私たちは夢と同じもので形作られている   作:にえる

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にえるってハンドルネームも飽きたのでかっこ可愛い感じにしようかなって思うんですよ。

まず第一候補がシャンチーが好きなんで龍にしようかな。

でも龍っていっぱいいるからなぁ。

せや、カタカナにすればええやん!

でもなあ……というわけで第二候補が可愛い感じがいいので、マーベルキャラとも戦ったことのあるさくらもいいなって思いました。

でもさくらっていっぱいいるからなぁ。

せや、感じにすればええやん!

でもなあ……そうか!

合体させればええんか!

ワイは今日からドラゴン桜や!

おまえらを東大に入れてやる!


アベンジャーズ7

 

 --16

 

「どうした? 調子が悪そうだぞ。そこで横にでもなったらどうだ。素直なことがお前たちの美徳だろう?」

 

 ひどく心配そうにロキが言った。

 わざとらしさに溢れた、”らしい”セリフだ。

 答えずに、どちらが優勢かわかりきっているボードゲームを指差す。

 ガラスの檻の中、ロキは大げさに肩を竦めた。

 

「最近わかったことだが、お前はこういった”お遊び”が得意のようだ。宇宙は広い。当然、小さな駒を動かすのが得意な猿だっているに決まってる。なあ、尋問官?」

 

「猿よりも駒を動かすのが下手な神だから小さな虫かごがちょうどいい、と。だからそこにいるわけだ。キッドロキは身の程がわかってるなぁ」

 

 俺が望み通り返事してやればロキが舌打ちし、小さく呟いた。

 その声を認識して、自動でボード上の駒が動く。

 頭がずきずきと少しだけ痛む。

 気分がどことなく悪かった。

 

「ミッドガルドの連中も神による支配を求めているとは思わないか。この駒たちのようにちっぽけでか弱い生き物たちも、統制すればまともに動けるに違いないぞ。お前たちのように勝手に動くとどうなる? 盤上の遊技ですらもその秩序を失う。いいか? 導かれなければ、この小さな盤上ですら整わない。もっと広い世界でお前たちが動くだけで秩序が乱れていく。駒が正しく動くから遊技足りえるのに、予期せぬ事態が起きてしまう。だが、下らないお遊びを前提にすると、神である私と、ただの人間をまるで平等のように扱う。不思議じゃないか? 何も変わっていないのに、お前たちは私を人間のように扱う」

 

 ロキの瞳は盤上を見ていなかった。

 俺を一瞥し、そしてその後ろに視線を向けた。

 

「秩序を率先して乱しておいて呆れるような言い分ね。貴方が盤上を乱さなかったらこんなことになっていないのよ」

 

 その声にしてハッとして振り向く。

 ロマノフさんが”虫かご”のコンソール近くに立っていた。

 交代を知らせに来たようだ。

 全然気づかなかった。

 気配というか、存在感というか、そういうのを消すのが上手な人だが、それでもここまで近づかれても全く気付かないというのは俺の方に問題がある。

 ロキの言うことを認めるのは癪だが、確かに調子が悪い。

 イライラするし、時間の感覚も妙だ。

 

「私は神だ。盤上であろうと、秩序(ルール)が決められていようと、好きに手を加えても許される。だが、困ったことにオーディンも兄上も、たとえ脳まで筋肉の馬鹿でも、一応は神だ。互いに無法を貫くと遊技盤が壊れてしまうから、私は指し手として座ることにした。兄上も含めてお前たちは”素直”だ、勝手に礼儀正しく対面に座ろうとするだろう? 私も動きを縛られたが、お前たちも縛られている。さて、倒すべき敵の守りが固く、厄介な状況をどうするか。私は考えたよ。どうするかわかるか?」

 

 「そういう場合はな、尋問官」と続けた。

 その言葉を発するロキの表情は真に迫っていて、遊びは無い。

 

「邪魔な駒を近づけないのが重要だ。動きを乱し、正しく統率できなくすることも。つまり、簡単なことだが私の杖で邪魔するだけで良かった。バートンは教えてくれたぞ。尋問官の『頭』が苦手な物を。あの『杖』は特別だ、お前のちょっとした障壁程度で防げるものではないと思っていたが……その様子だと私の虫除けは上手くいったようだ。近づけなかっただろう? だからここに逃げてきていた。どうだ、お前も入るか? この虫かごに」

 

 ゲームがまだ途中だが、ここで構っている場合じゃない。ロキの言葉を無視して立ち上がる。

 状況の変化を察したロマノフさんがすぐ傍まで来ていた。

 部屋を出るべきか、留まるべきか。

 出るにしても、『杖』のある部屋に行くのは正しいのか。

 ロキの性格からしてどっちを選ぶにしても何らかの罠を張っているに違いない。

 情報を引き出すのが上手いロマノフさんに役割を替わってもらい、手数が多く艦内での作業に対応できる俺が動くことにする。

 余裕がなくなってつい走り出しそうになったが、それだと礼を欠いている。

 ちょっと落ち着くべきだ。

 

「悪いけど長考させてもらうよ、ロキ。……盤面が難しくなってきた」

 

「構わないとも。悩み苦しむ姿を見守るのも神という物だ」

 

 平静を装いながら声を掛ければ、ロキは余裕綽々といった態度で両手を出口に向けて差し出した。

 そのロキに向けて「趣味が悪い……」と呟くロマノフさんを見ながら背中のドクター・オクトパスを起動させる。

 俺が一生懸命走るよりも、技術に頼ったほうが速い。

 問題は軽く修理できたけど万全じゃないってことだろうか。

 

