私たちは夢と同じもので形作られている   作:にえる

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アベンジャーズ1

 

 --1

 

『こんにちは。私はベイマックスです』

 

 起動に成功した試作型のパーソナルケアロボットであるマシュマロマン……ではなくベイマックスを色々な角度で観察し、不備が無いかを確認していく。

 ゆったりとした動きで、頭部に設置されている円らなカメラアイで追いかけてくる。

 空間に投影されているディスプレイのパラメータは順調のようだ。

 これまでに生み出したベイマックソというジョーク品とは違い、成長性は低く語彙も少ないながらAIを搭載している。

 トニーが野菜ジュースによって誤魔化していた重金属中毒事件から作ってみたが、どうしてなかなか悪くなさそうだ。

 身体を随時スキャンすることで変化を観測し健康を管理し、俺の研究成果から様々な要素から精神面もばっちりケアが可能、だったらいいなっていう段階だ。

 一応は心の療養にも使える、とは思う。

 

『外部からのお電話です。戦略国土調停補強配備局のフィル・コールソン捜査官です』

 

「捜査官か、それなら繋げて」

 

『……』

 

「ベイマックス?」

 

『1から10段階でいうと、どれくらい電話に出たいでしょうか』

 

 いやいや、それ10以外だと切っちゃうんじゃないの???

 失敗かもしれん。

 寝不足で時間もかかったのに悲しい……。

 

「10だよ」

 

『どうも、ナズナくん。ところで10とは』

 

「……いや、何でもないです。ちょっとポンコツの調子が悪かったみたいで」

 

 聞いておいて答えを聞かずに繋げるのはもしやアメリカがいつも怯える機械の反乱なのでは???

 

『もしや実験の邪魔をしてしまいましたか?』

 

「いえ、ちょうど電話を繋げてみたかったんで問題ないです。というか問題が見つかったんでちょうどいいです」

 

『そうでしたか。それなら近況のお話でも、ああ、ナズナくん、すみません。上司がちょっと呼んでいるので……』

 

「大丈夫ですよ」

 

 近くにいる上司と会話しているのか僅かな話声の後『はい、はい……。了解です』と聞こえた。

 まあ捜査官の上司なんて俺はハゲしか知らないんだが。

 ベイマックスはじっと俺を見ている。

 なんかやだな……。

 電話機能は要らないなぁ。

 なんでもかんでも積むのは間違いだったな、寝不足の敗北だ。

 

『すみませんが私も忙しくなってしまって、どうも世間話から徐々に本題へ行くのも難しいと言いますか』

 

「気にしないでください。ハゲの無茶でしょう」

 

 『フューリーだ』というハゲの声が小さく聞こえた気がしたが無視だ。

 

『ええ。話し相手になってもらいたいとのことで、指定した場所に行ってもらってもいいでしょうか』

 

「話ですか……うーん、苦手なんですよねぇ」

 

『報酬のヴィブラニウムを普段の3倍出しますが』

 

「3倍! 行きます!」

 

『電話への意欲が3段階目なので通話を終了しました』

 

 おっと、実にぽんこつぅ……^q^

 

 改めて電話をかけ直し、軽く謝ってから地図情報と送迎の車を送ってもらった。

 捜査官は驚いたように「失敗するんですね」と言っていたが、むしろほとんど失敗しかしていない。

 そこから原因などを発見して因果関係をどれだけ洗えるかが鍵である。

 さて、レインコートを着て、ベイマックスは……ちょうどいいから車の中で調整しよう、暇だし。

 

 

 

 

 無駄に長い時間を車に揺られ、いや、いい車だったから揺られなかったけどS.H.I.E.L.D.の施設に到着した。

 何故か待っていたハゲに直々に連れられ、病棟へと向かう。

 70年間大事に冷凍保存されていたアメリカの象徴がいるらしく、軽く話して来いってのが依頼らしい。

 内部への装備の持ち込みは禁止。

 ベイマックスがこんなにモチモチなんだが?とアピールするとハゲは許可してくれた。

 ハゲに「大事に持っていろ」と最後の砦であるレインコートを渡す。

 絶対に、と念を押す。

 クリーニングだってなしだ。

 とりあえずテキトーに対応して怒らせたらダメでしたって帰ればいいか。

 そうなったら昼を買って帰ればちょうどいいくらいになるだろうし。

 扉をノックして返事が聞こえたらずかずか入り込み、持ってきたパイプ椅子に腰かける。

 

「あー、とりあえずカウンセリングというかちょっとした会話を任されました。目覚めの気分はどうですかね。いや、体調は大丈夫だとは思うんですけどね、気分とかそういうのはわからないですし。70年? 71年? なかなかヴィンテージ物ですからね。蓋が空いてたらワインも変質するじゃないですか? 大丈夫かな、安定しているのかな、とは思いますが何せ機械が言うことは無感情ですけど。ジャーヴィスくらい賢いと全然違うんだけどなあ。あ、ジャーヴィスっていうのは凄い賢いAIみたいなので、最近は俺も育ててまして。あ、AIっていうのは。あー、うーん、逸れましたね。えーっと、失礼……」

 

