私たちは夢と同じもので形作られている   作:にえる

7 / 12
みなさん、えんとつ町のプペルを観たでしょうか。

おそらく全員観たと思いますが、万が一観てない人のために軽く宣伝させてください。

まず映画館で観ることができます。

2時間もかからず最高の感動を得ることができます。

そんな名作のプペル、アベンジャーズにも出てるだろうと思い、マーベルの映画を観ました。

やっぱエンドゲーム最高なんですよね。

単作ならファーストアベンジャーやアントマン、ドクターストレンジをおすすめしますが、シリーズ通してだとエンドゲームがさいつよになりますね。

ドラマも公開されましたし、マーベルの映画も楽しみですね。

もちろん、他の映画も楽しみにしています。

閃光のハサウェイ、シンヱヴァンゲリヲン、シン・ウルトラマン……。

今年も最高ですね。

あれみたいなもんですね。

ハーメルン民が大好きなあれみたいなもんです。

みんな大好きでしょ。

毎日目にしていた人もいるかもしれませんね。

わからない?

ヒントを出しますね。


ル〇〇〇です。
〇〇〇ドです
ル〇〇ドです。



そう、ルマンドです。


ルマンド最高!!!!


アベンジャーズ4

 

 --4

 

 インドに行くことになったので、その準備中の時間を利用してベイマックスの修理に取り掛かる。

 ベイマックスは空気で膨らんでいるのだが、そのマシュマロのような『肌』は手触りと丈夫さを両立させるために何層にも重なっていて、中層辺りから折りたたまれて大きめに作られている。

 折りたたむことで表面積を多く取って、ちょっとした穴ならば伸縮で塞がるようになっている。

 まあ、謎の魔法で大きめの穴が空いていたので、ダクトテープで補強したのだけど、それにしてもアメリカ人はダクトテープが好きだなぁ。

 中が焼かれたのか電波障害が起きているようで、俺の思考やネットワークへの通信機能が度々不調を起こしているため、無理に繋げるのはやめてネットワークから独立させる。

 ジャーヴィスや俺から学習していた知識の収集は止まるが、もう十分な量が集まったはずだ。

 そろそろAIの成長を促すために切り離すつもりだった、それが早まっただけのこと。

 

 他には重度の損傷が起きている骨格を構成しているフレームが気になるところ。

 時間が出来た時にでも取り寄せた物とフレーム自体は交換しようと思っていて、元々新作を組み込む予定だったのでそれほど労力は変わらないのが救いだろう。

 それまでの応急処置として、ちょっと動きは悪くなるが、内部に『センチボット』を送り込む。

 センチボットは虫型の小さなドローンであるインセクトロンを、更に小型にして特定の機能だけを持たせている。

 このまま小型化を進めていき、いつかは極小サイズで構成されるマイクロボットまで小さくする目標がある。

 内部のセンチボットに指令を送りつつ、空気圧で何とかベイマックスは動けそうだ。

 他には……。

 

「そうだ、コールソン捜査官。この後、トニーに協力を要請するんですよね」

 

「ええ、資料が準備出来次第ニューヨークへと飛ぶ予定です。……なるべく努力はしますが、彼はちょっと気分屋なので来てくれるかどうか」

 

「トニーと遊んでる途中でフューリーに引き抜かれた形になったので、今日と明日はもしかすると機嫌が悪いから難しいかもしれませんよ」

 

「長官が……。それは困りましたね……」

 

 実は新しく建てたスターク・タワーの点灯式を行うつもりだった。

 が、ハゲが「事故が起きる可能性が高く急を要する」と俺を呼びつけたために中抜けした状態だ。

 トニーはタワーの完成間近でノリに乗っていたので、機嫌を損ねているかもしれない。

 ポッツさんがいるから大丈夫だとは思うけど。

 

「なのでやる気スイッチを押します」

 

「以前のようにすればよろしいので?」

 

「ワンパターンだとトニーは飽きて反応しないので、またちょっと変えましょう。俺だけでいいので捜査官は少し距離を……そう、そのくらいで」

 

 捜査官とベイマックスに離れてもらう。

 そして小型ドローンに指示を出し、俺の周囲に展開させる。

 今回は360度カメラで録画する。

 

「助けて、トニー・スターク。あなただけが頼りです」

 

 そう、スターウォーズのあれである。

 あんまりやりたくないけど、戦争が起きると考えるとしょうがない。

 完全な後手よりは状況を理解できたほうがいいだろう。

 これポッツさんがやったほうが様になるんだよなあ。

 

『助けが必要ですか? 大丈夫です、ナズナ。あなたの健康を守ります』

 

 助けて、という言葉に反応したのか横からベイマックスに包まれた。

 マシュマロのような柔らかさだ。

 さっきハゲはこれに包まれてカッコつけていたかと思うと、ちょっと面白いよね。

 

「大丈夫、大丈夫だから。必要なのはトニーだし」

 

『わかりました』

 

「偉いぞベイマックス。じゃあ、わかったらちょっとどいて……」

 

『助けて、トニー・スターク。あなただけが頼りです』

 