「私からの気まぐれな助言だが、『杖』を追いかけたほうがいいんじゃないか。暴力に背を向け、祈るように走って。それが人間というものだぞ。その後はまた一緒にゲームしようじゃないか。なあ、尋問官。……終わった後に、だが」

 

「神託どうも。ゲームにわざと負けて油断を誘うなんて、流石は悪戯の神だ。そこだけは認めるよ」

 

「……そりゃどうも」

 

「また後でゲームしよう。もちろん俺が優勢の。……ロマノフさん、すみませんが代わりをお願いしますね」

 

「……尋問官、命が惜しければ、栄達したければ降参して私の軍門に下れ」

 

「……科学は生きてる人のためにあるんだよ、ロキ」

 

 ロマノフさんに一声かけ、天井や床に『義手』が爪を立てる。

 艦内が傷つくが、悠長に構えている余裕も無さそうだ。

 最大まで伸び切った『義手』に引っ張られることで俺自身も移動する。

 『杖』のあるラボに向かうべきか、艦橋で情報を集めるべきか。

 

 

 

 

 

 艦橋で艦内システムをフル稼働させ、潜伏している敵がいないかを虱潰しに探す。

 途中までラボに向かっていたんだが、ロマノフさんから『ロキの狙いはバナー博士よ!』って通信が入って目的地を変更した。

 博士はラボにいるが、トニーを含めた他のメンバーも集まっていたので守りを固める必要性は薄い。

 それよりも内部を洗うため、マリア・ヒル副長官に許可を取ったけど、ずっと睨まれているので肩身が狭い。

 みんなが作業している中に飛び込んで「特に根拠はないが長官用コンソールを使う! 抗議は全部ハゲにしてくれ!」って勢いで乗り込んだから仕方ないね。

 艦内に妙な動きをしている動態反応は見つからなかったし、隠れている何かも無さそうだ。

 

「副長官、格納庫の整理整頓はちゃんとやったほうがよろしいかと。これだと足を引っかけるだけで爆発しそうですよ」

 

「急な作戦行動だったから、積み込みを優先しただけ。これから整理を……」

 

 ヒル副長官が言い切る前に、艦橋が激しく揺れた。

 咄嗟にドクター・オクトパスが補助してくれたので転倒せずに済んだ。

 『義手』の一本に支えられていた副長官が迅速に動き始めるので、俺も補助に徹する。

 

「誰が足を引っかけたのかわかる!?」

 

「ロキのお友達ですね! ベイマックスは怪我人の治療! さっきのサーチ結果で人のいる場所をマッピングしてあるから火元の近くを優先的に頼んだ!」

 

 静かに待機していたベイマックスに声をかけ、コンソールを操作しながら見送る。

 外部からの攻撃によって第3エンジンが停止している。

 ヘリキャリアは4基あるエンジンによって飛行しており、1基だけなら浮上も可能だが、他が止まれば落下は免れない。

 

「エンジンの修理が必要です。こちらからはこの場に都合よく留まっていたエージェントを向かわせます。……ええ、はい。……スーツを着たスタークが向かうから、補助をお願い」

 

 ハゲと通信を始めた副長官が俺を見ながら言う。

 そのエージェントって俺だよね。

 そうだよね。

 作業中に落下しない?

 自慢じゃないけど俺って結構落ちやすいんだよ。

 ジェスチャーで了解を示し、慌ただしく動き始めた艦橋を後にした。

 

 

 

 引き受けといていうのもあれだけど高所作業とかマジで無理なんだが、と思いながら艦内を駆けていく。

 ドローンの数が十分にあれば作業を任せられるのに、もうほとんどない。

 ベイマックスに権限を与えたので、怪我人を運ぶタンカーの代わりにでもするだろう。

 トニーがエンジン周りを直すだろうし、俺は補助に徹すればそれほど時間も掛からないで済むんじゃないか。

 復旧した後は洗脳を解いて……。

 

 頭の中で今後の展開を考えていると、騒がしさが増したのを察知した。

 攻撃されてざわついていたのは確かだが、それだけではなく逃げている感じというか。

 少し戻れば艦橋だからな、敵が攻めてきたのだろう。

 銃程度なら半壊に近いドクター・オクトパスでも対処可能だ、弾丸を勝手に受け止めてくれる。

 謎の魔法攻撃とか凄まじい電気を纏った鞭、パワードスーツは無理。

 自動的に高速で飛来する物体を掴む設定にする。

 ロキが来た時に地下でやったアレだ。

 どや顔で弾丸を受け止めて心理的にマウントを取っていける。

 さて、そろそろ来る頃……いや、敵にしては無茶苦茶速いのでは?