「……君は?」

 

「俺はですねー、あー、ちょっとタイム……」

 

 ベッドに横になって外を見ていた青年に話しかけるが、困惑させるだけで失敗した。

 薬を飲んだのか、机には空の包装が置いてある。

 いや、マジ無理なんだが。

 『こんにちは。私はベイマックス。あなたの健康を守ります。スキャンが終わりました。心が疲れていますね。1から10段階でいうと、どれくらいの疲労ですか』「……よろしくベイマックス、1だよ」と会話しているのを横目にとりあえず思案。

 70年物のアイスマン復活とか四次元キューブ観察は面白かったから問題なかった。

 どっちも回収されてしまったけど。

 相手に興味はあるけど意識が会話に繋がらない。

 書類改ざんとか衛星からの行方不明者捜索および監視、スタークの最強元素の所感、アイスボックスへの様子見、カウンセラー的ななんちゃらで呼び出しとかそういうのはちゃんとしたプロがやるべきなのでは???

 ちょっとずつ思考が逸れる。

 戻れもどれ、えっと……アベンジャーズ計画とかいうのが凍結したとかどうとかって連絡があったのに、ハゲから呼び出しを受けた。

 そもそも凍結してようがどうなろうが依頼は来るんだけど。

 報酬がヴィブラニウムだから受けてしまう自分が憎い……でも送られてくるのが数十グラムなのは足りな過ぎる悲しみ。

 ハゲだけの要請なら断ったけど、コールソン捜査官からも頼まれたので仕方なしではあるけど。

 捜査官といえばニューメキシコでワームホールらしきパラメーターを確認できたらしい、データとかなんとかくれないかな。

 そもそも精神感応はついでだし、もっと言えばカウンセリングとか向いてない。

 友好的なコミュニケーションとか苦手だって自覚しているんだけど、なぜなのか。

 思考とか捻じ曲げて友好関係を築けるとでも思われてたりするのだろうか。

 無理なんだよなあ。

 相手の思考を逸らせる、つーかそれが限界……補助アイテムのブースト次第で変化するけど。

 折角手に入れたヴィブラニウムも加工があまりうまく行ってないし。

 他の物質とミキシングすると特性を伸ばせるのは凄いのだけれど、まず混ぜるのが難しい。

 自作リアクターの出力も微妙な伸びだしなあ、匹敵する超凄い物質とかあると有難いんだが。

 こう、混ぜたら危険なくらいがちょうどいいというか……あ、思考が逸れてた。

 とりあえず手元の経歴でも見てみよう。

 戦時中の英雄だったというのは知っているし、普通の歴史も一通りは知っている。

 あ、S.H.I.E.L.D.から渡された、というか捜査官から熱烈に進められた詳細な資料集というかファンブックには目を通してなかった。

 ぶっちゃけ熱意が怖かったし。

 さて、経歴は……

 

「……あなたは完璧な兵士になりたかった?」

 

 率直な感想がこれである。

 でも完璧ってなんだろうか。

 相手は目を見開いたと思ったら顔を伏せた。

 徴兵されるように頑張って薬使って超人になって戦地を巡り、最後には自爆特攻である。

 俺には理解できないな。

 そういえば身体能力とかも一通りは記録があるから、まあ古い記録なんでちょっとはブレてたり盛られたりしてるから参考程度だけど。

 そういえば天然の冷凍庫から取り出した直後の彼の肉体は血液はぶどう糖たっぷりで、身体機能は冬眠状態の動物や昆虫に近い状態だったが、それも代謝などに影響しているのだろうか。

 そういえば運動能力を発揮する際にも体格や体重、筋力から導き出せる理想値以上のスコアを発揮していた。

 そういえば超人血清とやらの詳細が知りたいのだが、生成した博士が脳内でのみ計画を進めた重要な薬らしいからなあ。

 トニーのスーツみたいな物だろうし、レシピが残っていないのも仕方ない。

 そういえば確かこっそりと熱烈ファンが教えてくれた話では、血清を使う対象者は慎重に選んでそれは高潔な人が必要だったって話のはずだ。

 そういえば超人血清の生成にも取り組んでいるが失敗していて、成功しているから尊敬されているって話もあって、アイスキューブで冷凍保存しているアボミネーションも使ったんだったか、いや、ハルクが使ったんだった?

 そういえばアボミネーションは変異前から好戦的で、変異後は輪をかけて凶暴で、ハルクは逃走中にほとんど変異なし、ヴィンテージ品の彼もまた穏やかで高潔だとかどうとかから、やはり精神性が大きく関与している可能性も否定できない。

 結果があるのだから、経過もあるということだろう。

 高度に隠れた結果の裏に、更に隠れた現象があるということで、そもそも隠れたといったが隠れたつもりはないが我々には観測できない、もしくは観測や利用に人為的に適応した者が超人なのかもしれない。

 そういえばミュータントが持つ能力の振る舞いも様々な顔を覗かせていた記録があった、こんなことなら昔調べておけば良かったと思ったけど俺はそんな感じじゃなかったから諦めよう。