 その言葉とともに、ダクトテープで補強していた穴が空き、萎んだベイマックスの重量が体にかかった。

 アイアンマンと同様の素材である希少な金属を詰め込んで出来ている感情豊かな優れた頭脳も合わさると、動作補助である『義手』が無ければ持ち上げることは叶わないほどに重い。

 ベイマックスの頭脳もろもろが衝撃に弱いわけではないが、もしものことを考えるとなるべく丁寧に扱っておきたい。

 地面に激突しないよう、頭を抱え込んだまま俺も地面に倒れた。

 

「たすけてー」

 

 重さで妙な棒読みになってしまった声をあげる。

 

『大丈夫です、ナズナ。トニーがあなたの未来を守ります』

 

 いや、未来とはスケールが大きいな……。

 助けが欲しいのは現在なんだけどね。

 

『深部の排熱を優先するため、スリープします』

 

 それを最後にベイマックスの身体から完全に空気が抜けきった。

 かなり無理をさせたし、不調のまま動いていたからしょうがない。

 しょうがないのわかっているが、この状態でスリープするのは修正が必要だろう。

 人の優先度を上げたらいいのだろうか。

 

「……助けて。トニーだけが頼りです」

 

 俺の言葉は切実だったと思う。

 

 

 

 

 

 ドローンを呼び寄せ、ベイマックスを持ち上げさせる。

 謎の魔法攻撃で俺の『義手』はボロボロなので支え程度にしかならない。

 当然だが無いと不便だ。

 すぐにでも替えが欲しい。

 残念なことに取り寄せるには時間が、直すには資材が足りない。

 俺が普段使っているドクターオクトパスは専用機なので、コスト度外視で貴重な材料をつぎ込んでいる。

 市場を想定しているタイプはもっと安価で、出力も弱い。

 だが、売り出すことは無いかもしれない。

 人類が宇宙に『手』を出すのはあまりにも早すぎると思うんだよね。

 そういうわけで、安全に採取できる高性能のマニピュレーターを与えるのは躊躇われるというのが本音だ。

 

「あー、なんか疲れました。……途中でベイマックスも入ってしまったので撮り直しますね」

 

「いえ、このままでいいと思います。これなら説得できそうです、ありがとうございます」

 

「そうですか? んー……。あ、『この記録は5秒後に爆発します』と最後に付け加えるためのシーンも撮ったほうがいいと思いますか?」

 

「ナズナくん、私見ですが証拠隠滅はホームビデオには要らないと思います」

 

 捜査官に映像記録の入った媒体を渡しながら、どこが良かったのか首を傾げる。

 内容がとっ散らかってるし、ふざけてるから微妙な出来だと思うんだけど。

 それはそれとして、限界に近い『義手』と俺、捜査官でベイマックスを支える姿は、なんとも情けない。

 俺とベイマックスの不甲斐ない姿だけ映像として残るのもちょっと癪なので、捜査官のも残しておこう。

 

「そうかな……そうかも? あ、捜査官もせっかくだから一緒に撮りましょうよ」

 

「い、いえ、私は遠慮しようかと」

 

「遠慮しなくてもいいですよ。……というかもうベイマックスが記録してますから」

 

 俺たちはチームなんだ、仲良くしようぜ!

 いえーい^q^

 困惑しながらぎこちなく笑う捜査官と一緒にカメラに笑いかける。

 あ、俺の顔は映像に残らないかもしれない。

 でもまあベイマックスに保存しておいて、俺がいつか思い出として見る記録だからいいよね。

 

 

 

 

 

 クインジェットから降りてきた名も知らないエージェントと捜査官がベイマックスを運び込むのを手伝ってくれた。

 インドまでは時間がかかるので、軽く直すくらいはできるだろう。

 試しに起動してみれば、冷却を終えたのか数値に異常は見られない。

 ベイマックスの顔だけが膨らんで、餅に似てるなあと思ったり。

 

『コールソン捜査官、さようなら。お元気で』

 

 ベイマックスがそう言うと、捜査官は笑顔を浮かべて教えた。

 

「それだと挨拶としては固い印象を受けてしまうよ。また会いましょう、くらいにするといい。それでは」

 

「ええ、ありがとうございました。捜査官もまた近いうちに会いましょうね」

 

 捜査官に声をかけ、握手を交わす。

 

『ナズナ、固いとはどういうことですか。言葉や文章に硬度はありません』

 

「雰囲気というか、距離感かな。近しい人には砕けた言葉遣いをすることを言ってるんだ」

 

 ベイマックスは唯一膨れている顔を揺らした。

 

『それならナズナ、挨拶が固いです。挨拶は正しく』

 

「そう?」

 

『そうです。そうでもあります。私のようにナズナもお別れの挨拶をしましょう。またね、フィル』

 

「えぇ……? えーと。また会いましょう、フィル捜査官?」

 

「また会いましょう、ナズナくん。ベイマックス」

 

 

 

 

 

 --5

 