 

「はぁ!?」

 

 通路の奥からハンマーが飛んできたが、銃を持った人間を想定していたので反応が遅れた。

 俺が出来たのは「はぁ!?」という一言を発するだけだった。

 つまり、飛んできた物体を掴む設定を解除できなかった。

 なんとか腹部への直撃を『義手』が防いでくれたが、そのまま「ほわああああぁぁぁぁぁ^q^」と叫びながらハンマーに空輸される俺。

 そういえば会議の際、艦橋の空いているスペースにソーがハンマーを吊るしていたが、今さら俺を轢いたのだろう。

 

 豪快に争い合う音が響き、その後に獣の咆哮が続く。

 急速に音に近づいていた。

 積まれていた資材を背部で発生している微弱な重力と『義手』で必死に捌く。

 どや顔で片腕をこちらに向けていたソーの表情が凍り付く。

 あ、これは軽い交通事故ですね……。

 俺とソー、二人のハンマーによる出会いの一幕の結果、衝突で互いに大きく吹っ飛びゴロゴロと格納庫を転がることとなった。

 ハルクが咆哮とともに殴り、床を貫いた。

 それはソーが居た場所だった。

 

「俺のおかげで間一髪、といったところでしたね!」

 

「お前が居なければやり返せていたんだが!」

 

「俺もハンマーが飛んでこなかったらエンジンの修理に行けたんですけど!」

 

「それはすまん! だが神は気まぐれだからな!」

 

「じゃあソーのせいじゃん! 『腕』も一本取れたし!」

 

「それもすまん! だが神も運が悪い日だってある!」

 

「運!? 神なのに!?」

 

「長生きで強い以外はほとんど人間と変わら……伏せろ!」

 

 ぎょっとしながら伏せる俺の前で、緑の巨大な筋肉の拳を、筋肉の神がハンマーで受け止めた。

 二人の衝突によって生じた衝撃に耐えられず、『義手』に支えられながら膝をつく。

 限界を迎えてしまったドクター・オクトパスの内の1本がゴロゴロと転がっていった。

 意図せずして戦場のど真ん中に放り投げられてしまったようだ。

 さっさと移動したいが、二人がガツンガツンと殴り合っているので動くに動けない。

 ハルクはソーを狙っているが、矛先が向いたら堪ったものではない。

 戦闘機を紙切れのように引き千切り、その翼やら何やらを狙いを定めずに軽々と放り投げている姿はまさに……。

 

 ハルクとソーが取っ組み合いをしながら艦内を移動していく。

 制止するよう呼びかけながら後を追いかけるが、時折飛んでくる戦闘機や壁だった金属が危険すぎて思うように追いつけない。

 見たところハルクが圧倒的に押している。

 ハルクがソーの頭を鷲掴みにし、軽々と放り込んだ先はラボだった。

 ラボは艦橋と同様に外に面していて、強化ガラスの窓を通して青空が見えた。

 

 

 

「バナー! お前から暴れまわるフロスト・ビーストを思い出す! これでどうだ!」

 

 そう、フロスト・ビーストのようなハルク……まずフロスト・ビーストってなんなの?

 やっとのことで追いつくと、額から血を流したソーがハンマーを構えたところだった。

 神はかなり丈夫なんだな、という場違いな感想を抱いていると、ハンマーがゆったりとした速さで放物線を描きながらハルクの元へと向かう。

 怒りをむき出しにしていたハルクが、怪訝な表情でハンマーを受け取り、そして床に伏した。

 ハルクがハンマーをどかそうと必死になっているが微動だにしない。

 

「フロスト・ビーストも厄介だからな。ミッドルド……地球ではどうしてるんだ?」

 

「フロスト・ビーストって何ですか? 生き物なのは伝わってきますけど」

 

「フロスト・ビーストもいないのか。まあ、あれはヨトゥンヘイムの生き物だからな。いなくても可笑しくないがビルジ・スナイプもいないと聞いた。近くのヴァナヘイムともかなり違うな。両方ともでかくて角があって、力も俺ほどじゃないがかなりある。……もしかしてバナーがそうなのか? 角は無いようだが」

 

「違います。彼はハルクです。そんなけったいな生物だかなんだかわからないものじゃない。バナー博士とは別の人格というか、別人? とりあえずハルクです」

 

「ハルクか……。地球はビルジ・スナイプもいないから平和だと思わせてハルクがいる。変わっているな」

 

「個性的な人はどこにでもいるので。アスガルドにだってロキがいる」

 

「確かに」

 

「……それで、対処できますか」

 

「……もちろん全力は尽くす。だが、この硝子の部屋は無くなるだろう」

 

 もがいているハルクから二人で慎重に距離を詰める。

 このままドクター・オクトパスの重力制御を全開放して抑えつけられないだろうか。

 もうボロボロだからどこまで制御できるかもわからないし、ハルクの力も不明だ。

 どうしたものか。

 この場を治める方法は思いつかないが、なるべく戦わないでほしい。

 

「ところでフロスト・ビーストとかビルジ・スナイプとか、かなり面白そうな話ですね。今度アスガルドの図鑑とか貸してもらえませんか」

 

 俺が一番欲しいのはセルヴィグ博士に使ったとされる癒しの石だけど。

 高速で回復する凄い薬が欲しい。

 一応移植された自己再生的な治癒能力もあるけど、打ち消し合って無いような物だからなぁ。

 

「機会があれば好きな本を貸し与えても構わないが……。そうか、お前も研究者だったな。ジェーンも星見が得意で話を楽しそうに……。なるほど、いつかプレゼントしよう」

 

「良いと思います。おすすめは歴史の本ですね。……ソーは下がっててください。落ち着いたと判断できたらロキのところに向かってください。この腕時計からホログラムが表示されるので指示に従ってもらえれば……。わかります?」

 

「わかる。アスガルドよりずっと旧式の技術だが」

 

 小声でソーに伝え、腕時計を投げ渡す。

 以前作った丈夫なそれがソーをロキのいる”虫かご”まで連れて行ってくれるだろう。

 ハンマーから抜け出すために、ハルクが床をでたらめに殴り始めた。

 丈夫な合金で出来た床が音を立てて歪み始めている。

 床は確かに薬品や変化に強いが、ハルクを留めておくことは想定されていない。

 脱出するのも時間の問題だろう。

 