 そういえば観測した際にも振る舞いが変わるように、感情によっても振る舞いが変わる物が存在していると過程していいのだろうか、そうなると二重スリットみたいな古典的な美しい物を見つけられたら……階層としては古典から進むから出入りするしあれがシンプルで根に近いのだから、そういうことなのか。

 それだけじゃなくてユニタリーであり、測定した結果も結局演算子がエルミートなだけで実数であって実際は……。

 観測することによって振る舞いが変わる様に、感情によって振る舞いが変わるのかもしれない。

 検出するのもやっとの領域のそれらを意思や感情で操作することも可能とも言えるだろうか。

 おそらく言葉や数字でわかりやすく纏めると俺の研究が止まるので残すことはないかAIに書かせる程度だがそれでも素晴らしい発展に繋がっているに違いない。

 もっと短絡的に言うと結果が意思によって引き起こされることも有り得ないと言えないわけでその領域に踏み込んだ時は、そう、もっと高次元があり、いやあると思うんだが、宇宙も多元的であるならばそこに連続している部分や連続していない部分、もっと外側の無を定義しないといけなくるしそもそも無じゃなくてその先にはあるってことになるから多元論も考えられるようになっていくから哲学者も理解してないけど肯定されて大興奮で……じゃなくて、あー、思考が滑ってた。

 

「……突然そんなこと言われても困るが、違うと言えるよ」

 

「そうなんですか? でも経歴は凄いですよ」

 

「……そんなこと、無いさ」

 

 奇妙な感じだ。

 怒っているわけでもないし喜んでいるわけでもない。

 入り混じっている。

 人はなぜ複雑なんだろうか。

 刺激が少ない平坦な日常を過ごしていると、ちょっとした刺激で鬱にもなるというし。

 順応とか変な部分で壊れているのではないかと思ってしまう。

 

「……ええっと、任務も達成しているのに? 完璧なのでは?」

 

「達成できたのは任務だけ……そう、任務だけ」

 

「任務だけ? それ以外にも貴方にとって重要なことが?」

 

「……どうだろう。重要だったけど、もしかしたら違ったのかもしれない。守れなかったのか、守らなかったのか」

 

 「善い人になりたかった」と呟いて、彼は目を閉じた。

 善い人になりたくて、完璧な兵士ではないらしいが、完璧……?

 完璧ってなんだ?

 何がどうなっていれば完璧なんだ?

 FPSのゲームみたいにプレイヤーが操作して唯々諾々と従う感じ?

 人間じゃないのでは?

 一般論的には良くない。

 俺としては、まあ良くないのはないかと思う。

 なんでダメなんだって言われたら、つまらないからである。

 俺の過去(腕のCGはちゃんと加工すべき)もそうだと囁くに違いない。

 アボミネーションは完璧なのか?

 いやそんなわけがない。

 兵として寄りすぎている、そんなのが完璧なはず……いや、完璧な兵士ならそれでいいのか?

 完璧な兵士……?

 完璧なのに戦うことしかしないのか?

 だが強さや兵士を望むのならばその肉体や心は完璧だと言えるかもしれない。

 その点を観測しようとすると、不思議なくらい正しい実数と、ありえない現象が付いて回る。

 現象を起こしているのか、結果を引き寄せたから現象が起こるのか、イコールではないが密接である。

 変異はガンマ線となって隠れている、もしくは現状の人間に近くできる限界がそこである。

 その裏ではどうなっているのか。

 彼らの代謝が変異にイコールしているわけではないが事実代謝している。

 アボミネーションは体積が増えたというし、また重量や密度など諸々が増大した。

 どこから持ってきたのか。

 ガンマ線の裏で融合が起きているのか、別次元から来ているのか。

 それは実は別次元からだとすれば個人用のワームホールを持っているのかもしれない。

 彼らは小さなフラスコを持ち、その都度望む結果になるように薬品を注がれ……ああ、また思考が滑ってた。

 ちょっと思考がぶれすぎてた。

 相手に合わせるんだ、意識を。

 

 重ねる様に、重ねすぎないように……。

 

 憧れがあって、仲間がいて、親友がいて、好きな人がいて、そして強い……俺にはわからないほどに強すぎる感情があって。

 ――絶対に、諦めない。

 すぐ傍にあったはずなのに、気づけば俺には強い虚無感になって。

 ――誰も殺したくはありません。でも悪党は嫌いだ。

 だからまるで現実のようじゃなくて。

 ――俺が戻ってくるまで、馬鹿なことはするなよ。

 求めていたはずなのに、僕の前には目を背けたくなるような世界が広がっていて。

 ――君は君のままでいてくれ。完璧な兵士ではなくとも、善い人でいて欲しい。

 デートの約束があって、愛国心があって、時間がなくて、それらが重ならない平行線になって、どこまでも不器用で。

 ――8時ちょうどよ。遅れないでね。わかった?

