」
「わからん。だが、アイツは元々『器』として作られている。だったら……………」
「まさか!あのスペースは『別人の魂を入れる場所』か!?」
「断定はできんがな。その可能性も有り得る。なにせ資料にも何も書いてなかったからな。」
「………成程な。それでアランには言いたくなかったって訳か。」
「そういうことだ。だが、お前ならば話してもいいと思ったのでな。」
「へっ、随分と信頼されてるようだな。」
「まぁな。お前なら信頼してアランを預けられる。」
「………あーもう。なんか調子狂うな。」
皮肉を素直な感情で返され、気恥しさを覚えたグレンはそっぽを向き、一気に酒を煽って顔の赤さを誤魔化す。
その様子を可笑しそうに見ながら酒を飲み終わり、シロウはグレンに釘を刺す。
「だが、気をつけてくれ。お前は昔からトラブルに巻き込まれやすいからな。お前のことだ。万が一にもないとは思うが………」
「わーってるよ。一々言わなくてもいいっつうの。」
「そうか。それならよかった。」
しばし無言で酒を飲む時間が続く。
「じゃ、俺帰るわ。明日も仕事だからな。」
「あぁ。それではな。グレン。」
「あぁ。」
やがて2人で1本の酒瓶を空けた後、グレンは別れを告げて家へと帰った。
「はぁ………。酒のせいか。随分と俺らしくないことをしてしまったな。」
シロウは空っぽの酒瓶とグラスを片付け、眠りに着く前に空を見上げる。今宵は何の因果か月は半分欠けており、もう半分は闇夜に隠れてしまっていた。
満月には力が宿ると言われている。果たしてアランという半月が満月になった時、どうなるのか。
そんなことを考えてしまった思考を振り払い、床へ着く。
居間に残されたのは僅かな酒の匂いと、半月の照らす弱々しげな月光だけだった。
若干の疑念を残しながらも過去を知ったアランとグレン。
秘密の過去を共有したことで親睦を深め、信頼しうる間柄になったことがきっかけか、講師としての手腕を遺憾無く発揮するようになったグレン。
順調に回り始めた彼らの日常だったが、そこに忍び寄る不穏な影が………!
次回、「ロクでなし魔術講師と投影者;Remake」、第4話。『覚醒!の講師』
次回の更新をお楽しみに!