「……大丈夫か?」

 

「もちろん」

 

 嘘である。

 実は何もかも自信がない。

 とりあえず自信満々っぽく頷きながらソーを手のひらで静止し、背部からドクター・オクトパスを外す。

 武器に見える物、脅威になる物を持っていてはそれだけで敵になってしまう。

 ハルクにそっと近づく。

 たぶん大丈夫。

 きっとおそらくメイビー。

 ハルクからソーを遮るように歩みを進める。

 床を殴るたびに伝わる衝撃波と風圧でふらつく。

 

「ハルク、良い子だから落ち着いて。大丈夫、大丈夫」

 

 穏やかに話しかけるのが、たぶん大丈夫だ。

 わざと挑発しなければ無手で無力な一般人を攻撃したことは……たぶんあんまり無いと思う。

 俺が確認できる権限の記録上だと無い、はず。

 慣れない場所にいて不安だから威嚇しているだけで、もし怒っているとしてもそれは周りに反応しているだけだ。

 元恋人を敵(雷)から守るために吠えたこともあると提出された記録から読んだ。

 攻撃したからソーはダメだ。

 穏便に済ませるなら今は俺が間に入らないといけない。

 

「この艦にはアイスもある。実は俺の好物はケーキとアイス、シールドの機密レベル6に記載されているくらいトップシークレットなんだ。つまり、秘密を共有した俺たちは友達だな」

 

 うまく笑えてるかはわからない。

 ハルクから俺の表情がどう見えているかもわからない。

 そもそも超能力者はハルクにとってどういう存在なのかもわからない。

 無手でも脅威を感じるのか。

 今はほぼ無力の状態だが環境を整えて反動を無視すれば凄まじい範囲を網羅できるテレパスとかいう、昔は凄かった自慢みたいなのってどう判断するんだ。

 なにもわからない。

 時期によっては会社の方針で行われるボランティア活動の一環で子供たちと一緒に簡単な実験をしたりもするが、その時に未知を知ることは楽しいと言ったがあれ嘘かもしれない。

 めっちゃ楽しくない。

 

「俺が我が儘を言ってソフトクリームマシンや色々なケーキの種類を置いてもらったんだ。いちごのケーキ、食べたくない? それとも一緒にソフトクリーム作る?」

 

 それでも怯えないように、媚びないように、優しく話しかける。

 俺が思うにハルクはまだ子供、またはそれに準ずるくらい低い精神年齢だ。

 バナー博士が言うに、ハルクになっている間は夢を見ているような朧げな記憶しかないらしい。

 ハルクもまた同じ状態なのかもしれない。

 そうなると、経験で育つはずの情緒や危機感などがまだ幼いがために本能的な面が強いと考えることもできる。

 元々感情の発露を引き金としているのだから行動を暴力に委ねやすい性質を持っている。

 ヘリキャリア内からしたら俺は幼い子供でしかないが、この場で言えば俺が大人で、ハルクが子供だ。

 子供を不安にさせないように対応するのは当然のことでしかない。

 いや、だからなんだ。

 ダメだな、思考が空回っているのを自覚し始めた。

 

「よしよし、お利口さんだ。……まずはハンマーを外そう」

 

 怪訝そうな表情を浮かべているハルクだが、床をでたらめに殴るのも止めてくれた。

 バナー博士と初めて会ったときに全裸で挨拶したのが効いている可能性も高い。

 後は落ち着くまで静かな場所でアイスやケーキ、ドーナツを一緒に食べていれば乗り切れる。

 

 まずはハンマーを持ち上げて……。

 ハンマーをどかして……。

 ハンマー……。

 ……?

 なんだこれ退かせねえ!

 

 そういえばソーにしか持て……ソーいえばソーにしか持てなかったんだ!

 期待を込めて振り向く。

 ダメ押しとばかりに俺は何度も頷く。

 ハルクを見て、ロキが居る方向に視線を向け、また俺を見て、ソーはため息をついた。

 その手元にはハンマーが引き寄せられていた。

 

 ソーに向けて威嚇するためか、すぐに立ち上がるとハルクは大きく咆哮した。

 怒りが収まらないのか、自分がめり込んでいた床を殴った。

 耳がキーンとするし、頭もちょっとくらくらする。

 ちょっとあんまり聞こえないんだが。

 え? 鼓膜大丈夫かこれ。

 しかし時間もないので構えていたソーにさっさと行くようにジェスチャーする。

 ……アスガルド人ってちゃんとジェスチャー通じるのかな。

 

「彼はすぐにここから居なくなるから大丈夫、大丈夫。ドーナツにチョコをたっぷりかけよう。アイスにスプレーも。アイスケーキを手作りするなんてどうかな」

 

 ハルクの視線からソーを遮るように立つ。

 マッチョ神を隠せきれてないけど俺に注目が向くならそれで十分だ。

 言葉で相手が影響を受けるならハルクは世界で一番良い子になるくらい連呼してる。

 驚異の最大瞬間グッドボーイ率。

 ハルクが一応落ち着きを取り戻していると判断したのか、ソーは飛んで行った。

 なんとか事態を収束させられそうだ。

 ハルクを落ち着かせようと近寄る。

 俺を睨みつけていたが、攻撃してくる気配はない。

 と、ハルクが何かに気付いたのか、ラボから外に向かって全力で吠えた。

 俺もそちらに注目して、目を見開いた。

 護衛用の戦闘機がにその機首を向けていた。

 ハルクの相手をする精神疲労と聴覚が鈍っていたので気付くのが遅れてしまった。

 