 嬉しいはずなのに、寂しい気持ちもあって、その気持ちを持つことが僕には空々しくて……。

 

 ――デートの約束があったんだ。

 

 それが僕にはとても悲しく思えた。

 

 

 

 

 

「君、大丈夫か……?」

 

 肩を揺すられてハッとする。

 意識が飛んでいたのか、思考がずっとどこかを走っていた。

 窓からはオレンジの夕日が差し込んでいた。

 

「いや、寝てました。大丈夫です」

 

「寝てた……?」

 

 俺の言葉に怪訝な表情を浮かべた。

 眉をこう、寄せるというか。

 思考はかなり安定している気がする。

 どうなのだろうか。

 気力がどうにも抜けているというか。

 

「俺がどのくらい寝てたかわかります?」

 

「いや、僕も寝ていたみたいだから。……起きたら君が泣いていたから咄嗟に揺すってみたんだが」

 

「泣いて? 泣いてるように見えますか?」

 

「泣いているように見えた」

 

 そう見えるだけだ。

 君の心が泣いているんだ、叫びたがっているんだよ(名言)

 

「俺の能力です。ミュータント……って表現しないんでしたっけ。まあ、超能力みたいなのを持ってまして。補助器具が無いので不安定ですけど、害があるわけじゃないです。あんまり自覚はないと思いますが、俺の表情が見えないでしょう。代わりに喜怒哀楽を感じるかと。俺を見た人の精神状態を見せているんです。だから貴方が泣いていると感じたなら泣きたい気分なのでは? あ、好きなだけ泣いていいですよ。たぶんそれが俺の仕事なんで」

 

「いや、僕はそういう気分じゃない。というか、喜怒哀楽というよりも君が涙を流しているのも見た」

 

 見えないだろうけどドヤ顔で説明すれば、反論された。

 まさか、と目元を拭えば確かに濡れていた。

 片目が腫れぼったい。

 

「うわ、俺が泣いてるじゃないですか……」

 

「だからさっき言ったじゃないか」

 

「えー? ……なんでかなあ」

 

 超人血清とかいう謎の薬でこの人が超人になったせいだろうか。

 俺の能力は謎の力場が発生してカメラとかの映像も歪ませるんだが。

 感覚もやはり超人的だとか?

 超人は微弱なガンマ線を発してる傾向にあるようだ。

 とりあえずざっくりとした考えだとエネルギーが高ければガンマ線的な感じで、文明の高まりとともにガンマ線も増える的な。

 ガンマ線は原子核、エックス線は原子に起因することからなんらかの変異が起こっているのはわかる。

 ガンマ線は原子が安定する際に検出できるから不安定な原子でできているのだろうか。

 超人から検出できるガンマ線は極めて短いスパンで放出されている。

 まるで生み出された原子が安定するかのように……感情とか状況に呼応して適宜変態しているのだろうか。

 どうなんかなあ、でも冷凍保存用に体が対応したってことにもなるし、必要な運動機能を発揮したいときには瞬時にそうなるようになんかが起きてるのだろうし。

 ハルクが緑なのは個体として安定しているから……?

 血清やガンマ線に適応した人間の姿で、安定している可能性も考えられる。

 これを進化と捉える人間もいるだろう。

 しかし、そうなると俺の能力が効きにくいのは適応した謎パワーと俺の謎パワーで打ち消し合っている?

 ハゲに武装の持ち込み禁止だとかでレインコートを取り上げられたのがダメだったな、考えが滑る。

 なぜか暴走している状態だ、近くの思念とか受信してしまうかもしれない。

 感情が高ぶったときみたいだ。

 

「すみません、やっぱり補助器具を取り返してきます」

 

 パイプ椅子から立ち上がり、扉へと向かう。

 長時間同じ姿勢でいたため身体が固まっているのがわかる。

 謎と言ったけど厳密には俺の能力は空間に作用している、らしい。

 自分がサンプルだから沢山実験できるだろうと思われるが、沢山サンプルを取ったからって何も解決しないのだ。

 抜けているパラメーターを定義しないといけないし、そもそも何がどうなのか全然わからん。

 サンプルを取るなんか凄いのを作らないといけないけど、どんなサンプルか決めないといけないのだが、そのサンプルもなんだかわからないという酷い状態だ。

 片っ端から取ってちょっとずつフィルターにかけるように絞っていくが、数字がすべてじゃない(あるまじき発想)

 それはそれとして綯い交ぜになっている感情で落ち着かないし、思考も飛び飛びなのがしんどくてだるい。

 

「……ちょっと聞いていいかな?」

 

 扉を開いた俺の背中に、少し明るいトーンで声をかけてきた。

 ちょっとだけ気が紛れたのか、睡眠をとったからか、最初よりも元気そうだ。

 いや、突然中に入ってきて眠そうなところに言葉のドッジボールぶちこんどいてなんだけど。

 ただ、彼も視線が少し定まっていない様だった。

 

「なんでしょう?」

 

 なぜか先導していたベイマックスがドアノブに手を掛けるのを見て、振り返る。

 あれ、そういえばこいつにそんな細かい動きはできただろうか。

 まあいいか。

 

「……君はどうしてスタークと一緒に研究をしようと思ったんだい?」

 

「どうして……?」

 

 どうして……?