 俺は高い所が苦手だ。

 物を取るために台に登る程度の高さすらダメ、というわけではない。

 高さに関してはビルの屋上から下を見たら足が震えるような普通の感性なのだが、落下の運が悪くて正気度が下がる。

 上空から放り投げられたり、一緒に降下した人がミンチになったり感電したといった過去がある。

 普通の人が一生に一度あるかないかのような降下というか落下も経験している。

 死んでないから幸運かもしれない。

 幸運ならそもそも体験しないからやっぱり不幸だと思う。

 そういうわけで、あまり飛行機に乗りたくないのが本心だ。

 

 だが、我が儘を言える事態でないことは理解している。

 可能な限りできるだけ速く移動できるなら空から行けるという俺の譲歩と、世界を取り巻く状況への対処というハゲの意見との折衷案の結果、『クインジェット』による移動で一致した。

 『クインジェット』はシールドが保有する特殊航空機だ。

 攻撃機能や自動操縦、その場での滞空を可能としたホバリング機能を搭載しており、何よりも外観が猛禽類のようでカッコいい。

 内部は人員や貨物の積み込みを優先しているせいか、遊びのある空間を大きく取っている。

 乗り心地は体験してみてわかったことだが軍用って感じで……。

 

「せめてクッションは必要かなって」

 

「……? 何の話?」

 

「いや、乗り心地の話です」

 

「揺れたかしら」

 

「トニーのスーツに抱えられて飛ぶより快適ですね」

 

 ついとばかりに呟いた言葉が、操縦席に座っているロマノフさんにも聞こえたようだ。

 正直な話、クインジェットに詰め込まれ、拷問だか尋問だかの途中の彼女を拾い、フライトを継続することになったので、そろそろ背中も限界だった。

 俺の言葉に短く「そう」と返し、また機内は静かになった。

 他のエージェントもいればお空の旅を楽しめたかもしれないが、任務に必要な人員は現地にいるらしい。

 ハルクに協力を要請する任務なので冷静だったり寡黙だったりするエージェントが回されやすい、そうなるとこの沈黙の空間に人だけ増えていた可能性もある。

 そういう『仕事に意欲的』とも表現できるエージェントが未知の対処に現れて記憶を消したり、事実を操ったりすることで都市伝説の『黒服の男たち』の元になったのかもしれない。

 

 このまま現地まで無言が続くのも嫌だなあ、と思いながらベイマックスの修理に戻る。

 以前から課題となっていた重量問題は余裕が無いので見送るしかない。

 単なるケアロボットならもっと軽量に出来るんだけど、俺の研究データなどの重要な情報が入れてあるので頑丈にしてある。

 空いている時間は余っている演算能力で計算させているし、オリジナルのタイムマシンを封印している座標を受信する装置も組んである。

 どうやって時間を戻すのか未だに不明な物体は出来れば永遠に日の目を見ないことを祈る。

 とか言っといて研究してるけど。

 映画とかで出てくる、欲望のままに研究して大失敗する研究員みたいなムーブしてないか、俺ぇ^q^

 

 

 

 

 

「ちょっと聞いていいかしら……その前に何をやってるの?」

 

 素材にこだわってよかった。

 そんなことを思いながら、応急処置を終えて起動したベイマックスに包まれていると、ロマノフさんが振り向きながら声をかけてきた。

 

「健康診断です。このほどよい柔らかさと暖かさは筆舌に尽くしがたい。流石は最高傑作です」

 

「そ、そう」

 

「包まれてみますか?」

 

「……結構よ」

 

「そうですか? 気持ちいいですよ。もちもちで柔らかな肌触りも魅力ですが、優れた温度調節機能を備えているので包まれていれば冬山でも凍死しない優れものなんです」

 

 素晴らしい出来だよなあ、と自画自賛しながら数値を確認する。

 まあ、こんなもんだよね。

 『義手』を使って激しい運動をしたり、超能力を過度に使うと不調を起こすので、意外と注意が必要だったりする。

 自動でうんうんでりゅ!!!は、現状だと自動でもなんでもないため、単純ながら同時に複雑な動作を思考制御する必要が出てくるし、補助脳も替えが利かない。

 月日とともに研究が遅々として進むので徐々に下がっていくが、それでもやはり負荷は無視できない。

 社内でも多めの予算が割かれている研究の題目でもある。

 

「楽しそうね」

 

「そうですか? そう見えます?」

 

「ええ、まあ。乗ってる間はずっとよね」

 

「そうですか、そうですか。なるほどなぁ」

 

 俺が楽しそうに見えているらしい。

 悪い人じゃないんだろうっていうのは伝わってきた。

 

「それで、聞きたいことってなんでしょう」

 

「ええ……スタークとどんな研究をやっているのか聞いてもいい?」

 

 無言のままのフライトだと寂しいので気を使ってくれたのだろうか。

 「もちろん、いいですよ」と答えながら、ベイマックスに体重を預けて椅子代わりに腰かける。

 

「実は結構色々とやっているんですよ。環境とか新エネルギー、人工意識、人工臓器、ホログラフィ、希少物質の特性シミュレートなどなど。……一から十まで関わっているわけではなくて、社内の研究チームや共同研究先に任せていますけどね」

 