「ハルク! あれは敵じゃない! 危なくないから戻ろう!」

 

 俺の必死の叫びは届かず、ハルクが窓をぶち破って護衛機に威嚇した。

 失敗を悟ってドクター・オクトパスを再び装着する。

 素手で出来ることはもう無い。

 パイロットが怯えたのか、元からそうするつもりだったのかはわからないが、護衛機の機銃から銃弾が吐き出される。

 ハルクが窓から外へと跳躍したのを見て、俺も後を追って飛び出した。

 

「ハルク、ノーノーノー! 良い子だから、良い子だから!」

 

 キャノピーの前に陣取りながら、止まるようにハルクに呼びかける。

 握った拳を彷徨わせた後、ハルクが天に吠えた。

 その様子に俺が間違っていたことを理解した。

 我慢させ過ぎてしまった。

 格納庫で発散させるべきだった

 ハルクが怒りの儘に護衛機を殴れば、機体は小さな爆発を起こして煙を吹き始めた。

 ぐるぐると回転しながら高度を落としていく。

 

 キャノピーを叩きながらさっさと脱出するようにパイロットに呼びかける。

 俺もヘリキャリアにさっさと戻……戻れなくないか?

 パイロットが脱出装置を作動させるのを確認し、僅かに離れる。

 射出される座席ごとパイロットをハルクが掴もうとしたので、ドクター・オクトパスを巻きつける。

 そのままドクター・オクトパスが怒り狂ったハルクに引き千切られ、耐久の限界を超えてジャンクになったがパイロットは脱出できた。

 人が死ぬよりはマシって感じの結果か。

 

 支えを失った俺の身体が宙に投げ出され、なんとか機体に捕まろうと差し出した手は空を切った。

 手を伸ばしたまま落ちていく。

 感情を剥き出しにして怒りを発散させるために機体を殴っていたハルクが、時が凍ったかのように止まっていた。

 ハルクが驚いた様子で俺を見ていた。

 遠ざかっていくハルクを、手を伸ばしたまま俺も見ていた。

 

 

 

 護衛機だった物が小さな爆発を起こしてハルクを吹っ飛ばしていた様を遠くから確認できた。

 この高度だと確定で助からない。

 下から見上げるヘリキャリアは黒い煙を吹いていて、なんとか高度を維持するので精一杯といった様子だった。

 なるほど、なるほど。

 やるじゃん、ロキ。

 俺の完敗だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほわあああああああああああああ^q^

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほわああああ……?

 ……?

 ????

 し、死んでない……!

 まさか土壇場で能力が……?

 

 あ、違うようだ。

 剃髪の女性が助けてくれたらしい。

 チベット僧侶っぽい外観の、綺麗な女性だ。

 

 貴女は命の恩人です!

 言い表せないくらい深く感謝しています!

 何でもします!

 

 ストレンジという両手が不自由な医者が来たら義手を渡さないように?

 それは無理なんで戻してもらっていいですかね。

 たぶんお医者さんが求めている物とは違うので、医者として復帰できないとは思うけども。

 精密性が段違いになるので、元の手とは別物になるだろうし相手は納得しないだろう。

 それでも渡さないってことはできないと思うので。

 申し訳ないけど俺は死を選びます。

 

 他の条件でいいんですか!

 言い表せないくらい深く感謝しています!

 何でもします!

 

 

 

 

 

 --17

 

 ヘリキャリアから落ちたけど、なんやかんやあって助かった。

 今はロキの相手で忙しいのでサッと流すが、ワンさんと名乗ったチベット僧侶っぽい女性がオレンジの輪っかで助けてくれた。

 お茶飲んでちょっと話しただけだが、不思議な魅力を持った綺麗な人だった。

 お礼はそのうちやる予定の実験に参加させるだけでいいのだとか。

 事態が落ち着いたらやる予定だったので都合がいい。

 

 話し合いの後に連絡先を交換すると、ワンさんがオレンジの輪っかを目の前に作り出してくれた。

 半信半疑で潜れば、タワーの最上階に位置する部屋だった。

 俺の装備も置いてある。

 探ってみても何もおかしなところはない。

 ここに至った過程だけを除いて。

 でも俺には疲れが溜まりすぎているので一回寝ないといけないが、その前にやることがいっぱいある。

 

「ジャーヴィス……」

 

『はい、ご用件はなんでしょう』

 

「ベイマックスの権限を元に戻して……」

 

『保護者制限により許可できません』

 

「どうしたら許可されるかな……」

 

『アンソニー・エドワード・スターク、トニー・スターク、J.A.R.V.I.Sの許可によって回復できます。現在誰からも許可されておりません』

 

 ああ、これは本物だわ。

 というかトニーが1人で2票持ってんじゃん!