 なぜそんな質問をしたのだろうか。

 どうしてって、それは決まってるじゃないか。

 それを追いかけて俺は色々と知った。

 

「知りたかったからです……」

 

 ――幼い俺の目の前に...:.;::. .:.;:大なアーク・リアクターは、その象徴とも...:.;::.:.;:が消えて久しい様子だった。

 

 ――俺の背から機械が伸びた。鈍色で、側面に棘のような鋭角がいくつ...:.;::.:.;:4本の機械だった。

 

 ――背には...:.;::..:.;:な、その時の俺にとっては巨大な...:.;::..:.;:が背負われていた。

 

 ――手をゆらゆらと動かすと、指示に従うように、機械の群れがアーク・リアクターに殺到した。

 

 ――やがて、...:.;::..;:;::: .:.;:、失われた過去の栄華を見せ付けるかの如く、...:.;::..:.;:。

 

 ――アーク・リアクターを覆う機械が赤熱し、どろりと溶け始めていた。

 

 ――火が顔の半分を舐めようとも、俺は動かなかった。それはとても美しい光だったから。

 

 ――...:.;::..:.;:;::: .:.;:あった。天才が生み出した、理解のできない、設計思想すらもわからない...:.;::. .:.;:。

 

 ――確かに俺は、その瞬間だけ;:;::;:;:『太陽』をその『手』に掴んでいた。

 

 

 

 ――僅かに高揚した様子の俺の前に、あまりにも弱い輝きを放つ腕時計にも似た夢の...:.;::....:.;::.……。

 

 

 

「……素晴らしい研究を残した彼がどんな人だったのか、知りたかったんです」

 

 視線が定まらない、思考が揺らぐ。

 未だに僅かな機能すら再現できない、そんな素晴らしい研究が生まれたのか、孤独に進めたのか。

 どうしても知りたかった、いや、その時は知りたかったという思いを抱いていることに気づかなかった。

 どうしてその研究をしたのか、その目的はなんだったのか、背景はどのようなものがあったのか。

 後悔があったのか、希望があったのか、悪意か、善意か、自分のためか、他人のためか。

 二度探して、亡くなっていて、結局聞けなかったから。

 

「……大丈夫か? さっきから視線が宙を行ったり来たりしているが」

 

「いえ、ああ、はい。大丈夫です。寝ぼけてるかも」

 

 頭を振る。

 どうにも調子が悪すぎる。

 

「もしかして聞かないほうがいい質問だったか? 何か問題があるとか。いや、言えないならいいんだ」

 

「いえ、望んで研究しているので大丈夫です。ただ、ちょっと。どちらかというと驚きのほうが大きかったんです……」

 

 久しぶりに聞かれて、なぜか一気に思い出して驚いただけ。

 それだけ。

 

『泣いてもいいんですよ。泣くことは痛みに対する自然の反応ですから』

 

 おい、邪魔だぞぽんこつ。

 というか話題が一周遅れだ。

 まだ調子が悪そうだ。

 

「そうだね。さっきみたい好きなだけ泣いても構わないよ。……いや、冗談さ」

 

 ロジャースさんがにこやかにそう言った。

 あなたもぽんこつなの???

 

『1から10段階でいうと、どれくらい扉を開けたいですか』

 

「10だよ!」

 

『10段階目ですね。しかし私は扉を開けられません』

 

「そうだよな! その太い手じゃ開けられないよな! わかってたよ!」

 

『大切なのは大きさではなく機能です』

 

「その大切な扉を開ける機能がお前には付いてないんだよ! もういいから! 俺が開ける!」

 

『あなたがケアに満足していると言うまで、私は動作を停止することができません』

 

「ベイマックス、もう大丈夫だよ! 扉は俺が開けるから!」

 

『動作停止はうまくいきました。しかし、両手がドアノブに挟まっています』

 

「ぽんこつ、空気を抜けばもう大丈夫だよ!」

 

『ぽんこつは登録にありません』

 

「ベイマックス! 空気抜いて下がってて!」

 

 ぷしゅーと空気が抜ける音が、弱弱しい音がする。

 ロジャースさんが後ろで、堪える様に笑っていた。

 近年で一番恥ずかしいんだが???

 それでもなんとかやっと扉を開けられたので、あとはレインコートを取り返してきてベイマックスは置いてこよう。

 

「ベイマックス、俺の後をついてきて……」

 

『わかりました』

 

 部屋から出て、ベイマックスが付いてこないので戻ると、そこにはぺしゃぺしゃに潰れたベイマックスの姿が。

 

『空気を抜きすぎました、失礼します。……616エラー発生。歩けません』

 

 あああああああああああああ!!!!^q^

 

 ロジャースさんが堪えきれずに噴き出したのを聞きながら、潰れたベイマックスを抱えて部屋を出た。

 

 

 

 

 