 共同研究先は有名な大学が主だが、巨額の資金を投資して最先端を狙う企業とも連携することも多い。

 互いに技術を吐き出し合うことで市井における科学の発展を把握するためでもある。

 ライフ財団やクイン・ワールドワイド、サイバーテック社など敵対している企業もあるし、水面下で産業スパイが飛び交ってたりするのだけど。

 態々相手にしていられないし、競争は進歩を促すので放置している。

 アカデミーとだけ記されていた古くから歩調を合わせている研究先がシールドの養成学校だと知ったのは驚いたけど。

 

「それぞれが独自に研究を進めることもありますが、歩調を合わせて新しい物事に挑戦することもあります。特にホログラフィは素晴らしいですよ。映像を撮るだけならお金を使って自分で動画を作るなり、CGで映画を作れば済みますが、結局それは覚えている物や知っている物だけに限ります。我々は違います。脳の特定部位を刺激して記憶を映像化します。忘れてしまった事、忘れたくない事、それらを記録に残せるのです」

 

 電子機器が普及し、誰もが映像や音声を残せる時代となった。

 それでも、動き続ける事象の中で、常に記録を残せるとは限らない。

 意識を保っている限り続く記憶こそが記録媒体となる素晴らしい技術だ。

 

「それは記憶も好きにできるってことかしら」

 

「んー……結論から言うとこの研究は出力するためなので出来ません。刺激して脳を活性化させますが、改ざんとは異なります。いつの日にか、応用して出来るようになるかもしれませんね」

 

「そう、そんな日が来ないといいのにね……」

 

 目を細めてロマノフさんが呟いた。

 憂いを帯びたその表情は何を思っているのか、俺には読み取れなかった。

 

「でも、もっとアナログな手法を取った方が楽だと思います。例えば……そう、直接脳に手を加えるとか、洗脳を利用するとか」

 

「やったことは? あるの?」

 

「趣味じゃないので」

 

 うわ、目ぇこわ……。

 その視線に気圧されながら、肩を竦めて答える。

 環境さえ整っていれば、俺はやろうと思えば難なく出来るだろう。

 世界一かはわからないが、これだけはトニーよりも詳しい自信がある。

 空気の悪さを感じたのもあったし、ベイマックスがちょうどいい温度だったので俺はつい口が緩んだ。

 

「でもハゲ……フューリーに教えたことはありますよ」

 

「フューリーに……? 何を?」

 

「脳の処置、その助言ですかね。エージェントのトラウマや後遺症を治療するために、と聞かれたので俺が見た限りで間違っている部分、怪しい部分の知識を提供しました」

 

「……それはエージェントのライセンスを貰ってからってことよね」

 

「もっと前からですね」

 

 ハゲが俺の論文を率先して回収したことは……まあいいか。

 要望にも応えて余計な部分は削いだが、それでもシールドは進んだ知識を得たようだ。

 脳だけじゃない。

 繋がっている部分は提供する必要があった。

 その知識を元に人体に関して、かなり研究を進めたかもしれない。

 

「……フューリーとは知り合って長いのかしら」

 

 少しだけ揺らいだように感じた。

 おそらくこれがロマノフさんにとって一番聞きたいことなのだろう。

 ハゲを探ろうとしているのか、それとも他に何か聞きたいことがあってそれに繋がるのか。

 ……。

 どっちでもいいか。

 俺には判断がつかない。

 

「うーん、どうしようかなぁ。ニック・フューリーって偉いんですよね。程度は低いかもしれないけど、そんな簡単に喋ってもいいのかって悩みます。ロマノフさんは気になりますか?」

 

「とても」

 

 頷くのを見て、感情くらいは伝わるだろうと思い、ニヤニヤと笑みを浮かべる。

 顔をしかめたロマノフさんを見てちょっと楽しくなってきた。

 シールドに敵対勢力がいないわけでもないし。

 軽々と喋るのは躊躇われるので、俺の都合に使わせてもらおう。

 

「これからの任務、作戦について俺の意志も反映させて貰います。それで良ければ話しますよ」

 

「……」

 

「ああ、勘違いしないで欲しいのはこの任務に対してニック・フューリーによって俺には強い権限が与えられています。最初は口を閉じて本職に任せようと思いましたが、やっぱりちょっと気になる点は良くしたいわけですよ。後で無理を言うのは良くないので、許可を相互理解から仲良く協力しましょう、と提案しておこうかと」

 

「少し考えてもいいかしら。時間が貰えるのなら、だけど」

 

「どちらにしても変わらないので必要ないと思いますよ。結局俺は口を出す。なら提案を受け入れるという体で話を聞けばいい。そしたら俺も仕方なく話したってことになります」

 

 ロマノフさんが呆れたようにため息をついて脱力した。

 それを見て俺はにっこりと笑みを浮かべる。

 

「私の気持ちも考えてくれると嬉しいのだけど」

 

「考えてますよ。すぐ知りたいでしょう? だからこれが最適解です。仲良くしたいという気持ちもあるなら、貴方がトニーの秘書だった時から俺はずっと心を開いていますよ」

 

 