 それに、ジャーヴィスがちょっとおこかもしれない。

 ジャーヴィスが手掛ける範囲であるタワーの設定も勝手に弄ったからなぁ。

 

「それなら仕方ないね。俺の位置情報について教えてほしい……」

 

『上空での消失後、突然タワー内に出現しました。また、そこに至るまでの移動経路は閲覧が制限されています。細かな時間、座標等の精度の高い情報公開に権限を行使しますか?』

 

「いや、ログだけちょうだい……」

 

 デスク上に投影された記録に目を通すが、やはり明らかに瞬間移動している。

 俺の持っている記録と突合させると、空白期間にネパール国内に居たことになる。

 助けてもらった場所がチベットだと思ってたがネパールだった。

 チベット僧侶っぽい恰好ってのも思い込みだからな。

 それにしても国家間のテレポートが可能なのか……。

 

『呼吸回数および体温に異常が見られます。休息してください』

 

「あー、うん、これ読んだらね……」

 

『機器に不具合が確認されました。残りのバイタルが未測定となっています。休息してください』

 

「うんうん、あと飛んでくアイアンマンスーツのチェックもするから……」

 

『保護者による制限が課されています。これは注意勧告です』

 

「わかったって! 寝る! 寝るから! 何か問題があったら起こしてね! ……あっ、『イミテーションモデル』だけ起動させてみていい?」

 

『試験段階のため推奨できません。……強制睡眠モード起動まで60秒』

 

「はい! ナズナは寝ます! 寝ました!」

 

 

 

 

 

 起きたらロキが勝手に寛いで酒を呑んでいた。

 しかも一番高価な物を上機嫌に。

 何か問題があったら起こしてって言ったじゃん。

 

 俺が起きたのに気づいたロキが優雅な動きで上を指差した。

 むかつくので着る予定のネイビーブルーのスーツを放り投げるが、少し体を動かすだけで避けられた。

 カウンターに乱雑に広がったスーツを見たロキが肩を竦めた。

 

 汚れや皺が一つもないワイシャツに袖を通しながらロキが示した場所に向かう。

 屋上、タワー完成前にトニーが上機嫌で昇ってドーナツを食べていたのを思い出す。

 今はそこでセルヴィグ博士とやらが大興奮で機械を弄っていた。

 『テッセラクト』を利用したワープゲートを開く装置だろう。

 アーク・リアクターによるエネルギーの供給も十分だったらしく、内部では励起反応を起こしてエネルギーの自給を始めていた。

 ここから僅かな時間の経過とともに爆発的なエネルギーを得ることが可能になるだろう。

 

 操作パネルはあるが、すでに漏れ出した力によって干渉が難しいレベルの障壁が展開されていた。

 博士を正気に戻して止めさせるとか……。

 外部からの干渉が難しいのに停止命令を受け付けるとは思えないし、そもそも頭がおかしくなってる研究者が安全装置を組み込んでおくかって話なんだよなぁ。

 組み込むくらいの良識があったら起動しない……いや、するか。

 横から手を加えるには遅すぎたのは確かだ。

 博士を正気に戻すのも手間取るだろうから、ロキの相手でもしておくしかない。

 仕方ないので外部から可能な限り情報を集め、解析を進めておく。

 ヘリキャリアは外部との遮断状態なのでハゲやベイマックス、ドローンなど思いつく限りに位置情報を送りながら下に戻る。

 乾杯とでも言うように酒の入ったグラスを掲げたドヤ顔のロキに迎えられた。

 

 うわぁ、めっちゃむかつく……^q^

 

 

 

 

 

「随分とお疲れの様子だったな、尋問官。私の飾りつけはお気に召したか? セットアップだけでなく、終わるまで寝ていてもいいんだぞ?」

 

 最上階の一角、トニーが拘ったお洒落なバーカウンターの一席に座したロキが言った。

 ロキの言う通りマジでお疲れではあった。

 酒が収まっている棚の奥の鏡で確認しながらネクタイを締め。

 俺は全く拘ってないし興味もなかったカウンターに入り、ネイビーブルーのスーツを着る。

 置いてあった機械を手に取り、ついでに記録を遡るがロキや博士が侵入した跡は残っていない。

 魔法と相性が悪いのと、屋上ではしゃいでいる博士が無駄に優秀なことが成した技だろうか。

 手に取った機械、色々なセンサーが付いた要はリモコンのこれを使って収納されていたドクター・オクトパスを呼び出す。

 微妙な速度で飛んできたドクター・オクトパスから、その手で掴んでいた白衣を受け取る。

 

「冗談でしょう。続きを今から再開してもいいんだけど?」

 

 ロキに言い返しながら袖を捲りあげながら白衣を確かめる。

 どうしてもまだ着る気にはなっていなかったが、動きに問題は無さそうだ。

 サイズは丈や袖が余るほどに大きいのでちょうどいい。

 使ってみればどうしてなかなか調子がいい。

 本音を言えば継ぎ接ぎだらけで限界だったレインコートを使い続ける予定だったが、流石にこの状況で不具合を吐きまくってるのに着続けるほど俺も頑固じゃない。

 正しい状況でごねるから可愛い我が儘で済む、多分。

 

「面白いジョークだな。だが、私の方が圧倒的に優勢な状況で再開する必要を感じないとは思うが……」

 

 「どれほど優勢か聞きたいか?」と身を乗り出してきたロキを無視してカウンター上に投影されたモニターを見ながら作業を始める。

 空飛ぶスーツの準備は十分。

 エネルギーの伝達効率が微妙に滞っている部分による継戦能力が不安ってところか。

 つまらなそうにロキは背を向けて窓際へと歩みを進め、景色を眺めながら酒の入ったグラスを傾けていた。

 何かに気付いたのか空の一点を見つめていた様子だったが、やがて外に向かって歩き始めた。

 

 

 

 かと思えば、すぐに外からドヤ顔を浮かべながら戻ってきた。

 そのままだと決まらないだろうからロキが手にしていた空のグラスを、ドクター・オクトパスを伸ばして受け取っておいた。

 

 

 

 

 

 -18

 

「私の人間性に訴え……」

 

