ライダー世界が異聞帯になったら   作:鮫田鎮元斎

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2009年がもう10年前なのが恐ろしすぎる……

遂に異聞帯突入。モチベはギリギリ持っているので続行。


第一幕 招かれざるS/風の吹く町

…………

……

 

 

「ここが風都……」

 

 戦いを行わない以上、マシュは武装せずにボーダーを降りる。

 

 森の中に出現したおかげで悪目立ちはしていない。街中だったら完全に注目の的だったかもしれない。

 

 

 ――――パシャッ

 

 誰かに撮影された。

 

 振り返ると、ラーメン屋の店主がマゼンタ色のトイカメラでこちらを撮影していた。

 

「っあの撮影は」

「気にするな。どうせ上手く撮れてない」

 

 店主は悪びれずに答えた。

 

「そういう問題では」

「悪いが俺は忙しい」

「あっ」

 

 そのまま屋台を引いて彼はどこかへと去っていった。

 

「――マシュ君、そんなことを気にせずに調査をするぞ! 事態は一刻を争うのだからね」

 

 ゴルドルフはホームズによっておだてにおだてられハイテンションであった。

 

 そんなノリの彼に呆れつつ、ともに市街地へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 異聞帯、風都。

 

 その風景は現代日本と何ら変わりは無かった。

 

「うん……? 本当にここは異聞帯(ロストベルト)なのかね?」

『ブリーフィングを忘れたのかい? ここは異聞深度E-、つまり中国以上に凡人類史に近い場所でもある』

 

 礼装による通信を携帯に偽装することで更に目立たなくしている。

 

 それほどまでにここは日本に近しかった。

 

『でも油断はしないことだ。曲がりなりにもそこは異聞帯なのだからね』

 

 ダ・ヴィンチの言葉が示す通り、通行人が彼らの方を指さしひそひそと話をしている。

 

 

「ああ、間違いない。あれがカルデアって犯罪組織の」

「よし、斃せば」

「いいメモリがもらえるぜッ!」

 

 芸人風の三人組がメモリを取り出し、各々の体に挿入する。

 

\ANOMALOCARIS/

 

\BIRD/

 

\COCKROACH/

 

 突如とした脅威の出現に二人は一瞬あっけにとられる。

 

「て、敵襲ですッ!」

『え? 魔力反応一切ないんだけど』

「だったらあれは何なのだ!?」

 

 デミ・サーヴァントとしての経験から、マシュは咄嗟に異形の攻撃を躱すことに成功する。

 

 が、ゴルドルフは僅かに反応が遅れて攻撃を喰らってしまう。

 

「くっ!」

 

 借りていた魔銃で応戦するも、異形達には効果が無かった。

 

「いってぇ!」

「何すんだこのアマ!」

 

 ゴキブリのような異形に魔銃を破壊され、首根っこを掴まれる。

 

 仲間のピンチにゴルドルフは奮戦しているも、早くも息が上がってしまっていた。

 

「あ、そうだ……殺す前にこの子、犯っちゃおうか」

「名案! この町を穢す奴らは見せしめにしないとなぁ!」

 

 なんかよくわからない生物がモチーフの異形は下衆のような笑い声をあげていた。

 

(せめて――武装さえできれば)

 

 オルテナウスを使用していれば、最小限の消費で撃退できていたかもしれないのに。

 

 彼女は精一杯怪物たちを睨み付ける。

 

「とりまあのデブはここでぶっ殺すか!」

「え、ちょっ!?」

 

 鳥の異形はゴルドルフを上空へとかっさらう。

 

「し、新所長!」

 

 そして視認不能な高さまで上昇し、そこで手放す。

 

「ふぉごごごごっ! ごっ!」

 

 超スピードで彼の体が落下する。

 

 魔術を展開しようにも風圧で身動きが取れない。

 

「うがっ!? ……?」

 

 地面に叩きつけられる直前、何かに引っ張られて急減速する。

 

 それは蜘蛛のようなロボットだった。

 

 

「――よーしいい子だ」

 

 物陰からソフト帽をかぶった男性が姿を現す。

 

 三つ揃えのスーツを着こなし、様々なガジェットを周りに従えていた。

 

「この町を穢してんのはお前らの方だろ」

「「「はぁ?」」」

 

 息ぴったりに異形達は反応する。

 

「ちょっと待ってなお嬢さん。すぐに片づける」

 

\JOKER/

 

 彼はベルトから一つのスロットが付いたバックル――ロストドライバーを取り出して腰に装着する。

 

「行くぜフィリッ……っけね、また癖が」

 

 彼は帽子を目深にかぶり直し、メモリを構える。

 

「変身!」

 

 それをベルトに挿入し、展開した。

 

\JOKER/

 

 男性は濃い紫色のアーマーを身にまとった。

 

「さあ、お前らの罪を数えろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

「はぁ? なんだお前」

「ジョーカー……仮面ライダージョーカーだ」

 

 ジョーカーはゆっくりと歩みを進める。

 

「仮面ライダー! こりゃゴールドメモリも夢じゃねえ!」

 

 ゴキブリの異形はモチーフ通りの高速な動きで攻撃を仕掛ける。だが彼はそのすべてを見切っている。

 

「まだまだだな」

 

 攻撃をいなし、カウンターを決める。

 

 上空からは鳥の異形から攻撃を受ける。羽をばらまくような波状攻撃だ。

 

 ジョーカーはゴキブリ異形を盾に攻撃をしのぐ。

 