 

 

 

「さて、フューリーについてですね。付き合いはトニーより長いです。が、親密かと聞かれたらそうでもないんですよねこれが。年月が気になるならシールドのインデックスを調べたらいいと思います、載ってるらしいんで」

 

 インデックスとはシールドがリスト化した一般人から外れた者たちの一覧だ。

 中には超能力を制御できず、厳しい監視の下で暮らさないといけない人もいるらしい。

 俺の場合は捕捉されてすぐにハゲが保護責任者となっていたことが、最近エージェントとなって判明した。

 「夏目薺」「ナズナナツメ」「サイコキネシスト」「クレアボヤント」「ドクターオクタヴィアス」「神経インターフェイス」「デルフィニウム」「シャンデリア」などの単語挙げてインデックス検索するとちょっとずつ見つかる、とロマノフさんに教える。

 俺に関わる項目をインデックスで検索して繋ぎ合わせると、『俺』という人物を知ることができる。

 ちなみに全部エージェントレベル1で閲覧可能という安さ。

 

「これは……何も知らない人では貴方を見つけることが出来ないようになっているのね。誰でも見ることができるのに巧妙に隠されていて、能力や技術が目当てなだけでは決して辿り着けないわ」

 

「へー、そうなんですか」

 

 「貴方ね……」と呟いたロマノフさんは、頭痛を堪えるように蟀谷(こめかみ)を抑えた。

 彼女は疲れているのかもしれない。

 ベイマックスに座る?

 癒し効果抜群のもちもちなんだが?

 

「フューリーは私を含めた彼に近いエージェント数人に、何かあったら貴方を頼れと伝えているのよ。心当たりはある?」

 

「ありません。でも意図は掴めます。ちょっとだけですが。期待外れですか?」

 

「いえ、充分よ」

 

 ハゲが使う道具は俺が作っている。

 だからハゲが持っていた何らかを解析するなら俺が一番だというだけだ。

 俺自身は鍵も金庫も持っていないが、何処にあるかだけはわかるかもしれない、というのが一番近いだろうか。

 メモ書きか、良くてメッセンジャーが俺に求めている役割だと予想する。

 ハゲと俺のある種の見解は一定までは一致している。

 俺が望まない相手はハゲも望まない相手であり、だからこそ俺を介して鍵が使われることも、金庫が開けられることも無い。

 そして俺自らはほとんど事態の回復へと動かない。

 そんな程度だ。

 

「じゃあ、気になりますか? 聞きたいですか?」

 

「とても。必要になったら急いで頼ると思うわ。だから今は不要よ」

 

 にやにやと煽ってみるが、残念なことに振られてしまった。

 面白味の無い人だ。

 ここで乗り気になって聞かれたらそれはそれで怪しいから、俺の中の好感度が下がっただろうけど。

 

 

 

「そういえば目的地の観光名所は何処なんでしょうね」

 

 ふと、呟く。

 

「……今の状況はわかってる?」

 

「わかっています、戦争ですから急がないと。うーん、タージマハルくらいしかわからないですねぇ……」

 

「あのね、任務が終わったらすぐに帰還するから悩む必要はないのよ?」

 

「俺はどっちでもいいんですけどね。たぶんロマノフさんが許可を出しますよ。そして俺は当然歩調を合わせるので、素晴らしい提案だと受け入れるでしょう」

 

 良心と常識を秤に掛ける簡単な話だ。

 心外なことに、胡散臭そうな視線を向けられてしまった。

 ……。

 よし、楽しく話せたな。

 (パーフェクトコミュニケーション)

 

 

 

 

 

 --6

 

「これで大丈夫なわけ!?」

 

「大丈夫です。ばっちりです」

 

「わざわざ危険を増やしてるだけじゃなくて!? これで本当に協力してもらえるの!?」

 

「それはちょっとわからないですね」

 

 これからの任務への不安からかロマノフさんが「話が違う!」と声を荒らげた。

 生理と重なったのかもしれない。

 脳腫瘍の可能性もある。

 ベイマックスを起動しておいて、診断しよう。

 ということで再起動の指示を出しつつ、俺も言葉を返す。

 納得するかはわからない。

 

「俺たちは協力してくれるようにお願いしに行くだけです。戦争だから絶対に手を貸してくれる、そんな都合のいいことを考えては相手に失礼ですよ」

 

「……それくらいわかっているわ。私たちが静かに暮らしている彼を表に出そうとしていることくらい」

 

 ブルース・バナー博士との交渉についてのスタンスを伝えると、ロマノフさんが俺の言葉に意気消沈した。

 情緒不安定すぎるんだが。

 ただ何となく理由はわかる。

 これまで良く言えば『見守り』、悪く言えば『観察』したことでどんな人間性か理解できるためだろう。

 

「そうですね。未知の敵が何処かから来るので可能な限りこの世界でなるべく早く戦場に向かってくれ、と善意に訴えかけるわけですね。罪悪感はロマノフさんに任せます。俺はトニーの友達を連れて帰るくらいの気持ちで行きます」

 

「貴方ね……」

 