 外で待機していたハゲからレインコートを取り返し、代わりにベイマックスを預ける。

 ベイマックスは自動で空気が補充されるだろうから帰りは自分で歩いてくれる、問題ない。

 さて、取り返したこのレインコート、なんとうっすらと緑に発光するお洒落仕様。

 これは脳の機能を抑制する物で、神経麻痺誘発装置にも応用されている技術だ。

 俺しか使わないので内装が剥き出しになっているため、色々な要素に反応して内部で編まれている希少金属の合成ファイバー繊維から発する可視光の色が変わる。

 工房にある専用の補助具でさらに強化すると色々な電波を読み取るために赤く発光し、相手の考えを視たり、思考を誘導しやすくなる。

 まあ、アイアンマンみたいなハイテクスーツにはおそらくほとんどが防がれるけど。

 ブチ切れて脳の保護とか無視して全力を出したら、ガンマ線をまき散らしながら緑や紫を超えたどす黒い色になるかもしれないけど、そういうことはしたことないので不明。

 そこまでエネルギーを発すると光を捻じ曲げたり、吸収する可能性も高い。

 緑なのは安定しているから、というのが俺の見解である。

 トニーは「私には何の問題もないが、他人にとって信号と同じでわかりやすい」って言っていた。

 あーもうハゲ、ほんとハゲめ。

 頭が疲れたぞハゲ。

 様子を問われたので「寝ていた」とだけ答えた。

 マジでただ寝ていただけ。

 年若い男が二人、密室で寝ていただけ(意味深)

 あー、レインコートを着ると落ち着いてくる。

 ドクターオクトパスにも搭載しているから、持ち込みの許可くらいすぐくれればいいのに。

 

 

 

 

 

「戻りました。失礼とお騒がせして申し訳ない。自己紹介からしておきます?」

 

「あ、ああ。雰囲気変わった?」

 

「補助具のおかげですかね。普段は機械で抑制しているんですけど、さっきまで無かったので。頭が動きすぎるんですよ。そしてベイマックスは鈍すぎました」

 

 笑っているロジャースさんに、肩からかけるように着ているレインコートを見せる。

 外でこれが無いとやっぱりダメだな。

 受信と発信が多くなる。

 

「改めて、ナズナ・ナツメです。ヴィンテージ品となっていた貴方を発掘と蘇生したときのメンバーです」

 

「ヴィンテージ……ああ、スティーブだ。スティーブ・ロジャース。よろしく」

 

 ロジャースさんが俺の名前を発音しようとしてナドゥーナ、ナツーメ、みたいになってた。

 呼びにくいのかもしれない。

 わからんけど。

 

「よろしくお願いします、ロジャースさん。難しかったらナツとかナッツとか近い感じでもいいですけど。あと俺の上司はトニー・スタークといってですね。一緒に仕事していたと思うんですけど、ハワード氏の息子さんです」

 

 ナトゥー?と発音に首を傾げているロジャースさんと、とりあえず仕切り直しとして握手する。

 改めて考えると、突然部屋に入ってぶわっと言葉の洪水を浴びせるって半端ないな。

 ハゲのせいってはっきりわかる。

 

「ハワード……。いい人だったよ……」

 

 わかるよ。

 スタークマジリスペクト。

 ホントに凄いと思うんだけど、何故か理解されにくい。

 人格が悪いのかもしれない。

 でもトニーとは補助具がなくても会話できるから、コミュ力の高さや頭の回転が凄いと思う。

 

「あとは……友人に熱烈なファンがいるので、貴方に関わる一般的なことは知っていると思います」

 

「一般的?」

 

「どこ出身だとか、どんな戦地に行ったとか、そういうのですね」

 

 普通の資料と捜査官のファンブックを見せる。

 ああ、とロジャースさんが胡乱気に頷く。

 どんな気持ちだろうか、今の俺に知る由はあまりない。

 相手が死んだり、致命傷を負ったら強い思念を感じ取れるけれど。

 もし読むとしたら、ちょっと考えを読みたいから死んでねとか邪悪すぎることに……。

 

「そういうのも立派だとは思いますが、今一番大事なのは」

 

「……大事なのは?」

 

「ご飯で食べられない物とかありますか? もう夕飯の準備らしいので」

 

「ゆ、夕飯?」

 

 ロジャースさんが「えぇ……」という力の抜けた表情を浮かべた。

 お夕飯以上に重要な物があるだろうか。

 いや、ない。

 というか俺もお腹空きすぎて抱えている謎の悲しみを凌駕しつつある。

 他から得た感情はまず自身の欲求を処理してからだ。

 

「折角英雄となって70年も絶食していたんですよ、物凄い贅沢な物を食べましょうよ。霜降りとか」

 

 改めて考えると70年も冷凍って凄いな。

 

「シモフリ?」

 

「凄く高い肉ですよ? 甘い脂身といいますか。口の中で溶けます」

 

「脂身……? 甘い……?」

 

「ああ、そっか。70年の差をここに来て感じますね……。今時の若者はバターを油で揚げてチョコをかけて食べますよ。あれが冗談か本気かは知らないけど、屋台とかもあるはず」

 

 顔を顰めるヴィンテージおじいちゃん。

 この調子だと寿司もダメなんだろうなあ。

 試しに案として出すと「SUSHI?」みたいなテンプレの反応から「生魚やんけ! 無理やわ!」みたいな流れとなった。

 バナナが高級品とかそういう世代かもしれない。

 鯨の缶詰でも食べるんかな?