「でででで!」

「大人しくしやがれ――」

 

 押さえつけつつ、彼はベルトのメモリを腰の別スロットに装填し起動させる。

 

\JOKER・マキシマムドライブ!!/

 

「ライダー・キック!」

 

 そして攻撃が止むと同時にゴキブリを蹴り上げ、滞空していた鳥にぶち当てて撃破した。

 

「次はお前だ」

「え、マジかよ!?」

 

 謎の生物――アノマロカリスの異形を指さす。

 

 それは銃弾のようなものを吐き出して牽制するがすべて躱される。

 

「あ――こっちには人質ッ!?」

 

 マシュの事を思い出し人質作戦をとろうとするも、突如飛来したカブトムシ型のロボットによって妨害されてしまう。

 

 彼女はその隙に抜け出して安全圏へと退避する。

 

「これで気兼ねなく斃せるぜ」

 

\JOKER・マキシマムドライブ!!/

 

 ジョーカーの拳にエネルギーが充填される。

 

「ライダー……パンチ!」

「ひでぶっ!」

 

 三体の異形は爆発と共に人間の姿へと戻り、体外に排出されたメモリは砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

「あの、ありがとうございました」

 

 マシュは深くお辞儀をして礼を言った。

 

「ああ、いいってことよ。それよりも、あんたらがカルデアって組織の連中か?」

 

 ジョーカーは変身を解除し、帽子をかぶり直す。

 

「は、はいっ! もしや、サーヴァントの方ですか……?」

「どうやらそうらしい。俺も記憶が曖昧でな」

 

 彼は困ったように帽子を押さえる。

 

「おっと、自己紹介がまだだったな。俺はサーヴァント、“ハードボイルド探偵”左 翔太郎だ。クラスは恐らくライダー、のはずだ」

「ええと、ヒダリさん、ですね。私はマシュ・キリエライト、よろしくお願いします」

「君がマスターなのかい?」

 

 左の問いかけに、彼女は顔を曇らせる。

 

「いえ、私はデミ・サーヴァントですので。私のマスターは……」

「おっと、皆まで言わなくていい。事情は大体わかった。俺は君に手を貸す、それが依頼だからな」

 

 その言葉に彼女は目を見開く。

 

「言いたいことは山ほどあるだろうが、まずは移動しよう。“組織”にかぎつけられたら面倒だ」

 

 と、彼はマシュの手を引いてこの場を去る――

 

 

「……お、おうい…………そろそろ下してくれないか?」

 

 ずっとぶら下げられたままだったゴルドルフの顔は完全に真っ青だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

……

 

「はい、これでしばらくは大丈夫でしょう」

 

 気のせいか、体が少し軽くなった気がする。

 

 本当にこの先生は腕がいい。ちょっと特殊な人だけど。

 

「ありがとうございます、井坂先生」

 

 この人は見た目だけは紳士だ。

 

 中身は――ガイアメモリに取り憑かれ、ドーパントの体にしか興奮できない変質者。

 

 仕事もドーパント専門の医者という危ない人間だ。

 

「メモリの複数挿しをしたい気持ち、分からなくはありませんが……限度というものがあるでしょう。こうも短期間に何本も使用しては」

「そんなこと、知っているよ」

 

 僕はカルデアのマスターを老化させた“オールド”のメモリを先生に渡す。

 

「それより、このメモリを預かっていてくれませんか?」

「いいんですか、これを預けても。私が勝手に使うかもしれませんよ」

「別に、壊さないでいてくれればいい。もう用済みだから」

 

 メモリブレイクされなければ藤丸 立香の老化は解けない。家族に預けるよりも意外性があって見つけられないかもしれない。

 

「そうですか、でしたら」

 

 僕が聞いた話だと、この人は凡人類史では死んでいる。父さんから“ケツァルコアトルス”のメモリを奪い、その能力を手に入れようとしたところを仮面ライダーに退治されたとか。

 

 異聞帯(こっち)の彼はその運命からは外れている。そもそも彼の死因となるメモリは生み出されていないのだから。

 

「時に、冴子君から聞きましたよ。君はとても珍しいメモリを持っているみたいですね」

「……おしゃべりだな、姉さんも」

 

 きっと僕が家族だと信用させるために流した情報がそのまま伝わったみたいだ。

 

「ゴールドメモリよりも更に格が上の――プラチナメモリ。是非とも診察させてほしいですね」

 

 ジュルリ。

 

 先生は紳士な見た目とは裏腹に、不気味な舌なめずりをした。

 

(やれやれ……姉さんはどうしてこんな人を好きになったんだろうね)

「それは僕の最重要機密だからね。さすがに見せはしないよ」

 

 これで当分は戦える。

 

 僕の場合、直挿しの方が出力高いけど――当分控えた方がいいかな?

 

 事を成す前に死んでしまっては意味がないから、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 リュウトが診察室を出ていったあと、井坂は不気味な笑みを浮かべた。

 

「彼の持つ“エクストリーム”のメモリ……ああ、是非とも挿してみたいですねぇ」

 

 ジュルリ。

 

 ごちそうを前にした肉食獣の様に舌なめずをする。

 

「まあ、いいでしょう。当分は普通のメモリで我慢するとしましょう」

 

 さっき預かったオールドのメモリを白衣のポケットにしまい、表情を普段のものに変えた。

 

「――――次の方、どうぞ」

 

 

 






井坂先生は生きてます。その方が一波乱ありそう。

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