「相手は思慮深い紳士的な人物なので何も心配はいりませんよ。最悪を引かなければ」

 

「交渉に失敗して暴れられるってこと? 逃げ隠れるのが大変でしょう、そんなことしないと思うけど」

 

「意味合いが違います。俺が言う最悪は、何が起きても静観されることです。強靭な肉体に約束された生命で、戦争や虐殺が起きようと無視されてしまうとお手上げです。ブルース・バナー博士は頭がいい、生存や平穏が目的なら選ばなくもない」

 

 おそらくは無いと思うが、人は心変わりするものだ。

 ハルクを何とかしようと活動的に動いていた時期もあった。

 目的が変わっていないのなら、手を貸してくれるだろう。

 科学技術や文明といった人類の衰退を望んでいないためだ。

 だが、全てを受け入れたとしたらどうだろうか。

 いっそ面倒なのはいなくなるから、と判断されたら目も当てられない。

 この世界にとって、ブルース・バナー博士の心の天秤に、平穏と目的がそれぞれ乗っていることが重要だ。

 

「……なので、どうしても不安なら手でも握ってお願いすればいいんじゃないですかね。仲良くなれば助けてくれるタイプと見ましたよ」

 

 ロマノフさんにテキトーなアドバイスを送る。

 助言内容に根拠がないわけでもない。

 記録に残っている被害を辿れば、その荒々しい破壊痕とは裏腹に人的被害は少ない。

 軍の損耗は交戦記録となっている、つまり手を出して反撃されているだけなので知らん。

 潜伏期間中は、シールドやジャーヴィスの情報収集の精度にも因るが実に穏やかで、隠遁していると言ってもいいくらいだった。

 特に親密な人への対応には特別な何かがあると予想してしまうほどに。

 

「ふざけないで。何かあったら遅いのよ。今からでも部隊を呼べるけど?」

 

「そうですね。何かあったら迅速に避難誘導してもらうために、町はずれのこの場にいないほうがいいんですよ。……あ、不安なら俺が先にお願いしに行ってもいいですよ。代わりに三日間は観光に充てますけど」

 

 フライト中にどちらが先に交渉の場に付くかを賭けたポーカーを行ったのだ。

 結果は言わずもがな。

 交渉するにしても綺麗な女性が来たほうが相手も嬉しいだろう。

 そして彼女の権限で無理に部隊を引っ張ってきてないのも答えだ、たぶん。

 まあ、俺に与えられた権限がめっちゃ強いのもあるけど。

 耳に付けたインカムが作戦開始を知らせるのと同時に、ロマノフさんが木造の古めかしい家屋へと向かった。

 がんばってくださいね、とその背に声をかけたが睨まれただけだった。

 

 

 

 今回の交渉相手であるブルース・バナー博士だが、この町で医者をやって溶け込んでいるようだ。

 そこで、病に臥した家族を持つ貧しいという設定を持つ少女を用意した。

 誘導役ってやつだね。

 そこからはロマノフさんの交渉に掛かっている。

 少女とロマノフさんを除けば、この場には(こと)の推移を報告するエージェントと、必要ならば避難誘導の指示を部隊に出すエージェント、そして俺だけという最低限の人員だ。

 打ち合せ通り誘導を終えて窓から出てきた少女を確保し、安全な場所へと送る。

 おお、更に1人減ってしまったな。

 

 屋内の様子を探っていたが、どうも剣呑な雰囲気になりつつある。

 というかロマノフさんが緊張と恐怖で余裕がなさすぎる。

 武装解除しすぎたようだ。

 そして博士も初対面の相手に信用できないようだ。

 なるほどなぁ、俺も経験不足すぎたわ。

 悪いことをした。

 

 博士が大声を挙げたので、急いで大きな物音を立てながら室内に窓から飛び込む。

 とんでもない臆病者だったらこの音でハルクになってたかもしれない。

 博士の普通の肝に九死に一生を得たぜ。

 そもそもそんなにビビりだったら生活できないもんね。

 

 俺が見たのは拳銃を博士に向けるロマノフさんと、目を丸くした博士の姿だった。

 どこから拳銃を取り出したんだこの人……。

 それはそうと、会話を軟着陸させるためには空気を変えるしかない。

 

 みんな臆病だ。

 それでいて何処か信じたがっている。

 そして同時に信じられたがっている。

 だから真摯に対応するだけで十分なんだ。

 銃は要らない。

 脅迫なんてもっての外だ。

 真心さえあればいい。

 

「おれは決してお前を撃たねェ!!!! おれの名は!!! 薺!!! 研究者だ!!!!」

 

 説得っていうのはこうやるんだよ、というわけでとりあえずインドで全裸になって叫んだ。

 銃なんていらねぇんだよ!

 『義手』もいらねぇんだよ!

 全部捨てて手ぶらでかかってやる!