 アメリカだとちょっと違うか。

 

「歯だけ立派なおじいちゃんは何を食べれば……。そういえば、シャワルマのお店がなんちゃらかんちゃらって聞きましたよ。シャワルマってなんなんですかね。料理名? 店名?」

 

「うん? ……うん、シモフリみたいに何かの肉かもしれない」

 

「霜降りは4本足ですね」

 

「じゃあ2本足の可能性があるかも」

 

「2本足の肉……? 立って歩くってことは知能が発達した頭を支えやすくするためなのでは? え、大丈夫ですかね。シャワルマが人の名前っぽく聞こえてきましたよ」

 

「シャワルマさんの肉を出す店は僕の時代には無かったね」

 

「いや、シャワルマさんってほとんど人って決めてるんじゃ……。いや、シャワルマさんの肉って俺の時代にも無いんですけど?」

 

 シャワルマが店名か料理名であって欲しい。

 シャワルマさんだったら怖い。

 流石に無いと……無いよね?

 こういうときにフリッツ・ハールマンとか思い出す自分が憎い……!

 

 

 

 

 

 70年も瓶詰だと腐るかもしれないってことで外に夕食を食べに行くことにした。

 部屋から出てハゲと合流。

 このハゲ、なんとベイマックスに無表情で包まれていた。

 いや、確かに預ける時に手渡ししたけど、空気がみちみちに詰まっても抱えていたから包まれる状態になっていた。

 

 S.H.I.E.L.D.の施設から出て行く途中、ロジャースさんに「薬はどうだった? よく眠れただろう?」「久しぶりに……」というやり取りをしていた。

 やっぱり喋りに行かされたタイミングはロジャースさんに薬飲ませた直後だったらしい。

 どんだけ気配りできないハゲなの???

 薬飲んだ後は安静に決まってるでしょ???

 

 まあそれはそれとして、70年前のヴィンテージヒーローの中身、厳つい黒人のハゲ、なんか顔のぼやけた俺、白いマシュマロマンという異色の組み合わせ。

 上下黒で片目は眼帯で覆っている、いかつい黒人のハゲとかめっちゃ目立ちすぎなのでは?

 ということで、能力のちょっとした応用で、効果範囲を広げて注目度を下げる。

 俺、なんかすごくなんかよくわからないけどなんか有能ななんかの能力者っぽい凄いなんかしてる……!

 まあ、注目されたら一発で見破られるしょうもない阻害だけど。

 一応能力を応用して迷彩の研究にも手は出しているが進捗は芳しくない、だってやること多いからね。

 

 ハゲは久しぶりに羽根を広げて近所で飯が食えるぜーってノリだったし、ロジャースさんも注目されないで飯食えるぜーってノリだった。

 俺は注目されたことないからちょっとわからないですね……。

 あ、中華は無しな。

 あの箱に入ってるドラマとかにも出てくるやつ。

 わざわざ能力使って外に出てるのに、食べるのがあれとかマジで無いから(マジトーン)

 

 ロジャースさんとハゲ、俺でロブスターの店に突入。

 海の幸は揚げたり煮たりしても美味いから偉大。

 カトラリーの使い方とか気にするのもめんどくせぇ、俺は手で食うぜ!って手や口を汚しながらロブスターを食べた。

 2人も手で解体して食べてた。

 高級将校というか、そういう立場の専用ラウンジとかで食べてただろうからお行儀よく食べるかと思ったけど、そんなキャラじゃなかったようだ。

 ロブスターはぶりんぶりんして美味しかった(エレメンタリースクールキッド並みの感想)

 ソースは大味すぎてイマイチだったのが不満点だったので、岩塩をメインにして食べるのをおすすめする。

 というかロジャースさんがこういう料理のソースの味はあんまり変わらない的なことを言っていた。

 そこは変わっておいてくれ(切実)

 

 

 

 各自食べ終わって、ちょうど解散の時間になった。

 ロジャースさんが「また会おう」って手を差し出してきた、ロブスターで汚れた手で。

 だから俺も「嫌です」って答えて弾いた、カウンターロブスターハンドで。

 また会うことがなんなのか、俺はおぼろげに理解している。

 愚かな自分が何をしているのかくらいわかっている。

 喜んで会うアメリカ万歳な人種じゃないんだ。

 ハゲが慰めなのか、肩を軽く叩いて何か告げていた。

 しょんぼりしたロジャースさんは立ち上がってトイレに行った。

 ため息を吐いたハゲが口を開く。

 

「ミスターナツメ、アベンジャーズ計画はヒーローたちを集結させて最強チームを作ることを目的としている」

 

「……未曾有の脅威に対するカウンター、でしたか」

 

「そうだ。個人でも抑止力に成り得る。……しかし、より強大な敵が現れたとき、遥かに力を発揮するにはチームが必要となる」

 

「……それで70年前のヒーローまで?」

 

「個性も能力も纏まっていないヒーローたちを導く強固な精神力を持つリーダーが必要だった」

 

「……退役しても問題ないのでしょう」

 

「彼は現役だ。君だって見ただろう。全盛期と遜色のない……むしろ今が全盛期とでも言えるほどに活性化している身体を」

 

「……戸籍では100歳近い」

 