「ほら見ろ、ナズは生きていただろう! ヴィンテージ品は月日の経過とともに頭が固くなっているからな! 折角だから今評判になってるシャワルマをみんなで食べに……待てよ……。ジャーヴィス! ナズが居たことを知らせてくれても良かっただろう!」

 

『彼には休息が必要でしたので規則に基づいて保護者制限モードによって保護していました』

 

「私の……」

 

「ナズか? ペッパーか? 誰がそんな面倒な設定にしたんだ、全く。迅速な情報の連携こそが……」

 

『トニー・スタークの名前で制限されています』

 

「途中で睡眠の邪魔をしないようにという思いやりだろうな! 流石は天才だ!」

 

「……」

 

 装置によってパワードスーツを脱ぎながら室内に入って来たトニーが捲し立てるように喋っている。

 一生懸命話しかけたが、出端を挫かれて結局言いたいことが言えなかったロキは不満を隠さないままカウンター席に腰かけた。

 トニーが「私のスーツはボロボロ、こいつの杖はピカピカ。これじゃ敵わないよな」と言いながらロキの後ろを通り過ぎた。

 その言葉を聞いたロキはさりげなく俺にも見えるようにピカピカの杖を持ち上げ、笑みを浮かべた。

 こいつ人生楽しそうだな。

 

「驚いた……。本当に驚いたな……。ああ、いや、やっと白衣を着たのか! それにしても似合うじゃないか。どこぞの天才でプレイボーイのお金持ちが贈ったかわからないが、やはりセンスも抜群だな」

 

 俺の頭のてっぺん辺りから足先まで見たトニーが上機嫌な様子で言った。

 特注で作って貰ったのに仕舞い込んだままにしていたからなぁ。

 そのままトニーはロキに背を向け、口笛を吹きながら棚に視線を巡らせている。

 

「ナズ、あれはどこにやったかわかるか」

 

「ここにありますよ。……ロキが呑んでるのもありますけど」

 

「何? ……部屋の主人に断りもなく勝手に呑むなんてマナーを忘れてきたか?」

 

 ドクター・オクトパスで棚から酒を次々と取り出してカウンターに並べて見せ、最後にロキを指差す。

 よく磨かれたグラスを手に取って光に翳せば、僅かな汚れすらも無いのが見て取れた。

 ぶつくさと呟きながら振り返ったトニーが酒を取り上げようと手を伸ばすが、それよりも早くロキが瓶を掴んで遠ざけた。

 

「ミッドガルドは私が主人となるのだから断りなど不要だろう。神が酒を静かに楽しもうとしているのに騒ぎ立てるとは、マナーすら知らないのか?」

 

「何を楽しむって? 盗んだ酒は美味いか?」

 

「酒はなんだって美味いに決まっているだろうが。こんな場所に酒を放置するしか知恵がないのは嘆かわしいな」

 

「……いい酒は裏の保存庫にある。日の光や外気に晒しても気にならない酒しかここには無いんだが、神を名乗る坊やにはわからなかったか?」

 

「……穴倉に隠すとは貴様ら野蛮人にぴったりだな。物事もわからないミッドガルドの連中が決めつけた価値と違って私はどんな酒が素晴らしいか理解してるんだよ」

 

 「は? 私がスーツを着ていたらワンパンだ、守ってくれるソーもいないぞこのブラコンが」「は? このピカピカの杖で一撃だぞ、言葉に気を付けろよこの猿が」と二人でメンチを切り始めた。

 こいつら人生楽しそうだな。

 それはそれとして、酒の質や値段の話だけどトニーの基準からして手ごろなだけで一般的には高い。

 あと技術をこれでもか、と詰め込んだハイテクな棚なので品質を維持できてて美味しいと思う。

 とりあえずトニーに空のグラスを手渡し、『義手』で掴んだ瓶を見せつけながら他にも酒はあるよとアピールする。

 あとこっそり腕輪を模した機械をトニーの手首に取り付けた。

 

「ナズ、白衣に似合うサングラスが奥にある作業机の一番上の引き出しにあるから確かめてきていいぞ。もちろん世界一の天才が手がけたセンス抜群のやつだ」

 

「いいですね! 白衣だけだと物足りないと思ってたんですよ」

 

「ロキの相手は私がしておいてやろう。面倒事の判断も主人(ホスト)の役目ってところだ」

 

 メンチを切り合いながらもトニーが補助パーツのサングラスをくれるというので上機嫌で取りに行く。

 茶々を入れてくるかとロキの様子を窺うも、トニーとの睨み合いが忙しいようだ。

「お前は怒らせてはいけない者たちを怒らせた。アベンジャーズだ。……我々のチーム名だ」「すぐにでもチタウリが来る。私は無敵だ」「ハルクも怒っている」「……行方不明だろう」「他にも……」という会話を後ろで聞きながらその場を離れる。

 

 引き出しを開ければピカピカのケースが有り、中には……フレームはシルバーメタル、真っ黒で丸いレンズのサングラスだった。

 思ってたのと違う!

 大丈夫かこれ?