 

 家の外から、ベイマックスが気を利かせて「どどん!」と効果音を付けてくれた。

 

 何やってんだろうね、俺……^q^

 

 

 

 

 

 --7

 

「……さて、二人が来てくれた用事の件だけど」

 

 硬直していた博士が椅子に腰かけながら仕切り直す。

 ロマノフさんも無害をアピールしつつ机の上に拳銃を置いた。

 俺は全裸なので立ったままだ、靴だけは履いた。

 刺が刺さりそうだし。

 

「四次元キューブ、その捜索に僕の協力が必要だと」

 

「ええ」

 

 ロマノフさんの相槌に合わせて頷く。

 

「ナターシャと(きみ)……君の名前は?」

 

「ナズナです。ナズナ・ナツメ。スターク・インダストリーズの研究員とシールドのエージェントをやっています。よろしくお願いします」

 

「優秀なんだね。ブルース・バナーだ。こちらこそよろしく。……ところでナズナくん、その、寒くないかな?」

 

 バナー博士と握手を交わしていると、全裸について指摘された。

 うーん、確かに。

 だが俺の誠意でもある。

 

「これは害するものを持っていないというアピールですよ、バナー博士」

 

「……誠意は十分に伝わった。それに僕としては協力するのも構わない。構わないのだけど、女性もいるから服を着たほうがいいと思うね」

 

「え、気にするんですか?」

 

「好きにしていいわ。私が女性に見えなくて気を使えないって言うならこれで女性を作ってもいいって意味で。どう思う?」

 

「着させていただきます、お姉さま」

 

「優秀ね」

 

 全裸を気にするの? マジで? みたいな顔でロマノフさんに問うと、ちらっと下を見て鼻で笑われた後に銃を向けられた。

 股間がひゅんってなったし、博士もちょっとビビってた。

 目的であった交渉は成功したので、圧力に屈しつつ大人しく服を着るとしよう。

 どや顔を披露しながら指パッチンを鳴らす。

 服を持たせたベイマックスを呼ぶ合図だ。

 

「ベイマックス?」

 

 来ない……?

 指パッチンを何度も鳴らす。

 

『挟まりました。……616エラー発生。歩けません』

 

「ベイマックス!!!」

 

 俺が飛び込んだ窓から入ってこようとしたベイマックスが、挟まって身動き取れなくなっていた。

 

 

 

 

 

 バナー博士とロマノフさんの力も借りてベイマックスの救助に成功する。

 当のベイマックスは応急修理された腹部が気になるのか、無理に縫合された部位を触っていた。

 かさぶたを弄る子供か?

 あまり触らないようにと言い含めながら服を着る。

 無駄に時間が掛かってしまった。

 

「よし、と。……お待たせしました。こちらは心と体を守るケアロボットの『ベイマックス』です」

 

『こんばんは。私はベイマックスです』

 

 執拗に縫合痕を触っているベイマックスの手を軽めに叩く。

 興味が移ったのか、ベイマックスは叩かれた手をふらふらさせている。

 動作に違和感を感じているのだろうか。

 

「あ、あぁ。よろしく、ベイマックス。僕はブルース・バナー」

 

『よろしくお願いします。ドクター・ブルース。必要ならば診断いたしましょうか』

 

 ふらふらさせていた手を、手のひらを前に向けて円を描くように動かした。

 手のひらには色々な機能が搭載されている。

 情報の受信や発信の機能も集中している、この動作は軽めにセンシングした時の物だ。

 バナー博士が胸ポケットから取り出した眼鏡をかけ、ベイマックスに顔を近づけた。

 

「ケアロボットか、面白いね。診断したら治療でもしてくれるのかな? 健康だけど、”もう一人の僕”について悩んでいるのが本音でね。それは難しいと思うから……。そうだ、彼が裸だったから健康を損なっているかもしれないよ」

 

「俺ですか? 俺はどちらかというと暑いくらいですけど」

 

『安心してください。空調機能も使えます』

 

 バナー博士からの送られてきたキラーパスを、たどたどしくベイマックスに送ってみる。

 その結果、搭載した覚えのない機能を使うという。

 博士の視線に、首を横に振って答える。

 これはとても興味深い。

 

『スタークビル最上階の設定温度を変更しました』

 

「なんでそうなった???」

 

 急にビルの冷房がかかってトニーもびっくりだろう。

 バナー博士はうんうんと頷いている。

 

『帰宅とともに快適な温度で出迎える予定でしたが、ジャーヴィスに権限を取り上げられました。もうナズナに快適な環境を提供することは不可能となります』

 

「大げさすぎるんだけど???」

 

 ベイマックスが肩を落として言った。

 勝手に設定を変えたのでジャーヴィスに怒られたに違いない。

 あっちは指導上位機みたいなものだし。

 「ジャーヴィスに注意されたのか」とそれとなく尋ねると、しょんぼりしながらベイマックスは俺に背を向けた。

 耐えきれず、ロマノフさんは噴き出した。

 

 

 

「いや、冷房は必要ないよ。慣れてるからね。他には何ができるんだい?」

 

 面白そうに見守っていたバナー博士が、ベイマックスの前に回り込んで会話を再開した。

 

『安心してください。今なら保温機能が使えます』

 

「いいね。ところで、それはどれくらい温かくなるんだい?」

 

『安心してください。頑張れば瞬時に水を沸騰させられます』

 