「超人に、ヒーローに年齢は関係ない。わかっているだろう?」

 

「……ヒーローは必要とされる限り戦い続けなければならない。どんな敵だろうと」

 

 頷くハゲ。

 せっかく美味しい物を食べたのに、気分が悪くなる話をしてくるこいつはきっととんでもない悪役なのだろう。

 俺がハゲならもっと優しいハゲになってた。

 

「不満でも?」

 

「別に。ただ単に俺が好ましいと思っている人に、生きていて欲しいだけです。……気分が悪くなるから」

 

 用意されていたタオルで手を拭く。

 人が死ぬときや致命傷を負ったときなど、何かを強く意識するとねっとりした濃い思念が残るらしい。

 距離が遠い程薄くなるし、遠かったらほんのり感じる。

 魂があるとしたら、肉体から放たれるときに感情をエネルギーにしているのかもしれない。

 悪人ならどうでもいい。

 意識しなかったり、意識してもどうせ自分に都合のいいことや懺悔して死んでいく。

 募金をしていたり濡れている動物を助けたりと正しいことをやったから死ぬのはおかしいとか、家族を遺せないとか、色々と考えながら死んだりする

 調べてみれば、死ぬには十分すぎる悪い事ばかりしているのだから、ああそういうものなのだなと受け入れられる。

 ただ、悪くない人が死んだら難しい。

 受け入れがたい感情だけを受け取られなければならない。

 好ましい人が死んだら、どうしたらいいのだろうか。

 そういうものだと誤魔化して、忘れるのがどうにも堪らない気持ちになる。

 ……ちょっと手を拭きすぎたかもしれない。

 

「アイアンマンは良いのにか?」

 

 ハゲが両手を広げて大げさに驚いた、といった具合にリアクションした。

 映画で陽気な黒人が死ぬ理由がわかってきた気がする。

 

「アイアンマンが良いってわけじゃないです。『善い人』であって欲しいだけです」

 

 トニーは自身が『善い人』になるためにはアイアンマンになるべきだと思い込んでいる。

 同時に慎重でもある。

 慎重すぎるとも言えるだろうか。

 傲慢なのに繊細すぎる。

 

「ヒーローは、君の言う『善い人』ではないと言いたいわけか?」

 

「『善い人』のままではいられないって言いたいんですよ。個人の人生を歩めるか。アベンジャーズのリーダーが体を張って教えてくれているじゃないですか」

 

「……まだ計画は凍結中。さらに言えばキャプテンは特殊な例、しかも蘇生に成功している」

 

「トニー・スタークの表明以降、貴方たちが監視を要とする超人は指数関数的に増加しています。特殊な例とやらが、絶対に降り掛からない保証もないでしょう」

 

 ぐぬぬ、とハゲとにらみ合う。

 お前は信用ならないんだぞハゲ。

 なぜなら俺がイライラするからだ。

 

『おかえりなさい、スティーブ。先ほどよりずっと安定していますね。自己診断として今は1から10段階でいうと、どれくらいの疲労ですか』

 

「1だね」

 

 ロジャースさんが戻ってきたので立ち上がる。

 もう解散でいいだろう。

 どうせハゲのおごりだ、流石ハゲだぜ。

 

「じゃあロジャースさん、さようならです」

 

「ナツ、さようなら。僕は完璧な兵士ではないとしても、選んだ自由のために。まだやれる」

 

「知っています。だから嫌なんですよ」

 

 笑顔を浮かべて、見えるかは知らないけど、差し出された手に応える様に握る。

 ……いや、痛いんだが。

 え?

 まだなの?

 いやマジで痛ぇ!

 

「痛いんですけどぉ!?」

 

「おっと、すまない。また会おう。……君が求めた人間は氷漬けになって、ここにいるのは別人だから」

 

 寂しそうに笑って、ロジャースさんは耳から外した何かをハゲに渡していた。

 ハゲはにやりと笑って自分の首元からボタン型マイクを見せ付けて来て……。

 

「ハゲェエエエエエエエ!」

 

「フューリーだ。誰でも私をフューリーと呼ぶ」

 

「知るか!」

 

 恥ずかしい!

 恥ずかしすぎて恥ずか死する!!!

 あーだめだめ、恥死量を超えています!!!!

 

『スキャン完了しました。脳内物質の生成は確認されましたが、怪我はありませんでした。ホルモンと神経の状態、脳波によると、あなたは若者にありがちな気持ちの動揺を抱えています。診断の結果は、「羞恥」です』

 

 知ってる!!!!

 

『1から10段階でいうと、どれくらいの羞恥ですか』

 

「100です……」

 

『100は登録されていません。もう一度お願いします』

 

「10だよ!!!」

 

『重症ですね。怪我がないかスキャンしてみます』

 

「さっき自分で無いって言ってたじゃんかよおおおおおお!!!!!」

 

『バッテリーが切れます』

 

「どう゛し゛て゛ぞう゛な゛っ゛だん゛だよ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛」

 

 んあああああああああああああ!!!!^q^

 

 

 

 

 

「キャプテン、いい薬だろう」

 

「ええ、ふふっ、確かに……」

 

 ほわああああああああああああ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

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