 ちょっと躊躇いがちに掛けてみて、機能を確かめる。

 白衣と連動することで、得た情報が投影されるようだ。

 視界も阻害されず、レインコートのフードと違わない性能を持っている……らしい。

 白衣と情報連携している間、デスクに置いてある赤い発射スイッチを手にすれば準備完了。

 スイッチはマジで渾身の出来だから見てほしいくらい。

 サングラスで問題ないかコンディションチェックもした。

 

「丸型のサングラスだと似非中国人みたいに見え……どういう状況?」

 

 戻ってみると、ロキが杖でトニーの胸をコツンとしていた。

 そして互いに無言で見つめ合っている。

 変な間が気持ち悪い。

 

「多分、アスガルドの挨拶か何かだと思うが?」

 

「……これは私流の魔法の挨拶さ。誰とでも仲良くなれる」

 

 トニーが肩を竦めながら答え、ロキは首を傾げた。

 まさかシャツの下にあるピカピカのアーク・リアクターをピカピカの杖で突く特殊なピカピカプレイに巻き込まれたか?

 

「多分このまま進めるとみんな不満が残ると思うので一回やり直して見せてもらっていいですか?」

 

 

 

 

 

「ロキはそこ、トニーはそっち。……ヨシ!」

 

「おい、さっきと立ち位置が少し変わっているぞ」

 

「ロキは黙って……。はい、オッケー! 再開しましょう!」

 

 指示を出して位置を指定する。

 文句を言いつつロキも従っているのは互いの目的がある程度合致しているからだ。

 

「……地球を滅ぼされたら、必ず復讐する。私たちはお前だけを狙う。だからお前は絶対に支配者にはなれない」

 

 (あ、そこから再開するんだ)みたいな顔をしたロキが、咳ばらいを一つした。

 

「そんな暇はない。君の仲間が、君の裏切りで忙しくなる」

 

 で、ロキが杖でトニーの胸ってわけか。

 なるほどなぁ。

 

「……変だぞ。なぜ効かない」

 

「こんなことで友達になれるとは思わないが、こういう男も世の中にはいる。気にするな。ナズもこんな感じだ。出来る男はもしかすると杖が効かな……」

 

 杖が効かないとわかったロキが、トニーの頚を掴んだ。

 片腕で成人男性を軽々と持ち上げる力は神に相応しい……相応しいか?

 こりゃいかん、とスイッチを見せる。

 首への負荷と酸欠のなりかけで顔が赤いトニーが笑う。

 

「なんだそれは」

 

「発射スイッチだけど」

 

 カチっという小気味のいい音が俺の手元から鳴ると、部屋の奥の扉が開く。

 

「くそっ! なんだかわからんが死ね!」

 

 ロキがやられ役みたいなセリフを吐いてトニーを投げ捨てた。

 あぁ!

 トニーが窓に! 窓に!

 窓ガラスを突き破ったけど、下に人が居たら破片で危ないやつ。

 

「どうやら間に合わ……」

 

 暗い笑みを浮かべながら振り返ったロキがそれだけ言って、轟音とともに発射されたスーツに轢かれた。

 トニーの後を追うようにと窓ガラスに空けた穴を綺麗に通って、ロキも落下していったようだ。

 笑える。

 直後、俺も窓際に引っ張られた。

 

 腕輪や発射スイッチをチェックしたから白衣、そしてドクター・オクトパスが連動していたわ。

 そういえば何かあった時のために腕輪目掛けてドクター・オクトパスが飛んでいく機能を付けたんだよなぁ。

 つまり俺もロキの後を追うようにと窓ガラスに空けた穴を綺麗に通って、落下していった。

 いっけねー☆

 

 結構下の方でトニーがスーツを着用していた。

 空中で着るのかっこよ……。

 ロキがそれを見た後、睨みつけるためなのか視線をこっちに向けてきて驚いていた。

 なんでお前も落ちてるんだって思ったに違いない。

 俺もそう思う。

 笑える。

 

 

 

 

 

 ほわあああああああああああああ^q^

 

 

 

 

 

『ナズナ、生身で外に飛び出して遊んではいけませんよ』

 

「遊んだわけでは……。いや、いいか。ありがとう、ベイマックス」

 

 「ほわあああああああああああああ^q^」と落下している途中、飛んできたベイマックスが助けてくれた。

 ドックオックでも頑張れば落下死しないで済んだが、負荷がとんでもないので有難い。

 残ってたのが医療用タイプだけだから耐久性も低いんだよな。

 

「それにしても空も飛べるようになって、カッコよくなったじゃん。……いや、なってないのか? それで、その悪そうな路線で行く感じ?」

 

『悪そうな路線はわかりませんが、ナズナの仇を取るためにベイマックス・スタークエディションの路線で進んでいます』

 

「いや、俺生きてるし」

 

 試作品のスーツや、ソーとバトルした時にダメになったパーツ、ドクター・オクトパスの残骸、ドローンなどを赤い外装として着こんだベイマックスの情報を見てみる。

 古今東西の格闘技や兵器使用のモーションがぶち込まれてるんだが。

 違法改造ベイマックスか?

 

「救助や治療を優先で、障害物や外敵は邪魔なら退けるくらいで頼むよ。できる?」

 

『親しい人、近しい人のナズナのお願いですね。わかりました』

 

 偉い、偉い。

 ベイマックスを褒めながら撫でていてると、ロキを担いだソーがバルコニーに着地した。

 神同士が激しい剣幕で怒鳴り合っていた。

 その時、空気が強く震えるのを感じた。

 急いで外に出る。

 どうでもいい神のレスバを遠くに聞きながら空を見上げた。

 

 

 

 まず光の柱があった。

 辿るように視線を動かせば。

 ニューヨークの空が、遥か遠くの宇宙と繋がっているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 




残りは明日かなぁーやっぱりー。



次で終わりや!



あとがきでドクター・オクトパスの設定公開するのと、公開できるくらいの情報の手直しが終わればマーベル・ワンショット3も更新します。
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