「ははは、僕以外なら死んでしまうかもね。彼にはやめてあげなよ」

 

『安心してください。AEDも搭載しています』

 

「AEDも?」

 

『安心してください。通常の100倍以上の熱量を利用可能です』

 

「それなら僕も安心だ。専用にしておいてくれると嬉しいね」

 

 ベイマックスが『了解です』という言葉の後に両手をこすり合わせると、ばりばりと音を立てた。

 心肺停止が確認されるとあれで蘇生を試みるようになっている。

 が、すぐに光と音は消えた。

 ベイマックスが「ジャーヴィスに権限を取り上げられました。保護者制限です」と呟いた。

 バナー博士は眼鏡をずらし、次いで肉眼でベイマックスの手と顔を見た。

 そして俺に笑顔を向けた。

 どこにも邪気の無い、感激したような笑顔だった。

 

「高度な知能に裏打ちされた遊びのある言動。そして意識とも呼べる小さな起こりも感じ取れるね。専門外だけど、よく育っている。素晴らしい。……いくつか気になる点もあるけどね」

 

 そして、はっとした表情を浮かべて再び眼鏡をかけ直した。

 

「……申し訳ない。趣味(・・)に熱中してしまった。迎えはいつ頃になるかな、待たせてないといいんだが」

 

「まだ時間がかかるから構わないわ。広く展開しているから先行させてもね」

 

「ん? 近くに友達は隠れていないのか?」

 

 ロマノフさんが俺を横目に見ながら言う。

 その言葉にバナー博士が不思議そうに首を傾げた。

 

「少数精鋭ってやつです、たぶん」

 

 俺は苦笑いを浮かべながら、曖昧に答えた。

 

「なるほど。……なるほど? 例えば、被害を最小限にしようとしたとか?」

 

「被害ならある意味で一番大きくなるかしらね。……我が儘なお金持ちが協力してくれなくなるもの」

 

 この勧誘で俺が死んだらシールドと協調しなくなるかもしれないけど、トニーは気分屋だからしょうがないね。

 ロキを相手に弔い合戦だ、とはならないだろう。

 

「助けを求めに来たのに銃で囲むのってどうかと思うんですよね」

 

「そうだね。悪くない考えだ、むしろ僕としても望ましい。そして言っていることも正しい。正しいけれど、実際の君は全裸だったよ。とても驚いたね」

 

「私も驚いたのよ。事前に相談されてないから。相互理解はどこにいったのかしらね」

 

 なるべくロマノフさんのほうを見ないようにしながら、バナー博士の言葉に頷いた。

 後で機嫌をなんとかしないと帰りは気まずくなりそうだけど。

 

「でも、ほら、大人数で囲んで銃を向けるのも申し訳ないですし。3度お願いしに行くのは常識的でも、3倍で囲むのはちょっとやばくないですかね。やべーですよね」

 

「ああ、なるほど。うーん、でも、麻酔銃ならどうだろうか。”もう一人の僕”が出てくる前に眠らせることができれば被害は少なくて済むかもしれない」

 

「……盲点でしたね。確かに本職の意見を聞くべきでした。でも言い訳させてもらうとですね、俺は紳士的な人だと理解しているので会話以外は必要ないと考えていました。ええ、もちろん本当ですよ」

 

 言い訳する時点でダメだし、思いつかなかったという致命的なミスを犯したんだけどね。

 安全に眠らせられる麻酔があるかと問われれば困るが、それはそれとして頭に無かったのも確かだ。

 過去の作戦で催涙弾などを使用してハルクが発生したのを見たのが悪かったのかもしれない。

 思い込みで可能性を排除するのは良くない。

 ロマノフさんが呆れたようにため息ととともに肩を竦めた。

 目的は果たせたけど、結果はちょっと良くないかもしれない。

 なんか観光したくなったなぁ。

 

「一つ提案なのですが、今日はこれで解散にして、出発は明後日以降にしませんか?」

 

「どうしてか聞いてもいいかしら? ……明日は観光したいとか言わないわよね?」

 

「……え、あ、うん、もちろんです。バナー博士が静かに暮らしていたとしても知人がいると思うので、軽く挨拶回りをしたらいいと思うんですよね。急なお願いで国に呼び出すんですから。今後はどうなるかわからないですし。……そういうわけで、ロマノフさんの意見を聞いてもいいですか?」

 

 本職(プロ)に意見を聞くついでにいいことを思いついた。

 バナー博士に機嫌を取ってもらおう。

 博士は綺麗な女性と同行できる、プロは見張れる、俺は観光できる。

 いいこと尽くめだ、もしかして俺はこの場を最も理解できているのでは?

 

 

 

「ついでにロマノフさんも相互理解のために博士に同行したらどうでしょうか。俺は……そうですね、エアコンでも探しに行きます」

 

 

 

 

『またね、ナターシャ』

 

「ええ、元気でね。ベイマックス」

 

 ベイマックスとロマノフさんがお別れの挨拶をしていた。

 俺より仲良くない?

 気のせい?

 

 

 




カレン引けなかったにえる、ここに眠る。
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